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日本医師会の「BMIが25を超えると危険」を鵜呑みにすると早死にする…和田秀樹「中高年はダイエット不要」

プレジデントオンライン / 2023年8月18日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/K-Angle

中高年が健康的に過ごすには、ダイエットはどの程度すべきか。医師の和田秀樹さんは「55歳頃から筋肉量は低下し基礎代謝は下がる。だからといってダイエットで食事の量を減らすと身体に必要な栄養素をとれなくなり、大変危険だ。中高年にとって食べることは、悪ではない。ちょっと太めのほうが元気に長生きできる」という――。

※本稿は、和田秀樹『やせてはいけない!』(内外出版社)の一部を再編集したものです。

■洗脳されてきたダイエット神話から解き放つ2つの言葉

中高年の女性は、女性ホルモンの「エストロゲン」の減少などにより、「脂質代謝が低下」し、体重が増えやすくなる傾向があります。

エストロゲンには、余分な脂肪の蓄積を防ぐ作用があるからです。エストロゲンは初潮を迎えるころから増え始め、20〜30代をピークにそれ以降はどんどん減っていきます。

中高年になって体重が増えるもうひとつの理由は、筋肉量の低下による「基礎代謝の低下」です。

【図表】筋肉量の20歳からの変化率
出典=『やせてはいけない!』(内外出版社)

筋肉は、体の内側から体型を支えるコルセットの役割も果たしているので、筋肉が衰えると、脂肪が重力に引っ張られるため体型が崩れてしまうのです。

また、筋肉量が減ると基礎代謝量も減ります。基礎代謝は、10代後半をピークに低下し、40代を境に50代、60代で急激に落ちていきます。

基礎代謝量が低下すると、消費するカロリーも少なくなるため、摂取カロリーと消費カロリーのバランスが崩れ太りやすくなるのです。

だからといって高齢になっても若いころと同じ体重を維持するためにダイエットで食事の量を減らすと、身体に必要な栄養素をとることができなくなり、大変危険です。

ダイエットとリバウンドを繰り返し、目標体重を達成できない自分自身がダメ人間に思え、自己不全感にも陥ります。

BMI値が25を少しでも超えただけでも、世の中の医者は口をそろえて「健康のためにもう少しやせましょう」とみなさんにいってきました。

日本医師会は「BMI値が25を超えると危険」としていますが、それを鵜呑みにしては絶対にいけません。医者のいうことを聞いてダイエットなどしたら、低栄養になって早死にしてしまいます。

これまで懸命にダイエットをしてこられたみなさん。本当によくここまでがんばってこられました。しかし、もうダイエットする必要などありません。この年齢になったら、ダイエットでがんばらなくていいのです。

ぜひ食べたいもの、好きなものを我慢せずに食べてください。これまで洗脳されてきたダイエット神話を、次のふたつの言葉で解き放ってください。

◎食べることは、悪ではない
◎ちょっと太めのほうが元気に長生きできる

■健康診断の「BMIは22が理想」は大ウソ

「食べることは、悪ではない」「ちょっと太めのほうが元気に長生きできる」

この言葉を証明するデータを紹介しましょう。

ダイエットしないと健康になれない、という強迫観念の檻から、みなさんをダイエットのない自由の世界へ解放したいと思います。いまのあなたはダイエットの檻の中に閉じ込められているのと同じ状態です。

日本肥満学会は、BMIが22を適正体重(標準体重)とし、統計的にもっとも病気になりにくい体重としています。25以上を肥満、18.5未満を低体重と分類しています。

BMIはボディマス指数と呼ばれ、体重と身長から算出される肥満度を表す体格指数です。

計算式は、BMI=体重kg÷(身長m)2

例えば、あなたが体重60kg、身長160cm(1.6m)であれば、式は次のようになります。

60÷(1.6×1.6)=23.4

あなたのBMIは23.4となります。

BMIの違いを表す男性のシルエットイラスト
写真=iStock.com/Mashot
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Mashot

本来であれば、同じ体重でも脂肪量や筋肉量が違うので、この計算方法には限界があるのですが、計算式がとても簡単なこともあり、現在では世界共通に用いられています。

日本肥満学会が理想とするBMIは22ですが、耳を疑ってしまう事実があります。それは、「BMI22で総死亡率が最低になった」との研究結果は、中高年を対象に含んだものでは、日本にも欧米にもどこにもないという事実です。

事実はこうです。

もっとも死亡率が低いのは、BMI24~27.9

いわば私のような“ちょっと太め”の人が、もっとも長生きに向いています。

■食べたいものを我慢したダイエットは老化を加速させる

このデータは、1980年、「循環器疾患基礎調査」で、30歳以上の男女1万人を対象に、14年にわたる追跡調査の結果によるものです。もっとも死亡率が低いのは、BMI24~27.9のグループでした。日本肥満学会が理想とするBMI22は、明らかにやせすぎです。

