1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. ライフ総合

「羊を数える」よりずっと効果的…いつもより20分も寝つきが早くなった不眠症の人が頭に浮かべたもの

プレジデントオンライン / 2023年9月9日 18時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/GummyNinja

安眠するためのコツは何か。健康と福祉を専門とするジャーナリストのキム・ジョーンズさんは「就寝時に悪いことではなく良いことを考えることで、より早く、より長く眠れることがわかっている。毎晩、羊を教えるのはやめて、今日一日のいいことを声に出して言ってみるといい」という――。

※本稿は、キム・ジョーンズ『最新科学が証明した睡眠にいいことベスト211』(文響社)の一部を再編集したものです。

■「スーパーで特売品を手に入れた」と思いを馳せる

「モンキーマインド」という言葉、聞いたことがありますか? 1日が終わり、ようやく布団にもぐり込んで、疲れを癒す静寂の時間が訪れました。ところが、このまま朝までぐっすり……のつもりが、何だか頭のなかが騒がしい。

「昼間のアレ、どうなったんだっけ?」
「明日、もしうまくいかなかったら、どうしよう……」
「すぐ寝るつもりだったのに、何だか眠れないよ」

穏やかな気持ちで眠りにつきたいときに限って、心をかき乱す厄介な雑念の数々。これこそが、モンキーマインドです。眠りを邪魔する考えや思考を、枝から枝へ大騒ぎで飛び移る猿にたとえてこう呼んでいます。

本稿では、心を鎮めたり気をそらしたりして、静かで平穏な境地へと入っていくコツを紹介しています。モンキーマインドをシャットアウトして、夢のような眠りの時間を手に入れましょう。

まずは、羊を教えるのはやめて、幸運を数えてみませんか?

毎晩、今日一日の「イイコト」を5つ書き留めるか、声に出して言ってみるのです。ほんのちょっとしたことでかまいません。

「オフィスで誰かにお茶を淹れてもらった」
「スーパーで特売品を手に入れた」
「一度も赤信号にあたらなかった」
「お財布に500円玉があった」
「『そのシャツ、いいね』と言われた(うれしかった!)」

……そんなささやかなことでいいんです。

英国とカナダの大学が実施した心理学の研究から、感謝の日記を書いたり、就寝時に悪いことではなく良いことを考えたりすることで、より早く、より長く眠れることがわかっています。

ぜひやってみてください――感謝の気持ちに想いをはせるだけでぐっすり眠れるなんて、素敵な1日のしめくくりになりそうです。

■心配事が頭に浮かぶたびに「もっとゆっくり」と呟く

ベッドに入ったときに「心配事の嵐」に襲われたら、とにかく、しゃべってみましょう!

声に出して話すときに使う脳の領域は、心のなかで否定的な思いを反芻するときに使う脳の領域とは異なります。

話すことは、頭のスピードをゆるめるのにも役立ちます。

一方で思考は、物理的に話すよりもはるかに速く流れていくからです。心配事が頭に浮かぶたびに「もっとゆっくり」と言うだけでOKです。その後、悩みに立ち向かうための前向きな考えや思いつく解決策を声に出してください。

バンガー大学が実施した研究で、被験者に書面による指示を与え、黙読するグループと声に出して読むグループに分けました。集中力とパフォーマンスを測定したところ、どちらも指示を声に出して読んだグループのほうが優れていました。

自分の声を聞くことで、状況をコントロールしやすくなるのだと考えられています。

多額の請求書が届いて予算オーバーしないか心配になったときは、こんなふうに声に出して言ってみましょう!

「明日になったら、銀行の残高を調べよう」
「今月の予算リストを書き出してみよう」
「次の数週間ちょっと節約すれば、何とかなるよね」

ちなみに、この戦術は、小声でささやいても同じように効き目があります。大声で宣言して夜中にパートナーを起こしてしまっては、どちらにとっても安眠につながりませんね!

「心配事の嵐」は、 声を出して封じ込めよう
イラスト=『 最新科学が証明した 睡眠にいいことベスト211』より

■眠る前には考えを排除してはいけない

寝る前に「白いゾウのことを考えてはいけない」と言われたら、白いゾウのことがくり返し頭に浮かんでしまうものですよね?

同じように、寝る前に心配事を抑え込もうとすると、逆効果! 何度も思い出してはストレスを感じることになりかねません。

興味深い研究があります。オックスフォード大学の研究者が被験者に、眠る前に最も頭のなかを支配しそうな「考え」をひとつ選んでもらいました。経済的な不安、進級できなかったらどうしようという心配などです。

その後、被験者はふたつに分けられ、ひとつめのグループは「考えを抑え込むように」と言われ、ふたつめのグループは「リラックスして自由に考えを行き来させるように」と言われました。

……さて、結果はどうなったでしょうか?

