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これができないと孤独な老後が待ち受ける…75歳・弘兼憲史が「60代になったら徹底すべし」と説く会話中の態度【2023上半期BEST5】

プレジデントオンライン / 2023年8月22日 18時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Jelena83

2023年上半期(1月~6月)、プレジデントオンラインで反響の大きかった記事ベスト5をお届けします。老後部門の第2位は――。(初公開日:2023年2月1日)
愛される年輩者の共通点は何か。漫画『島耕作』シリーズなどで知られる漫画家・弘兼憲史さんは「60代からは“話すより聞く”ことだ。相手が話し終わるまでじっと我慢することが、人生後半を豊かにする」という――。

※本稿は、弘兼憲史『弘兼流 60歳から、好きに生きてみないか』(三笠書房)の一部を再編集したものです。

■「聞き上手」が60代からの人生を豊かにする

歳を重ねると、人の話を最後まで聞けなくなる人が多くなります。

面倒に感じるのですね。がまん強さがなくなるわけです。

たとえば、話が一見、簡単に思えるときにそういう傾向が強くなります。

「○○に気をつけて」
「わかってるよ」
「ほんとうに大丈夫?」

と聞けば、

「わかったと言ってるだろう!」

何度も言われると、相手の話を最後まで聞けず、怒り出すこともあります。いわゆる逆切れです。

年配者が嫌われるのがここです。相手がよかれと思い確認しているのに、「しつこい」「年寄りだと思ってバカにしている」と受け取ってしまうわけです。

いわゆる「年寄り扱いされた」というやつです。

年寄り扱いされていいじゃないですか。若ぶって失敗したり、相手を心配させたりするよりはるかにいいと思います。人の話をしっかり聞くだけですよ。

「お年寄り、そんなに急いで、どこに行く」

と言いたいですね。

人の話はゆっくり聞いてあげてください。きっと「あの人は聞き上手だから話しやすい、感じがよい」と思ってくれます。

異性にモテるのも、聞き上手が一番。相手が話している途中で話したいことがあっても、相手が話し終わるまではじっと我慢、我慢。それが後半の人生を豊かにしてくれます。

同じことですが、威張る人は、間違いなく嫌われます。

人はなぜ威張るのか? 「虚勢を張る」という言葉がありますし、「実るほど頭を垂れる稲穂かな」という言葉もあります。実力がある人ほど、他人に対して謙虚になるという意味です。威張るという行為は、みっともない、あるいは品がないということになりそうです。

■「逆らわず いつもニコニコ 従わず」

10年ほど前のことですが、プロ野球で使われている統一球が、公表されないまま、昨シーズンより飛ぶものに変更されていたというニュースがありました。

当時、日本野球機構は記者会見を開き、事務局の独断だったと説明しました。

加藤良三コミッショナーが「調整されていたことを全く知らなかった。不祥事を起こしたとは思っていない」と平然と言ってみせたのは、情けない光景でした。

現場の監督、選手らへの報告が一切ないまま、選手の評価を大きく左右するボールに手が加えられていたのです。選手会はレッドカードを突きつけました。

上司は、部下の過ちを受け止める人であること。その信頼があるから人がついてくるのです。

コミッショナーがほんとうに報告を受けていなかったのなら、さらに問題です。

部下は、コミッショナーに報告しても仕方がないと思っているわけですから。それに気づかず、言い逃れ発言をするのはやはり悲しいですね。

話すより聞く。威張るより笑う。

これが60代からの生き方でしょう。

「逆らわず いつもニコニコ 従わず」

これは、産婦人科医・昇幹夫さんが、著書の中で紹介していた言葉です。この言葉、いいですよね。

これを実践していたら、嫌われることはないし、自分を見失うこともありません。

60代からは好かれることが大事です。嫌われたら、孤独になるだけなのですから。

愛される60代をめざしましょう。

■「ゆっくり力」で人とつき合う

20代、30代の若者も、いずれ誰もが歳をとります。

たとえば、かつて大ヒットしたドラマに『踊る大捜査線』があります。

織田裕二さん演じる「青島」という若い刑事とコンビを組むのは、今は亡き名優・いかりや長介さんが演じたベテラン刑事「和久さん」です。

暴走する青島刑事をたしなめ、指導していくのが和久さんの役目。この「若者と老人」の関係はある意味、鉄板ともいうべき名コンビの原型です。不滅の関係であり、仕事をする、人を育てるという意味でもなくてはならない関係といえます。

カフェで商談をしている高齢な社員
写真=iStock.com/Koji_Ishii
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Koji_Ishii

ベンチャー企業が倒産したり、モラルを逸脱したりするのは、じつは経営陣に「若者と老人」という関係への意識がないのも要因の一つだといわれています。

「老人力」などという表現もありますが、年配者の経験、知恵はほんものなのです。

人間とは補完し合う関係ではないでしょうか。

おたがい、足らないものを補い合う関係です。その典型が夫婦・男女ですが、「若者と老人」という関係も大いなる補完関係にあると思います。

老人は、歩みがゆっくりですが、その分、周りがよく見えます。たとえていえば各駅停車で景色を見ながら旅行をしているようなものです。若者は目的地に向かって新幹線や飛行機で行きたがります。最短で行くことも必要ですが、いろいろなところに配慮しながら進むことも、また必要なのです。

目的地に早く着いた若者が、ゆっくりやってくる老人を待つ――その時間がじつはいろいろなことを考えさせる、大切なものになるのではないでしょうか?

