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認知症は怖い病気ではない…医師・和田秀樹が「認知症になったら人生が終わり」に強い違和感をもつ理由

プレジデントオンライン / 2023年9月6日 10時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/LightFieldStudios

日本人が最もなりたくない病気の1位は「認知症」で、2位の「がん」に大差をつけているというアンケート結果がある。医師の和田秀樹さんは「認知症は急に発症するのではなく、10〜20年かけて非常にゆっくりと進行する。正しい知識があれば、決して怖い病気ではない」という――。

※本稿は、和田秀樹『60歳からはやりたい放題[実践編]』(扶桑社)の一部を再編集したものです。

■「異変があったらすぐ病院に行く」はよろしくない

病院や医者との付き合い方は、人によって行動や考え方が分かれるところです。

ちょっと熱が出ただけで病院に行く人がいれば、多少体調が悪くとも「自力で治してしまおう」と市販薬で症状を和らげようとする人もいます。

病院へ行くべき基準は明確には存在しませんが、私自身は、なんでもかんでも異変が起きたから病院へ行くという考え方は、あまりよろしくないと思っています。

病院に行くデメリットはいくつかあります。

その一つが、「ストレス」です。

多くの人は、病院の長い待ち時間や度重なる検査につらい思いをしています。

検査結果を待っている間、「もし生死に関わる病気だったらどうしよう」とヒヤヒヤする。検査で異常値が出るたびに、自分の生活習慣にドキリとする。人によっては、医者の上から目線の意見に反発を感じることもあるでしょう。こうしたストレスにさらされることは、病院で診断を受ける大きなデメリットにちがいありません。

■薬を飲むことで体調を崩してしまう人もいる

その他、病院で処方される薬による副作用も、ばかにはできません。

高齢者になると、体のどこかしらに不具合が出てきます。すると、医師はその不具合を治すために薬を何種類か処方するので、必然的に飲む薬も多くなります。

ただ、薬は、何かしらの副作用が必ず発生するものなので、多数の薬を飲み続けた結果、体調を崩す人や本来の調子を取り戻せなくなる人もいます。しかも、多くの人は「薬は体に良いものだ」と思い込んでいるので、その不調が薬の影響だと気付かず、再び体調が悪いことを理由に病院へ行き、その症状を抑えるためにまた新しい薬をもらう……という悪循環が生まれてしまうのです。

薬を飲んで不調を起こしているなら、まずやめてみることもぜひ検討すべきです。

もちろん医師の言葉どおりにしても良いのですが、残りの人生を好きに生きたいと考え、医者の言葉を気にせず、思うように生きるのも一つの選択です。ご自身にとってよりストレスが少ない決断を、選んでください。

■認知症になると何も分からなくなる?

60代になると、誰しも一度は頭によぎるのが「認知症になったらどうしよう」という不安でしょう。

2021年に太陽生命保険が20〜70代を対象に実施した「認知症の予防に関する意識調査」のアンケートでは、最も自分がなりたくない病気の第1位(42.6%)に選ばれたのが「認知症」でした。第2位の「がん」(28.7%)に大きく差をつけていますが、なぜこんなにも認知症が嫌われるのでしょうか。

そう私が質問すると、

「認知症になると、何も分からなくなってしまい、自分がなくなってしまうから」
「徘徊(はいかい)したり、記憶力が衰えたりと、通常では考えられないような行動を取るから」
「介護などで、家族に迷惑をかけてしまうから」

などの理由を挙げる人が多いです。

しかし、認知症に対するこれらのイメージには、誤解が多いのです。認知症は実はみなさんが思っているほど怖い病気ではありません。にもかかわらず、メディアが報道する情報によって不安ばかりが募り、過度に恐れられ過ぎているのが実情です。

残念なことですが、いかに医学が進んでも、脳の老化は避けることができません。私自身、数多くの高齢者の脳の解剖結果を見てきましたが、85歳以上の高齢者でアルツハイマー型の変性がない人はいませんでした。人生100年時代と言われる中、長生きするのであれば、必ずいつかは認知症になります。

■急に明日、認知症の症状が現れるわけではない

ただ、認知症になったからといって、不幸だと思う必要はありません。むしろ、むやみに認知症を恐れ過ぎてストレスをため込んでしまうことのほうが、認知症を招く要因になります。

