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仕事がデキる人はメニューを最後まで見ない…キーエンス出身者が説く「意思決定の価値」を上げるコツ

プレジデントオンライン / 2023年8月17日 10時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/LightFieldStudios

仕事のスピードが速い人はどこが違うのか。元キーエンスの鈴木眞理さんは「結論を早く出すために重要なのは、ゴールから逆算して考えることだ。ゴールがわかっていれば、集める情報が最小限で済むとともに、情報を集めながらゴールが合っているかの検証もできるので、間違っていたときはすぐに方向性を修正することができる」という――。

※本稿は、鈴木眞理『仮説起点の営業論』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

■いきなり情報を集めはじめてはいけない

みなさんは何かを判断したり、購入する時にどのような手順を踏みますか?

①関連する情報を集める
②集めた情報を元に何がいいかを考える
③考えた結果を元に決断する

このような手順を踏む人が多いのではないでしょうか? これは、「レストランに行って、メニューを最初から最後まで全部見て、何を食べようか考え、結局迷って中々決まらない」というケースと同じです。

この手順はレストランのメニューぐらいであればいいですが、ビジネスにおいてスピードが重要となる状況ではオススメしません。

なぜなら、いきなり情報を集めはじめてしまうと、どこまで情報を集めていいのかがわからず関連する情報を広く集めることになるからです。しかも、後で集めた情報から有用なものを絞り込んでいくことを考えると、最初に集めるもののなかに、重要な情報が漏れているという状況は避けなければいけません。

そのためには、最初に「できるだけ広く情報を集めないといけない」ということになり、集める情報量が膨大になりキリがなくなってしまうのです。さらには集まった情報が多すぎると、何が重要なのか考えることにも多くの時間を要します。

■ゴールがわかっていれば、集める情報は最小限で済む

結論を早く出すために重要なのは、ゴールから逆算して考えることです。

「ゴールがわからないから、情報を集めて考えるんじゃないの?」と思われる人もいると思いますが、まずは今知っていることだけでゴールを考えてみましょう。

①決断結果を考える
②その結果が正しいと判断するための要素を考える
③そのために必要な情報を集める

という順番です。

ゴールがわかっていることで、集める情報も最小限で済むと共に情報を集めながらゴールが合っているかの検証もできるので、間違っていたときはすぐに方向性を修正することができます。

そしてこの情報が少ない段階から、もっとも確からしい結論を考えるのが「仮説構築」です。

■調査なのか、思考なのか、決断なのか

調査、思考、決断を切り分ける

結論を出すスピードを上げるために、もう1つ意識すべきことが、必要なのは「調査なのか、思考なのか、決断なのか」ということです。

「調査」は世の中で答えが既にわかっているものに対しては効果がありますが、答えが出ていないものに対してはいくら調査をしても結論を出すことができません。

世の中に答えが出ていないことはいくら調べてもムダなので、自分で「思考」する必要があります(逆に世の中に既に明確に答えが出ていることを自分で考えるのは“車輪の再発明”になってしまいムダな労力なので、「調査」すべきです)。

見落としがちなのが、答えが存在しないこともあるということです。これは「決断」するしかありません。例えば、10枚の宝くじから1枚選ぶときにどれが当たるかを考えてもムダです。それは考えているのではなく迷っているだけです。

■「どんなことでも10秒考えればわかる」

ビジネスの世界にも考えてもムダなことがよくあります。例えば2つのデザインがあり、どちらかを選ばなければならないような場合に、「どちらが100%売れるか」は、どんなに考えても答えがありません。調査や統計から「60%の確率でAのほうが売れそう」というところまでは考えて出せるかもしれませんが、最後は決断になります。考え尽くした状況で決断できないのは、考えているのではなく、迷っている、悩んでしまっているという状態です。

元ソフトバンク社長室長の三木雄信さんが書いた『孫正義 「リスク」を「成功」に変える28のルール』によると、孫正義さんはソフトバンクの社員によくこんなことを言っていたそうです。

