浪費癖の夫と子ども2人が嬉々として節約に励み始めた…借金300万円を一気に黒字化させた妻とFPの秘策
プレジデントオンライン / 2023年9月2日 11時15分
■収入不安定、金食い虫の家族、借金の三重苦
相談者は、コールセンターで夜勤ありのパート勤務をしている安田聡子さん(仮名・45歳)。家族は、飲食店に勤務する夫(46歳)、フリーターの長女(25歳)、大学1年生の長男(19歳)。世帯の手取り月収は平均46万円(夫34万円、妻12万円)あるものの、生活のやりくりのための借金が300万円にも膨れ上がった結果、数年前に任意整理(※)に追い詰められた経緯を持ちます。こうした事情もあり、今年の4月、将来の生活に不安を持ち、聡子さん一人で来社されました。
※弁護士、司法書士などの専門家に債権者との交渉を依頼して、債務の額を確定させて(高い利息だった場合、金額が減ることやお金を取り戻せることもある)、支払い可能な毎月の支払額を合意して支払っていく方法。
任意整理することで、いわゆるブラックリストに載って信用情報機関に記録されてしまい、一定期間新規のローンやキャッシングができなくなる、連帯保証人になれないといった状況になるケースもあります。
そもそも、なぜ世帯月収が手取り46万円もあるのに、これだけ生活が苦しいのか。話を聞いていくと、聡子さん一家の家計には、主に3つの“病巣”があることが分かりました。
一つは、収入の不安定さ。夫婦ともにボーナスはなく、夫は残業の時間数によって、妻は夜勤の頻度によって、それぞれ月の収入が5万円前後変動するのです。そのため、夫婦ともに収入が少ない月が重なると、平均月額より10万円程度の収入減になることもあります。収入の変動が激しいため、ひと月にいくらまで使っていいのか予算を立てにくく、結局使えるだけ使ってしまう傾向があるそうです。
次に、家族の節約の意識が薄いこと。基本的には大きな無駄遣いはしていないものの、子供がテレビや電気をつけっぱなしにしたり、シャワーを1日に何度も浴びたりして光熱費を湯水のように使う。「汗をかいたは毎日取り換えないと不潔だ!」と言い、洗濯物もお構いなしに出してくる……。
また、聡子さんが夜勤に行く日は、夫が夕飯の準備を担当するのですが、これもザル家計の要因に。買い物に行ったついでにカップラーメンやお菓子、ビールなどの嗜好品、また牛肉などの高額な食材まで手あたり次第買い物カゴに入れてしまう悪癖があるのです。
入るお金は少なく不安定なのに、出ていくお金は安定して多い。こうした日々が積もり積もって、300万円もの借金につながったわけです。数年前に任意整理したとはいえ、借金がチャラになったわけではありません。相談時の返済額は毎月5万円。収入不安定、金食い虫の家族、借金。この3つの病巣を抱えたままでは、本当に破綻してしまう。
不安に駆られた聡子さんは2年間がむしゃらに働き、孤軍奮闘で400万円の貯金を作り、長男の大学費用を工面したと言います。これで教育費の問題はクリアできました。
■金食い虫は口で注意しても動かない
しかし、自分たちの老後資金はない。夫婦ともに退職金がないか、あまり期待できない状態。そこで家計収支でわずかにあった黒字(2万4000円)から1万円をiDeCoに積み立て始めたものの、今から貯めたところで目標の「老後2000万円」にはほど遠い。もっと多くの額を積み立てたい。それには、“病巣”を退治しなければならない。でもどうやったらいいのか?
