1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. ライフ総合

「定年後は妻と楽しく過ごそう」と思っていたのに…まさかの「粗大ゴミ扱い」になる夫たちの悲しい共通点

プレジデントオンライン / 2023年8月8日 8時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kemalbas

定年退職を迎えると、夫婦で一緒に過ごす時間が増える。この変化は夫婦にとってプラスになるのか、マイナスになるのか。心理学博士の榎本博明さんは「60代になると妻と夫の愛情度に大きな差ができてしまい、互いに居心地が悪くなるケースが多い。夫婦円満に過ごす秘訣は、共通の趣味とプレゼントだ」という――。

※本稿は、榎本博明『60歳からめきめき元気になる人』(朝日新書)の一部を再編集したものです。

■「退職後は妻と楽しく過ごそう」と思ったのに…

退職したら、会社でなく家が自分の居場所になるし、家で妻と一緒に楽しく過ごそう、これまでは仕事で忙しくて妻と過ごす時間があまりもてなかったけど、これからは一緒に趣味を楽しんだり、旅行したりして、妻との老後を楽しもう。そんなふうにのんきに考えていたのに、いざ退職して家にいるようになると、そのような期待は見事に裏切られるといったケースが少なくないようだ。

妻を外食に誘っても、散歩や買い物に誘っても、「私、いいわ、行くなら一人で行って」と断られる。旅行に行こうと誘っても、同じく断られる。そこで初めて自分が拒否されていることに気づく。

心理学の調査などでは、新婚時には夫の愛情と妻の愛情に差はないのだが、時の経過とともに夫の愛情度はそれほど低下しないのに妻の愛情度は低下し続け、定年退職時には大きな差がついているというデータが示されている。

■まさかの「粗大ゴミ」「産業廃棄物」扱い

配偶者が生きがいの対象だとする高齢者の比率は、妻は夫の半分以下だというデータもある。妻は夫よりも家族以外の友人との交流を楽しむ傾向が強いようである。

それには、夫の場合、仕事に追われ職場の人間関係中心に生きてきたため、プライベートな友人関係が妻よりも薄いということが関係しているのだろう。実際、「女子旅」などといって年輩の女性同士が旅行する姿はよく見るが、「男子旅」はあまり見かけない。

仕事が生きがいだった夫の場合は、たとえ「亭主元気で留守がいい」などといった扱いを受けていても、仕事に没頭しているときは、自分がそうした扱いを受けていることに気づかないことが多い。

ところが、定年退職して、昼間も家にいるようになり、ようやく自分が疎外された存在であることに気づいて愕然とするのである。しかも、一生懸命に働いて家族を養ってきたつもりなのに、粗大ゴミとか産業廃棄物とか濡れ落ち葉などと言われる立場に自分が置かれているわけである。やるせない気持ちになるのも当然だろう。

■帰宅しても居場所がなく、ひたすら働く

定年よりも前に、そうした兆候に気づく人もいる。それは、早めに覚悟を決めて対処することができるチャンスでもあるのだが、嫌な現実を直視できずに逃避してしまう人も少なくないようだ。

たとえば、働き盛りの時期を過ぎ、残業やつきあいも少なくなり、早く家に帰るようになったときに、そうした兆候に気づく。帰宅してもよそよそしい空気があり、妻からも、まだ同居している子どもたちからも、歓迎されていないのを感じる。何だか邪魔者扱いされているように感じたり、一緒に食事しても会話が途切れがちで気まずい感じになる。

家に帰ってからの息苦しさ、居場所のない淋しさ、妻や子どもたちと顔を合わせたときの気まずさ、無視される腹立たしさ。そんなことを思い出すと、とても帰る気がしない。

それで、とくに急を要する仕事がなくても会社に残ることになる。自発的残業をしたり、自ら望んで休日出勤をしたりして、家庭にいるときに襲われる疎外感を紛らすためにひたすら仕事に向かう。だが、そのように職場を居場所にしている限り、家庭に居場所をつくることはできない。

玄関に置かれた黒い靴
写真=iStock.com/Toru Kimura
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Toru Kimura

