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200万円で買った会社が月8万円以上の利益を生む…副業よりラクに稼げる会社を見抜く「基本ポイント」4つ

プレジデントオンライン / 2023年9月5日 10時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/PeopleImages

個人が後継者のいない中小企業を買収するケースが増えている。どんな企業が狙い目なのか。スモールM&Aブームを牽引した事業投資家・三戸政和さんは「その判断は千差万別。それでも、『買いやすい会社』という見立てなら確かに存在する。そのポイントは4つある」という――。(第2回/全2回)

※本稿は、三戸政和『いますぐサラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい』(講談社+α新書)の一部を再編集したものです。

■1円でも会社は買える

2018年に『サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい』を刊行し、シリーズ累計20万部を突破、日本に一定の「スモールM&A」に関するムーブメントを起こすことができたと自負しています。

あれから5年、いまではすっかり「個人が会社を買う」ということがマーケットに定着しつつあります。

そして、この間、同時に「300万円で本当に会社は買えるのか?」と何度も聞かれました。

誤解を恐れずにいえば、書籍タイトルの「300万円」という金額は、あくまでキャッチコピーであって、「300万円の自己資金を用意し、300万円程度で売りに出ている会社を買いなさい」という意味ではありません。

こう書くと、「やっぱり三戸は適当なことを言っていたのか。300万円で買える会社なんてロクなものがないんだろう……」と思われるかもしれません。

でも、そうではありません。300万円あれば買える会社はたくさんあります。それどころか100万円でも、10万円でも、なんなら「1円」でも買える会社は存在します。

■貸し会議室の運営会社を買ってみた

たとえば、私の「サラ3サロン(サラリーマンが300万円で小さな会社を買うサロン)」に通っているメンバーに会計士Pさんがいます。

Pさんは、大手の監査法人を10年ほど前に辞めて独立しました。そして、200万円で貸し会議室を運営する会社を買いました。

本業があるので時間をあまり取られず、横展開が可能な業種ということで、コインランドリーや民泊の会社を探すなかで貸し会議室の会社に目をつけたわけです。

机や椅子といった備品と予約サイトのIDなど運営の仕組み一式、それらに紐(ひも)づく既存顧客を譲り受けています。その時点で、この会社の収支状況は売り上げが月17万円ほど、利益が月4万円くらいだったといいます。

■「稼働率」が経営改善のポイントだった

Pさんによれば、会議室全体の稼働率は5割くらいで、深夜は基本的にゼロ。午前中は、平日の利用がごくわずかで、土日は5割。午後は、平日の日中が5割で、土日が約7割。夜は平日の稼働率がよく、土日は少なかったそうです。

そこで、買収後に稼働率が低かった深夜の利用料と平日の午前中の利用料を値下げしました。それにより、深夜は意外にも「仮眠用」として会議室を利用する人が増えて、稼働率が上がりました。

次に、販促の一環として、リピーター確保のために、会議室に名刺サイズのパンフレットを用意。そこに、二次元バーコードと半額オフクーポンをつけました。

二次元バーコードを読み取れば、そのまま予約サイトへ飛べるようにしたのです。さらに定期利用は20%引きというお知らせもつけました。もう1つ、新規利用者獲得のためにA4サイズのチラシを用意。業者を使って、会議室付近のオフィスエリアにポスティングしてもらったそうです。

■金銭的リスクのない理想的な買収

この買収のいいところは、金銭的リスクがほとんどないところです。

何もしなくても現状で月に4万円の利益があります。保守的に見積もって、年に30万円くらいの利益は出る。そこから税金を引かれて税引き後利益が約20万円になる。200万円の投資額は10年で回収できる計算です。

これはあくまで「現状のまま続けると……」という前提です。稼働率が少しでも上がれば実際の回収期間はもっと短くなり、そこが“伸び代”となります。

最初に200万円を出して、その後はほぼ放置しておくだけで最低でも毎年20万円の利益が出るなら、サラリーマンの方が副業で行う形でもできそうですよね。

しかも、Pさんは、貸し会議室運営のノウハウを身につけ、1号店の場所があまりよくないことにも気づき、2店舗目を人通りの多い場所に出店しました。それにより、倍以上の利益が出るようになっています。

けっして荒唐無稽(こうとうむけい)な話ではなく、「300万円で会社を買う」ということをリアルに感じていただけたでしょうか。

■「会社の値段」を決めるには

M&Aの市場では、明確なルールではありませんが、会社の値段を決めるときは、次のような計算式を1つの目安としています。

株式価値(買収価格)=純資産+営業利益3〜5年分

純資産というのは、会社が保有している資産から負債を引いたものですが、長年経営されている中小企業では、資産は減価償却が終わっていてほとんどなく、借り入れが結構大きいので純資産が薄い。営業利益もほとんどないという会社はたくさん存在します。

この計算式をもとに考えれば、そうした会社を買う場合は「1円」でも交渉できます。これが先に、「1円でも買える会社はある」といった理由です。

ミニチュアのビジネスマン2人と日本円硬貨
写真=iStock.com/kellymarken
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kellymarken