やるべきことはやり、それでも行き詰まった聡子さんは、当事務所の門を叩いたのです。
さて、どう家計を再生していくか。まず収入の不安定さは、働き方や仕事自体を変えない限り、解決できません。ですが夫婦ともに職を変えるのは現実的ではないとのこと。そこで、支出の見直しに注力することにしました。
夫や子供たちの無駄遣いについて、口で指摘して直るなら苦労しません。これまで聡子さんは幾度となく「高いお肉は買わないで」などとお願いしても聞く耳を持たなかった。それどころか料理熱の水を差すなと言わんばかりに、「せっかくやってるのに!」とふてくされる始末。家族のためを思うなら、おいしい料理もいいけれど、少しは節約にも配慮してほしいものですが……。
![ステーキ肉とペッパー、ガーリック、タイム](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/6/5/1200wm/img_65b8cf3af925aad45d1cde947b6a14db506623.jpg)
子供の水道光熱費や通信費の使いすぎについても、指摘しようものなら「お母さんの美容費とかお小遣いの方がムダ!」と逆に痛いところを突かれ、撃沈。
要は、夫も子供もお金の話をすると反撃し、聡子さんも嫌な気分になるし、家庭全体が不和になるため、タブーとなっていたのです。その結果が300万円もの借金に。
結局、私から見て、聡子さんは家庭の平和のためにパート勤務を増やすなど自分だけが犠牲になる道を選んできたわけです。ある意味“いいお母さんであり、優しい妻”ではあります。ただ、母の犠牲ありきで、家庭が回っている状態は不健全です。
■「月3000円投資」により自然と節約意識が芽生えた
私は、子供と夫をいかに節約に巻き込むか、聡子さんと一緒に考えました。そこで出た妙案が、子供たちに投資をすすめることです。折しも今は2024年から始まる「新NISA」の話題効果で、年齢層を問わず投資意識が高まっています。20代の若い方でも、むしろ柔軟性のある若い人ほど投資に興味を持っているように見受けられます。
聡子さんの子供たちも例外ではありませんでした。投資に興味がありそうだったので、当事務所に連れてきてもらい、「月3000円投資」をすすめたら、興味津々。ぜひ始めたい! と前のめりになってくれました。
「では、軍資金はどうする?」という話になり、長女はアルバイト代、次男はこれまで貯めてきたお小遣いを、それぞれ3000円なり1000円なり出すことに。そうして数カ月間、つみたてNISAで運用してところ、少しだけですが利益が出ました。そこでグッと面白くなって、もっと資金を投入したくなったようでした。
そのタイミングが絶好のチャンス。私は家族に伝えました。
「それなら、食費や通信費などを減らして、家計をより黒字にしてはどうでしょう。そうすれば、もっと投資資金に充てられるかもしれません。少しでも投資資金にスライドして利益を増やせるように、生活の仕方を意識してみませんか?」
そうして始まったのが、家族会議です。食費、通信費、日用品費、どこをどう削れば、いくら余るか。投資資金を増やすために、子供たちが自ら、無駄な支出を見直すようになったのです。
![【図表】安田さんちのメタボ家計Before⇒After](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/6/f/1200wm/img_6f14d493cb0a676f748d76d0cf193fb7319227.jpg)
話が逸れますが、最近、「新NISA」の話題効果か、子供に投資を教えたいという依頼が増えてきています。母親と子供が一緒に来店して、小学でも投資を始めたいから、方法を教えてほしい、という依頼です。もしお子さんが投資に興味を持っていれば、ぜひ軍資金を集めるためにも、節約をすすめてほしいですね。
さて、具体的にどう“軍資金”を作ったか。購入した分譲マンションのローン返済月9万円は別にして、まず、食費、通信費、医療費、被服費を減らすことにしました。
食費(外食費含む)は日用品と合わせてもともと8万円でしたが、これを予算7万円に引き下げ、現金7万円を封筒に入れておくことに。それで聡子さんのみならず、夫も食費の予算を意識するようになりました。
通信費は、聡子さんだけ格安スマホに乗り換え(2万円→1万8000円)。医療費は、聡子さんが定期的に飲んでいたサプリを、今は症状が落ち着いているという理由で中断(2000円→0円)。被服・美容費は、家族全員が何となく休みの日に惰性で買う行為をやめました(7000円→5000円)。そして、毎月の借金返済は残債分が30万円ほどだったので思い切って貯金から一括で完済することに(返済額月5万円→0円)。
以上を、私の提案を基に、家族で会議して決めてもらい、実行に移したことで6万9000円もの支出をダウンさせることに成功。月の黒字額を11万円にすることができました。
その中から、長男の学費分を追加少しずつ積み立てるとともに、“成功報酬”として子供たちの投資資金や聡子さん、そして新たにiDeCoを始めた夫の投資資金へと充当させています。
今回の家計の問題点は、家族の非協力的な態度がウイークポイントでしたが、投資という奥の手によって打破できました。節約も、目的意識、特に自分にメリットがなければやる気は出ません。いかに明確なメリットを打ち出すか。この家族にとっては、それが「月3000円投資」だったわけです。
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家計再生コンサルタント、株式会社マイエフピー代表
お金の使い方そのものを改善する独自の家計再生プログラムで、家計の確実な再生をめざし、個別の相談・指導に高い評価を受けている。これまでの相談件数は2万6000件を突破。書籍・雑誌への執筆、講演も多数。著書は90万部を超える『はじめての人のための3000円投資生活』(アスコム)や『年収200万円からの貯金生活宣言』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)を代表作とし、著作は171冊、累計380万部となる。
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(家計再生コンサルタント、株式会社マイエフピー代表 横山 光昭)
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