ビジネスパーソンは2タイプに分けられる…「儲かるビジネス」を作るためにコンサル企業が社員に教えること
プレジデントオンライン / 2023年8月8日 15時15分
※本稿は、三宅孝之『「共感」×「深掘り」が最強のビジネススキルである』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。
■得意を伸ばすべきか? 苦手を克服すべきか?
「得意な能力をさらに伸ばすほうがいいのか。苦手な能力を克服するほうがいいのか」
これは、ビジネスパーソンの成長を考えるときによく議論になるテーマです。
私は、この議論のポイントは時間軸だと考えています。
得意な能力を伸ばすと早期に成長できます。しかし、得意な能力を伸ばすだけでは、成長の度合いが段々と低下していきます。得意な能力だけでできる仕事には限界があるからです。
一方、苦手な能力を克服しようとすると、はじめはなかなか成長を感じられません。3~5年ほど苦しむかもしれません。しかし、その後、一気にレベルアップします。苦手を克服したうえで、もともと得意だった能力を発揮すれば、さらに成長が加速します。
ですから、それほど大きなものでなくていいので、急いで成果をあげる必要があるのなら、得意を伸ばせばいいのかもしれません。
しかし、大きな仕事ができる人材に成長するためには、なかなか成長を感じられなくても、まずは苦手な能力を鍛えることが重要なのです。
■3000億円の新規事業を生み出すビジネスプロデューサー
私が社長を務めているドリームインキュベータ(DI)では、2008年頃から「ビジネスプロデュース」を行なっています。
ビジネスプロデュースとは、簡単に言うと、大企業の次の柱となり得るような数百億、数千億円規模の新規事業を創造することです。目安として3000億円という数字を掲げています。島崎崇(現・DI統括執行役員)との共著で『3000億円の事業を生み出す「ビジネスプロデュース」戦略』『3000億円の事業を生み出す「ビジネスプロデュース」成功への道』(ともにPHP研究所)という本も出しました。
ビジネスプロデューサーという言葉は、近年、よく目にするようになりました。営業職のことをビジネスプロデューサーと呼ぶ大手広告代理店や大手電機メーカーもあります。しかし、ここで言うビジネスプロデューサーは、それらとは違います。
ここで言うビジネスプロデューサーは、大きな事業を生み出す人材と定義しています。そして、ビジネスプロデューサーを育成するために重要なのが、苦手な能力を鍛えることです。DIでは、そのようにしてビジネスプロデューサーを育成しています。
■ビジネスパーソンの能力は2タイプ
具体的には、「深掘り力」と「共感力」のうち、苦手なほうを鍛えることで、ビジネスパーソンとして大きく成長します。
簡単に言うと、大量の情報を分析し、数値化・定量化し、思考を深める能力が深掘り力です。一方、人の気持ちを理解し、多くの人たちに会いに行って人脈を形成し、要領よく大事なポイントを把握する能力が共感力です。
そして、深掘り力に長けている人を「深掘りタイプ」、共感力に長けている人を「共感タイプ」と呼んでいます。
大きく言うと、ビジネスパーソンは深掘りタイプと共感タイプのいずれかに分けられます。
理想は、深掘り力と共感力の両方を高次元で併せ持っていることですが、大抵の人はどちらかが得意で、もう一方を苦手としています。
そのため、深掘りタイプは共感力を、共感タイプは深掘り力を意識的に鍛えていくことで(実際には「自分の中に眠っている能力を呼び起こす」と言うほうが正しいですが)、高いパフォーマンスを発揮できるようになります。
■深掘り力×共感力のハーモニーが必要
ところで、得意な力だけでビジネスプロデューサーになれないのはなぜでしょうか。
ビジネスプロデュースは、次の5つのステップに分けられます。
ステップ2:戦略を立てる
ステップ3:連携する
ステップ4:ルールを作る
ステップ5:実行する
5つのステップのうち、ステップ1「構想する」とステップ2「戦略を立てる」については、特に深掘り力が求められます。そして、ステップ3「連携する」以降では、特に共感力が求められます。しかも、これはどちらに重点を置くかという問題で、すべてのステップにおいて両方の能力が必要な場面が出てきます。
ビジネスプロデューサーになるためには、両方の能力を兼ね備えなければなりません。深掘り力と共感力の高次元でのハーモニーが、ビジネスプロデュースを成功に導く一番重要なファクターだと言っても過言ではないのです。
■発揮される能力は苦手分野に制約される
逆にいうと、ビジネスプロデュースの場合、発揮される能力は深掘り力と共感力の低いほうに制約されます。
