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なぜ神社では「お賽銭」を払うのか…神社の案内人が教える「願いごとをうまくかなえる」参拝のコツ

プレジデントオンライン / 2023年8月8日 14時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/lielos

なぜ神社では「お賽銭」を払うのか。『成功している人は、どこの神社に行くのか?』(サンマーク出版)の著者である八木龍平さんは「そもそもの始まりは、その年の最初に収穫した稲穂『初穂』を、神さまへの捧げものとして毎年奉納したこと。この『初穂』が、のちに金銭に変わった。願いがかなった『結果』に対するお礼ではなく、先に感謝して、望ましい結果の『原因』をつくるおまじないだといえる」という――。

※本稿は、八木龍平『成功している人は、どこの神社に行くのか?』(サンマーク出版)の一部を再編集したものです。

■なぜ神社でおさいせんを払うのか

神社で定番のお金の話しもしましょう。「おさいせん」についてです。

なぜ神社でおさいせんを払うのでしょうか?

じつは、お金を払うことも「お祓い」です。日本神道の中で、いわれていることではありません。ただ、そう考える根拠は示しましょう。祓いとは、罪ケガレを取り除くことで、神社の中心的な機能です。

『神道事典』391ページを開くと、「神道の場合、基本的に罪は祓いによってすべて解消・除去される」と書かれています。

「罪がすべて解消・除去されるってどういうこと? 犯罪の事実が消えたり、おとがめなしになったりするわけないよね?」

こう疑問に思っていたところ、前作でも紹介した、リチャード・ワイズマン著『その科学があなたを変える』にある「手を洗うと罪悪感が減る」という実験結果を知って、すっきりしたのです。科学的な視点でみると、「祓いで罪悪感が減る」のだなと。

神社では参拝前に手を洗い、口をすすぎます。これは、「みそぎ」とよばれる「祓い」の行為です。神社には「罪悪感を減らす仕組み」があるのですね。そして、お金を払うことも罪悪感を減らします。だからお金を払うことも「祓い」なのです。

■罪悪感の支配から自由になる

このお金と罪悪感の関係がよくわかる実験があります。

『お金に縁のある人、ない人の心理法則』で紹介している行動経済学者ウリ・グニージー教授の実験です。その実験とは、託児所で迎えの時間を守らない親が多いので、罰金制度をもうけてみたというものです。罰金制度で、時間を守る親が増えるだろうと考えてのことです。

結果は、逆に時間を守らない親が増えました。

「罰金を払うのだから、遅刻してもいい」と判断する親が多かったのです。お金を払うことで、時間を守らないことへの罪悪感が減ったのですね。この実験を素直に読むと、「お金は道徳心を崩壊させる」とも言えます。お金を払えば何をしてもいい! という気持ちになりうるからです。

同時に、「罪悪感の支配から自由になる」と聞いて、ひびく方もいたでしょう。罪悪感は、自分で自分の幸せをジャマする心の鎖にもなるからです。

赤い鳥居の門と太陽の光に照らされた石のランタンを備えた古い日本の神社の3Dレンダリング
写真=iStock.com/BrilliantEye
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/BrilliantEye

■お賽銭の払いかたで幸福度が変わる

神社でおさいせんを払うときに、ひとつ大事なことがあります。それは「交換条件なく、お金を支払う」ことです。

託児所の実験では、「お金で遅刻の権利を買った」みたいになりました。お金が遅刻との交換条件になって、それで遅刻に対する罪悪感が減ったわけです。そこで、交換条件なく「おさいせん」を払うことで、道徳心の崩壊を招くことなく、不要な罪悪感を減らせます。

神社へのおさいせんは、一般的な寄付とも同じような効果があります。トム・ラス、ジム・ハーター著『幸福の習慣』で紹介しているハーバード大学の研究によると、誰かへのプレゼントを買ったり、慈善事業に寄付したり人は、1日の終わりに幸福度が大きく高まりました。

一方、自分のためにお金を使った人の幸福度は変わりませんでした。おさいせんも寄付も、幸せに生きるちょっとした工夫です。罪悪感が減り、自分を肯定する気持ちが高くなります。不要な罪悪感は、誰かのためにお金を払って、どんどん手放してください。

