皮膚が水をもらえない花のようにしおれていく…20代→60代で毛細血管が4割まで減る「ゴースト血管」の恐怖
プレジデントオンライン / 2023年9月10日 12時15分
※本稿は、池谷敏郎『完全版 最速で内臓脂肪を落とし、血管年齢が20歳若返る生き方』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。
■血管年齢45歳→28歳への改善に成功
見た目が変わって、人から「若いね」と褒(ほ)められることが増えると、心が浮き立ちます。うれしくなって、どんどん体に良い選択や行動をするようになるため、ますます健康になるという好循環が起こります。
私自身もそうでした。
以前は実年齢よりずっと老けて見られていたため、自信を失っていました。ところが生活習慣を変え、外見も身体的にも「若さ」を取り戻したことで、多くの方から「お若く見えますね」と褒めてもらえるようになって、ずいぶんと自信がつきました。
当時、30代半ばだった私は、仕事の忙しさなどからくる不摂生とストレスで、体重は今より15キロほど重く、血管年齢は45歳で、実年齢よりも10歳も老化が進んでいました。
そんなある日、「患者さんに生活指導する医師が、ぽっこりお腹で見るからに不健康そうな“メタボ状態”では示しがつかない」と意を決し、生活習慣の改善を試みることにしたのです。
結果はというと、身長173センチ、体重64キロ、体脂肪率10%、血管年齢28歳に改善し、その状態を今もキープし続けています。
■見た目が若返ると人生が変わる
もともとファッションに興味はあったのですが、「ぽっこりお腹」ではどんな服を着てもあまり様になりませんでした。
ところが、スリムになって、背筋がすっと伸びて姿勢が良くなると、別に高いブランドの服を着なくても、カジュアルな安価な服で十分おしゃれに見えることに気づきました。
自然に交際範囲も広がって社交的になり、それにともなって講演会やテレビ出演のオファーがどんどん舞い込むようになり、仕事のやりがいも増しました。自分よりずっと若い方たちと食事をしたり、ゴルフを楽しんだりすることも気兼ねなくできるようになりました。それまでの人生が大きく変わっていったのです。
見た目、仕事、人間関係と、すべてが良い方向に回り始めると、「今の若さをできるだけキープしよう」という“やる気スイッチ”が入り、毎日コツコツと続けられるようになりました。
■患者さんたちも「見た目」が変わって笑顔に
私のクリニックには、血管のメンテナンスのために全国からたくさんの患者さんが来られます。なかには開業時から27年以上にわたり担当させていただいている方もいます。
体の不調を訴える患者さんたちには「池谷式・血管若返り術」について詳しく説明し、納得していただいてから、できる範囲で実践してもらっています。継続している方は、みなさん実年齢よりもずっと見た目が若々しく、いつもイキイキ、笑顔いっぱいで通院されています。
患者さんたちのこうした変化を見るにつけ、私の考えやアドバイスは間違っていないとの確信を深めています。生活習慣の改善がもたらす効果を実感するとともに、なにより私自身、とても幸せな気持ちになります。
健康も生き方も「見た目」の若さで9割決まる――。
こういっても、決して過言ではありません。
■「年齢より若く見える人」と「老けて見える人」
さて、何十年かぶりに高校時代や大学時代の同窓会などに参加して、当時と見た目がほとんど変わらない人と、誰か思い出せないほどに老け込んでしまっている人がいて、驚いた経験をしたことはありませんか。
こうした“悲しい”現実は、どうして起きてしまうのでしょうか。その原因は、日々の食生活や行動、考え方など、ちょっとした生活習慣の差にあります。
それでは、具体的にどんな生活習慣が「老けて見える」ことにつながるのでしょうか。
■「老けて見える人」のNG習慣
まずは、次のチェックリストを見てください。
【食事】
□お腹がすいたら、食べ物を探してすぐに空腹を満たしている
□コーヒー、紅茶には砂糖を欠かさない。甘い清涼飲料水が好き
□食卓に出されたものは残さず食べる
□魚はあまり食べない/ほとんど食べる習慣がない
□大豆や大豆食品はあまり食べない/ほとんど食べる習慣がない
【日常の行動】
□運動の習慣がなく、食後も体は動かさない
□服装は、体形の目立たないゆったりめのもので、暗色系を選ぶ
□電車やバスなどではいつも席に座る
□なるべく歩かないように行動している
□睡眠時間は毎日5時間未満
【メンタル】
□ストレスを感じても、じっと我慢してやり過ごす
□知らない人や自分より若い世代と付き合うことは避けている
□スマホやタブレット型端末、新しいアプリなどは苦手なので使わない
みなさんにも、なんとなく続けてしまっている習慣や行動が、1つや2つあるのではないでしょうか。
ところが、これら普段なら意識することもなく見逃してしまいがちなNG生活習慣の積み重ねで、顔や体形、姿勢などの老化が進み、見た目年齢が実年齢より10歳も20歳も老けてしまうのです。
それでは、これらの習慣がなぜ、老化スピードを加速させてしまうかについて説明していきましょう。
