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もはや「ユニクロをダサい」という人は一部マニアだけ…ユニクロが「メルカリ最多ブランド」になったワケ

プレジデントオンライン / 2023年8月8日 17時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/winhorse

海外ファストファッションブランドの日本撤退が相次いでいる。ライターの南充浩さんは「日本はユニクロとジーユーの支持率が圧倒的に高い。価格でも品質でも海外ブランドを突き放しているので、海外ブランドは撤退せざるを得なくなる」という――。

■なぜ海外ファストファッションは日本で長続きしないのか

フォーエバー21やH&Mの上陸により、2000年代後半から「ファストファッションブーム」が起こり、あまたの海外低価格ブランドが日本にやってきました。しかし、現在残っているのはZARA、H&M、GAP、そしてGAPの系列ブランドであるバナナ・リパブリックぐらいです。

残った4ブランドも決して順調ではありません。バナナ・リパブリックは残っているのが不思議なほど。2017年にGAP系列のオールドネイビーが日本から撤退した際、「バナナ・リパブリックも同時に撤退するのではないか」と業界ではささやかれていました。

■ZARAやH&Mも安泰とは言えない

コロナ禍による長期営業停止があったとはいえ、ZARAとH&Mもはピーク時に比べて店舗数を大幅に減らしています。ベルシュカ、ストラディバリウス、モンキなどといった両社の系列ブランドはすべて日本から撤退してしまいました。

GAPは世界的に不振が続き、日本でもついに「旗艦店」が無くなってしまい、中小型店のみとなっています。

フォーエバー21は本国が経営破綻し、今春に日本に再上陸しましたが、これは国内の大手アパレルであるアダストリアがライセンス契約を結び、日本国内用にアダストリアが商品の企画生産を行う形を取っているため、本国の商品とは別物です。

ではなぜ、名だたる海外の低価格ブランドはブームが長続きせずに日本国内から撤退することになったのかというと、国内の低価格ブランドが強すぎたことが理由だと考えられます。

■撤退は「日本が見捨てられた」のではない

もちろん、海外ブランドごとにそれぞれの事情はあります。

フォーエバー21は本国が経営破綻してしまいましたし、トップショップは日本国内での運営会社の不手際がありました。しかし、フォーエバー21は本国が経営破綻する前から日本国内では不良在庫が積み上がっており「セール品2点目無料」という日本企業では考えられないような投げ売りを行っていました。

セール品を2枚買うと1枚はタダで差し上げるという内容ですから、どれほど不良在庫が積み上がっていたのかという状況です。要は「タダでいいから持って帰ってもらいたい」ほどひどい状況だったということです。

衣料品業界には舶来コンプレックスをこじらせたような人が多くいます。海外ブランドが撤退するたびに「日本は見捨てられた」という記事を目にしますが、それは逆で、日本人から見捨てられたから海外ブランドが売れなくなり、その結果撤退するのです。ではなぜ売れなくなるかというと、日本国内の低価格ブランド群が強すぎたためだと見ています。

■ユニクロはいま最もメルカリで取引されているブランド

特にユニクロ、しまむら、ジーユーの強さは他を圧倒しています。以前から業界の内外では「ユニクロはもはや日本の国民服だ」と言われてきましたが、実際に統計データがあったわけでもなく、体感的な言葉に過ぎませんでした。今回、2つのアンケート記事が発表され、改めてユニクロとジーユーの強さが証明されたのでご紹介したいと思います。

まず、2023年にサービス開始からちょうど10年となったフリマアプリ「メルカリ」における取引ブランドについてです。メルカリによると、2022年に最も取引されたブランドはユニクロでした。2位はナイキで、ジーユーが6位にランクインしています。

一方、スタート当初の2013年は1位がシャネルでした。2位アップル、3位ルイ・ヴィトンとなっています。

フリマアプリで服を売る女性
写真=iStock.com/maroke
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/maroke

■多少高くてもメルカリでユニクロを買う

このアンケート結果からはいろいろなことが考えられます。

まず、2013年のスタート当初とそこから10年が経過した現在では利用者人口が爆発的に増えていることからすると、スタート当初は先端層だけが利用し、今は大衆層が利用していると考えられます。そのため、先端層のみが利用していたスタート当初は「要らなくなった高額ブランド品を処分する場」だったのが、大衆に浸透して利用者数が増加したことによって「要らなくなった日常使い品を処分する場」へと変わりました。

大衆層の日常使い品として最も利用されているのがユニクロですから、必然的にユニクロの取引数量も増えることになります。6位のジーユーも同様です。

高校生くらいの子を持つ繊維業界の社長が「子供たちはユニクロやジーユーを買うことに全く抵抗感がない。欲しい商品なら店頭値下げ価格より高い値段であってもメルカリで買うこともある」と言っていたことがあるくらい、大衆層のブランド観の変化が伺えます。