60代のゆっくり力には意味があると思います。

■「いつでも質問してこい」というやさしいまなざしを持つ

アカデミー賞作品賞を受賞した『アルゴ』という映画がありました。

この映画は、老人の存在について多くの示唆を与えてくれます。

ストーリーは、イランの首都テヘランで起きたアメリカ大使館人質事件と、その裏で敢行されたCIA(アメリカ中央情報局)による救出作戦の行方を追いかけたものです。

人質になったアメリカの大使館職員を救い出し、イラン国外に連れ出すために、CIAは架空の映画を作るという作戦をとります。「アルゴ」とは、架空のSF映画のタイトル名です。

この計画に、ハリウッドの特殊メークのプロと映画プロデューサーが参加します。2人は60歳を過ぎています。

業界でそれなりの実績と地位を持った2人が、若きCIAエージェントと組んで、専門家として見事に救出のための仕事をやり遂げます。「やっぱりベテランは違う」とその安定感に拍手を送りながら映画を観た人も多いと思います。

2人のベテランは、若きCIAエージェントを時に恫喝し、時にやさしく肩を抱き、説得していくのですが、その姿はまさに各駅停車の速度でした。

逆に若いCIAのエージェントは上司にぶつかりながら行動していきます。その突破力は若者ならではです。おたがいが補完し合いながら、とてもいいバランスでこの計画は実行され、成功します。

この話はフィクションではなく、事実なのです。「若者と老人」という関係に潜む大きな可能性を示す作品でした。

老いの領域に入った今こそ、若者たちにゆっくり歩く姿を見せることが重要だと思います。

でも60代のあなたがすべき生き方は、自分から「教えること」ではないと思います。

聞かれたら答えること。それでいいはずです。いつでも質問してこい、というやさしいまなざしを持つことです。そこには孤独の影はありません。

自分の意見を述べるスーツを着たマネージャー
写真=iStock.com/maroke
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/maroke

■人の性質は年齢で単純に分けられない

「最近の若い人が考えていることはわからない」

思わずこういう言い方をしたことはありませんか。でも、違う世代の考えることがわかるほうが、じつはおかしいとは思いませんか。

かつてあなたも若者だったときは、年配者から同じことを言われたはずです。

だからぼやくこともないわけです。紀元前のギリシャでも年配者たちは同じように「若者の様子」を愚痴っていたという記録が残っています。

若者でも年配者のように考える人がいますよね。逆に年齢に関係なくいつまでも挑戦心を失わない人がいます。

つまり人は年齢で単純に分けられるものではないということです。

『最強のふたり』というフランス映画があります。日本でもヒットしました。

ご覧になっていない方のために少しストーリーを説明しましょう。

不慮の事故で全身麻痺になってしまった、大富豪の男性・フィリップ(50代半ばを超えています)が、自分の世話をしてくれる男性を探します。下の世話までしなくてはならないという仕事です。お金持ち、障害者ということもあって、かなりわがままな頑固おやじという設定です。

面接にやってきたのは、スラム街出身の黒人青年・ドリス。彼はフリーターで、現在無職です。失業保険の申請に必要な不採用通知をもらうことが目当てでした。

そんな動機ですから、真剣に面接を受けようなどという気持ちはまったくありません。身体障害者の世話をするというのにもっとも向かないタイプの人間です。

意外なことにフリーターの若者は採用されます。頑固おやじとフリーターの若者との心の交流を描いた物語なのですが、この話は実話を元にしています。

なぜ、彼が選ばれたのでしょうか?

フィリップが言います。

「彼はわたしのことを特別扱いしなかった」

それが理由だったのです。

障害者だから、金持ちだから、という視点が青年にはありませんでした。ただただ、雇い主を人間として見てくれる。それが男性にはうれしかったわけです。

そうして、年齢もこれまでの環境も異なる2人が、お互いを認め合い、友情を育んでいきます。

■バリアを張らず「相手の目線」で話してみよう

映画の中でフィリップの恋が語られます。彼には文通している女性がいます。青年は会うべきだと主張します。なぜなら、フィリップは会いたいと思っているからです。

弘兼憲史『弘兼流 60歳から、好きに生きてみないか』(三笠書房)
弘兼憲史『弘兼流 60歳から、好きに生きてみないか』(三笠書房)

フィリップは恋などできないと言います。理由は「障害者だから」「歳だから」、さらに「金持ち」さえも恋ができない理由だというわけです。男性は勝手に自分の限界を決めていたのです。

青年は無理やりデートをセッティングしてしまいます。デートの場所に行かなければならなくなったフィリップは……結果はぜひ映画を観てください。

やっぱり自分でバリアを張ってはいけません。

とくに60代からはそうです。

自分から現場に降りていく、そんな気持ちが必要です。それは、媚びるというのとは違います。

幼児に話しかけるときは、しゃがんで話をしましょう、といわれます。これは日常の生活でも同じ。まず目上(というように上の者として見られているのですから)のほうから、若者に近づいていくことで、きっと新しい発見がありますよ。

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弘兼 憲史(ひろかね・けんし)
漫画家
1947年、山口県生まれ。早稲田大学法学部卒業後、松下電器産業(現・パナソニック)に入社。74年に漫画家デビュー。作品に『人間交差点』『課長 島耕作』『黄昏流星群』など。島耕作シリーズは「モーニング」にて現在『会長 島耕作』として連載中。2007年紫綬褒章を受章。

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(漫画家 弘兼 憲史)

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