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ひろゆき、呂布カルマも使っている…自分の意見を正しく見せて、説得力を爆上げさせる「ズルい話し方」

プレジデントオンライン / 2023年8月26日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Rawpixel

話に説得力を持たせるにはどうすればいいのか。話し方講師で心理カウンセラーの桐生稔さんは「説明がうまいだけでは相手を納得させることはできない。時にはひろゆきさんや呂布カルマさんが使っているあざといテクニックも有効だ」という――。

※本稿は、桐生稔『話し方すべて』(かんき出版)の一部を再編集したものです。

■筋道を立てて話すのが苦手な人が意識すべき思考

20代の頃の私は、とにかく「ロジック(論理)」という言葉が苦手でした。論理的に筋道を立てて話すことができなかったからです。

それゆえ、上司から「もっと頭を使え!」「よく考えろ!」と何度も言われ……挙句の果てには「お前の頭は筋肉でできてんのか!」と怒鳴られたこともありました。

でも、そんな私を見かねて、ビジネススクールに通っていた先輩が、「トゥールミンモデル」というものを教えてくれたのです。これが私の論理的思考を開花させてくれました。

「トゥールミンモデル」とは、次の3つの思考サイクルを回すモデルです(本来はもっと複雑ですが今回はできるだけ簡単に説明します)。

主張(クレイム)= あなたの考え、あなたの結論
事実(データ)= 主張や結論の正当性を裏付けする客観的な数字や出来事
論拠(ワラント)= 主張と事実を結びつける理由

■主張、事実、論拠を含んだ話の組み立て方をする

例えば、あなたがお酒の飲みすぎを心配されたとします。そのときに、「とにかくお酒を減らしなさい」なんて言われても説得力がないですよね。

そこでこう伝えてみます。

主張:「アルコールの摂取、少し控えない?」

事実:「国立がん研究センターによると、1日あたりの平均アルコール摂取量が69グラム以上で、60%程度もがんリスクが上昇するんだって」
「今、毎日中ビン3本飲んでるでしょ」
「アルコール摂取量は70グラム近いよ」

論拠:「1日1本にすれば、がんのリスクは下がると思うんだ」

「とにかくお酒を減らしなさい!」と言われるより、説得力があると思いませんか。

会社の会議で発言するときも、

主張:「○○業界に参入すべきです」

事実:「SNS上で潜在ニーズが確認できています。でもまだ他社は参入していませんし、今ならほとんどコストがかかりません」

論拠:「ニーズが顕在化したら一気に他社が参入してきます。今がチャンスです」

何かについて意見を述べる際は、主張:□□□ 事実:□□□ 論拠:□□□と、空箱を立ち上げて、それを埋めていきます。

■主張、事実、論拠で説明力は格段に上がる

主張:「この道を走るのはやめよう」

事実:「先月この道で2件も事故が起きている」

論拠:「見通しがよくないから危ない」

精度が上がってくると、勝手に頭の中に3つの空箱を用意するようになります。

すると、主張だけで事実に該当する客観的な数字や出来事がなかったり、主張と事実を結びつける論拠が希薄だったりということがなくなります。また、人それぞれ思考のクセがあるので、主張、事実、論拠の中で、どれが弱いのかに気づく機会にもなります。

「主張」「事実」「論拠」の3つを使って話すことで、私の説明力は躍進しました。ビックリするくらい、会議で意見が通るようになったのです。外資系コンサルタントともバチバチに議論できるようになりましたし、実績が認められ年間3000億もの予算作成を任されたこともあります。

そして今、ビジネススクールを経営し、あの嫌いだった「ロジック」という言葉を使って、論理的思考や説得力のセミナーを実施しています。

嫌なことや苦手なことも、できるようになれば自分を助ける力になります。

■ひろゆきがディベートでまずやっていること

「ちゃんと説明しているのに理解してもらえない……」「ロジックを明確にしても却下される……」「なかなかYESと言ってもらえない……」、こういう人も世の中には存在します。

言いたいことを明確に主張しているのに、なぜか相手の表情が晴れないケースです。

そんなとき、注意すべき3つの「落とし穴」があります。「自分は説明がうまい」と思っている人ほど、ハマっているかもしれません。ぜひチェックしてみてください。

①前提が合っていない

かれこれ2年、テレビ朝日の番組で、ディベートの審査員をさせていただいております。ひろゆきさんや、ラッパーで有名な呂布カルマさんが、芸能人とディベート対決する番組ですが、ディベートが強い人は、だいたい最初に前提をロックしにいきます。

ひろゆき氏
ひろゆき氏(写真=Joichi Ito/CC-BY-2.5/Wikimedia Commons)

例えば、「人生で大切なのは愛情か、お金か」、こういうお題で、「愛情」を主張する場合、まず「人生で一番大切なものは家族ですよね」と話の方向性を決めます。これが前提になると、「家族はお金では買えないので愛情が大切」という論が勝ちます。

普段の職場の会話でも、「彼はいい人だ」と主張するとき、「いい人とは約束を守る人」とか「困っているときに手を差し伸べてくれる人」など、いい人の前提が相手と合っていないと相手に納得してもらえません。

備品購入の稟議(りんぎ)でも、「3万円くらいは買ってもいいだろう」と思って提案したものが、上司は1万円もかけたくないと思っていたら、その備品に対する前提が合っていないので、いくら購入するためのロジックを明確にしてもYESはもらえません。

前提とは、主張する言葉の意味です。まずは前提が合っているかをチェックしましょう。

■その主張に客観的な数字や事実はあるか

②事実が脆弱(ぜいじゃく)