■営業利益ゼロの会社を買う意味

「純資産も営業利益もない会社を買って、はたして意味があるのか?」という意見があるかもしれません。

しかし、役員報酬がきちんと支払われていて、営業利益がゼロという場合ならどうでしょうか。オーナー社長になれば、会社からそれなりの役員報酬を得ることができ、「労働収入」(オーナーとしての報酬ではなく、自分が働いて得るお金)にはなりますが、「一定の意味」はある、と考えられませんでしょうか。

さらに、買収後に経営のテコ入れをすれば、営業利益が上がる可能性はあります。そこをしっかり見極めれば、“買い”の会社は1円でもちゃんと存在するのです。

それだけではなく、近年すっかり充実した事業承継等に関する融資制度を使えば、借入金で億単位の会社を買うことも可能です(詳細は『いますぐサラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい』参照)。自己資金1円でも、その手元資金だけで会社を買うことができる、ということです。

ちなみに、「手元資金300万円だけで買える会社を」と考えた場合、一般の方は、家族+アルバイトで経営しているごく小さな規模の会社をイメージされるかもしれません。しかし、上記のように借り入れも組み合わせることで、従業員数十人〜100人規模、売上高数億〜数十億円規模の中小企業を買うことは十分できます。

■「買いやすいビジネスモデル」は存在する

こういう話をすると必ずと言っていいほど聞かれるのが、「では、どういう会社を買えばいいか?」という質問です。

どういう会社を買えばいいかについての詳細は『いますぐサラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい』にあたっていただくとして、その中で、確かに「買いやすいビジネスモデル」というものは存在します。

本稿では、その4つの基本ポイントを紹介しましょう。

■買いやすいビジネスモデル①:ストック収入がある会社

買いやすいビジネスモデルとは、まず「ストック収入」があるビジネスです。

ストック収入とは、待っていれば何もせずとも入ってくる収入のことで、身近な例でいえば、マンションの家賃収入などがそれに当たります。ストック収入があれば売り上げが安定しますので、そういう会社は買いやすいといえるでしょう。

ただ、マンションの家賃収入がすべてストック収入とは限りません。

マンションがファミリー向けなら、借り主が長期に借りてくれることが多いのでストック収入になりますが、ワンルームマンションだったら、入退去が激しいので、収入が安定しない可能性があります。そうなったら、ストック収入にはならないかもしれません。同様に、マンションの立地場所によっても変わってきます。

■本当にストック収入か? 安定しているか?

売り上げがストック収入か、安定しているかどうかをきちんと見ることが大事で、それを確かめるには、過去からの継続取引やポートフォリオ分散がなされているかなどを詳しく見ることです。

ただし、過去10年、安定して取引が継続していれば、それはストック収入といってもおかしくはないでしょう。そういう検証ができるのが、中小企業を買う良さです。

一方で、売り上げの額は一定でも、売上先が毎回変わっているとしたら、それはストック収入とはいえないかもしれません。

売り上げに「拡張性」があれば、その会社はさらに買いやすいといえます。東京でやっているビジネスが、神奈川や静岡でも同様に展開できるのなら、売り上げを拡大させて、さらに安定させることができるからです。

■買いやすいビジネスモデル②:利益率が高い会社

次に、利益率が高いビジネスモデルもお勧めです。

見るのは粗利率でも営業利益率でもいいのですが、それらの数字が高いということは、その会社の商品に競争力があって、高く売れている、ということです。

たとえば、ある町工場を買った「サラ3サロン」のメンバーがいます。その会社は、事業としては取引先から供給されたネジなどの加工を行っていましたが、かなり粗利率が低く、案件によっては赤字受注もあるとのことでした。誰にでも手掛けやすい加工だけをしていたからです。

そこで、粗利率を高めるために商流の「川上」へ行くべく、独自技術を使ったコーヒーミルを開発しました。販売の力が必要とはなったものの、結果、粗利率は上がりました。

天秤に積み重ねられたコイン
写真=iStock.com/sommart
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/sommart

■「権利ビジネス」にうまみあり

また、権利ビジネスも利益率が高いうえに、手間が掛からないビジネスです。たとえば、2〜3店舗の繁盛店を買って、フランチャイズ(FC)展開をするというのも、権利ビジネスを生む手法となります。

実際に、私のファンドが資本提携をし、私が役員を務めているベーカリーチェーンの「小麦の奴隷(どれい)」では、老舗(しにせ)の繁盛店をM&AしてFC展開していくことを企図しています。そうすれば、加盟店から加盟料と原材料販売料という収益が定期的に入ってきます。

特許や著作権はもとより、老舗という「のれん」も競争の源泉となる権利ビジネスになり得て、持っているだけで収入が入るようにできるのです。

ちなみに、町工場でもネジやナットなどで特殊な製品を作っているところは特許を持っていたりしますから侮(あなど)れません。権利ビジネスのように仕組み化されたものは利益率が高く、「買ったほうがよいビジネス」といえます。

