ロジカルな仕切り屋を意のままに動かすにはこう言えばいい…4タイプ別「相手を動かす」キラーワード
プレジデントオンライン / 2023年9月1日 7時15分
※本稿は、吉田幸弘『部下も上司も動かす 武器としての伝え方』(自由国民社)の一部を再編集したものです。
■忖度ではなく、上司の特徴を把握しているか
部下を上手に動かすために、部下の動きの源を知りましょう。これは部下から上司に対しても同様です。
ここで質問です。
上司の特徴を、どれだけ知っていますか?
実はあまりよくわからないという人がほとんどです。
同じ上司にいつも同じダメ出しをくらっている人もいるかもしれません。
一方でごく一部、上司のことをしっかり把握している人がいます。
だからといって、上司の食べ物や趣味などをリサーチして忖度しろと言っているわけではありません。
忖度(そんたく)が嫌いな上司もいるでしょうから、逆効果になります。
ただのおべっかは意味がありません。
■上司が頻繁に口にする言葉にヒント
ではどこをゴールにすればいいのでしょうか。
ひと言で言えば、「上司が仕事をするのに最適な環境を提供する」ことです。
①上司が仕事において何を重視しているか
たとえば上司と話している際に、「コスト」「成果」「時間」「コミュニケーション」「お客様」の5つの中によく出てくるワードがあれば上司は強く意識しています。
何かを提案する時、そこが強く解決すると伝えればいいわけです。
・成果重視→「20万円の投資が必要ですが、40万円得られます」
・時間重視→「朝礼を週5回から3回に減らすことで、営業にかける時間が増えます」
・コミュニケーション重視→「月に1回、業務部と合同でランチ会をしましょう」
・お客様重視→「C社の部長が代替商品の準備を強く望んでいます」
■「発信重視」「受信重視」の人の3つの特徴
②相手好みの説明、プレゼン、キラーワードを使うこと
ここで関連して知っておくといい4つのタイプに分けて特徴をお伝えしていきます。
基準としましては縦軸を論理重視か感情重視としています。
論理重視の人は「仕事において大事なのはロジカルさ」と思っています。
一方の縦軸下側の感情を重視するタイプの人は「人間関係」を重視しています。
「仕事において大事なのは人間関係」と考えます。
究極の論理重視の人は人間関係を後回しにし、究極の感情重視の人はある人が悩んでいたりすると仕事そっちのけで相談に乗る場合もあります。
![【図表】知っておくといい4つのタイプ](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/9/6/1200wm/img_96d85b3af8e9dae1688b784546275bd3246064.jpg)
次に横軸の基準について触れていきます。
横軸は発信型と受信型に分かれます。
発信型の人には次の3つの特徴があります。
② 新しく何かをするのが好き
③ 仕切るのが好き
逆に受信型の人は次の3つの特徴があります。
② 新しいことをして失敗するリスクは避けたい。ルーティンワークのような仕事が得意
③ 指示を受けて仕事をする方がいい。マニュアルなど規則に沿って仕事を進めたい
■支配者タイプにはどんどん頼るといい
それでは縦軸と横軸を組み合わせた4つのタイプの方の特徴とどのような言葉を伝えると行動に移してくれるかを解説していきます。
①支配者タイプ:論理重視×発信型(利益獲得型)
損得を考えて行動するタイプです。
無駄なことを嫌う傾向にあり、最短の時間で最大の成果を出すことを強く意識している。自分にも他人にも厳しいところがある。
このタイプの人は最終的に自分で決めたいタイプ。
数字でしっかり得になることを示しましょう。
また、このタイプの上司にはどんどん頼るのがいいです。
部下がこのタイプなら、あまり褒める必要はないでしょう。
失敗した場合は「○○さんらしくない」と普段から信頼していることを示せば、「せっかく信頼されていたのに申し訳ない」と頑張るタイプです。
②分析家タイプ:論理重視×受信型(損失回避型)
論理的に考えることが得意で、常にリスクがないかを鑑みているタイプです。
数字やデータなどを分析するのが得意な半面、判断するのにできるだけ多くのデータを検証するため時間がかかってしまうことがあります。
支配者タイプが簡潔さを好みA4で一枚の提案書を作成すると、このタイプの人は何十枚もの提案書を作成することがあります。
「何かあった時のために提案書に全部入れておかないと」と考えるタイプです。
このタイプの人を動かすには「いかにリスクが小さいか」を伝えることです。
このタイプの部下への褒め言葉は「深い分析力」「データが秀逸」といった仕事そのものに言及するのが良いでしょう。
時にこのタイプは慎重になりすぎて前に進めない、資料作成に時間をかけすぎてしまう場合があります。
■裏方役は雑用を押し付けられることも
③補助者タイプ:感情重視×受信型(実績重視型)
穏やかで接しやすいタイプです。
笑顔など表情も豊かだし、気配りも上手です。
ただし周囲の人間関係を気にしすぎて前に進めないこともあります。
新しいことを創造したり、自分から能動的に動くのは苦手です。
主役になるより脇役になって周囲を支えたいタイプです。
この人は周りに喜んでもらいたいと常に思っているので、「後工程の人がラクになる」「このシステムを導入すればそれぞれの業務に集中できる」といった費用などのコスト面より、時間節約などの便益を重視する傾向にあります。
「皆が喜ぶ」などの言葉に弱いです。
また、新しいことにはリスクを感じる面もあり、実績を気にする傾向があります。
我慢強い点および進んで裏方役をやってくれるので、つい雑用を押しつけてしまう場合もあります。
![頼まれ事の業務量が多すぎて焦っているビジネスマン](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/8/7/1200wm/img_87a13edcee845abbef9af328cfe1e675228808.jpg)
④発明家タイプ:感情重視×発信型(ノリ重視型)
皆を巻き込みながら新しいことへ挑戦していくタイプです。
創造性が豊かであり、感覚で物事を考えるタイプです。
どんどんアイデアが出てくるせいか話が飛ぶことがあります。
また感覚で話すために「ガンガン」「パーッと」といった擬態語をよく使う傾向があります。
一方でアイデアを考えるのは得意ですが、計画に落としたりするのが苦手です。
■「エトス・パトス・ロゴス」が説得の条件
アリストテレスは著書『弁論術』(岩波書店)の中で、言論を通してわれわれの手で得られる説得には3つの条件があると言っています。
![【図表】説得の3つの条件](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/7/0/1200wm/img_7060f66e4e166233aced276b010d4dc2181477.jpg)
② 聞き手の気分(=パトス)
③ 内容の正しさ(=ロゴス)
「話し手の人柄」「聞き手の気分」「内容の正しさ」は弁論術においてそれぞれ「エトス」「パトス」「ロゴス」と呼ばれています。
人は同じ内容の話でも誰が言ったかによって、受け入れようか否定しようか変わってくるのではないでしょうか。
「同じ内容なのにあの人の意見ばかり通るのはなぜだろう」
「自分がミスしたら怒られたのに、彼が同じことをミスしても怒られないのはなぜか?」
「彼の頼みは1日でやってくれたのに、なんで自分の依頼は4日もかかるの?」
「同じミスをしてAさんはこっぴどく怒られたのに、彼は何のお咎めもなかった」
多少実績の差など他の要素が加味されている場合もありますが、たいていはその本人に好感を持っているか、あるいは信頼しているかがポイントになってくるのではないでしょうか。
まさに話し手の人柄(エトス)に左右されますね。
■「人」から共感される人3つの共通点
また、人はこんな人に共感します。
①ブレない(平常心を乱さない)
人が信頼を失くすのは非常事態の時です。
たとえばクレームの報告をした時、上司の器が見えるといいます。
ここで取り乱したり逃げたりする人は信頼を失います。
とにかく何かが起きても人前で心を乱している様子を見せないことが重要です。
②人によって態度を変えない(平等性)
立場の強い人には低姿勢で、自分より下の立場の人には強気でいるような忖度タイプの人は、いざという時に協力してもらえません。
どんな人とも平等に接する、これは非常に重要なことです。
③反応する(無視しない)
ほほ笑まれたらほほ笑み返す。メールが来たら返信する。この当たり前のことをしているか、していないかが実は大きな差になります。
なぜなら、人は承認欲求を強く持っており、これが満たされないと不満足になるからです。
どんなに正論であっても、人は嫌いな人の言うことには耳を傾けないものです。
エトスは難しいことに日々の蓄積が求められますが、継続していきましょう。
■上司のマーケティングには「パトス」を意識する
2つ目は説得される側の聞き手の気分(パトス)です。
説得対象の聞き手、いわゆる上司のマーケティングが必要ということです。
決裁が通りやすい時間帯・忙しく決裁が通りにくい時間帯があります。
同じ内容なのに相談する曜日・時間帯などで上司がOKしてくれる場合もあればNGになる場合もあります。
「機嫌の良い日だったら提案も通るのに、月曜日の午前中は一蹴されることが多い」というように。
![吉田幸弘『部下も上司も動かす 武器としての伝え方』(自由国民社)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/6/8/1200wm/img_6860f6ea78fd96a9bcbd6a35edfb0f6f152142.jpg)
相手を観察すれば、色々見えてくるものがあるものです。
聞き手、いわゆる上司のマーケティングが必要ということです。
ロゴス(論理)に関してはここまでお話ししてきましたように、大切です。
論理が矛盾している話には人は従おうとしないでしょう。
そして、ロゴス(論理)は、土台にエトス(話し手の人柄)、次にパトス(聞き手の気分)があってこそ活きてきます。
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人材育成コンサルタント・コミュニケーションデザイナー
1970年生まれ。大学卒業後、大手旅行会社、有名学校法人を経て外資系企業へ転職。そこで周囲のメンバーとうまくコミュニケーションが取れず、降格人事を経験する。その後、異動先で出会った上司より「伝え方」の大切さを教わり、「ポイントを絞ってわかりやすく伝える方法」を駆使して、劇的に営業成績を改善。社外でも営業コンサルタント・人材育成コンサルタント・コーチとして活動し、2011年1月より独立。現在はさまざまな業種のビジネスパーソン向けに、人材育成、チームビルディング、生産性向上、コミュニケーション術の方法を中心としたコンサルティング活動及び1on1コーチング、講演、研修等を実施している。累計の受講者数は3万人を超えている。
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(人材育成コンサルタント・コミュニケーションデザイナー 吉田 幸弘)
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