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係長以上の経験があれば誰でもできる…サラリーマンは「起業より会社を買ったほうがいい」これだけの理由

プレジデントオンライン / 2023年9月3日 12時0分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/PeopleImages

個人が後継者不足の中小企業を買うケースが増えている。「サラリーマンこそ、会社を買うべき」と提唱し、スモールM&Aブームを牽引した事業投資家の三戸政和さんは「サラリーマンが会社を買うための“環境”が整い、マーケットの状況は一変した。買い手が増えて徐々に“売り手市場”になっていくので、よい会社を買うチャンスがあるのは“いま”。最長でもあと5年だ」という――。(第1回/全2回)

※本稿は、三戸政和『いますぐサラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい』(講談社+α新書)の一部を再編集したものです。

■人生の選択肢が増えた

あなたはこの5年間をどう過ごしましたか。

ちょうど5年前の2018年、私は『サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい』(以下、略して『サラ3』と呼びます)を上梓(じょうし)し、「個人が会社を買う」という新しい概念を社会に伝えました。

おかげさまで書籍はたくさん読まれ、実際に、ごく普通のサラリーマンの中からスモールM&Aに乗り出す方が登場するようになりました。なかには、そのプロセスをテレビ番組が取材し、放送されたケースもありました。ご覧になったことのある方がいるかもしれません。

私が伝えたかったことが世の中に広まり、「個人が会社を買う」ことは、もはや人生の選択肢の1つとして選び得るものになりました。

■社会は変化している

実際、同書を手に取った方は、「はたして普通のサラリーマンでしかない自分にもできるだろうか……」という想像を、何回かはしたはずです。

もちろん、人にはそれぞれが抱える事情、立場、状況があります。すぐに「会社を買おう」と動き出せる方はそう多くなかったでしょう。

それでも、この5年の間に何らかのアクションを起こした人は多数存在しました。そしてその数は、徐々にではありますが、確実に増え続けています。

社会も変化し始めました。一例として、127万社が該当するともいわれ、高止まりしていた後継者不在の中小企業の割合が減少に転じています。「誰か」が事業承継し、後継者になっているということをこの数字の変化は物語っています。

■このままサラリーマンを続けて、いいのだろうか……

さて、冒頭の問いに戻ります。あなたはこの5年間をどう過ごしましたか。

自らを振り返っていただきつつ、私が紹介したいのは、この5年の間に『サラ3』に出会ったことで、「会社を買う」という選択肢を選び取り、動いた人たちのことです。彼らのことを伝えようと、このたび、新著『いますぐサラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい』を著(あら)わしました。

彼らは『サラ3』を読み、「自分はこのままサラリーマンを続けていていいのだろうか」「こんな自分にも会社を買って経営することが果たしてできるのだろうか」と思いを巡らせました。

そこまでは他の読者の方たちと同じでしょう。でも彼らはそこで一歩を踏み出しました。あれから5年。彼らはいったい何を見て、どんな体験をしたのでしょうか。

■「個人が会社を買わないと日本経済は沈む」

私が、中小企業向けの事業承継・事業再生投資ファンド「日本創生投資」を投資予算30億円で創設したのは2016年のことでした。その経験をもとに、1冊の本にまとめて最初の『サラ3』を刊行し、「サラリーマンが300万円で小さな会社を買うサロン(サラ3サロン)」を始めたのが2018年のことです。

日本経済の屋台骨を支える中小企業の後継者不足の深刻さは語られつつも、なかなか社会問題として認識されず、解消に向かう様相が見えないことに強い危機感を覚えていました。

それゆえ私は、『サラ3』で「個人が会社を買わないと日本経済は沈む」と警鐘を鳴らし、個人が会社を買えるようになる環境を整えるため、自らサロンを始めたのです。

サロンには、たくさんのメンバーが集まってくれました。本気で「会社を買う」ということに向き合ってくれる人に参加してもらいたかったので、月額会費は約1万円という高額に設定しましたが、想像以上の反響でした。