■帰宅恐怖症候群を患うのは夫だけではない

仕事帰りに道草的な寄り道をする人もいる。帰宅した後の家での居場所のなさを考えると、家に帰る勇気が挫け、行きつけの店で一杯やって時間を潰してから帰る。これは職場や家庭以外の第3の空間を居場所にしようとの試みと言える。

このような事例が多いことから、夫の帰宅恐怖症候群などと言われたことがあったが、未だにそうした疎外状況が改善されているとも思えない。家庭に自分の居場所がないと感じる場合は、しっかりと現実を見つめ、何とか対処法を考える必要がある。その際に、踏まえておきたいのが、配偶者の心理状況である。

配偶者といるときの居心地の悪さに苦しんでいるのは、じつは夫だけではないのだ。原因不明のめまいや胃痛、手足のしびれ、動悸(どうき)、不眠、耳鳴り。病院でいくら検査をしても異常はみつからない。問診をしていくと、そうした症状の原因が夫にあることがわかってくる。そんなケースが増えているという。

■「主人在宅ストレス症候群」が増えている

思い当たる原因を振り返ってもらうと、「そういえば、主人が定年退職して家にいるようになってから眠れなくなりました」「主人が何か言うたびに心臓がキュッと痛みます」などといった話が出てくる。そのため、夫が家に居続けることによるストレスで妻が病気になるのかもしれないと思い至った医学博士黒川順夫は、この病気を「主人在宅ストレス症候群」と名づけた。

最近では、早期退職や失業などで40代から50代でも家にいる男性が増えたため、夫の定年退職後に限らず、このような症状に苦しむ妻が増えているという。

夫の帰宅恐怖症候群といい、妻の主人在宅ストレス症候群といい、中高年の夫婦は深刻なコミュニケーションの問題を抱えていることが少なくない。目の前のやらないといけないことに追われているうちに、深刻なコミュニケーション・ギャップが生じ、お互いに相手の気持ちがわからなくなっている。話すたびにすれ違いを感じ、話すのが面倒になってしまう。

これでは家庭が心地よい居場所になるわけがない。

■「夫婦円満」の秘訣は共通の趣味とプレゼント

明治安田生命が2021年に実施した「いい夫婦の日」に関するアンケート調査によれば、夫婦円満な人では61.7%が夫婦共通の趣味があると答えているが、夫婦円満でない人では13.0%しか夫婦共通の趣味をもっていない。ここから夫婦で共通の趣味をもつようにすることが、家庭を心地よい居場所にする秘訣(ひけつ)と言えそうである。

だが、定年後に行動を共にしようとすると妻に拒否される夫が多いという実態があるわけで、定年前からの関係性のケアが大切と言える。

榎本博明『60歳からめきめき元気になる人』(朝日新書)
榎本博明『60歳からめきめき元気になる人』(朝日新書)

ちなみに、同調査によれば、夫婦間の年間のプレゼント予算はこうなっている。

夫婦円満な人は3万9568円、夫婦円満でない人は1万8533円であり、2倍以上の開きがみられる。

配偶者の誕生日にプレゼントをするのは、夫婦円満な人では60.9%なのに対して、夫婦円満でない人では26.5%と、これまた2倍以上の開きがみられる。

結婚記念日に配偶者にプレゼントをするのは、夫婦円満な人では29.5%であるのに対して、夫婦円満でない人では4.9%と、6倍もの開きがみられる。こうしてみると日頃の気持ちの交換の蓄積も大きいと言えそうである。

----------

榎本 博明(えのもと・ ひろあき)
心理学博士
1955年東京生まれ。東京大学教育学部教育心理学科卒業。東芝市場調査課勤務の後、東京都立大学大学院心理学専攻博士課程中退。カリフォルニア大学客員研究員、大阪大学大学院助教授などを経て、現在、MP人間科学研究所代表、産業能率大学兼任講師。おもな著書に『〈ほんとうの自分〉のつくり方』(講談社現代新書)、『「やりたい仕事」病』(日経プレミアシリーズ)、『「おもてなし」という残酷社会』『自己実現という罠』『教育現場は困ってる』『思考停止という病理』(以上、平凡社新書)など著書多数。

----------

(心理学博士 榎本 博明)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください