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「怪物・大谷翔平」の起源はここにある…目標までの過程を丸裸にする「マンダラチャート」の活用法

プレジデントオンライン / 2023年8月22日 11時15分

出典=『話し方すべて』

仕事の抜け漏れを防ぐにはどうすればいいのか。話し方講師で心理カウンセラーの桐生稔さんは「大谷翔平選手が高校時代に活用していた『マンダラチャート』を使うといい。目標達成までに必要なことを全て可視化することで、ミスをなくすことができる」という――。

※本稿は、桐生稔『話し方すべて』(かんき出版)の一部を再編集したものです。

■1回の質問で相手のニーズを全て把握するには

上司やお客様からの依頼に対し、「指示通りにやったのに、不満そうな顔をされた……」「一生懸命対応したのに、やり直しを依頼された……」という経験はありませんか?

なぜ、こういったことが起こるのか?

それは、相手が依頼をするときに、ニーズを全部話してくれるとは限らないからです。

例えば、上司から「山田商事様の接待は、コース料理でよろしく」と言われたとします。「新宿の○○という店で、○○コースを、○○時~○○時まで予約して、値段はいくらで……」なんていちいち言いません。察してくれると思うからです。

でも、本来は聞かないとわからないことだらけです。だから、依頼を受けるときは質問力が試されるのです。

あらかじめ、的確に質問ができれば、1回で相手のニーズが把握できます。そうすれば、やり直しも激減します。また、依頼に対してクオリティが高いアウトプットができるため、相手の満足度も上がります。

今回は1回で100%相手のニーズを把握する「マンダラ質問」を紹介します。

大谷翔平選手を怪物にしたと言われる目標設定シートが「マンダラチャート」です。マンダラチャートとは、曼荼羅(まんだら)模様のようなマス目にアイデアを記入していくことで、必要な項目の整理をしながら可視化していくものです。

相手のニーズを把握するときも、このマンダラチャートを使います。例として、「学習アプリの企画書を作成する」という依頼を受けるときの手順を説明します。

■「やり直し」になる人は全体が見えていない

STEP① 9マスを書いて真ん中に「依頼内容」を書く

まず、依頼内容をヒアリングする準備です。

ノートなどに9マスをつくって、真ん中に依頼内容を書きましょう。

STEP② 各マスに質問の項目名を書く

ヒアリングする項目名を書きます。

1段目は、それをやる「目的」、数値化した「目標」、そして「期日」。上段に本質的なものが並びます。

2段目に、「誰が」「誰に」提出するものかをハッキリさせます。

3段目には、具体的な内容を書きます。「ディテール」とは依頼内容の詳細、「リソース」とはお金や人員などの資源、「プライオリティ」は優先度です。どのくらい重要なのかをすり合わせておきます。

STEP③ 相手に質問して埋めていく

実際にヒアリングしていきます。

マス内に書ききれない項目がある場合は、ノートの右ページ全体を使って内容を記載します。ノートに向かって左ページがマンダラ質問、右ページが補足を書くページです。

最初は、いちいちノートに9マスを引いたり、項目を書いたりするのが面倒だと思います。でも、これはハッキリ言えます。いつもやり直しを迫られる人は、全体が見えていません。全体が見えていないから確認事項が漏れます。

マンダラ質問を使えば、「何が質問できていないのか?」「どこがよくわからないのか?」「どの内容が薄いのか?」、これらが一発でわかります。

マンダラ質問で依頼の方向性を定め、内容を埋めていく。これが1回で100%ニーズを把握するセオリーです。

■自覚すらしていない「相手の強み」を引き出す質問

部下に対して指導するときや、1on1などの場においても、質問力がカギになります。

人は、自分の弱さを知っているわりに、自分の強さはわかってないものです。

自分の悪いところは、すぐに目につきます。自己分析をするときも、たいがいの人は自分の強みより弱みのほうがたくさん出てきます。

だからこそ、相手の強みを炙り出してあげる「質問力」が問われます。

でも、「あなたの強みは何ですか?」なんてストレートに質問しても、きっと答えは返ってこないでしょう。そんなに簡単には答えられません。もっと、相手の潜在意識にアタックする質問が必要です。

インタビュー
写真=iStock.com/itakayuki
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/itakayuki

潜在意識とは、まだ本人すら自覚していない意識です。

少し、当社の話をさせてください。

当社は年間2000回、伝わる話し方セミナーを開催していますが、この中でもっとも多くいただく相談が、「人前でうまく話せません」というものです。受講される方の8割は、人前で話すのが苦手です。人前に立つと言葉が出てこなかったり、言いたいことが飛んでしまったり、緊張される方がほとんどです。

そこで、私たちは最初に何を指導するか?

「落ち着いて話せる方法」「リラックスして話せる技術」「自信を持って話せる話法」ではありません。まずは「成功を定義」します。人前で話すにあたり、「何をもってうまく話せたとするか」です。これは人によって違います。

・一言一句間違えずに、正確に伝えることができたら成功
・プレゼンしたあとに、購入してもらえたら成功
・自己紹介したあとに、「名刺交換よろしいでしょうか?」と声をかけてもらえたら成功

■定義するからこそ見えてくる世界がある

成功を定義することによって、「そうか、たとえ緊張していたとしても、正確な情報さえ伝えられればそれで成功だ。正確に伝えることなら得意だ」と、自分の強みに気づくことがあります。定義するからこそ、見えてくる世界があるのです。

転職の面接で、「あなたの強みはなんですか?」と聞かれてもうまく答えられないという受講生がいました。その受講生とのやりとりを紹介します。

【私】あなたが考える「強み」とは何でしょうか?