■「老け顔」の原因は血管の老化
ある日突然、鏡に映った自分の顔を見て、シミやしわ、たるみなど、老化のサインに気づき、ショックを受けたことはありませんか。
40代から起こるこうした「顔の老化」サインは、血管年齢の老化とともに現れ始めます。
「血管年齢」と「見た目年齢」との関係を調査した愛媛大学医学部附属病院の報告があります。この報告によると、同病院の抗加齢ドックおよび抗加齢皮膚ドックを受診した273人(女性187人、男性86人)の血管年齢(頸(けい)動脈の壁の厚さ)と実年齢を調べたところ、看護師20人が判断して「歳をとって見える人」ほど頸動脈の壁が厚く(血管年齢が高い)、「若く見える人」ほど頸動脈の壁が薄い(血管年齢が低い)ことが判明しました。
私のクリニックに通院する患者さんを見ても、男女を問わず、「血管年齢検査」で血管年齢が高い患者さんほど、顔にシミ、しわ、たるみなどが目立ち、実年齢よりも老けて見える傾向があります。
ちなみに、血管年齢検査は血管の硬さ(動脈硬化度)を評価する検査で、指先や手足に取り付けたセンサーを用いて行う「加速度脈波検査」や「脈波伝播(でんぱ)速度検査」で測定することが可能です(最近では、人間ドックなどの検査項目に組み込まれている場合もあります)。
■血管は全身の細胞に栄養と酸素を届けている
では、なぜ血管年齢と見た目の印象が関連するのでしょうか。その仕組みを理解するために、まずは血管と血液の働きについて確認しておきましょう。
血管には大きく分けて「動脈」「静脈」「毛細血管」の3種類がありますが、一人の人間の血管を全部つなぎ合わせると、その長さは地球2周半分にもなるといわれます。そして、血管の99%を占めるのが動脈と静脈の間をつなぐ、薄い壁でできた「毛細血管」です(厳密には、動脈―細動脈―毛細血管―細静脈―静脈と、それぞれの間を細動脈と細静脈がつないでいます)。
血管の中を流れる血液は、心臓を出発し、全身を巡って心臓へと戻ります。これを「体循環」といいますが、この過程で、「動脈」は心臓から送り出される栄養と酸素を血液にのせて毛細血管へ届けます。そして「毛細血管」はそれらを全身の細胞まで届け、代わりに細胞から老廃物や二酸化炭素を回収して静脈へ渡すという重要な役割を担っています。
こうして、血液は「静脈」を通って心臓へ戻っていくのです。
■血液は、肌にとっては「天然の美容液」
皮膚(肌)や臓器、筋肉、骨など、私たちの体は37兆個もの細胞で構成されています。これらの細胞は主に、血管の中を流れる血液が運ぶ栄養や酸素のおかげで正常に働いています。
私たちの肌の下には、極細の毛細血管が隙間なく張りめぐらされていて、皮膚の機能と新陳代謝(生まれ変わり)をサポートしています。
血管年齢が若ければ、血管がしなやかに広がり血流も良く、より多くの栄養と酸素が皮膚の隅々まで届くため、表面の肌の状態も良くなります。栄養と酸素をたっぷりと含んだ血液は、肌にとっては「美容液」と同じなのです。
これが、血管年齢の若さと見た目(肌)の若さがリンクする理由のひとつです。
■毛細血管が消える……「ゴースト血管」の恐怖
ところが、血管は加齢にともなって内側の壁が硬く変化します。硬くなった血管はしなやかさを失い、広がりにくくなります。
そうなると血流が悪くなり、皮膚に届く栄養分が滞るようになっていきます。
また血管が硬くなり血液の流れが徐々に悪くなると、毛細血管に血液が流れなくなって、最終的には幽霊のように消えてなくなってしまう……という恐ろしいことも起こります。
これが「ゴースト血管」と呼ばれる状態で、さまざまな体の不調に関係していることがわかってきています。
毛細血管の数は20代がもっとも多く、ゴースト血管現象によって徐々にその数を減らし、60代になると20代の4割程度まで減少してしまいます。
■ダブルパンチで老化が進む現実
加齢とともに血管は硬くなり(動脈硬化)、毛細血管の数も減る――このダブルパンチによって、更年期を迎える頃には、私たちの体の中では皮膚に届く栄養分が20代と比べて半減してしまっているのです。
当然、肌に届く「美容液」も半減します。
こうして、何もしなければ細胞は栄養不足に陥(おちい)り、皮膚はまるで水をもらえない花のようにしおれ、肌も老化する、というわけです。
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池谷医院院長、医学博士
1962年、東京都生まれ。東京医科大学医学部卒業後、同大学病院第二内科に入局。97年、医療法人社団池谷医院理事長兼院長に就任。専門は内科、循環器科。現在も臨床現場に立つ。生活習慣病、血管・心臓などの循環器系のエキスパートとしてメディアにも多数出演している。東京医科大学循環器内科客員講師、日本内科学会認定総合内科専門医、日本循環器学会循環器専門医。
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(池谷医院院長、医学博士 池谷 敏郎)
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