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日本人は「イスの座り方」を誤解している…腰痛リスクを遠ざける「正しい座り方」のコツ

プレジデントオンライン / 2023年9月2日 12時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/mapo

日常生活で、腰痛のリスクを減らすにはどうすればいいか。柔道整復師・鍼灸師である熊田祐貴さんは「大事なのは、お腹にきちんと負荷がかかっているかどうかだ」という。著書『読んで防ぐ腰痛の本』(啓文社書房)より、日常生活のチェックポイントを紹介する――。

■歩く時、股関節を使えていない人が多い

からだの使い方にはすべて「正解」があります。なかでも意外とできていないのが、運動学的に見る「正しい歩き方」です。

図表1をご覧ください。どのタイミングでどの筋肉を使っているかが、歩き方のポイントになります。例えば、脚を踏み出す動作Aで使われる筋肉と、脚で地面を蹴り出す動作Cで使われる筋肉は異なります。間違った歩き方をしていると、腰を含めて本来使われるべき筋肉以外が痛くなったり疲れたりします。

歩行周期
出所=『読んで防ぐ腰痛の本』

なお、多くの人が地面を蹴り上げる動作Dができなくなっています。地面を蹴り上げる時に股関節をぐっと前に押し出すようにして歩けていれば正しい歩き方といえるのですが、股関節を使うこと自体ができなくなっています。

■ポイントは「お腹の筋肉をしっかり使っているか」

かかとをどのように着けばいいか、歩幅は何cmで歩けばいいか、といったことではなく、ポイントは、お腹に負荷がかかる歩き方ができているかどうか。つまり、地面を蹴り出す動作Cと蹴り上げる動作Dの時に、股関節が伸びてお腹の筋肉がしっかり使われているかどうかが重要なのです。

股関節を伸ばしてお腹を使うためには、歩幅を広めにすること。前に大きく踏み出すのではなく、坂道を上るような感覚で歩くといいでしょう。この歩き方ができていれば、お腹に負荷がかかっている感触があるはずです。

お腹を使って正しい歩き方ができるようになると、だんだんお腹が疲れてきます。歩く時のからだのブレをお腹で止めているからです。正しい歩き方ができていれば、そのうち小走りした時や階段を上った時にお腹に負荷がかかっているのが感じられ、自然と腹圧が高まっていることに気づくようになるでしょう。このように、歩く時の負荷がお腹にかかっていれば「正解」です。

■すり足や小股でラクをするのはやめよう

また、歩く時にお腹を使えていないと背骨のS字カーブが失われ、地面からの衝撃が背中や腰まわりにダイレクトに伝わって腰痛になりかねません。坂道を上るような感覚で歩いてお腹をしっかりと使い、腰痛を予防しましょう。

ところでなぜ、お腹を使った歩き方ができないのかというと、お腹を使わずに歩くほうがラクだから。お腹の筋肉を使えていない人は、脚を持ち上げられずにすり足気味だったり、そろそろと小股で歩いたりしているはずです。恐らくラクな歩き方がクセになっているのでしょう。

脚を高く上げて大股で歩くほうが足腰に適度な負荷がかかるため、必然的に筋力低下を防ぐことができるのですが、人間はついラクなほうに流されてしまうのです。

このように歩き方ひとつとっても、日常生活の中でいかに筋肉を使っていないかがわかります。ラクする日常生活=ふだんからラクな動き方をしていると筋力が低下して、ちょっとからだを動かしただけで疲れやすかったり、からだに痛みが出たりして、からだ全体が「弱く」なってしまうのです。

■座る時もお腹に力が入っているかが重要

正しい座り方(座位姿勢)も運動学で定められています。座り方の種類はさまざまあり、椅座位(イスに座った状態)、長座位(上半身を起こして両足を伸ばした状態)、半座位(上半身を45度程度起こした状態)などと呼びます。ここでは椅座位について説明します。

イスに座った時の姿勢の取り方のポイントはまず、あごを引くこと。この時、お腹に力が入るかが重要になります。ただ、座っている時にお腹の筋肉を使っているかどうかは、なかなか実感できないと思います。あごを引くとお腹に力が入るという感覚をつかむために、簡単なセルフチェックをしてみましょう。

イスに深く腰かけた状態で、視線を落とさずに人差し指であごを押してみましょう。後ろに倒れないようにするために、お腹にぐっと力が入りませんか? これが座位姿勢でのお腹の力の入れ方で、からだが軸からブレた時に力を発揮するのが、体幹の深部にある腸腰筋なのです。

■1日平均7時間座る日本人に大事な筋肉

図表2の右図のようにあごが前に突き出ていると、腸腰筋に力は入っていません。また、あごを引いた時に顔が下を向いてしまっていても、腸腰筋に力が入りません。左図のように顔と視線はほぼ水平を保ったまま、あごを引くようにしましょう。

