血糖値を下げ、老化を防ぎ、免疫力を高める…最強の健康食品「ヨーグルト」で唯一注意するべきこと【2023上半期BEST5】
プレジデントオンライン / 2023年8月7日 18時15分
■悪玉物質「AGE」の発生を抑える効果がある
第1回の魚、第2回の野菜ジュースで老化を促進する悪玉物質「AGE」が発生する危険性を指摘した。体内にAGEが蓄積されると老化が進み、病を発症しやすくなる。ヨーグルトにはそれを食い止める効果がある。今回は、その効果を高める食べ方と注意点を紹介する。
前回のおさらいになるが、AGEは「タンパク質と糖」が結びつき、劣化(糖化)する現象で発生する。食品では“きつね色”が糖化の証し。カステラやプリンなどの茶色の部分、格子状のワッフルの焼き目、どら焼きや今川焼きの皮など、おいしいところにはAGEが多く含まれている。そういったAGEを含んだ食品を多量に摂取することでも体に悪影響をおよぼすが、食品だけでなく体内でも血糖値が急上昇すれば糖化が進み、AGEが発生する。
昭和大学医学部の山岸昌一教授がこう説明する。
「私たちの体内でも同じように高血糖によってコラーゲン(タンパク質)がAGE化すると老化が進むということです。体中のコラーゲンがAGE化するとシミやシワなどの老け顔になったり、動脈硬化が起きたり、骨がもろくなる、変形性関節症の発症などさまざまな機能障害が起きてしまいます」
■血糖値の上昇を抑え、抗糖化作用をもつ
そこでAGEを発生させないためには、こんがり色の食品を避ける、血糖値が急上昇しないような食べ方をするなどが効果的だ。第2回で紹介したように液体の糖類摂取をやめたり、あるいは野菜から食べるなど、要は「糖質がすぐさま腸に吸収されること」を防げばいい。
ここで活躍するのがヨーグルトだ。
同志社大学生命医科学部糖化ストレス研究センター客員教授の八木雅之氏は長年の研究により、ヨーグルトが血糖値の上昇を抑え、抗糖化作用をもつことを突き止めた。
![同志社大学生命医科学部糖化ストレス研究センター客員教授の八木雅之氏](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/6/9/1200wm/img_69780bfa4586d7d2be2cbb416076963e258893.jpg)
「野菜類や果物に含まれるフラボノイドというポリフェノールの一種に強力な抗炎症作用があり、糖化を抑える働きがあります。それはもともとよく知られていたことでもありますが、私たちも改めて確かめました。続いて我々の研究では、ポリフェノールがあるはずのないヨーグルトにも糖化を抑える反応があるということがわかりました。ヨーグルトを食事に取り入れることで血糖値が上がりにくくなるのです。この作用は牛乳にはありません」
八木氏らが▽米飯のみ▽野菜サラダと米▽ヨーグルトと米という3パターンで食後血糖値を比較したところ、「ヨーグルトと米」の組み合わせは「野菜サラダから先に食べる」食事法と同等以上に、食後の血糖値を下げることがわかった(A図)。食前摂取でも食後でもその結果は変わらない。食事は、「野菜から」だけではなく「ヨーグルトファースト」でもいいということだ。
![【図A】プレーンヨーグルトまたは野菜サラダを米飯よりも先に摂取した後の食後血糖値変化](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/2/9/1200wm/img_292e7f558847ef4b8a5d089adf10480c350266.jpg)
■「上ずみ液」は捨てずに食べたほうがいい
なぜヨーグルトに血糖値を下げる作用があるのか。
「ヨーグルトは、牛乳などのミルクに乳酸菌や酵母などを添加して発酵させた食品です。乳酸菌は乳糖を分解させて“乳酸”という物質を作りますが、これに胃の消化分泌ホルモン(ガストリン)を抑える作用があります。すると胃から送り出すスピードが落ちる、結果的にゆっくりと小腸に移動するので糖の吸収がゆるやかになり、血糖値の急上昇を防ぐのです」(八木氏)
「また、もう一つ理由が考えられ、ヨーグルトの上ずみ液(ホエイ)中に含まれる成分に、消化管ホルモンのインクレチンに働きかける作用があります。インクレチンはインスリンの分泌を促進するので、血糖値が下がるのです」(八木氏)
ホエイには、糖化を抑制する作用があることもわかった(B図)。固まっている部分(カード)と同じくらいの栄養素もあるため、上ずみ液は捨てずに混ぜてから食べよう。
![【図B】市販のプレーンヨーグルト製品に含まれるホエイのAGEs生成抑制作用](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/6/4/1200wm/img_6449e3afcb8387d6a95ea783e9f90214253062.jpg)
■「乳酸菌を取り入れる」こともできる
さてヨーグルトを食べることは血糖値を下げ、糖化現象を抑えて老化を防ぐほかに、近年ブームになっている「乳酸菌を取り入れる」ことにもなる。体に有用な腸内細菌(有用菌)は年とともに減ってくるので、ヨーグルトやチーズなど乳製品、味噌や醤油、ぬか漬けなどの発酵食品に豊富に含まれる乳酸菌を取るといいのだ。腸を良い状態に整えれば、感染症の予防、肥満防止や血管年齢の若返り、肌の状態が良くなるなどメリットが多くある。
![ヨーグルト](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/8/c/1200wm/img_8ca476877efd0b889f6d418c2d216533361692.jpg)
発酵食品を食べると、発酵食品中に存在する乳酸菌、その菌によって作られた代謝物質、もともとの栄養成分と、3つの良いものを摂取できる。中でもヨーグルトは機能別に選べることがメリット。「血糖値上昇抑制」や「内臓脂肪を減らす」「免疫力強化」などの機能がパッケージに表示されているので、それをもとに商品を選ぼう。
![第一会最高顧問の後藤利夫医師](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/3/7/1200wm/img_372e8cded2c4ad7d3e1317bb2b3c0e39300037.jpg)
