週1回食べるだけで効果がある…普通にしていると「40歳から縮んでいく脳」の老化を防ぐ注目の食材【2023上半期BEST5】
プレジデントオンライン / 2023年8月9日 7時15分
※本稿は、マックス・ルガヴェア、ポール・グレワル『脳が強くなる食事 GENIUS FOODS』(かんき出版)の一部を再編集したものです。
■脳の血流を増やす食事
脳は、大量の酸素を消費している。あなたが1回呼吸するごとに、その25パーセントが脳に直行して代謝のニーズに応える。脳血管疾患のリスクを高める血中脂質(中性脂肪やコレステロール)を正常に保つことが、脳の認知機能を何の妨害もなく保つための1つの方法だ。そしてありがたいことに、次に挙げる方法によっても脳の血流を増やすことができる。
ダーク・チョコレートを食べる。
ダーク・チョコレートに含まれる成分(ポリフェノール)は灌流(かんりゅう)、つまり脳の血流量を増やすことがわかっている。カカオの含有量が80パーセントを超えるもの(理想的には85パーセント以上─―これは糖質がより少ないことを意味する)、抗酸化物質を減らすアルカリ処理をされていないものにこだわろう。
穀物、糖質、デンプン質を摂らない、あるいは減らす。
脳が脂肪――具体的にはケトンを燃料にすると、送り込まれる血流量が39パーセントも増える。
カリウムをもっと摂る。
カリウムが多く含まれる食品は、アボカド(アボカド1個にはバナナ1本の2倍のカリウムが含まれている!)、ホウレンソウ、ケール、ビーツの若葉、スイスチャード、キノコ、そして、まさかと思うだろうが、サケだ。
硝酸塩の豊富な食品を食べる。
一酸化窒素は血管を拡げ、血流を促進する。同じグラム数なら、ルッコラがほかの野菜よりも多く一酸化窒素を含んでいる。その次にビーツ、サラダ菜、ホウレンソウ、ビーツの若葉、ブロッコリー、スイスチャードだ。一酸化窒素が豊富な食事1回で、認知機能がぐんと高まるかもしれない。
■ダーク・チョコレートの優れた健康効果
ダーク・チョコレートについて、もう少し補足しよう。
あなたは、カカオ豆が1887年までメキシコシティ一帯で立派な通貨として流通していたのを知っていただろうか? この貴重な果実の種は、身体のためになる食べ物として歴史的に尊ばれてきた。友だちのテロ・イソカウッピラの話では、カカオ豆は自然食品のなかでも群を抜いてマグネシウムが豊富だそうだ。テロはフィンランドで薬用キノコの栽培にたずさわる食料採集のエキスパートで、私の知るかぎりカカオの知識で彼の右に出る者はいない。
![チョコレート](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/0/6/1200wm/img_06d46a82900de108e2804ae8ed6efbe5404196.jpg)
チョコレートは自然発酵食品で、ポリフェノールの一種のフラバノールが豊富なため、食べればさまざまな恩恵がある。カカオフラバノールは認知機能の老化を食い止め、インスリンの感受性や血管機能、脳の血流、さらには運動能力まで改善するといわれている。
23歳から98歳までの、認知機能の正常な被験者1000人近くを対象にした研究では、少なくとも週に1回チョコレートを食べる人は、視空間記憶とワーキングメモリ、抽象的な推論などの認知的な能力が優れていることがわかった。だが、地元のスーパーマーケットには、どれを選べばいいのか迷ってしまうほどたくさんの種類のチョコレートが並んでいる。そのなかで、どうやってお目当てのものを見つければいいだろうか?
