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36平方メートルの団地2DKに兄妹2人分の「個室」を作りたい…4人家族からの相談に1級建築士が知恵を絞った最終結論

プレジデントオンライン / 2023年8月27日 13時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/KatarzynaBialasiewicz

家が狭すぎてどう頑張っても子ども部屋を作れない場合、どうすればいいか。1級建築士のしかまのりこさんは「36m2の団地2DKでも、2人の子どもそれぞれの『パーソナルスペース』を確保する方法がある。模様替えだけなので引っ越しほどお金もかからない」という――。

■子どもの数だけ子ども部屋があるのが理想だが…

あなたのご自宅に、子どものパーソナルスペースはありますか?

パーソナルスペースとは、心身の安心・安全を守るために作る「個人的な空間」のこと。とくに思春期以降では、このパーソナルスペースをご自宅に作ってあげることが、子どものこころの成長を守るうえで、とても大切になってきます。このパーソナルスペース、子どもの数だけ子ども部屋があれば理想的ですが、間取りに余裕がない場合は「子どものパーソナルスペースをどこに作ろうか?」悩みのタネになります。

たとえば4人家族で都心2DK団地に住むAさん(38歳女性・会社員)のケースをご紹介しましょう。Aさんのご家庭では、2学期に入って間もなく、中学1年生になる長男の担任教師から電話がありました。

「最近、○○君が学校でぼんやりしていることが多く、すこし気になっています。ご自宅でのようすはいかがでしょうか?」

■広い部屋に引っ越す金銭的余裕はない

Aさんは担任教師といろいろ話していくうちに、自宅には長男のパーソナルスペースがないこと、狭くてもよいので長男のためのパーソナルスペースを用意する必要があることに気が付きました。しかし、間取りは2DK。どう頑張っても子ども部屋はおろかパーソナルスペースさえも作れそうにありません。引っ越しも考えましたが、引っ越し代金や高騰する家賃相場、さらに、これから重くのしかかる教育費のことも考えると、余計な支出はできません。そこで現在の住まい2DKを模様替えすることで、なんとか子どものパーソナルスペースを作れないかと当事務所にご相談にいらっしゃいました。

【相談者Aさんプロフィール】
・同居家族:夫40歳(会社員)、長男13歳(中学1年生)、長女9歳(小学3年生)
・住居形態:賃貸団地2DK

【相談内容】
・長男のためのパーソナルスペースを作ってあげたい
・いまは家族全員で就寝しているが、夫婦と子どもの寝室を分けたい
・キッチンにパントリーなどの収納を増やしたい
・TVは置かなくてもよいが動画が見たい
・ベランダに洗濯物を干せないので、室内干しできるスペースが必要

それではさっそくAさんのご自宅のようすを見てみましょう。

■中学生になっても「家族4人で川の字」

図表1は、Aさんがお住まいの築40年36m2賃貸2DK間取りのようすです。DK(ダイニングキッチン)以外に6畳の洋室と和室があります。そして、ご相談にいらしたときは図表2のような住まい方をされていらっしゃいました。また、DK・洋室・和室は図表2の紫の矢印が示すように扉でつながっています。

【図表1】築40年36平方メートル賃貸2DK間取り
著者提供
【図表2】ご相談にいらしたときの住まい方
筆者提供

和室を「家族の寝室」にしており、布団を敷いて、家族4人、川の字になって就寝されています。洋室は「リビングと子どもの学習スペース」、夫婦・子どもの衣類は和室とリビングに配置しており、またDKで食事をされていました。

■リビングに物が散らかり放題

幼児期から家族全員で就寝していたため、長男が中学生になっても家族と一緒のままでした(図表4参照)。また、勉強も兄妹で同じ机を使用している状態ですので、長男のパーソナルスペースはどこにもありません。そのほか学用品を収納する家具もないため、リビングに物が散らかり放題になっていました(図表3参照)。

【図表】長男のパーソナルスペースはどこにもなかった
筆者提供

この36m2という限られた空間で、子どものパーソナルスペースを作るためには、お持ちのソファなどを手放し、必要最低限な家具で暮らすことも検討しなくてはなりません。そのため、全体的な家具の見直しや、またレイアウトなどを変更して住まいを整え、子どものパーソナルペースを、いくつかのパターンに分けて作っていきたいと思います。

■6畳和室に子ども二人のパーソナルスペースを作る

まず、はじめに、部屋割りをします。間取りはDK・6畳洋室・6畳和室の3部屋です。DKにはテレビを置いてLDKとします。2人で使う子ども部屋は、学習机や学用品収納など、家具が多いことから広いほうの部屋を子ども部屋にしたいところです。しかし、図表5のように洋室・和室どちらも広さは6畳です。広さは変わりませんので、まずはパターン1(図表6)として、和室を子ども部屋、洋室を夫婦の寝室として部屋割りしたいと思います。

