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「いい国つくろう鎌倉幕府」にこだわる人は脳が老化しやすい…和田秀樹「うつ病予防に有効な頭の使い方」

プレジデントオンライン / 2023年9月7日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/imtmphoto

どうすればうつ病を予防できるのか。医師の和田秀樹さんは「運動はホルモンの分泌をうながし、セロトニンの分泌を促進する。また、常に勉強して新しい知識を身につけることも、前頭葉の働きをよくする効果がある」という――。

※本稿は、和田秀樹『70代、80代を楽しむためにこれだけは知っておこう!』(かや書房)の一部を再編集したものです。

■40歳以上はうつ病に注意

日本人の1割から2割ほどが、病気というほどではない程度のうつ状態と言われています。

厚生労働省は「18歳未満のうつ病の人にはなるべく薬を使わないように」という方針を示し、日本うつ病学会も「25歳までの患者さんはカウンセリングで治すように」と言っています。

ところが、各種の統計をとってみると、40歳を超えると薬のメリットがうつ病の薬の副作用を上回ると考えられています。

うつ病の薬にはいろいろなものがありますが、基本的には脳内の神経伝達物質・セロトニンを増やす働きをします。

つまり、歳をとってセロトニンが減り、その結果、うつ病になったと考えられるわけです。

■うつ病の脳ではセロトニンが不足

セロトニンは、ストレスによるイライラを抑えて、心身の安定や心の安らぎなどにも関与することから、「幸せホルモン」とも呼ばれている脳内物質です。

精神病(うつ病と統合失調症の2種類を言います)が神経症と大きく異なる点として、「他人から見れば何の原因もない(ように見える)のに患(わずら)う場合がある」があります。

うつ病というと、親が死んだとか失恋したとか、失業のショックなどが原因で罹る病気だと思われています。たしかに、そういった原因で罹る人もいます。

しかし、原因がないのに、うつ病になる人もいます。脳内の神経伝達物質に何らかの異常が起こっているからであり、やはりセロトニン不足と考えられます。

つまり、「原因」か「結果」かは解明されていませんが、うつ病の脳ではセロトニンが不足しており、脳内のセロトニン量が増えれば、うつ病は改善されるということです。

なお、セロトニンは、肉を食べてタンパク質をとったり、太陽の光を浴びたり、運動することによって増加します。

■「夜中に何度も目が覚める」はうつ病の初期症状

うつ病の患者さんの睡眠の特色は、「熟眠障害」と「早朝覚醒」です。

心配事が多くて、寝つきは悪いけれども、いったん寝てしまうと朝までぐっすりと眠ってしまうという人は、セロトニンが十分に足りていて、うつ病の可能性は低いと考えていいでしょう。

ところが、夜中に3回も4回も目が覚める場合は、セロトニンの量が減少しており、うつ病の初期症状ではないかと考えられます。

夜彼の問題について考えて不眠症と睡眠障害に苦しんでいるベッドのアジア人男性
写真=iStock.com/yanyong
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/yanyong

70代以降であれば、年齢的に夜中に何度も目が覚めても不自然ではありませんが、

40代、50代であれば、歳のせいではなく、うつ病を疑うべきです。

70代以降でも、急にそうなったのならうつ病を疑うべきです。

■「おいしく感じられない」「食欲が落ちる」はうつ病サイン

2010年に、「お父さん、眠れてる?」というポスターがあちらこちらで貼られていたのを覚えているでしょうか。

これはうつ病の初期症状の方を専門医に誘導し、うつ病が原因の自殺を減らそうという政府の対策で、実際に自殺が激減しました。

「もしかして私はうつ病では?」という疑いを持ったら、まずは専門医で薬をもらうことです。

うつ病になると、今までおいしいと食べていたものがおいしく感じられなくなってきて、食欲が落ちてきます。これはうつ病の初期症状です。

ほか、仕事の能率が低下すると同時に、気分も落ち込み、「自分なんかいても邪魔じゃないか」など、自責の念がうかんできます。

■忙しい人でもうつ病にかかる

「私は忙しくて、うつ病になんかなっている暇はない」と考える方は、うつ病を誤解しています。

どんなに忙しい人でもうつ病に罹患します。

「憂鬱な気分が続いている」「何をやっても楽しくない」というのも、うつ病の顕著な特徴です。

ほかにも、「疲れやすい」「気力がない」「熟睡できない」「朝早く目が覚めて、その後眠れない」「イライラが続く」「自分を責める気持ちになる」「自分は価値のない人間だと思う」「食欲が落ちる」「ダイエットをしているわけでないのに体重が減る」といった症状があります。

