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「ホメすぎるとホメ効果がなくなる」は大間違い…科学的に証明されている「人は繰り返しホメられると伸びる」

プレジデントオンライン / 2023年8月7日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/miya227

自己肯定感を高めるためには適切にホメることが重要だと言われるが、どのようにホメればいいのか。スピーチ&コミュニケーション戦略研究家の岡本純子さんは「『ほめすぎると(相手が)慣れて、効果がなくなるのではないか』という心配には根拠がない。『1週間にわたって1日1回ほめられた人は、日を追うにつれてその効果が下がるかと予想されたが、毎日同じように効果があった』と報告されている」という――。

※本稿は、岡本純子『世界最高の伝え方』(東洋経済新報社)の一部を再編集したものです。

■「ピグマリオン効果」ほめ言葉が脳を活性化する

他者から期待を受けることで、成績や仕事での成果が上がったりする心理効果を「ピグマリオン効果」と言います。

キプロスの王ピグマリオンが自分で彫った乙女の像を愛しつづけた結果、乙女像が本物の人間になったというギリシャ神話に由来しており、この効果は、数多くの科学的研究によっても実証されています。

有名なのが、アメリカの教育心理学者ロバート・ローゼンタールが行った実験です。無作為に選んだ児童の名簿を教師に見せ、「この名簿の児童が、成績が伸びる子どもたちだ」と伝えたところ、その子たちの成績が向上するという結果が出ました。

教師が自然とそうした子どもたちに目をかけることで、「子どもたちが期待に応えようとして、パフォーマンスが向上する」ことが確認されたのです。この実験は再現性がないと批判されましたが、言葉による肯定は、お金をもらったのと同じように脳を活性化することも、脳科学者の研究などによって明らかになっています。

■なぜ、「ほめる」はやる気を刺激するのか

なぜ、「ほめる」はやる気を刺激するのでしょうか。

それは、ほめられると、脳内に快感や多幸感の素となるドーパミンが放出され、誇りと喜びの感情が生まれるからです。

「その行動をもっとすれば、もっとほめられる」と理解し、繰り返すようになります。これは、「好ましい行動をほめ、同じ行動を繰り返させる」という意味の「正の強化」(positive reinforcement)という教育訓練法で、犬やイルカの訓練にも使われています。

犬のトレーニング同様に、いい行動をしたときは、「そう、それ!」「それがいいの」と刷り込み、行動を変えていくのです。弱みよりも強みにフォーカスするほうが、はるかに人は成長していくのです。

■人はほめ言葉通りになりやすい

「ほめること」の効果としては、ほめられる人の、

・やる気を刺激する
・絆を強める
・生産性が上がる
・信頼感が増す
・気分がよくなる
・幸福感が増す
・健康を促進する
・お金をもらったときと同じ効果をもたらす

だけではなく、ほめる人の気分も上げる、といった効果も確認されています。根拠がなくても、思い込みを持つと無意識にその方向に向けた行動をとることで、予言が現実のものとなる現象を「自己充足的予言」と呼びます。

×
あなたはできないわ
あなたはムリ

と言われつづけた子どもと、


あなたならできる
才能があるわ

と言われつづけた子ども。

どちらの自己肯定感が高く、自信を持ちやすくなるか。簡単にわかりますよね。まさに、言葉が人をつくるのです。

真っ青な空に向かってサムズアップ
写真=iStock.com/show999
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/show999

■ほめるのは、なぜこんなにも難しいのか

しかし、「ほめる」のは、なかなかに難しいものです。

まず、そもそも、ほめられることが、こんなにも人を喜ばせ、モチベーションを上げる効果がある、ということがあまり理解されていません。「ほめる」ことの価値を過小評価しているのです。

「自分はほめるのがうまくない」
「わざとらしいのではないか」

と、ほめ方に自信が持てない、という人も少なくないでしょう。

そもそも、人には「ネガティビティバイアス」という脳のクセがあります。ネガティブなもの、よくない点、問題に最初に目が行きがち。それは人の生存本能ゆえで、かわいい花より、自分の命を狙う動物など「脅威」に最初に気づくようにできているのです。