どうせ怖がるのであれば、認知症についてきちんと知ってから怖がることが、認知症予防の最大の対策と言えるでしょう。

また、多くの人が誤解しているのですが、認知症は10〜20年の歳月をかけて、非常にゆっくりと進行する病気です。急に明日から自分のことが分からなくなったり、何もできなくなることもありません。逆に言えば、「以前からできていた能力」については、変わらずに継続できるので、農業や漁業、芸術などの分野では、認知症になっても活躍している人も多いです。

アメリカのレーガン大統領は在任中に認知症が始まっていたと考えられますが、政務に滞りはなかったようです。

■「なった後どうするか」を考えておくことが大切

だから、認知症だと診断されても、いきなり日常生活に壊滅的な支障が生まれることはありませんので、慌てる必要はありません。

これを読んだだけでも、多くの方が思っている「認知症になったら人生が終わり」というイメージが、大きく変わるのではないでしょうか。

昨今では脳トレをはじめ、認知症に「ならないための対策」は広く世に知られています。しかし、それで防ぐことはできません。たしかに対策は大事かもしれませんが、大切なのは「なった後どうするか」を考えておくことです。

たとえば、初期の認知症では、物忘れの傾向がみられることがあります。ただ「昨日の夕飯が思い出せない」「スーパーに来たのに何を買おうとしていたのかが思い出せない」などの物忘れであれば、そこまで生活に支障をきたすことはありません。

■認知症を遅らせる効果的な対策は「睡眠」

夕飯の内容を忘れても日常生活で困ることはほとんどありませんし、どうしても思い出したいなら、パートナーに「昨日、何食べたっけ?」と確認すればいい。何なら、毎食、スマホで写真を撮っておけば、後から振り返ることもできます。

スーパーで買う物を忘れてしまうのなら、事前にメモを作って、持っておけば済むことです。もし、メモだと忘れてしまうのなら、手の平に買い物リストを書いてもいい。スマホのメモ機能も使えます。

スマートフォンを使用する年配の女性
写真=iStock.com/
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/

すべての病気に共通することですが、過度な不安を抱き、生活に神経をとがらせると、人生はますます窮屈なものになってしまいます。「認知症は正しい知識さえあれば、さほど怖いものではない」ときちんと認識していれば、大丈夫。不安に足をすくわれない日々を送ってください。

認知症はあくまで老化の一環なので、いまだ科学的な対処法は見つかっていません。ただ、認知症をできる限り遅らせるのに効果的な方法はいくつかあるとされています。

その中で、最も重要な対策法の一つが「睡眠」です。

■最適なのは7〜8時間、眠り過ぎてもいけない

認知症の中でも代表的な「アルツハイマー型認知症」は、脳内に「アミロイドβタンパク質」と呼ばれるアミノ酸からなる老廃物がたまることが原因で発症すると考えられています。この老廃物がたまり、脳の神経細胞が死滅することで、認知症が進んでいくのです。

概日リズムは概日時計または体内時計によって制御される
写真=iStock.com/nambitomo
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/nambitomo

睡眠には、認知症の要因となるアミロイドβタンパク質を除去する働きと、日々の記憶を定着させる働きがあります。

和田秀樹『60歳からはやりたい放題[実践編]』(扶桑社新書))
和田秀樹『60歳からはやりたい放題[実践編]』(扶桑社新書)

アメリカのジョンズ・ホプキンス大学の調査によれば、睡眠時間が6時間以下のグループがアミロイドβタンパク質の沈着が最も多く、睡眠時間が7時間以上のグループが最も沈着が少なかったとの結果が出ています。

ただ、「睡眠が長ければ良いのか」というとそういうわけでもないようで、睡眠時間が9時間を超える場合は認知機能に異常をきたすという研究もあるので、一日に7〜8時間の睡眠が認知症予防には望ましい睡眠時間と言えるかもしれません。

高齢者になればなるほどに、寝つきが悪くなったり、睡眠の質が悪くなったりするため、なかなか7〜8時間も連続して眠れないという方も多いでしょう。その場合は、無理に一度に眠る必要はなく、細切れでもいいので、できるだけ睡眠を取るように心掛ければ、脳に良い影響をもたらすはずです。

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和田 秀樹(わだ・ひでき)
精神科医
1960年、大阪市生まれ。精神科医。東京大学医学部卒。ルネクリニック東京院院長、一橋大学経済学部・東京医科歯科大学非常勤講師。2022年3月発売の『80歳の壁』が2022年トーハン・日販年間総合ベストセラー1位に。メルマガ 和田秀樹の「テレビでもラジオでも言えないわたしの本音」

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(精神科医 和田 秀樹)

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