■買いやすいビジネスモデル③:ROEが高い会社

最後に、「ROE(Return on Equity)」が高いビジネスも狙い目です。

ROEとは自己資本利益率のことで、自分が出したお金である自己資本に対して、どれくらい利益が出ているかを示す指標です。

「たいしてお金出してないのに、えらく儲(もう)かっているな……」というのがROEの高い状態で、「こんなにお金出しているのに、これだけか……」というのがROEの低い状態です。

製造業が主流の日本の中小企業は、ROEが低い傾向にあります。製造業は工場や機械などが必要となりますので、設備投資がかかります。その分の売上利益を出していればいいのですが、出ていない中小企業も多くあります。

■「買いづらいビジネス」は明白

とくに、代々にわたって承継してきた土地や建物がある場合は、市場価格がとても高いにもかかわらず、その上物である工場からは通常要求される利益が出ていないというケースが多々見られます。

わかりやすい事例でいうと、酒蔵のようなケースです。江戸時代から広い土地と工場設備で酒を造っていますが、酒自体の収益性は低い。

こういう状態の会社を買うと、投資資金の大半が土地代に消えてしまうことになります。

当然ながら、その土地は会社を売却するまで手放せません。つまり、無駄に投資資金を寝かせてしまうことになるので、よい投資にはなりにくくなります。

そういうビジネスモデルは「買いづらいビジネス」といえるでしょう。

■買いやすいビジネスモデル④:資金繰りのいい会社

中でも買いやすいのは「資金繰(ぐ)りがいい会社」です。

三戸政和『いますぐサラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい』(講談社+alpha新書)
三戸政和『いますぐサラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい』(講談社+α新書)

経営で大切なのは、なんといっても資金繰り。資金繰りがいいかどうかはしっかりと意識して確認しましょう。

仮に売り上げが拡大したとしても、売り上げを回収するよりも仕入れ先への支払いが先であれば、資金繰りはよくはなりません。

こういうビジネスモデルでは黒字倒産ということもあり得ます。

一方、売り上げの回収は早くて、仕入れ先や外注先への支払いは後でいい、というビジネスは、資金繰りに困ることも少ないので買いやすいといえるでしょう。

■Apple型ビジネスが最強であるワケ

「資金繰りのいい会社」の最たる例が、Appleが行っているようなBtoCの受注生産モデルです。

先にお金をもらってから、製品を製造して発送するという流れですから、製造にかかる費用は後に発生します。原材料などの仕入れが先に発生する可能性はありますが、それでも資金繰りはかなりよいモデルです。それに、商品在庫を持たなくて済むというメリットも大きなものです。

飲食店も、飲食を提供したときにお金が入ってくるのに対して、食材や酒のように問屋から仕入れるものに関しては、まとめて後払いができるので、資金繰りはいいといえます。

ただ、この資金繰りのよさが逆に仇(あだ)となるケースがあることも覚えておいてください。というのも、支払いがずっとあとだと、経営者は売り上げを自分のお金だと思って使ってしまい、いざ支払おうとしたら現金がない、ということになりがちです。

■「買いやすい会社」を見抜く4ポイント

以下のようなポイントを見れば、その会社が買いやすいビジネスモデルかどうかを見極めることができます。

①売り上げが安定しているか
②利益率が高いか
③ROEが高いか
④資金繰りがよいか

これら4つは、よい会社かどうかを評価するうえでの必須の確認ポイントだとしっかり覚えてください。

『いますぐサラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい』では、個人が会社を買うための最新情報をふんだんに盛り込んでいます。同書も参照しながら、ぜひ「サラリーマン資本家」への道を進んでください。

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三戸 政和(みと・まさかず)
事業投資家、ラジオDJ
1978年兵庫県生まれ。同志社大学卒業後、2005年ソフトバンク・インベストメント(現SBIインベストメント)入社。ベンチャーキャピタリストとして日本やシンガポール、インドのファンドを担当し、ベンチャー投資や投資先でのM&A戦略、株式公開支援などを行う。2011年兵庫県議会議員に当選し、行政改革を推進。2014年地元の加古川市長選挙に出馬するも落選。2016年日本創生投資を投資予算30億円で創設し、中小企業に対する事業再生・事業承継に関するバイアウト投資を行っている。また、ロケット開発会社インターステラテクノロジズの社外取締役も務める。著書に『サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい』『いますぐサラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい』(以上、講談社+α新書)、『資本家マインドセット』(幻冬舎NewsPicks)、『営業はいらない』(SB新書)、『サラリーマンがオーナー社長になるための企業買収完全ガイド』(ダイヤモンド)、『サラリーマン絶滅世界を君たちはどう生きるか?』(プレジデント)などがある。また、InterFMにて、ベンチャービジネス番組「ビジプロ」のDJも務める。Twitterのアカウントは、@310JPN。

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(事業投資家、ラジオDJ 三戸 政和)

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