九州大学第二内科でも、福岡県久山町で13年間、40歳以上の住人2000人を対象に同様の調査が行われています。結果は、総死亡率が最低になったのが、BMI23~25の“ちょっと太め”の人々でした。

むしろ気にしてほしいのは、BMI18.5未満の「やせている人」です。食べたいものを我慢してダイエットしたら、栄養不足になって確実に老化を加速させます。

じつは赤ちゃんの出生体重も、その後の人生と大きくかかわっています。出生体重が重い赤ちゃんは、将来、健康であることが多いばかりでなく、知能指数(IQ)も高く、所得も高いことが科学的にも証明されています。

かつて妊婦健診時の体重測定で、「これ以上、増やさないようにしてください」などと叱られた経験を持つ女性は多いのではないでしょうか。

■低出生体重児は健康リスクが高い

小さく産んで大きく育てるといった間違ったキャッチコピーのもと、厳しい体重管理指導が行われていた背景には、妊娠中毒症を減らす目的がありました。

しかし、低出生体重児は、2型糖尿病や高血圧、脂質異常症などの生活習慣病になるリスクが高いことがわかりました。

やっとそのリスクに気づき、先進国の中でも飛び抜けて低体重児が多く厳しい体重制限を行う日本への世界からの批判もあり、日本産科婦人科学会が2021年3月になってやっと新たに「妊婦の体重増加指導の目安」を公表しました。

現在は、妊娠中の体重を制限するどころか、積極的に増やす必要があることがわかっています。

「やせ神話」に洗脳され続けてきた日本女性たちが、妊娠しても太りたくない、という心理はわかります。しかし、それは女性たちが悪いのではありません。「やせることがよいことである」と洗脳し続けてきた日本の社会が悪いのです。

世界と比較しても厳しすぎるBMI基準値で健康診断でメタボを目の敵にし、太っていることがまるで不摂生に食べ過ぎたり、運動不足が原因のダメ人間に扱う風潮があります。

太っていることは自己責任である、という考え方は明らかに間違っています。

■モデルの死亡が相次ぎ、海外ではやせすぎモデルを規制

世界全体を見てみると、日本人女性のやせすぎが大きな問題になっています。1983年の20歳代女性のやせすぎは14.6%でしたが、1993年には17.1%、2003年には23.4%と激増しています。

世界では、やせすぎモデルによる若年女性のやせ願望や肥満恐怖、自尊心や食行動に与える悪影響が徐々に報告されるようになりました。その後、医療業界からも規制を求める声が上がるようになりました。

2006年8月2日、22歳のウルグアイ出身のトップモデル、ルイゼイ・ラモスさんがファッションショーに出演中、キャットウォークを歩いた後に気分不良を訴え、控室で死亡しました。

死亡時のBMIは14.5。死因は摂食障害に伴う低栄養によるものでした。その半年後、同じくモデルの18歳の妹、エリアナ・ラモスさんも摂食障害で死亡しました。

アメリカのモデル団体は、ファッションモデルの31%が摂食障害を持ち、64%がやせろといわれた経験があると報告しています。

やせすぎモデルの死亡が相次ぎ、やせすぎモデルの女性の心身に対する悪影響が明らかになり、欧米各国や業界団体はやせすぎモデルの規制に乗り出しました。

ゴージャスなアフリカ人女性
写真=iStock.com/PeopleImages
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/PeopleImages

2006年、イタリア政府は、BMI18.5以下と16歳未満のモデルを規制しました。スペイン政府はBMI18以下のファッションモデルのファッションショー出場の禁止措置をとりました。

2012年にイスラエルがBMI18.5以下のファッションモデルのファッションショーと広告への出演禁止と、画像を修正した際はそれを明記することを法律として制定しました。

フランスでは4万人が拒食症、そのうちの9割が女性です。

2015年に、「BMI18以下のモデルは活動禁止」をフランス国民議会が打ち出したところ、業界からの猛反撃があって断念し、2017年にBMI数値を設定せずに「極端にやせているモデルは活動禁止」という法律が施行されました。

欧米各国では、摂食障害の発症を予防するために、やせすぎモデルを規制する取り組みが進んでいます。それなのに相変わらず日本はやせているモデルを起用し続けています。どうして日本ではそのような取り組みが行われないのか本当に不思議です。

■「やせ神話」をつくったダイエットの歴史

ダイエットの歴史をたどると、日本の元祖健康本といえば、儒学者の貝原益軒が83歳のときに書き残した健康指南書『養生訓』でしょう。江戸時代から300年続くベストセラーで、この思想が日本人の心に深く染みついているように思います。