これらの症状が2週間続き、3週間目に入ってもまだ続く場合は、うつ病の可能性があります。

■インフルエンザと同じ「誰でもかかる病気」

日本には約300万人のうつ病患者がいると言われています。そのうち、医者にかかっている人は100万人ほどです。

女性の15~20%、男性でも10%前後の人が、一生のうち一度はうつ病になると言われています。

季節性インフルエンザは毎年、日本人の10人に1人が感染すると言われています。

つまり、うつ病はインフルエンザと同じように、誰でもなりうる、ごく一般的な病気なのです。

心の病気の患者数の推移
出所=『70代、80代を楽しむためにこれだけは知っておこう!』

■「心のコントロールができる人」はうつ病になりにくい

中高年のうつ病はセロトニンの不足が原因であることが大多数です(それでも薬だけではなく、カウンセリングも必要なことは多いのですが)。

多くの場合、専門医を受診し処方される薬を飲むと楽になります。

食べ物もおいしく感じられ、食欲も出てきて、眠りの質が上がり、夜中に目が覚めなくなるのです。

精神的ショックを受けたとしても、うつ病になる人とならない人がいます。

自分の心のコントロールができる人と、できない人の違いだと思われます。

心のコントロールができる人は、ショックを乗り越えることができます。

ただ、心のコントロールができない人だと、ある一定以上に落ち込むことを阻止できないのです。

ウィズコロナの現在、誰もがうつ病に罹かりやすい状況になっています。

ですから、こういったときこそ、「うつ病になりにくい思考パターン」を身につける必要があります。

■軽い運動でうつ病が改善する

運動はホルモンの分泌をうながし、セロトニンの分泌を促進します。

セロトニンが足りてくれば、うつ病や神経症が改善するだけでなく、不安を感じにくくなります。

セロトニンの量は年々減少していきます。セロトニンが不足すると、ノルアドレナリンやドーパミンとのバランスが崩れます。その結果、外出が億劫になると、肉を食べる量も減り、セロトニンの量がますます減少してしまいます。

軽い運動や歩くだけでもいいのですが、一番おすすめなのは自分の好きなスポーツをすることです。

楽しく身体を動かすのは気晴らしにもなり、免疫力も活性化します。

ストレス量と運動の回数別 抑うつ傾向
出所=『70代、80代を楽しむためにこれだけは知っておこう!』
スポーツの頻度と日常生活における充実感
出所=『70代、80代を楽しむためにこれだけは知っておこう!』

日本人は、「身体の休養」と「心の休養」が異なることを理解できていない場合が多々あります。

例えば、肝臓や腎臓が悪くて入院するといった場合は絶対安静です。

しかし、うつ病では寝てばかりいるとかえって悪くなることも多いので、入院中も運動させます。

うつ病の人がパチンコやテニスをしているのを見て、「あいつ、会社をサボっているよ」などと非難する人がいます。

この見方は間違っています。この人は心の休養をしているのです。

身体の病気であれば、テニスしていれば仮病と思われても仕方がありませんが、心の休養は身体を休ませることではないのです。

■うつ病になると免疫力が下がり、がんになるリスクも

うつ病になると、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)の活性がかなり低下します。

逆に、笑うとNK細胞の活性が上がることが証明されています。

ストレスの多い生活を送り、心の休養ができていないと、NK細胞の活性が下がり、知らないうちにがん細胞が増殖し、5年後、10年後にはがんになってしまう場合があります。

■「間違いに気づく」と前頭葉が刺激され、うつ病にも効果

一定の年齢以上の方であればお馴染みの「いい国(1192)つくろう鎌倉幕府」ですが、現在では「1185年成立説」が一般的となっており、「いい箱(1185)」に変わってしまいました。

鎌倉の大仏
写真=iStock.com/Burak Can Oztas
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Burak Can Oztas

ほかにも、「江戸時代には士農工商という身分制度があった」という記述が歴史の教科書からなくなっています。

また、1970年代までは、太陽系の惑星は「水星、金星、地球、火星、木星、土星、天王星、海王星、冥王星」の9つで、しかもこの並び順だと学校で教わりました。

和田秀樹『70代、80代を楽しむためにこれだけは知っておこう!』(かや書房)
和田秀樹『70代、80代を楽しむためにこれだけは知っておこう!』(かや書房)

その後、「水金地火木土天冥海」となり、その後冥王星は惑星の定義に該当しないことがわかり、現在は準惑星に格下げされてしまいました。

このように、教科書に載っていて試験に出るような知識でさえ、時代とともに変わることがあります。以前の知識にこだわらず、常に勉強して、新しい知識をインプットしていくほうが良いでしょう。

新しい知識を学び、今まで正しいと信じていたことが間違いだとわかったとき、あなたの前頭葉は大きな刺激を受けます。

「磁気治療」という治療は、うつ病の治療に使われることもありますが、前頭葉の働きをよくすると言われています。

新しい知識を学ぶのはこれと似た効果があるのです。

日々学ぶことは、自信にもつながります。

いくつになっても頭のなかを常にアップデートしていこうという意気込みで、仕事や趣味に関係ない雑学なども幅広く勉強し続けていくことが重要です。

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和田 秀樹(わだ・ひでき)
精神科医
1960年、大阪市生まれ。精神科医。東京大学医学部卒。ルネクリニック東京院院長、一橋大学経済学部・東京医科歯科大学非常勤講師。2022年3月発売の『80歳の壁』が2022年トーハン・日販年間総合ベストセラー1位に。メルマガ 和田秀樹の「テレビでもラジオでも言えないわたしの本音」

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(精神科医 和田 秀樹)

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