さらにもう一つ別のアンケート結果でもユニクロとジーユーの強さがわかります。

■トップス、ボトムス、アウター、ワンピースの4部門でユニクロが1位

STANDING OVATIONが発表した2023年上半期(1月~6月)の「ミレニアル世代が着用しているファッションブランド」ランキングによると、トップス、ボトムスでは2人に1人が「UNIQLO」を選んだ。調査対象はミレニアル世代に該当する1980年~1995年生まれの女性ユーザー8718人で、ブランド数は4万5496。(「ネットショップ担当者フォーラム」より)

とあります。これは2023年現在で28~43歳のミレニアル世代女性を対象としたアンケート調査の結果になります。着用しているブランドをトップス、ボトムス、アウター、ワンピース、シューズ、バッグの6部門で集計したところ、トップス、ボトムス、アウター、ワンピースの衣料品4部門において1位ユニクロ、2位ジーユーが独占しています。

もちろん、このトップス、ボトムス、アウター、ワンピースという分類はかなり大ざっぱで、ビジネス向けトップスとデイリーカジュアルのTシャツがひとくくりとされている可能性が極めて高いと感じられますし、ボトムスとてスカートもズボンもショートパンツもひとくくりにされている可能性が極めて高いと考えられます。アウターも同様でウールのコートもダウンブルゾンもひとくくりにされていることでしょう。

しかし、それでも衣料品4部門において1位ユニクロ、2位ジーユーという形で独占してしまうというのは、並みの強さではありません。圧倒的な支持率の高さです。

■シューズ部門ではジーユーがスポーツブランドといい勝負

もちろん「着用しているブランド」と「欲しいブランド」「好きなブランド」は異なるだろうという見方はあります。それでもある程度は商品そのものを評価していないと、欲しいブランドの代替品としてわざわざ着用することはありません。着用しているということは、憧れのブランドには及ばないかもしれないが、ある程度はデザインも含めて商品そのものを評価しているということになります。ですから、ユニクロとジーユーは28~43歳女性から圧倒的な支持を受けていると考えた方が適切でしょう。

さらに驚くことに、残りのシューズとバッグの2部門でもユニクロとジーユーは高い支持を得ているのです。

シューズでは1位がナイキですが、2位がジーユーです。そして3位コンバース、4位ニューバランス、5位アディダス、6位オリエンタルトラフィック、7位プーマとなっています。上位7位までのほとんどがスポーツブランドなのでスニーカーが高い支持を得ていると考えられますが、2位のジーユーの強さに驚きです。

ジーユーはユニクロよりも靴の展開が上手にできており、スニーカーからサンダル、パンプス、メンズビジネスシューズまで幅広くラインナップしています。ジーユーはスニーカー、パンプスの両方が女性に着用されていると考えらえます。6位のオリエンタルトラフィックは女性向けのレザーシューズ類を得意としていますので、2位と6位以外は軒並みスポーツブランドで占められていることになります。

そして8位にユニクロがランクインしています。ユニクロはシューズを毎シーズン数型程度しか展開していないにもかかわらず、8位にランクインしているのは驚異です。

■高級志向の落ち着きで低価格のバッグを使う女性が増えている

バッグでは1位がユニクロ、2位がコーチ、3位がロンシャン、4位がジーユーとなっています。ここでもユニクロとジーユーの強さがわかります。ユニクロが1位になっているのは、ラウンドミニショルダー(定価1500円)の大ヒットによるところでしょう。これは欧米のインフルエンサーによってイギリスで大人気となった商品で、日本へ人気が逆輸入され現在国内でも好調に動いている商品です。欧米では現在「ミレニアル・バーキン」と呼ばれるほどのステータス性も獲得しています。

バッグのランキングで興味深いのは、低価格ブランドとラグジュアリーブランドがほぼ交互に上位にランクインしている点です。1位ユニクロ、2位コーチ、3位ロンシャン、4位ジーユー、5位フルラ、6位しまむら、7位無印良品、8位ZARA、9位ルイ・ヴィトン、10位セリーヌとなっています。

一昔前だと、20代後半から40代前半の女性はバッグや時計に関してはラグジュアリーブランド志向がもっと強かったのではないかと思いますが、現在ではその志向は低減していると捉えられます。仕事やカジュアルも含めて普段使いでは低価格ブランドのバッグを使うという女性が増えているのではないでしょうか。

このように見ると、衣料品のみならずシューズ、バッグでも中堅世代の女性にユニクロ、ジーユーは高い使用率を誇っていることがわかります。

■ユニクロの素材品質は低価格帯では群を抜いている

この強さはなんでしょうか。これはもう何度も言われているように「低価格」と「高品質」でしょう。低価格の割に使用素材や縫製仕様の品質が高いことには定評がありますが、最近ではファッションとしてのデザイン性もかなり洗練されてきています。