「どんなことでも10秒考えればわかる。10秒考えてもわからない問題は、それ以上考えても無駄だ」

決算説明会であいさつするソフトバンクグループ(SBG)の孫正義会長兼社長
写真=時事通信フォト
決算説明会であいさつするソフトバンクグループ(SBG)の孫正義会長兼社長=2022年11月11日、東京都港区 - 写真=時事通信フォト

変化対応スピードが競争力を生む環境においては、「考えているつもりで、迷う、悩む」「判断に必要ない、重要性が低い情報を集める」ということに時間を使っていると、どんどん競争力が失われていきます。

「決断のために考えることを決める」「決めたことを考えるために必要な情報を集める」という順番を常に意識するようにしてみてください。

■決断して行動してもらって初めて価値が生まれる

顧客は独断で決断できない

本記事の最後に、営業に活かす仮説には「根拠」とそれを説明できる「ロジック」が必要であることを付け加えておきます。

前回の記事で書いたことを整理しますと、

・営業パーソンは自社の売上を最優先の目的とすべきではなく、「顧客の市場競争力を上げることに貢献すること」を目的にすべきである。
・「取り組むべき課題がわかりにくくなっている」環境では、顧客の市場競争力を上げるために必要なのは製品説明ではなく、取り組むべき課題を明確にすることである。
・市場競争力を生むには「変化対応スピードが必要」であり、そのために最も効果を発揮するのが仮説である。

ということになりますが、どんなに素晴らしい仮説ができたとしても、顧客が決断し行動してくれなければ価値は提供できません。決断して行動してもらって初めて価値が生まれます。

このとき、決断して行動してもらうために必要なのが、仮説に対する根拠とそのロジックです。

■仮説に対する根拠とそのロジックは、車の両輪

営業が相手の心を動かすためには「熱意とロジック」の2つの要素が必要ですが、なかでもロジックのほうの重要性が近年上がってきていると私は思っています。私が営業を始めた頃と比較すると、顧客が購買する際の複雑性が上がっていると感じられるからです。

以前は、社内(顧客企業側)で力を持っている人がやりたいと思えば実行できることが多く、その人の心を動かすことが重要でしたが、近年はオリンパス、東芝、神戸製鋼、日産など上場企業による大きな不正が発覚したことで、内部統制に対する監査が厳しくなりました。執行プロセスによる職務分掌が求められ、多くの企業では社長であっても独断で何かを決めることはできません。

この傾向は今後も強まっていくと思います。

そうなると、目の前で商談をしている顧客個人だけではなく、顧客社内の幅広いステークホルダー(利害関係者)の理解が必要になるのです。

鈴木眞理『仮説起点の営業論』(KADOKAWA)
鈴木眞理『仮説起点の営業論』(KADOKAWA)

根拠が薄い仮説でも、熱意さえあれば目の前の人の心を動かすことはできるかもしれません。

しかし、その目の前の人が社内の別の人を説得しようとする際には、同量の熱意を持つことは難しいため、ロジックが必要になります。また、もしその投資が妥当だったのか監査で論点になるようなことがあれば、合理的だと説明できるロジックは必須になります。

仮説に対する根拠とそのロジックは、車の両輪のようなもので、片方だけでは前に進みません。仮説を作った後には必ずその根拠を明確にして、説明できるロジックがあって初めて仮説が価値を発揮できるのです。

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鈴木 眞理(すずき・しんり)
Datable VP of Sales
1981年生まれ。早稲田大学教育学部卒。2005年キーエンス入社。工場、設備メーカー向けに制御機器の営業を行う。11年SAPジャパン入社。インサイドセールスを経て、化学・石油業界担当のエンタープライズ営業に従事。15年オープンテキストに入社し、SAP経由のOEM販売を担当。16年freee入社。セールス、カスタマーサクセスのマネージャー、セールスイネーブルメントを担当。マネジメントするチームから全社売上1位メンバーを複数輩出。22年より現職。マーケティング、セールス、カスタマーサクセスなどGo To Marketに関わる領域全体の責任者を務める。SNSやウェブメディアを通して営業についてのナレッジを精力的に発信し続けている。

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(Datable VP of Sales 鈴木 眞理)

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