■神様に交換条件を出すと願いはかなわない

「交換条件なく、お金を支払う」ことについて、さらに解説しましょう。

おさいせんを払って、「この願いをかなえたい!」の心理的な意味合いは、「願うことで、その願いをかなえることへの罪悪感を手放せる」ことです。

たとえば、「月収100万円を稼ぎます」と宣言すれば、月収100万円になることへの罪悪感が減り、達成へのOKを自分に出せます。しかし、「この願いをかなえてくれるなら、おさいせんを払う」という交換条件付きの払い方は、逆に罪悪感を増やします。

「もし月収100万円になるのなら、おさいせん10万円払います! でも、ならなかったら、神さまなんて信用しない!」では、「お払い=お祓い=罪悪感が減る」になっていないこと、むしろ執着心を生んでいること、ご理解いただけるでしょうか。神さまに結果の保証を求めると、執着心が増すだけなのです。

当たり前のことですが、おさいせんを10万円払ったからといって、自動的にそれ以上の大金が手に入るわけはありません。交換条件付きの払い方をして手に入るのは、「大金を手にしていない私」「大金にふさわしくない私」という自己認識だけです。

その願いをかなえてOKだよと、自分で自分に許可を出す。罪悪感を消す。

それが神社参拝の、お払い=お祓いの効果なのです。

クローバーの葉を手に緑します。
写真=iStock.com/4421010037
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/4421010037

■お祓いの効果は「思い込みの効果」とよく似ている

「なんだその程度のこと」って思いますか?

でも、実際「月収100万円になりますように!」とお願いしただけで、月収40万円の契約だったのが、その後の半年に1度の契約更新で、年俸1400万円になった人がいます。それはその人自身が、月収100万円以上を得るのにふさわしい実力をもっていたからですが、同時に、実力があるから得られるとは限りません。

お払い=お祓いの効果は、「思い込みの効果」とよく似ています。臨床心理学者のアリア・クラム博士は、ホテルの部屋を清掃する客室係の女性に対してある実験を行ないました。客室係の業務は運動量が多く、1時間に300キロカロリーを消費します。これは速足のウォーキング1時間に相当する運動量です。

にもかかわらず客室係の女性は「定期的な運動をしていない」「まったく運動をしていない」と思っており、平均的な客室係の血圧や体つきは、1時間に約100キロカロリーしか消費しない、座りっぱなしの人と同じようでした。

そこで、客室係の業務は立派な運動で、多くのカロリーを消費すると伝えると、4週間後、伝えられた人たちは体重と体脂肪が減少し、血圧が下がり、客室係の仕事を以前より好きになっていました。「健康効果のある運動をしている」と思うようになっただけで、変わったのです。

■お金を洗うと金運が上がる、は本当なのか

では思い込みを変えれば何でもありかというと、たとえば「テレビを観るだけでカロリーが消費できる」と思い込んでも、体重は減りません。事実ではないからです。

複数の効果が想定される場合、その人がどう思うかで、どの効果が表れるか決まる。それがクラム博士の説です。

だから、月収100万円の場合も、実際に稼げる力は必要ということですね。その上で、「お金は汚い」「お金を稼いでいる人は、悪いことをしている」といったお金に対する罪悪感でいっぱいの人は、お払い=お祓いで金運がぐっと上がります。

お金への罪悪感を減らすのに、よい方法があります。

それはお金を洗うこと。いわゆる銭洗いです。お金を洗うことで、お金への罪悪感が減り、お金をもつことへの許可を自分に出せるでしょう。お金は汚いと思っていても、きれいな水で洗えば、きれいに思えるってことですね。

お金を洗う神社といえば、神奈川県・足柄下郡箱根町の深沢銭洗弁財天はいかがでしょうか。箱根登山鉄道の塔ノ沢駅・上りホームに隣接しているという、なかなかめずらしい場所にあります。

松井証券の創業者・松井房吉氏が、夢枕に白蛇が現れたことがきっかけで、たびたび宿泊していた塔之沢温泉近くの清らかな水が流れるところに、小さなお社を建ててお祭りしたのが始まりです。

■「洗ったお金」にご利益があるわけではない

「弁天癒水」と記された境内のお水でお金を洗うと、金運向上のご利益があると、商売をされている方々から信仰されています。いきなりお金を洗いに行ってはいけません! まず弁天様にきちんとお祈りしてから、お金を洗います。