これは実際にあった話ですが、知り合いの男性がZARAでジーンズを買ったところ、脚の太さが左右で異なっていたそうです。また、私がZARAで買ったシャツは前立てがねじれて縫製されていました。ユニクロやジーユーでも縫製ミスがゼロではありませんが、こういう商品がそのまま店頭に並んでいる比率は極めて低いです。

ユニクロの店内
写真=iStock.com/tang90246
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/tang90246

また使用素材に関しても同様で、近年、原材料費の高騰で特にダウンやウールはかなり高値となっているため、低価格ブランドはウール素材やウール混素材を極力減らす方向にあり、昨年秋冬にはほとんどの低価格ブランドで合繊(アクリル、ポリエステルなど)100%に置き換わっています。

その中で昨年秋冬物までは2990円の低価格でウール100%のプレミアムラムウールセーターを発売し続けたユニクロの素材品質は低価格ブランドの中では群を抜いていると言えます。昔は「ユニクロの服のデザインはダサい」「ユニクロのカラー物は色調がおかしい」と指摘されていましたが、どちらもかなりマシになってきています。

■「嗜好の最大公約数」のデザインを貫いている

上級ファッション愛好家の中にはユニクロ、ジーユーの商品デザインはまだまだダサいと指摘する人もおられますが、世の中はそのようなマニアや最先端層は社会の少数派であり、逆にマニアや最先端層が好むような特殊な尖ったデザインの服を着たいとは思わない人のほうが多数派です。そういう多数派からするとユニクロ、ジーユーの商品程度のデザインの方が使い勝手が良いと感じられます。衣料品の嗜好(しこう)の最大公約数がユニクロ、ジーユーという状況がもう何年間も続いているのが実態だと私は感じます。

冒頭で述べたような海外低価格ブランド群はユニクロ、ジーユーよりもデザイン性に富んでいる場合がありますが、先にも述べたように縫製や素材の品質は足元にも及びません。個人的にはZARAでさえ、縫製仕様と使用素材の品質はユニクロに比べてはるかに劣るように見えます。

例えば、綿花の中でも高品質とされているスーピマコットンを低価格で使用しているのはユニクロだけですし、カシミヤ100%のセーターもユニクロだけです(もっともスーピマコットンTシャツもカシミヤセーターも製造コストを抑えるために生地は薄め)。すでに撤退した各ブランドは上陸当初は好奇心から買う人も多かったのですが、必然的に長続きせず、結局はユニクロ、ジーユーをはじめとする国内低価格ブランド群に競り負けて撤退に追い込まれたと言えます。

■100億円規模のブランドが育ちにくくなった

さらにいえば、国内で中・高価格帯の新規ブランドが大きく育ちにくくなったのはユニクロ、ジーユーの強さが原因の一つだと見ています。私などとは比べ物にならないほどのファッション好きな業界人でも「夏場はユニクロUのエアリズムコットンオーバーサイズTシャツしか着ません」と言う人が何人もいます。またユニクロUのスエット(いわゆるトレーナー)やスエットパーカを「この価格でこの品質・デザインは他のファッションブランドでは実現できない」と言って何枚も買っている業界人も少なくありません。

業界メディアでは毎日、成長株の新規ブランドが紹介されていますが、いずれも売上高は5億~20億円程度で、2000年代半ばまでのように100億円規模に成長するブランドは皆無な状況です。とある中規模アパレル合同展主催者は「昔はブランドを立ち上げたら50億円、100億円くらいに成長させることができたが、今は卸売りブランドだと5億円、10億円に成長させることができればベストという状況です」と語っていました。よほど特徴的なアイテム以外はユニクロ、ジーユーで代替可能という状況が続いていることも大きな要因でしょう。

盛者必衰とは言われますが、最低でもあと5年間くらいはユニクロとジーユーの2強が続くでしょうから、アパレル各社はいかにユニクロ、ジーユーではカバーできないニッチな市場を狙うか、もしくはユニクロ、ジーユーと共存できるような売り方や商品を見つけるか、という姿勢が必要不可欠だといえるでしょう。

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南 充浩(みなみ・みつひろ)
ライター
繊維業界新聞記者として、ジーンズ業界を担当。紡績、産地、アパレルメーカー、小売店と川上から川下までを取材してきた。 同時にレディースアパレル、子供服、生地商も兼務。退職後、量販店アパレル広報、雑誌編集を経験し、雑貨総合展示会の運営に携わる。その後、ファッション専門学校広報を経て独立。 現在、記者・ライターのほか、広報代行業、広報アドバイザーを請け負う。

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(ライター 南 充浩)

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