「主張はわかった。でも事実が弱い」、そんなケースもよくあります。先ほどのトゥールミンモデルの通り、「事実」とは主張を裏付ける客観的な数字や出来事のことで、よく「ファクト」と言われるものです。

最近よく「テレビの時代は終わった」という話を聞きませんか? YouTubeの到来でテレビを見る人が減ったからです。一見、正しそうに聞こえますが、テレビの再放送をいつでも視聴できるTVer(ティーバー)もはじまっていますし、60歳以上はほぼ全員がテレビを視聴しているという結果もあります。

今後、高齢化が進めば、今はスマホでYouTubeを見ている人も、60歳台に突入すればテレビを見るようになるかもしれません。したがって、テレビの時代は終わったとは言い切れません。主張を裏付ける事実が積み上がっていないと説得力は減退します。

主張を裏付ける客観的な数字や出来事が積み上がっているかを、検証しましょう。

■「なぜならば」で論拠を強化する

③論拠が希薄

たとえ主張が明確でも、論拠(理由)が薄いと納得してもらえません。「なんとなく」では、主張は通らないのです。

例えば、職場の人間関係をよくするために、「月に1回、みんなで雑談をする時間を設けませんか」と上司に主張しました。でもその論拠が、「なんで雑談が人間関係をよくするのか?」とつながっていないと採用されません。

論拠を強化する方法が必要ですね。そのためには、「なぜならば」の口癖を普段の会話に足してみることを推奨しています。

「黒毛和牛バーガーを食べよう」→「なぜならば100万食限定だから」

「週末は映画を観よう」→「なぜならば仕事のことを強制的に忘れる時間をつくる必要があるから」

「毎日25グラムナッツを摂ろう」→「なぜならば不飽和脂肪酸が豊富で、乾燥肌の予防やアンチエイジングに役立つから」

漫然と行動せず、理由を明確にするちょっとしたトレーニングです。

相手に納得してもらえるかどうかは、ほんとに紙一重です。ぜひ、今回の3つの落とし穴を確認し、相手から「YES」と言ってもらえるロジックを確立してください。

■理由を説明せずに相手を納得させる方法

もし、あなたの考えを説明しなくても、あなたの案が採用されたらいかがでしょうか。「そんなことできるの?」って思いますよね。結論、できます。「背理法」を使って。

「背理法」とは、高校の数学に出てくる用語で、「命題が正しくないと仮定すると矛盾が生じるので、やはり命題は正しい」と証明する方法です。

これだけ聞くと、よくわからないですよね。私も数学が一番苦手だったので、「証明」と聞くだけで頭がこんがらがります。

でもこの背理法、ビジネスシーンではよく登場します。

今回はわかりやすいように、簡略化して背理法を解説します。

例えば、自分がXという意見、相手がYという意見で、対立していたとしましょう。

普通なら、自分はXの正しさを説明しますが、背理法の場合は違います。

まずはYという意見に乗っかり、そのあと矛盾を指摘します。

「わかりました。では、Yが正しいと仮定しましょう。そうすると、こんな矛盾が生じますよね。だからXのほうが正しいのではないでしょうか」。こんな論法です。

■相手の意見の矛盾を指摘して自分の考えを通す

具体例に当てはめてみると、わかりやすいと思います。

Aさんは、「このプロジェクトは佐藤さんに任せましょう」と言う。

Bさんは、「五十嵐さんに任せましょう」と言う。

この場合、AさんはまずBさんの意見に乗っかります。

【A】五十嵐さんに任せるのもありですね

【B】ですよね

【A】ただ、五十嵐さんは、今進行中のタスクを5つ抱えています。五十嵐さんにお願いすると進行に遅れが生じませんか? それにこれ以上、五十嵐さんにお願いするのは酷ではないかと思うんです

【B】五十嵐さんにお願いするのは難しいかもしれませんね……

【A】ここはひとつ佐藤さんにお願いしませんか

【B】そうしますか

こんな流れです。

どうでしょうか。Aさんは、五十嵐さんにお願いしたときの矛盾を指摘しただけで、佐藤さんのほうがいい理由を一つも説明していません。まさに背面の理屈をついたような説明です。

職場の会話をよく覗いてみてください。

上司が「この仕事は君にお願いしたい」と言う。でも部下は「なんで私が……」と思っている。そんなとき、上司は、「もしこの仕事をやらなかったら、いつまで経ってもこの仕事を覚えられない。だからやるべきだよ」なんて主張したりします。

でも、よくよく考えれば、覚える必要のない仕事かもしれませんし、アウトソーシングしていい仕事かもしれないのです。

桐生稔『話し方すべて』(かんき出版)
桐生稔『話し方すべて』(かんき出版)

これも説明していない説明の例です。

「仮に腕相撲で勝負を決めるとするじゃん。それだと力が強い人が勝つじゃない。だからジャンケンで決めようよ」

実際こんな会話があるかどうかは別ですが、これもジャンケンの正当性は一つも説明していません。

「もし、○○したら」と相手の意見に乗っかり矛盾を指摘する。そして自分の考えを通す。そういう説明の仕方もあるのです。

柔軟に、しなやかに、いろんな場面に対応できるように、説明のパターンとして背理法を知っておくと便利です。

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桐生 稔(きりゅう・みのる)
モチベーション&コミュニケーション代表取締役
1978年生まれ。新潟県出身。2017年、「伝わる話し方」を教育する株式会社モチベーション&コミュニケーションを設立。日本能力開発推進協会メンタル心理カウンセラー、日本能力開発推進協会上級心理カウンセラー、一般社団法人日本声診断協会音声心理士。著書に『10秒でズバッと伝わる話し方』(扶桑社)、『雑談の一流、二流、三流』(明日香出版)がある。

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(モチベーション&コミュニケーション代表取締役 桐生 稔)

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