青銅の泉龍寺箱根
写真=iStock.com/Jef Wodniack
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Jef Wodniack

ちなみに洗ったお金は、さっさと使う。お財布に大事にしまってお守りにしたくなる気持ちもわかりますが、洗ったお金はすぐに世の中に回した方がいいです。「洗ったお金そのもの」に何かご利益があるわけではありません。

ご利益は、お金への罪悪感が減る・不要な価値観を手放すなどの心理効果です。「お財布の中に大事にしまいこんで……。その罪悪感、いつまで握りしめているの?」とならないよう(笑)、洗ったお金はさっさと手放してしまいましょう。

■お賽銭=願いがかなった感謝の気持ち

神さまにお金を払う「おさいせん」、そもそもの始まりは、その年の最初に収穫した稲穂「初穂」を、神さまへの捧げものとして毎年奉納したことでした。この「初穂」が、のちに金銭に変わりました。

神社では、ご祈祷やお祓いの謝礼としてお渡しするお金の表書きに「御初穂料」と書きます。稲穂の代わりにお金を初穂として奉納するという意味になります。

神さまに捧げる「初穂」の対象は、当初は米など穀物だけでした。のちに、初めて収穫した野菜や魚などさまざまな「初物(ハツモノ)」を神前に供えるようになります。

最初のお給料を神棚にささげる習慣もありますが、これも「初穂」です。このようにさまざまな「ハツモノ」を神さまに捧げる風習がありますが、いったいなぜでしょうか?

それは初穂の中に、豊かさのおまじないが隠されているからです。おさいせんは、漢字で「お賽銭」と書きます。この「賽」は、願いがかなったお礼の意味があります。

神社でお金を払うのは、じつは神さまに願いがかなった感謝の気持ちなのです。

■お賽銭とは「感謝の先取り」である

「順番がおかしい?」と思うでしょうか。

「願いがかなったお礼って、お礼詣りのときだけでは?」と。

八木龍平『成功している人は、どこの神社に行くのか?』(サンマーク出版)
八木龍平『成功している人は、どこの神社に行くのか?』(サンマーク出版)

「賽」=願いがかなったお礼ですが、じつはちょっと先取りしているのです。願いがかなった「結果」に対するお礼ではありません。先に感謝して、望ましい結果の「原因」をつくるおまじないです。

これを「予祝」といいます。予祝とは、あらかじめ祝うこと。「感謝の先取り」です。感謝とは、通常「結果」に対してします。たとえば、チームの勝利という結果に対して、感謝します。しかし、予祝は、先にお祝いする。結果が出る前に感謝してしまうのです。

神さまに感謝の意志を伝えると、起こったことに「OKサイン」を出すことになると、先に述べました。予祝をすると、「これです! この結果を望んでいます! この結果がOKなのです!」と神社インターネットに「前もって」お伝えすることになるわけです。

■「実現させるぞ!」という意欲が自分の器を広げる

先に感謝すると、あなたの器は「望む結果を出せるレベルにまで」拡大しようとします。結果を出すための様々な課題がやってきますが、「ここを目指す!」と意識の方向性が定まり、「実現するぞ!」という意欲も高まるのです。

この「予祝」は、日常のお金の使い方にも通じる話しです。背伸びした私は、理想の私。その理想の私なら、どんなお金の使い方をしますか? 想像して、使ってみましょう。

「予祝」になるお金の使い方は、自分への先行投資です。なりたい自分に近づくために、たとえば収入の1割~2割を自己投資に使ってみる。「こんなことに使ってもいいのかな?」とドキドキするものに使うと、自分の枠を広げることにつながるので、おすすめです。

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八木 龍平(やぎ・りゅうへい)
社会心理学者・神社の案内人
1975年京都市生まれ。NTTコムウェアのシステムエンジニア、富士通研究所シニアリサーチャー、北陸先端科学技術大学院大学・客員准教授、青山学院大学・非常勤講師などを歴任。リュウ博士として執筆のほか、セミナーや神社参拝ツアー等で活躍中。著書に『成功している人は、なぜ神社に行くのか?』(サンマーク出版)などがある。

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(社会心理学者・神社の案内人 八木 龍平)

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