彼は『養生訓』で次のようなことを述べています。

「腹八分たれ」
「節度のある飲食を基本とせよ」
「およそ食べ物は、淡泊なものを好むのがよい。高カロリー、味が濃いもの、脂っこいものなどをたくさん食べてはならない」
「老人は食を少なめに」
「食事は抜くことも必要」
「ひどく疲れたときに多くを食べてはならない」

確かに一理ありますが、高齢者は食べ過ぎよりも食べない悪のほうが多いのです。

さて、明治以降のダイエットの歴史をふりかえってみましょう。

日本は明治維新以降、鹿鳴館時代に西欧化が進みます。女性はコルセットをつけてドレスアップしました。ファッションは洋装化され、食事も菜食から肉食化が進んでいきます。

日本人の平均寿命が初めて50歳を超えたのは、1947(昭和22)年でした。

1953(昭和28)年2月1日、NHK放送会館で日本初のテレビ本放送が始まりました。コマーシャリズムの始まりです。金銭的な利益を得ることを第一とする考え方ですから、他のあらゆる価値よりも営利を最優先させます。

1967(昭和42)年、イギリスのファッションモデル「ミニスカートの女王」ツイッギー(当時18歳)が来日しました。彼女をイメージしたコンテストが催されるほどの過熱ぶりで、これによって女性の9割がミニスカートをはくようになったといわれています。

みなさんも当時、ミニスカートをはかれたのではないでしょうか。

ツイッギーの身長は165cm、体重41kgと報道されています。この小枝のような華奢な体型に多くの女性が憧れました。計算すると、彼女のBMIは15.06です。

BMIが18を切ると死亡率が50%も上がってしまうのに、そんなことも知らない当時の多くの女性はツイッギーのようにやせることに憧れました。その後、過激なダイエットや強力なやせ薬、人工的な美容整形に拍車がかかりました。

それまでは原節子さんや京マチ子さんのようなふっくらした女優が日本映画では人気がありました。

■たくさんのダイエットブームにふりまわされてきた歴史

1968年(昭和43)年になると、日本のGNPは米国に次ぎ世界第2位になりました。1970年(昭和45)年に大阪万博が開かれ、日本の高度経済成長のピークを迎えます。

このとき、弘田三枝子著『絶対やせるミコのカロリーBOOK』が150万部の大ベストセラーとなりました。

1971年(昭和46)年、ニクソン・ショックの後、円高が始まり、外国製品が安く買えるようになり、ルームランナーやぶら下がり健康器などのホームフィットネス用品が一大ブームを巻き起こします。

音楽に合わせてステップしながら激しく体を動かす有酸素運動「エアロビクス」が広がったのが1981年。りんごダイエットやこんにゃくダイエット、紅茶きのこダイエット、リンパの流れをよくするタワシダイエットなど、さまざまなダイエットが登場します。

1988年に出版された骨盤ダイエットの元祖ともいわれる川津祐介著『こんなにヤセていいかしら』は200万部の大ヒットとなりました。一方で、1980年代にカーペンターズのカレンさんが拒食症で亡くなる出来事に、多くの人が衝撃を受けました。

90年代に入ると、我慢するダイエットから、ややお手軽なダイエットがブームになります。ダイエットスリッパや風船ダイエット、髪をしばることで頭部のツボを刺激する髪しばりダイエットが代表例です。

そして、2004年、ダイエット・フィットネス界の「鬼軍曹」ビリー・ブランクスによる「ビリーズブートキャンプ」が大ブームになりました。

和田秀樹『やせてはいけない!』(内外出版社)
和田秀樹『やせてはいけない!』(内外出版社)

7日間の減量プログラムを消化する短期集中型のエクササイズで、日本ではDVDが150万枚、世界では1000万枚の大ヒットとなりました。

ほかにもダンベル体操やキャベツダイエット、寒天ダイエット、ホットヨガ、デトックスダイエット、朝バナナダイエット、酵素ダイエット、骨盤矯正ダイエットと続きます。

2010年代に入ると、レシピ本『体脂肪計タニタの社員食堂』が大ブームとなりました。

この中のダイエットを一度は試した方もいらっしゃるのではないでしょうか。いま70代の方であれば、「エアロビクス」がブームになったのは20代のころでしょうか。たくさんのダイエットブームにふりまわされてきた歴史です。

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和田 秀樹(わだ・ひでき)
精神科医
1960年、大阪市生まれ。精神科医。東京大学医学部卒。ルネクリニック東京院院長、一橋大学経済学部・東京医科歯科大学非常勤講師。2022年3月発売の『80歳の壁』が2022年トーハン・日販年間総合ベストセラー1位に。メルマガ 和田秀樹の「テレビでもラジオでも言えないわたしの本音」

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(精神科医 和田 秀樹)

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