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夏休みの作文が白紙の人に朗報…あっという間に書き上げた12歳がChatGPTと交わした10分間セッションの中身

プレジデントオンライン / 2023年8月28日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/sushi-love

何をどう書けばいいかわからない……。最終盤に入った夏休み、子供が頭を悩ます課題は「作文・読書感想文」だ。そこで注目されているのが漫画家の小沢高広さんが作成し、SNS上で公開したAIへの指示文章。これは小沢さんの12歳の娘のために作ったもの。AIとの10分間のやりとりで「子供の目が輝き、気持ちがのめりこみ、すぐ600字を書き終えた」という。作家の藤原智美さんがインタビューした――。

※本稿は、『プレジデントFamily2023夏号』の一部を再編集したものです。

■夏休みの宿題の最難関「作文」の究極お助けツール

作文用の原稿用紙を前にして、一字も書けない子供がいる。出るのはため息ばかり。

そこへ、やってきたのが有能な作文の先生。しかも、子供をやさしく励ますのが、とてもうまい。何を書けばいいのかわからず悩む子に、先生は的確な言葉を丁寧に投げかけていく。子供が答えに窮しても、しんぼう強く待ってくれる。けっして怒らない。

子供は先生と言葉をキャッチボールするうちに、書きたいこと、言葉に表したい自分の感情に気づき、勢いよく鉛筆を走らせる。

そんな夢のような先生が現実に存在する。今、話題の対話AI、チャットGPTだ。

漫画家の小沢高広(作家名は「うめ」)さんは、AIへの指示文章であるプロンプト(詳しくは後述)を作成し、SNS上で公開して注目を集めた。

実はこのプロンプトは、小沢さんが12歳の娘さんのために作ったものだ。春休み、娘さんが宿題の作文に手こずっていた。新学期も始まろうかという時になっても、テーブルに広げた原稿用紙は真っ白だった。

「そこでチャットGPTを薦めてみたんです。もともとAmazonの音声アシスタント『アレクサ』と会話を楽しんでいたりしたので、うまくいくとふんでいました。事実、『AIさんが助けてくれるよ』のひと言で、彼女はがぜんやる気を見せました」(小沢さん)

では実際に、このAIはどんなふうに役立ったのだろうか。娘さんとAIとのチャットを再現してみよう。

小沢高広さん
小沢高広さん(出所=『プレジデントFamily2023夏号』)

■12歳とAIとのチャットのやりとりを再現しよう

「こんにちは! 私はあなたをサポートするAI家庭教師です。あなたが楽しく作文を書けるようお手伝いさせてください。今日はどんなテーマで作文を書きますか?」

というAIの問いに娘さんは、「小学校生活で一番心に残った思い出について、です」と、返す。

「素晴らしいテーマですね! 小学校生活で一番心に残った思い出は、具体的にどのような出来事ですか?」
「いろいろあってわからないです」
「大丈夫です! 一つずつ考えていきましょう。たとえば、友達との楽しい出来事や、先生との思い出……特に印象に残っていることはありますか?」
「6年生の音楽会です」
「素晴らしい思い出ですね! ……どんな演目を披露しましたか? ……どんな役割を?」
「パイレーツオブカリビアンメドレーです。鍵盤ハーモニカを弾きました」

AIは、相手の気持ちをほぐしながら、題材となるイメージを具体的に描けるよう、うまく導いていく。

そばで見ていた小沢さんは、「彼女の目がどんどん輝いていき、気持ちがのめりこんでいくのが、手にとるようにわかった」という。

このセッションは、AIの次のセリフで締めくくられた。

「これまでのお話から、作文のアイデアがたくさん出てきましたね。……鍵盤ハーモニカ演奏の練習過程や成長、……本番の感想など、これらのポイントを中心に作文を書いてみるのはいかがでしょうか?」

娘さんはAIとのセッションを10分ほど続けただけで、すぐに原稿用紙に向かい、やがて600字ほどの作文を完成させた。

藤原智美さん
藤原智美さん(出所=『プレジデントFamily2023夏号』)

■AIが聞いて、子供が答える。ここが画期的だ

暗く沈んでいた顔が一転して、晴々とした笑顔に変わったという。最近、小学校の授業でも、パソコンやタブレット端末を使うことが増えてきた。その多くは、検索機能を使って、答えを見つけだすのに利用されている。その方法は、百科事典や本を読んで調べるというかつての学習スタイルと、大きく変わってはいない。

しかし、このチャットを使ったAIとのセッションでは、子供のほうが聞かれる側になる。AIが聞いて、子供が答える。検索する場合と、立場が逆転するのだ。ここが画期的である。

これまで「書く力の現場」では、先生と児童との「対話」が作文に役立つという実例を紹介してきた。

しかし現実には、一般の学校の授業で、マンツーマンの対話による作文指導は、ほぼ不可能だ。ところが、チャットGPTを使えば、すぐにできてしまうのだ。

さらにこのAIの利点は、子供をリラックスさせ、やる気にもさせるところだ。

「相手が人じゃないので、むしろ話しやすいと感じるのが、今の子供です」(小沢さん)

相手は親でも教師でもない。パソコンだから、子供は上からの目線や圧力を感じることはない。そして忘れてはいけないのは、小沢さん考案のプロンプト、AIへの指示文だ。

「あなたはAI家庭教師です。私は中学一年生です。あなたは、前向きに、明るく、やさしく、親しみやすいキャラクターで、私をいつも励ましてください……」という言葉で始まるAIへの入念な指示文を、小沢さんは娘さんが使う前に、あらかじめ入力していた。

『プレジデントFamily2023夏号』(プレジデント社)
『プレジデントFamily2023夏号』(プレジデント社)

これでAIを、優秀な作文教師に変えることができたのだ。

小沢さんは「作文AI家庭教師プロンプト」(https://note.com/ume_nanminchamp/n/n3441c431aea3)を「うめ」というハンドルネームで、ツイッター上で公開しているので、参考にしてみるといい。

「親御さんも、チャットGPTを怖がらずに、30分でもいいから自分で使ってみることです」

小沢さんは、そこからこのAIの善しあしを判断することを勧める。私は「わからない」「書けない」が、すべての学習のスタートだと思う。そこから次の一歩を踏みだす手助けとしてチャットGPTの活用は力になる。作文がまったく書けない、ひと言も言葉が浮かんでこないと苦しんでいた子には、朗報だと言えるだろう。

藤原智美
芥川賞作家。1955年、福岡県生まれ。『王を撃て』で作家デビュー。『運転士』で第107回芥川賞受賞。『日本の隠れた優秀校』など教育に関するルポも多い。近刊に『スマホ断食 コロナ禍のネットの功罪』。
小沢高広
作画担当の妹尾朝子との2人組漫画家ユニット「うめ」のシナリオ担当。代表作『大東京トイボックス』はテレビドラマ化された。ほかの著作に『東京トイボクシーズ』『ニブンノイクジ』『スティーブズ』など。対話型AIや画像生成AIを作品づくりに活用。クリエーター向けに「ストーリー作成支援プロンプト」も公開している。

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藤原 智美(ふじわら・ともみ)
作家
芥川賞作家。1955年、福岡県生まれ。フリーランスのライターを経て、『王を撃て』でデビュー。『運転士』で第107回芥川賞受賞。『日本の隠れた優秀校』など教育に関するルポも多い。近刊に『スマホ断食 コロナ禍のネットの功罪』。

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(作家 藤原 智美)

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