脳の情報伝達機能を高め、リラックス効果もある…頭がよくなる最強の食品「アーモンド」で唯一注意するべきこと
プレジデントオンライン / 2023年9月4日 11時0分
アーモンド。神経伝達物質であるアセチルコリンの原料となるレシチンが豊富。さらに、神経伝達物質をスムーズに放出するために必要なマグネシウムやカルシウム、マンガン、亜鉛などのミネラルが多く含まれている。 - 撮影=榊智朗
※本稿は、プレジデントオンラインアカデミーの連載『集中力が上がる、パワーがみなぎる、病気にならない カリスマ栄養士が教える「最強の食品」20』の第1話を再編集したものです。
■脳内の「神経伝達物質」を作り出す栄養素が豊富
あなたが組織のマネージャーだとしましょう。新プロジェクトの予算やチームメンバーを決めるとき、部下から提案された渾身の企画を採用するか否かを決めるときなど、なかなか決断できないことがあります。タイムリミットが迫っているのに、決め手に欠け、考えがまとまらないまま時間だけがジリジリと過ぎていく……。そんな状況に陥ったら、気分転換に「アーモンド」をつまんでみましょう。2つの効果が期待できます。
ひとつは、脳内の「神経伝達物質」を作り出し、脳の情報伝達機能を高めて頭の中をすっきりさせる効果です。
私たちの脳の中には1000億個もの神経細胞(ニューロン)があり、神経細胞と神経細胞の間にあるシナプスという接続部を通して情報の伝達が行われています。しかし、シナプスにはわずかなすき間があるため、そのままでは情報をほかの神経細胞に伝えることはできません。そこで活躍するのが、情報の受け渡し役を担う神経伝達物質です。神経伝達物質はニューロンの中で作られます。
アーモンドには、この神経伝達物質であるアセチルコリンの原料となるレシチンが豊富。さらに、神経伝達物質をスムーズに放出するために必要なマグネシウムやカルシウム、マンガン、亜鉛などのミネラルが多く含まれています。
マグネシウムやカルシウムが不足すると、「まぶたの下のピクピク」や「こむらがえり」を起こしやすくなります。これらの原因は、情報がきちんと伝わらないことによる神経の誤作動。これらの誤動作は自分の意思で止めることができません。こうした症状を予防したい場合にもアーモンドは効果的なのです。
■「カリカリッ」とした食感が脳を刺激する
もう1つの効果は、「カリカリッ」とした食感と歯ごたえが脳を刺激し、脳をリセットしたりリラックスさせたりすることです。噛む動作と食感は、アゴや顔周りの筋肉や神経を刺激し、それが脳にも伝わります。
アーモンドをつまんで口に入れ、噛み砕くという一連のリズミカルな動きにも、煮詰まった思考を打開する効果が期待できます。野球でよく使われる「チェンジ・オブ・ペース」という言葉を知っていますか。「緩急をつける」という意味で、ピッチャーが球速やコース、投球の間合いなどに変化をつけて、バッターの目先を変えることですが、アーモンドを食べることで、“脳へのチェンジ・オブ・ペース”ができるというわけです。
デスクの引き出しに用意しておけば、いつでも手軽に“脳へのチェンジ・オブ・ペース”ができますね。このように食事には、栄養摂取だけではなく、「食べるという行為自体に健康効果がある」ことも覚えておきましょう。ここが、サプリメントでの栄養摂取とは異なる点です。
■1日の適量は7~10粒。余ったら「ハニーナッツ」に
粒の形で市販されているアーモンドは加熱の仕方によって次の3タイプに分かれます。
(1)生アーモンド…加熱加工していない。
(2)ローストアーモンド(素焼き)…焼いただけ。流通量が近年増えつつある。
(3)フライドアーモンド(油で揚げたもの)…味付けされ、おつまみなどに多用されているタイプで、最も多く出回っている。
おすすめは、生もしくはロースト。アーモンドは脂質が多く、高温加熱をすると酸化しやすくなるからです。
ただし、生のアーモンドには酵素抑制物質が含まれていて、たくさん食べると消化不良を起こすことに注意してください。酵素抑制物質は、成長に適した環境が整うまで種が発芽しないように酵素の働きを抑える物質です。私たちのからだに入ると、消化・吸収・代謝などを促進する酵素の働きが抑制されてしまいます。