■当初は「個人の壁」があったが……

すぐに会社を買うための活動を始めた彼らでしたが、2018年当時、最大の悩みは「『会社を買いたい』と言っても、個人だと相手にされない」「事業引継ぎ支援センター(現「事業承継・引継ぎ支援センター」)に行ったら、『個人だから』と門前払いされた」という問題でした。いうなれば「個人の壁」です。

三戸政和『いますぐサラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい』(講談社+alpha新書)
三戸政和『いますぐサラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい』(講談社+α新書)

従来、M&Aは事業会社やファンドだけが行うもので、個人がプレーヤーとして参入することはありませんでした。さらに、従来のM&Aで扱われるのは中堅以上の会社で、中小零細企業が売り手として扱われることもありませんでした。

M&Aを手掛ける仲介企業やファイナンシャルアドバイザー(FA)は、M&Aを成立させて初めて仲介料が発生する手数料商売であり、その頃の最低報酬は2000万円ほどでした。

それだけの仲介手数料が発生する案件となると、最低でも売り上げ規模で1億円くらいの会社が対象になってしまいます。

それゆえ中小零細企業を扱うことは想定されていなかったわけです。

■「個人に会社を買ってもらう」時代へ

ところが、手前味噌(てまえみそ)ではありますが、私の本が世に出て、話題になった後くらいから「気配」が変わりました。個人は相手にされず、中小零細企業も売買対象となることのなかったM&A市場が、徐々に変化し始めたのです。

サロンを始めてから1年余り過ぎた頃からでしょうか、サロンメンバーからいつしか、「個人だから相手にされない」という愚痴(ぐち)が聞かれなくなりました。

とくに、「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」(経営承継円滑化法)の改正施行(2021年)をはじめ、国が中小企業の後継者不足問題の解消を目指す政策を推し進めた時期にさしかかると、世の中の空気は一変しました。公的セクターが後継者不在の中小零細企業の買い手として「個人」に目をつけ、むしろ積極的に取り込もうとするようになったと実感し、手ごたえを感じたことをよく覚えています。

そして2023年現在では、個人が中小零細企業を買うスモールM&Aの障壁となっていた高額な仲介料や専門家に払う費用についても、最大400万円まで補助されるようになっています。「個人が会社を買う」ことへの理解が進み、後押しされるようになっているのです。

■「買い手の条件」は整った

1冊目の書籍の刊行から5年、いまでは非同族の人への事業承継の割合が増え、前述の通り、中小企業の後継者問題が少しずつではありますが、解消する方向に進んでいます。

大きな理由は、「買い手の条件」が整ったことにあります。

①中小企業の社長個人の経営者保証が強制されなくなっていること
②事業承継における税制優遇及び融資の優遇制度ができていること
③売り企業の情報量が格段に増え、会社を見つけやすくなっていること
④事業承継にかかる仲介料などのM&A費用にも補助金制度ができていること

これらは私の主観でもなんでもなく、単純な事実です。「個人が会社を買うための社会環境」が整ったのです。

■非同族の個人が会社を買うことが当たり前になる

私は時々、スモールM&Aブームの火付け役のように紹介されることがあります。しかし、私が言い出さなくても、遅かれ早かれ誰かが提唱することになっただろうと思っています。

なぜなら、日本企業の99%以上を占める中小企業を誰かが引き継がなければ、日本中でおびただしい数の会社が倒産し、日本経済は壊滅してしまうからです。

とはいえ、環境整備は「かなり遅れた」というのが私の正直な評価です。本来、もっと早くそうなるべきでした。

日本を廃屋だらけの貧困国にしないために、スモールM&A、親族以外への事業承継の環境が整うというのは、私に言わせれば「当然のこと」なのです。これからは親族以外への事業承継が当たり前になるでしょう。