![【図表1】2つの力とパフォーマンスの関係](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/1/7/1200wm/img_178280ef3921ae2a4366b759e37c819e405888.jpg)
深掘り力が100だとしても、共感力が0であれば、ビジネスプロデュース力は0です。深掘りタイプが、「共感力は苦手だから」と、得意な深掘り力ばかりを伸ばしていても、ビジネスプロデュース力は上がっていきません。
苦手な能力を克服しようとすると、つらいこともあるでしょう、なにしろ、あえて苦手なことをするのですから。最初の5年間くらいは苦労の連続です。
けれども、その努力が報われるときが必ずきます。
深掘り力や共感力を鍛えることは、ビジネスプロデューサーに限らず、これからの日本で活躍するすべてのビジネスパーソンにとって重要です。市場が成熟した日本において成果をあげていくためには、深掘り力と共感力の両方を高次元で併せ持つことが必要だからです。
■ビジネスプロデューサーになれたら無敵
私は、経済産業省、戦略コンサルティング会社のA.T.カーニーを経て、2004年にDIに入社しました。
私が入社したときのDIは、ベンチャー企業に投資をしてIPO(上場)を目指す「インキュベーション事業」を柱にしていました。しかし、2006年のライブドア・ショックを受け、IPOをするベンチャー企業が激減し、インキュベーション事業が成り立たなくなってしまいました。そこで新たに始めたのが、ビジネスプロデュースでした。
私がいまだにDIを辞めないでいるのは、「ビジネスプロデュースのような面白い仕事をやれる会社は他にない」と心の底から思っているからです。ビジネスプロデュースという仕事は、それだけ面白く、やりがいがある、魅力的な仕事です。またDI自身も、社会課題の解決を目指しつつ、上場企業としての成長を追い求め続けています。
![三宅孝之『「共感」×「深掘り」が最強のビジネススキルである』(PHP研究所)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/e/6/1200wm/img_e6b90783716311ff57d136e9762d0861177185.jpg)
ビジネスプロデューサーとして活躍したのち、DIを辞めていった人もいます。私たちはこうした「アルムナイ(卒業生)」との交流にも力を入れています。DIを辞めても、「世の中をもっとよくしたい」「社会課題を解決したい」という同じ志を持って挑戦し続けている人たちだからです。
彼らの活躍の場は様々です。起業した人もいれば、大企業やベンチャー企業のマネジメント職に転じた人、ベンチャーキャピタルやプライベートエクイティファンドなどで活躍している人もいます。
彼らが口をそろえて言うのは、「ビジネスプロデューサーとしての経験や知見、多種多様なノウハウが、次のビジネスでも十二分に活きた」ということです。
私は、ビジネスプロデューサーのスキルとマインドを身につければ、ビジネス界で無敵になれると思っています。
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ドリームインキュベータ社長
京都大学工学部卒業、京都大学大学院工学研究科応用システム科学専攻修了(工学修士)。経済産業省、A.T.カーニーを経てドリームインキュベータ(DI)に参加。経産省では、ベンチャービジネスの制度設計、国際エネルギー政策立案に深く関わった他、情報通信、貿易、環境リサイクル、エネルギー、消費者取引、技術政策など幅広い政策立案の省内統括、法令策定に従事。DIでは、環境エネルギー、まちづくり、ライフサイエンスなどをはじめとする様々な新しいフィールドの戦略策定及びビジネスプロデュースを実施。また、個別プロジェクトにおいても、メーカー、医療、IT、金融、エンターテインメント、流通小売など幅広いクライアントに対して、新規事業立案・実行支援、マーケティング戦略、マネジメント体制構築など成長を主とするテーマに関わっている。共著に『3000億円の事業を生み出す「ビジネスプロデュース」戦略』『3000億円の事業を生み出す「ビジネスプロデュース」成功への道』(ともにPHP研究所)、『産業プロデュースで未来を創る』(日経BP社)がある。
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(ドリームインキュベータ社長 三宅 孝之)
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