1日の適量は7~10粒くらい。余ったら「自家製ハニーナッツ」を作ってみましょう。作り方は、煮沸消毒した密閉容器にアーモンドとハチミツを入れるだけ。このハニーナッツをヨーグルトと果物にかければ、栄養豊富でバランスのいい朝食になります。
■「からだと食べものをつなぐ発想」が大切
私は以前、進学校でインターハイを目指すハンドボール部の生徒とその保護者に栄養指導を行っていました。トレーニングをどんなにがんばっても、「食べる」ことを疎かにしていたらパフォーマンスは上がりません。トップアスリートほど、「いつ何を食べるか」ということを重要視しています。
特に、生徒に伝えたかったのは「からだと食べものをつなぐ発想」です。たとえば、「厳しいトレーニングの前日には、最後まで脚がもつように夕食はご飯で炭水化物を多めにとる」「練習中に足がつることが多いときは、おひたしにすりごまをたっぷりかけてミネラルを補給する」といったように食事で補うことが大切です。
ある日、こんなことがありました。生徒たちに「これまでのレクチャーの中で何を学びましたか」と聞いたところ、主将が真っ先に答えたのが「菓子パンはお菓子、夜勉はナッツ(アーモンド)!」でした。毎日の食事は私の栄養指導を参考にして保護者が作ってくれるから、心配はありません。問題は間食。生徒たちは、私のレクチャーで学んだことを頭に刻みつけて注意していたようです。
■アーモンドは夜食やダイエットにもぴったり!
菓子パンはスナック菓子と同じで、これらに含まれている白い砂糖や油脂はカルシウムの大敵です。取りすぎると太ったり、判断が鈍る要因となります。一方、ナッツの中でも特にアーモンドは栄養素が豊富。硬めで噛む回数が増えるため、満腹中枢が刺激されて少量でも満腹感を得ることができます。ですから、夜食やダイエットにぴったりです。
生徒たちは放課後、部活でハードなトレーニングをこなし、そのあと塾に通い、さらに自宅で勉強していました。ですから、頭もからだも疲れ果て、さぞや眠かったはず。案の定、保護者に「夜食をお腹いっぱい食べたら1分で寝ちゃいませんか」と聞いたら、「いえいえ、1.5秒で寝ます」との答えが……。前述したようにアーモンドには、脳の情報伝達機能を高め、頭の中をすっきりさせるうえ、少量でも満腹感を得られる効果があります。彼らはアーモンドをつまみながら、睡魔と闘っていたのでしょう。
私が栄養指導で教えたことは、部の「栄養ノート」に書き残され、後輩たちに引き継がれています。生徒たちが考えたフレーズ「夜勉はナッツ!」も、そこに記されていることでしょう。やがて、ハンドボール部は強豪の仲間入りをし、私が管理栄養士としてサポートし始めてから13年目にインターハイ出場を果たしました。
今では彼らも、さまざまな分野の最前線で活躍するビジネスパーソンです。もしかしたら、当時のことを覚えていて、仕事で大事な決断をする前にアーモンドをつまんでいるかもしれませんね。
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Office LAC-U代表、Body Refining Planner
病態栄養相談に携わった後、東京工業大学勤務を経て、スポーツ栄養指導を開始(専修大学アメリカンフットボール部)。これまでに、サッカーの長友佑都選手、フィギュアスケートの荒川静香選手・髙橋大輔選手、陸上のケンブリッジ飛鳥選手などをサポート。現在は、浦和レッドダイヤモンズトップチーム、山梨学院大学陸上部(短距離・長距離・駅伝)、東海大仰星高校ラグビー部を始めとする多くのトップアスリートの栄養指導を行う。
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(Office LAC-U代表、Body Refining Planner 石川 三知 構成=河合起季)
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