だから、

この子は、本当にだらしない
この人は、やる気がない

など、子どもや部下の悪いところばかりが気になってしまうものなのです。

■誰もが「自分の価値を認められたい」

人はどうしても、そうしたバイアスにとらわれがちであることを理解して、ポジティブな面に目を向けるように意識していきましょう。

・たまに遅刻するけれど、元気に学校に行っている
・ちょっとミスはするけれど、いつも明るくチームを盛り上げてくれる

遅刻やミスにフォーカスするより、まずは元気で明るくいることをほめてあげることが先決。人はどんな人でも「自分の価値を認められたい」と思っています。人のやる気を爆上げする上手なほめ方を学び、あなた自身も、そして、そのまわりにいる人も幸せにしていきませんか。

■「ほめる=甘やかす」は本当か

「ほめること」のメリットはある程度理解しながらも、ついつい頭に浮かぶのが、

「ほめることは甘やかすことでは?」
「ほめると、それがクセになり、ほめられないと何もやらなくなるのでは?」

という意識です。

残念ながら、ほめられることで得られるドーパミンはそれほど長くは続かず、「ほめられる ➡ 働く ➡ ほめられる ➡ 働く」というループを構築するためには、繰り返し、ほめていく必要があります。一年に一度、数カ月に一度というペースでは、効果が発揮しにくいのです。

ゲームなどをするときに分泌されるドーパミンには依存性があり、効果は長続きしません。ほめ言葉も同様に、言い方によっては、効果は短期的で、相手を「ほめ依存」にさせてしまう可能性があります。

ですから、「うわべだけ、口先だけのほめ方」から「もっと持続的で、確かな効果を持つほめ方」にアップデートする必要があります。

■好みの「ほめられ方」はさまざま

誰にでも効く「ほめ方」というのは、じつはありません。人によって、好みの「ほめられ方」は異なるからです。表立ってほめられ、みんなに認められたい人もいれば、自分だけにそっと伝えられたい人もいます。

初級者・若手が、ほめられるのを好む一方、上級者・エキスパートになると、より成長につながる、多少厳しめのフィードバックを好む、という研究結果もあります。

どのような形にせよ、ほめさえすればいいというのも間違いです。きちんとしたほめられる理由があるときだけに、与えられるべきものであり、「ほめ」の乱用はその価値を失わせてしまいます。

■「ほめすぎ」はない

岡本純子『世界最高の伝え方』(東洋経済新報社)
岡本純子『世界最高の伝え方』(東洋経済新報社)

ただ、「ほめる頻度が高すぎると、ほめ言葉の価値が下がって、誠意が感じられないのではないか」、つまり、「ほめすぎると(相手が)慣れて、効果がなくなるのではないか」という心配には根拠がないことがわかっています。

シカゴ大学の教授らの研究では、「1週間にわたって1日1回ほめられた人は、日を追うにつれてその効果が下がるかと予想されたが、毎日同じように効果があった」と報告されています。

ほめ言葉は食事と同じ。何でもいいわけではありません。上質なほめ言葉を定期的に与えることで、グングンと人は成長をしていくということなのです。

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岡本 純子(おかもと・じゅんこ)
コミュニケーション戦略研究家・コミュ力伝道師
「伝説の家庭教師」と呼ばれるエグゼクティブ・スピーチコーチ&コミュニケーション・ストラテジスト。株式会社グローコム代表取締役社長。早稲田大学政経学部卒業。英ケンブリッジ大学国際関係学修士。米MIT比較メディア学元客員研究員。日本を代表する大企業や外資系のリーダー、官僚・政治家など、「トップエリートを対象としたプレゼン・スピーチ等のプライベートコーチング」に携わる。その「劇的な話し方の改善ぶり」と実績から「伝説の家庭教師」と呼ばれる。2022年、次世代リーダーのコミュ力養成を目的とした「世界最高の話し方の学校」を開校。その飛躍的な効果が話題を呼び、早くも「行列のできる学校」となっている。

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(コミュニケーション戦略研究家・コミュ力伝道師 岡本 純子)

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