正しい座り方(坐骨座り)と悪い座り方
出所=『読んで防ぐ腰痛の本』

直立同様、座位の場合も姿勢保持のために抗重力筋が重要な役割を果たしています。腸腰筋も抗重力筋の一部で、抗重力筋がはたらいているかどうかは実感しにくいのですが、1日平均7時間も座っている日本人にとっては特に大事な筋肉です。

座位の場合も見た目の「形」ではなく、どこの筋肉を使っているかが重要になります。

■前かがみで猫背、巻き肩になっていたら要注意

例えば、図表3をご覧ください。

仙骨座りは腸腰筋が使えているかがポイント
出所=『読んで防ぐ腰痛の本』

この座位姿勢は、「仙骨座り」と呼ばれています。背もたれに寄りかかって猫背のようになっており、骨盤が大きく後傾しています。骨盤の後ろにある仙骨が座面に接し、イスからずり落ちそうになっているからだを支えています。

この座り方は基本的には「悪い姿勢」といわれていますが、腸腰筋が使えていれば、私は間違った座り方ではないと考えています。抗重力筋がきちんと使われていれば、その姿勢は「正解」なのです。これが私の考える正しいからだの使い方になります。

また、デスクワークをしていると、長時間座りっぱなしになってしまう人もいるでしょう。足腰を動かさないでいると股関節の可動域が狭くなって、腰痛を引き起こしやすくなります。また、作業する時は前かがみになるので、背中が丸まって猫背になっている人や、肩が内側に入って巻き肩になっている人もいます。どちらの姿勢も骨盤のゆがみがかかわっており、不良姿勢は腰痛の原因になります。

■腰痛になりにくい「坐骨座り」を心掛ける

デスクワークで正しくからだを使うためにはまず、骨盤を立てて座ること。骨盤が立っている時は、直立と同じような位置に骨盤があり、背骨のS字カーブも適切に保たれています。この座り方を「坐骨座り」と呼び、骨盤が倒れていると仙骨座りになります。

そして、先ほどセルフチェックで行ったようにあごを引いて、腰から前かがみになります。すると、腸腰筋に力が入った状態になるため、この姿勢でデスクワークをするのが「正解」です。お腹に力を入れたまま作業すれば、腰痛になりにくくなるでしょう。

ちなみに、イスから立ち上がる時の正しいからだの使い方は、股関節を曲げたまま(中腰)の状態で立たないこと。股関節が曲がっている時に腰を動かすと、腰に過度な負担がかかってしまいます。股関節をきちんと伸ばしてから立ち上がるようにしましょう。

■適度に寝返りを打てる姿勢が「正解」

本書の第1章では「使いすぎた腰は睡眠で回復させる」ことが必要であると説明しています。

質の高い睡眠を取ってからだをしっかり回復させるために私が唯一、重視している動作がきちんと「寝返り」が打てるかどうか。適度に寝返りを打ちながら眠れていれば、それは「正解」です。

近頃、快適に睡眠を取るためのさまざまな寝具が販売されていますが、どんなにいい枕やマットレスを使っていようとも、同じ体勢で何時間も寝続ければ、そのうち腰が痛くなります。図表4のように、理想的な姿勢で寝続けることはできないのです。

理想的な寝姿勢と寝具(敷布団・ベッドマット)の選び方
出所=『読んで防ぐ腰痛の本』
熊田祐貴『読んで防ぐ腰痛の本』(啓文社書房)
熊田祐貴『読んで防ぐ腰痛の本』(啓文社書房)

腰に負担をかけないようにするためには、寝ている時も適度にからだを動かす必要があるのですが、なかには「腰が痛くて寝返りが打てない」という人もいます。寝返りが打てないのは、だいたいが腰まわりの筋肉がかたくなっているせいです。

寝返りが打てないからといって新たに寝具を買い替えるよりも(どのみち、寝返りは打てないでしょうから)、毎日少しずつでいいので、寝た状態でからだをコロコロと左右に動かしましょう。からだを動かして筋肉をほぐすほうが、よっぽど腰痛対策になります。

ちなみに、極端にやわらかすぎたりかたすぎたりする寝具は背骨に影響するので、できれば避けたほうがいいということはお伝えしておきます。

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熊田 祐貴(くまだ・ゆうき)
柔道整復師、鍼灸師、花園駅前鍼灸整骨院院長
2013年、京都で花園駅前鍼灸整骨院を開業。たった1回で、つらい腰痛を治す施術は口コミで広がり、『女性自身』で「神の手をもつ治療院」として取材を受ける。リピート率は90%以上を誇り、高度な治療技術は、全国からプロの整体師が学びに来ている。ライフワークは、日本人の痛みの概念を変えること。生活習慣や日常生活による「痛みの根本原因」に日本人が意識を向けられるよう、講演会やセミナー、各マスコミにて意識改革に取り組んでいる。

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(柔道整復師、鍼灸師、花園駅前鍼灸整骨院院長 熊田 祐貴)

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