■買い手市場は「あと5年」

市場はいま、潜在的な会社も含めると売り手が多く、買い手が少ない供給過多の状態。つまり、“買い手市場”です。こうした状況では、買い手のほうが立場が強く、金額など条件の交渉も有利に進めることができます。

しかし、この“買い手市場”は未来永劫(みらいえいごう)続くわけではありません。

環境が整えば、必ず、会社を買う側の人は増えていくでしょう。買いたい人が増えて供給を追い越してしまうと、「買いたいのに、買いたい会社がなかなか見つからない」という状況になってしまいます。そのうち、売り手市場に変わり、金額などの条件も上がってくることが予想されます。

私の予測ではおそらく、団塊の世代の事業承継が終わる2030年ぐらいには、スモールM&A市場は、買い手市場から売り手市場に転じるでしょう。

だからこそ、会社を買うなら「いま」なのです。

■サラリーマンのスキルは「バカ」にできない

インフレの影響で実質賃金は下がり、仕事でも能力を不当に低く評価される「サラリーマン冬の時代」はしばらく続くでしょう。その冬の時代を乗り越えても、こつこつ貯めてきた給料だけでは、旅行すら満足にできない厳しい老後が待っています。

それならば会社を買って、サラリーマンとして培(つちか)った能力をフルに発揮してみるべきではないでしょうか、というのが私の考えです。

大丈夫です。サラリーマンの能力、経験、そしてスキルは、当事者である「あなた」が思うよりずっと優れています。

ある程度の規模の大手企業や中堅企業に勤めたサラリーマンで、係長以上のマネージャーを経験しているならば、数人から数十人程度の規模の会社までは経営できる能力を身につけている――というのが、現場で多くの人に会い、実例を見てきた私の偽らざる実感です。

ビジネスと統計の概念
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※写真はイメージです - 写真=iStock.com/

■あなたの経験、スキルを求める中小企業が待っている

起業してイチから事業を興したり、脱サラして蕎麦(そば)店を始めたりするよりも、すでに存在していて、その事業がしっかり回っている会社を買うほうがはるかに成功の可能性は高いといえます。

世間では、「サラリーマンが会社を買うなんてできるわけがない」と思い込んでいる人がまだまだいます。だからこそ、早く動き出した人はいい会社を安く手にすることができます。

新著『いますぐサラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい』では、この5年間に、実際にそのようにして会社を買った人々の事例を多く紹介しています。

現在の「おいしい」状況は最長でも5年、早ければ2〜3年で終わります。サラリーマンが会社を買うなら、「いますぐ」動き出すべきです。あなたの能力を求める中小企業が待っています。

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三戸 政和(みと・まさかず)
事業投資家、ラジオDJ
1978年兵庫県生まれ。同志社大学卒業後、2005年ソフトバンク・インベストメント(現SBIインベストメント)入社。ベンチャーキャピタリストとして日本やシンガポール、インドのファンドを担当し、ベンチャー投資や投資先でのM&A戦略、株式公開支援などを行う。2011年兵庫県議会議員に当選し、行政改革を推進。2014年地元の加古川市長選挙に出馬するも落選。2016年日本創生投資を投資予算30億円で創設し、中小企業に対する事業再生・事業承継に関するバイアウト投資を行っている。また、ロケット開発会社インターステラテクノロジズの社外取締役も務める。著書に『サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい』『いますぐサラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい』(以上、講談社+α新書)、『資本家マインドセット』(幻冬舎NewsPicks)、『営業はいらない』(SB新書)、『サラリーマンがオーナー社長になるための企業買収完全ガイド』(ダイヤモンド)、『サラリーマン絶滅世界を君たちはどう生きるか?』(プレジデント)などがある。また、InterFMにて、ベンチャービジネス番組「ビジプロ」のDJも務める。Twitterのアカウントは、@310JPN。

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(事業投資家、ラジオDJ 三戸 政和)

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