■ダーク・チョコレートの選び方
まずは原料表示を見よう。そのチョコレートの原料が「アルカリ処理」、別の言葉ではダッチ・プロセスという処理がされていないことを確かめよう(たいていは原料表示の“ココア”の隣に書かれている)。このような処理法は、原料に含まれる植物栄養素をかなり損なわせ、せっかくの有益な食べ物を、栄養のないカロリーだけの食べ物に変えてしまう。
市販されているチョコレートは、糖質の含有量もさまざまだ。糖質はできるだけ少なくて、カカオはたっぷり含まれているものを望むなら、カカオの含有率が80パーセントを超えるチョコレートを探そう。
それより低いものは、「おいしすぎて食べるのがやめられない」食品カテゴリに属している(ミルクチョコレートとホワイトチョコレートは、本質的にはキャンディ、つまり純粋な糖質だ)。
たとえば、あなたが85パーセントと書かれたものを見つけたら、もう安心。ちょっと小腹が空いたときに、ほんの一切れ食べて満足する、そんなチョコレートの楽しみ方ができるはずだ。
カカオ85パーセントのダーク・チョコレートを、板状なら週に1枚の割合で食べよう。また、オーガニックやフェアトレード認証ラベルのあるものを選ぼう。そうした商品は、たいていは倫理的なルートで供給されている。
■脳の血流を増やす運動
食べ物だけでなく、運動によっても脳の血流を増やすことができる。
あなたが鍛えられるエネルギーの供給システムは、主に2つある。有酸素と無酸素だ。大まかにいうと、有酸素運動は長距離のサイクリングやハイキングなどで、無酸素運動はウエイトリフティングや短距離走などだ。有酸素運動は、酸素を使って脂肪をエネルギーに変え、無酸素運動は糖をエネルギーに変えると考えよう。
![しまなみ海堂でサイクリングを楽しむ日本人女性](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/d/0/1200wm/img_d0569f6f040c4bef74ac1b2024e301ea334624.jpg)
有酸素運動のトレーニングは心拍数が上がり、長時間続けることができる。身体は1日のほぼすべての時間、酸素呼吸によって機能している。有酸素「運動」は、その代謝を盛んに働かせている状態だが、あくまでも同じ代謝の状況下にある。
あらゆる形式の運動は、体内の制御センターに酸素と栄養をどんどん送り込んで脳の血流を増やす。そのなかでも有酸素運動は、脳由来神経栄養因子(BDNF)を増やす方法として知られる。
■時計の針を巻き戻す運動の効果
2011年に発表された独創的な研究では、被験者は認知機能の正常な120人の成人で、その半数が1年にわたって週に3回、有酸素運動を行った。そしてMRIで脳を調べたところ、研究を開始したときより海馬が2パーセント大きくなっていた。
![マックス・ルガヴェア、ポール・グレワル『脳が強くなる食事 GENIUS FOODS』(かんき出版)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/8/7/1200wm/img_87c751d7d16ad89f671b69ecb6aa3693285988.jpg)
なあんだ、それだけか、とあなたが笑う前にお知らせしよう。海馬は通常、40歳を過ぎる頃から年におよそ1~2パーセントずつ小さくなっていく。そして実際に、対照群の被験者たちにこれが起きていた。彼らの脳をスキャンした結果、脳の体積が同じ割合で減っていたのだ。この研究チームの論文によると、有酸素運動によって記憶形成の中枢である海馬の時計の針が、実質的に1〜2年戻っていたという。現時点で、この世に、これほどの力を発揮する薬はほかにない。
ここまで言っても、まだあなたが驚かないなら、こんな話はどうだろうか。海馬が大きくなっていた被験者たちは、慣れ親しんだ空間を移動するときの記憶力、つまり空間記憶も改善していた。
■精神的なストレスに強くなる
とはいえ海馬を強化すると、単に老化に逆らえるだけではない。海馬はアルツハイマー病になると最初に攻撃される脳の部位の1つだが、慢性的なストレスからもダメージを受けやすい。
コルチゾール値が常に高い状態が続くと、体内の「闘争か逃走か」メカニズムが過度に刺激されて、海馬が損傷してしまう。海馬は、何か出来事が起きたときに、脳に落ち着いて(あるいは即座に)反応するように指示する。そのため海馬が損傷すると、厄介なフィードバック・ループが生じる。
というのも、どう反応すべきかは怖れと情動をつかさどる脳の部位が、海馬と「相談」して決めるからだ。そして研究が示すとおり、運動をすると、海馬が強化され、その結果、脳が鍛えられて精神的なストレスに強くなる。
低い負荷で、ゆっくりと!
▼ハイキング
▼サイクリング
▼歩幅を大きくとり、早足で歩く
▼軽いヨガ
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映画製作者。「メドスケープ」「ヴァイス」「ファスト・カンパニー」「デイリー・ビースト」などのメディアに寄稿し、「NBCナイトリーニュース」や「ドクター・オズ・ショー」「ザ・ドクターズ」などのテレビ番組に出演、「ウォールストリートジャーナル」紙で紹介されるなど幅広く活動している。講演者としても人気を博し、ニューヨーク科学アカデミーや、ワイルコーネル医療センターなど権威ある学術機関に講師として招かれた。また、スウェーデンのストックホルムで開催されたバイオハッカーサミットでも講演を行った。2005年から2011年まで、アル・ゴアの「カレントTV」のジャーナリストを務める。主にニューヨークとロサンゼルスを拠点に活動を続けている。
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食生活とライフスタイルという視点から減量や代謝機能、不老長寿のための医療を実践し、講演も行っている内科医。彼自身45キロ近い減量に成功し、その体重を維持している。大きな誇りと情熱を持ちながら、患者が健康に生きるために楽しく続けられる、万人に適用できる療法を探る。ジョンズ・ホプキンズ大学で細胞・分子神経科学の学士号を取得。ラトガース大学メディカル・スクールで医学を学び、ノース・ショア・ロング・アイランド・ジューイッシュ・ホスピタルで研修課程を修了。MyMDメディカルグループを創設し、ニューヨークシティで開業、金融会社や健康管理会社のメディカルアドバイザーを務めている。
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(健康・科学専門ジャーナリスト マックス・ルガヴェア、内科医 ポール・グレワル)
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