【受講生】誰にも負けないところでしょうか?

【私】そうですね。では、○○さんが、周りの人より意識してがんばっていることは何でしょうか?

【受講生】相手に喜んでもらえること、ですかね……

【私】すばらしい! 何か実施されていることはありますか?

【受講生】えーと、まず自分から挨拶して、相手の話をよく聞くようにして……。そうそう、クレーム対応はかなり得意です

このように、言葉を「定義」すると、まるで相手の脳内をノックするかのように、「そういえば」が出てくるのです。

「コミュニケーションとは互いを分かち合うこと」と定義したところ、「コミュニケーションは苦手だと思っていたけど、自分の好きなことを伝えたり、相手の好きなことを聞いたりすることは得意だ」と考えるようになり、積極的に会話ができるようになった受講生がいました。

「斬新とは、今あるものがもう一段階便利になること」と定義したところ、「そんなにダイナミックなことじゃなくても斬新と言えるんだ」と考えるようになり、500万円もするシステムを毎月5、6件も販売するようになった受講生もいました。

「幸せの定義が『ありがとう』が言えることなら、私はすでに十分幸せでした」という受講生も。

まさに、「○○の定義は?」は、相手の価値観に開眼させる質問です。

■プレゼンが上手な人の「成功パターン」

また、プレゼンにおいても、実は「質問力」がとても重要です

プレゼンを成功させるには定石があります。

それは、あなたの提案が、相手が期待する価値を上回ることです。期待する価値とは、内容、金額、効能、すべてひっくるめたものです。

過去の私は、「この商品はすばらしいです!」「絶対この仕組みを社内に取り入れるべきです!」と、本気で伝えれば、提案は必ず通ると勘違いしていました。まさに気合と根性で押し切るプレゼンです。自分が話したいことの延長線上に相手のYESはありません。

私は何千回とプレゼンを行い失敗してきましたが、「自分が話したいことにウエイトを置くとプレゼンは確実に破綻する」、これが最大の気づきでした。

プレゼンで成功する人は、成功するパターンを持っています。

ステップ① :相手の「期待」を確認する
ステップ② :それを上回る「提案」をする
ステップ③ :①と②を「比較検討」してもらう

流れは簡単ですが、実現しようと思うとなかなか難しいものです。特に②です。

「相手の期待を上回る提案なんて難しい……」、私も最初はそう考えていました。

でも、ここがプレゼンのミソです。多くの人は②に注力しますが、本物のプレゼンターは①「相手の期待を確認する」に9割の力を注ぎます。

■「相手の期待の確認」で成否は9割決まる

お医者さんの例が、わかりやすいかもしれません。

例えば、あなたがずっと胃の調子が悪かったとします。ときどき、みぞおちのあたりに激痛が走ります。「何かの重い病気では……」と心配になり、お医者さんに診てもらいました。

その診察が「はい、わかりました。じゃ、胃薬出しておきますね」と1分で終わったら、何も話を聞いてもらえないと感じ、すごく不安になるのではないでしょうか。

でも、5分だけでも詳しく症状を聞いてもらえたらどうでしょう。それだけで心がフッと軽くなると思いませんか。

別に心を軽くしてもらうためにお医者さんへ行ったわけではないのですが、「診察してもらい、適切に処方してもらい、話まで聞いてもらい、心配が減少した」、これが相手の期待を上回るということです。

話を聞く時間が1分でも5分でも、提案する薬はいっしょなのに、です。

話を聞いてもらうだけで心が安らぐ。これを心理学では、カタルシス(浄化)効果と言います。

話を聞いてもらえれば、自分がモヤモヤしていることを言語化して伝えようとします。そうすることで、自分の期待がより明確になります。

これは、ステップ①の「期待を確認する」を深いレベルで相手が行ってくれたからです。

そしてその相手は、「期待をいっしょに叶えましょう」と励ましてくれるわけです。勇気が湧いて当然です。

桐生稔『話し方すべて』(かんき出版)
桐生稔『話し方すべて』(かんき出版)

プレゼンの成否は、この時点ですでに決まっていることが多いです。

結婚式の会場を決める際、ウエディングプランナーの方がものすごく真剣に話を聞いてくれたので、結局予算はオーバーしたけれど、大変満足のいく結婚式になった、なんて話をよく聞きます。高級な料亭で、いろいろ希望を聞いてもらい、オススメを提案してくれたので、いつもよりかなり高額だったけど、楽しい時間を過ごせたということも。

期待の確認を全力で行う。そして、共通の認識にたどり着く。本来それをなくして提案してはいけないのです。

何かを提案するということは、困っている人を助けるということです。「真に困っていることは何か?」「本当はどうなりたいと思っているか?」、相手の期待を明確にするのがプレゼンの不文律です。

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桐生 稔(きりゅう・みのる)
モチベーション&コミュニケーション代表取締役
1978年生まれ。新潟県出身。2017年、「伝わる話し方」を教育する株式会社モチベーション&コミュニケーションを設立。日本能力開発推進協会メンタル心理カウンセラー、日本能力開発推進協会上級心理カウンセラー、一般社団法人日本声診断協会音声心理士。著書に『10秒でズバッと伝わる話し方』(扶桑社)、『雑談の一流、二流、三流』(明日香出版)がある。

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(モチベーション&コミュニケーション代表取締役 桐生 稔)

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