【図表5】間取りはDK・6畳洋室・6畳和室の3部屋
筆者提供
【図表】パターン1
筆者提供

図表6は、すでにお持ちの家具を部屋割りに沿って、洋室・和室に配置したようすです。子ども部屋には学習机と椅子を移動、さらに追加で同じ種類の学習机と椅子を配置しました。

■部屋は広く使えるがパーソナルスペースの独立性が弱い

押入れは、兄妹の衣類収納にして、そばには突っ張り収納を使い、カバンや鏡などの小物収納を作ります。また教科書や参考書などの学用品収納と2段ベッドも追加して、子ども部屋の完成です。妹のパーソナルスペースは、赤点線の部分と2段ベッドの上、そして、兄のパーソナルスペースは青点線の部分と2段ベッドの下になります。この2段ベッドの割り振りは兄妹で話し合って決めてもらいました。そして、体重の軽い妹が、2段ベッドの上を使うことになったそうです(図表7参照)。

【図表】体重の軽い妹が、2段ベッドの上を使うことになった

いっぽう、和室に置いていた室内干しスペースや衣類収納を洋室に移動し、夫婦のクローゼット&寝室にしています。

このパターン1のレイアウトは真ん中の動線が広いため、お部屋が広くスッキリしていますが、パーソナルスペースの独立性がすこし弱いという欠点もあります。そのため、同性の兄弟姉妹には向いていますが異性にはあまり向いていません。

そこで、Aさんからのご要望もあり、もう少し独立性の高い家具レイアウトを考えてみました。

■突っ張り式間仕切りパネルを活用

パーソナルスペースの独立性を高めるには、可能な限り、子ども部屋の空間を間仕切る必要があります。そこで、市販の突っ張り式間仕切りパネルを使い、図表8のように、子ども部屋を独立性の高いパーソナルスペースに分けてみました。青点線の部分が兄のパーソナルスペース、赤点線の部分が妹のパーソナルスペースになっています。

【図表】子ども部屋を独立性の高いパーソナルスペースに分けてみた
筆者提供

■布団はたたんでしまえば部屋を広く使える

就寝スペースも分けたため2段ベッドは使えません。そのため就寝は布団敷きになります。布団敷きは、布団の上げ下げが少々面倒ですが、布団をたたんでしまえば、それぞれのパーソナルスペースが広く使えるというメリットもあります(図表9、10参照)。

【図表】それぞれのパーソナルスペースが広く使える
筆者提供

このパターン2のレイアウトは、パーソナルスペースの独立性が高くなるため、異性の兄弟姉妹には向いています。しかし、妹のパーソナルスペースには窓がないため暗くなるほか、突っ張り間仕切りを畳などの柔らかい床に取り付けると、取り付けが少し不安定になりやすいなどのデメリットもあります。また突っ張り間仕切りが、天井の照明に緩衝する場合は、照明を小さくするなどの変更も考えなくてはいけません。そこで、兄妹双方とも、自然光の入る明るいパーソナルスペースにしたいとのAさんからのご要望を受け、さらに別の家具レイアウトも考えてみました。

■6畳洋室に子ども二人のパーソナルスペースを作る

自然光の入る明るいパーソナルスペースを2つ作るには、窓が2つあると理想的です。たとえば洋室には窓が2つあるため、窓が一つしかない和室より明るくなり、またパーソナルスペースも2つの窓を中心に作れるはずです。そこで今度は図表11のように、洋室を子ども部屋、和室を夫婦の寝室として部屋割りしてみました。

【図表】洋室を子ども部屋、和室を夫婦の寝室として部屋割り
筆者提供

こちらは、部屋割りに沿って、洋室に子どもの家具を、和室に物干しや夫婦の衣類収納等を配置したパターン3です(図表12参照)。子ども部屋に入って、手前が妹のパーソナルスペース、奥が兄のパーソナルスペースになります。

【図表】洋室に子どもの家具を、和室に物干しや夫婦の衣類収納等を配置したパターン3
筆者提供

兄妹が一緒に使う衣類収納は子ども部屋入り口付近に置き、それぞれのパーソナルスペースにはなるべく入らないようにしました。また、2段ベッドについては兄妹の話し合いで、上が妹、下は兄が使用することになりました。

■兄妹のパーソナルスペース双方に窓を確保

さらに寝台車のようにベッドにカーテンを取り付けたいというご要望から、兄のパーソナルスペースにはカーテンも取り付けてみました。それぞれのパーソナルスペースには窓があるため、パターン1パターン2に比べて明るい子ども部屋になります(図表13~15参照)。いっぽう、和室は室内干しスペースや衣類収納を配置して、夫婦のクローゼット&寝室にしています。