乳酸菌に詳しい第一会最高顧問の後藤利夫医師は「乳酸菌を摂取する場合、作用は大きく2つに分かれる」と話す。
「ひとつは胃や小腸で働くことで免疫力などを高めるタイプ、もう一方は大腸で働き腸内環境を整えるタイプです。整腸作用や美肌効果を得たいなら大腸に棲み着いているビフィズス菌の摂取を。便秘などによって腸内環境が悪化すると、腸内では腐敗物や有毒ガスが発生します。これらが腸の粘膜の毛細血管を通して全身にまわってしまうのです。ビフィズス菌を含むヨーグルトを食べて有用菌を腸内で増やせば、便秘が解消し、肌トラブルなども改善しやすくなるでしょう」
ただし、機能性をうたう大半のヨーグルトは2週間程度食した試験に基づいて商品化しているので、最低でも2週間は摂取しないとその効果は判定できない。
■固形から液体にすると血糖値上昇を招きやすい
また、重要な注意点がある。ヨーグルトが美容健康に良いのはわかっていても、毎日食するのは大変だからと「飲むタイプのヨーグルト」を選んではいないだろうか。第2回で紹介した野菜ジュース・果物ジュースのように、ヨーグルトもまた固形から液体にすることで糖質の吸収効率が高まり、血糖値上昇を招きやすい。
「固形」と「ドリンクタイプ」の栄養成分を比較する(表参照)。
![【図表】ヨーグルトの栄養成分の違い](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/6/2/1200wm/img_62ae163353cc4eddc666b182af5a7bdb273219.jpg)
炭水化物は主に「糖質と食物繊維」から構成されるため、ここでは炭水化物の量をチェックすると、固形ヨーグルトと比べてドリンクタイプは約3倍近くの量である。特にドリンクタイプのヨーグルトには「ぶどう糖果糖液糖」など液体の糖類も添加されている可能性が高いので、パッケージに記される「原材料名」で確認を。それならプレーン、つまり無糖ヨーグルトのドリンクタイプであればいいかというと、それは違う。どんなヨーグルトにも糖質は含まれ、それを液状で取ることに問題があるのだ。
![飲むヨーグルト](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/c/0/1200wm/img_c00c37dcae0d34ef82e760cfb4faae29270174.jpg)
健康検定協会理事長で管理栄養士の望月理恵子氏が補足する。
「糖質量は砂糖由来だけではなく、プレーン(無糖)でも糖質はあり、血糖値は上がります。原料の牛乳にも100gあたり4.8gの糖質が入っているのです。また、下表では100gあたりの糖質量の比較ですが、ヨーグルトは1回に食べる量が50gくらいですので上記の半分の糖質量で済み、飲むヨーグルトの場合、コップ1杯(200g)程度ですので倍の24gの糖質量を一気に取ることになってしまいます。ですから固形ヨーグルトを食べるのが最も健康に良いでしょう」
![【図表】100g当たりの糖質量の比較](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/1/d/1200wm/img_1d94de70172c33319452fc08569f8aa0223296.jpg)
■健康維持のために飲むのも避けたほうがいい
ドリンクタイプは手軽さ、飲みやすさがメリットだが、野菜果物ジュースと同様に「消化」が必要ないため、胃を通りこして瞬時に腸に入って血糖値を急上昇させる。現在、糖尿病などの生活習慣病を患う人はもちろん、健康維持のために飲むのも避けたほうがいい。八木氏らによる「ヨーグルト摂取が食後血糖値を下げる」研究でも、プレーンタイプの固形ヨーグルトを使用している。
![健康検定協会理事長で管理栄養士の望月理恵子氏](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/7/e/1200wm/img_7e3c2d22ea22741301cd2d1c9b8db523493223.jpg)
栄養学的にもプレーンの固形ヨーグルトにフルーツを補う食べ方が最強だ。
「ヨーグルトはタンパク質、ビタミンA、B、D、カルシウムなどさまざまな栄養素が含まれていて“完全食”に近いです。足りないのは食物繊維とビタミンCぐらいですが、これもキウイやバナナなどの果物を加えることで補えます。良い働きをする菌を増殖し、元気にさせる成分をプレバイオティクスといい、その代表がオリゴ糖と食物繊維。キウイもバナナもオリゴ糖と食物繊維を共に含むので、プレーンヨーグルトにどちらかをプラスすればパーフェクトな一品になります」(望月氏)
ヨーグルトは朝食後に取ると腸の刺激となって、その後に腸が活発に働けることがわかっている。体温を上げるサポートにもなるという。一方で皮膚の生成を促す美容のためなら、夕食後に。夜に分泌される成長ホルモンの材料となるからだ。自分が求める機能をもつヨーグルトを、タイミングを意識して摂取してほしい。
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ジャーナリスト
1978年生まれ。「サンデー毎日」記者を経て、2018年よりフリーランスに。著書に『週刊文春 老けない最強食』(文藝春秋)、『救急車が来なくなる日 医療崩壊と再生への道』(NHK出版新書)、『室温を2度上げると健康寿命は4歳のびる』(光文社新書)、プレジデントオンラインでの人気連載「こんな家に住んでいると人は死にます」に加筆した『潜入・ゴミ屋敷 孤立社会が生む新しい病』(中公新書ラクレ)など。新著に、『実録・家で死ぬ 在宅医療の理想と現実』(中公新書ラクレ)がある。ニッポン放送「ドクターズボイス 根拠ある健康医療情報に迫る」でパーソナリティを務める。 過去放送分は、番組HPより聴取可能。
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(ジャーナリスト 笹井 恵里子)
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