【図表】それぞれのパーソナルスペースには窓がある
筆者提供
【図表】パターン3
筆者提供

このパターン3のレイアウトは、動線が広いため動きやすく、またエアコンや照明が効率よくいきわたりやすいなどのメリットがあります。しかし兄妹それぞれのパーソナルスペースがオープンなため、独立性がすこし弱いという欠点もあります。そのため、パターン1と同じく、同性の兄弟姉妹には向いていますが異性にはあまり向いていません。

■部屋中央に2段ベッドを配置し独立性アップ

そこで、明るいながらも、なるべくクローズしたパーソナルスペースができないか? というAさんからのご要望を受け、さらに独立性の高いパターン4の家具レイアウトを考えてみました。

【図表】さらに独立性の高いパターン
筆者提供

図表16は、パターン4の家具レイアウトです。子ども部屋に入って窓側が妹のパーソナルスペース、奥の窓際が兄のパーソナルスペースになります。兄妹が一緒に使う衣類収納は、どちらのパーソナルスペースに入らないでも出し入れできるように、子ども部屋入り口付近に置きました。

妹のパーソナルスペースはパターン3と同じく入り口付近ですが、奥に配置したことで独立性が高くなっています。兄のパーソナルスペースはさらに奥なので、4つのパターンの中でもっともパーソナルスペースが確保されている配置になりました。また、それぞれのパーソナルスペースには、窓もあるため、自然光も確保でき、またこまめな換気も可能です。

■天井照明をさえぎらない高さのベッドを選ぶ

こちらの配置ですが、天井の照明が部屋中央にあるため、2段ベッドの上にきてしまいます。そのため、照明をつけたときは、ベッドが障害になり部屋全体に照明が行き届きにくいというデメリットがあります。対策としては背の低いタイプ(高さ130~140cm)の2段ベッドを購入して、なるべくベッドで部屋の照明をさえぎらないことが大切になってきます。

パターン4
筆者提供
【図表】パターン4(妹のパーソナルスペース)
筆者提供
【図表】パターン4(兄のパーソナルスペース)
筆者提供

■狭いLDKにはプロジェクター機能付き天井照明がおすすめ

最後になりましたが、子ども部屋を作るために、リビング機能をDKに移動しました。そのLDKについても少し触れたいと思います。お持ちのソファセットは、LDKには収まらないので、残念ですが処分しました。

また、キッチンに収納を増やしたいとのご要望から、パントリーとしてスチールラックを追加しています。そのほか、玄関側から出し入れできるリビング収納を置いて、お持ちのダイニングテーブルを沿わせています。このリビング収納は、食事時にダイニングテーブルの上に置いてあるものを移動する仮置き場にもなります(図表20)。

【図表】リビング機能をDKに移動
筆者提供

LDKの天井照明はプロジェクターTV機能付きのものにすれば、地デジTV(別途アプリが必要)やインターネットを壁に投影して見ることができます。狭い部屋ではTVを置く場所を省略できますし、アンテナジャックの位置にも左右されないのでおススメです(図表21)。

このプロジェクターTV機能付き天井照明はお値段が10万円程度しますので、予算がない場合はポータブルTVやレイアウトフリーTVなども検討してみてください(図表22)。

【図表】TVの検討
筆者提供

隣の部屋とをつなぐ扉から見た、模様替え前(図表23)と模様替え後(図表24)のLDKのようすです。

【図表】模様替え前(23)と模様替え(24)
筆者提供

■模様替えにかかった費用は引っ越し代より安い

Aさんのお宅では、ご提案した4プランのうち「いまは兄のパーソナルスペースの確保が最優先、妹のパーソナルスペースも問題なさそう」とのことで、最後にご提案させて頂いたパターン4を選択されました。兄が大学生、妹が中学生までは、この部屋割りで行きたいそうです。そして、パーソナルスペースを確保して1年たった今では、担任教師からの連絡もなく、元気に学校に通われているそうです。

今回の模様替えにかかった家具代金は、合計で約12万円ほどでした(図表25)。広い間取りの物件に転居する場合、引っ越し代や敷金・礼金、そして家賃の増額分などを考えると、模様替えよりもはるかに費用が必要となります。また、プランに使用した家具は、通販サイトなどで安価で手軽に購入できるものです。

【図表】模様替えにかかった費用
筆者提供

お子様の成長にともない「間取りが狭くなった」と感じる期間は兄弟姉妹が中学生から高校生のあいだです。その期間を模様替えなど、住まいの工夫で乗り越えれば、大幅な住居費の節約にもなります。あなたもぜひ、ライススタイルの変化に合わせ、模様替えで住まいのアップグレードに挑戦してみてください。

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しかま のりこ 「COLLINO一級建築士事務所」主宰、一級建築士
300軒以上のリビング・寝室・子ども部屋の模様替えを行い、模様替えのスペシャリストとしてTVや雑誌でも活躍。近著に『狭い部屋でも快適に暮らすための家具配置のルール』(彩図社)がある。

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(「COLLINO一級建築士事務所」主宰、一級建築士 しかま のりこ)

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