考えを抑え込むように言われたグループは、自由に考えたグループに比べて、寝つくまでに時間がかかり、睡眠が中断される回数が多かったのです。

自分の思考をむりやり抑制しようとすると、思考が増大するだけではなく、脳が動揺します。そうすると、脳は「リラックスモード(睡眠)」ではなく、「忙しく作業するモード」になってしまうのです。

ですから、眠る前には考えを排除しようとせず、自由に行き来させるようにしてください。

心配事が浮かんだら、その存在を認めて、落ち着いて心配事にこう話しかけましょう。「頭に浮かんでくれてありがとう。今はあなたに何もしてあげることができないんだ。でも、明日対処するからね」と。

静かな心を保つことで、「警戒することは何もないよ」と脳に伝えることができます。そして「今は問題解決のために何もする必要はないんだよ」とさらに言い聞かせれば、眠りに落ちる可能性がはるかに高くなるのです。

■「幸せな場所」を思い描くと、20分寝つきが早くなる

金色に輝く砂浜、日陰の川沿いの散歩道、透き通った水がはじける滝、色とりどりの花が咲き乱れる野原――。

オックスフォード大学の研究から、不眠症の人は「幸せな場所」や「リラックスできる景色」を思い描いたときのほうが、何も考えないようにしたり羊を数えたりしたときよりも、20分寝つきが早くなったことがわかりました。

羊を数えるのはわりと根気が必要で、面倒になるときもあります。そのため、不眠症の人が羊を数えても心配事から気をそらすことができません。

一方で、幸せな場所のイメージに没頭することは、楽しくて夢中になれるために、気がまぎれるのだと考えられています。

さらなる研究から、不眠症の人は、ぐっすり眠る人に比べて、眠ろうとするときに不快なイメージを想像する割合が高いことがわかりました。

自分にとって心地良い、ハッピーな景色や風景を思い浮かべるだけで、入眠には効果があるということです。

■ベッドは「眠る場所」と体に覚えさせる

不眠を防ぐ方法のひとつが、「ベッド(眠る場所)」と「睡眠」の間に強い関連性を持たせることです。

「寝返りを打つばかりで眠れない」「目が覚めても、寝直すことができない」という場合、多くの専門家は、15~20分後にいったんベッドから出ることを推奨しています。

矛盾しているように聞こえますが、起き上がることで、「ベッド」と「目が覚めてイライラすること」の関連づけを断ち切るという理屈なのです。

ただし、ここで注意が必要です。15~20分の間、ベッドのなかで目が冴えていてもリラックスして落ち着いているときは、そのままの状態でいてください。これは、全く問題ありません。

一方で、そわそわしたり、不快感や不安を感じたときは、寝床から出ましょう。別室に行ってもいいですし、寝室の椅子などに座って、心が休まる音楽を聞いたり、暗めの照明をつけて本を読んだり(スリルを感じない内容)、ありきたりのことをしてください。ふたたび眠くなり始めたら、ゆっくり立ち上がってベッドに戻ります。

この一連の動きが、ベッドがそわそわする場所ではなく、眠る場所であるという意識を強化するのに役立ちます。

ベッドから出るほどではないなと感じる場合は、ベッドの上で身体を起こしたり、ベッドに腰かけて読書をしたり音楽を聞いてもOKです。眠くなってきたら、また横になりましょう。そうすれば、「ベッドに横になること」と「眠気」との関連を強化することができます。

■「感情」に名前をつけると対処できる

布団のなかで心配事が頭に浮かんで、そのことに完全に支配されてしまったように感じると、扁桃(へんとう)体(「闘うか逃げるか反応(※)」に関与する脳の器官)が過剰に働いてしまうことがあります。

※闘うか逃げるか反応……恐怖や危機的な状況において、危機を回選するために扁桃体が瞬時に引き起こすストレス反応。

キム・ジョーンズ(著)、鹿田昌美(訳)『最新科学が証明した睡眠にいいことベスト211
キム・ジョーンズ(著)、鹿田昌美(訳)『最新科学が証明した睡眠にいいことベスト211』

でも、自分の感情に「ラベル」(=「アイデンティティ」)を与えることで、その感情的な反応を効果的に食い止めることができます。

たとえば「私は怒っている」「私はストレスを感じている」「私は不安を感じている」「私は圧倒されている」というように感情を言語化するのです。

学術誌『Psychological Science』に掲載されたカリフォルニア大学ロサンゼルス校の研究から、ラベルつけによって扁桃体での活動が少なくなり、過剰反応を止める脳の右腹外側前頭前野の活動が多くなることがわかりました。

また、同大学による別の研究では、クモが怖い参加者のうち、不安な感情にラベルをつけるように指示された人は、心臓の鼓動が激しくなるなどの恐怖に反応する生理学的兆候が、最も少なくなりました。

不安な感情が頭に浮かんだら、名前をつけてみてください。感情の激しさが和らぎ、心が鎮まって、寝つきが良くなるかもしれません。

■眠れない自分も受け入れる

「指ハブ」という工芸品のおもちゃがありますね。

植物の皮で編んだ筒の口から指を入れて、引っ張ると筒がしまります。抜こうとして強引に引っ張れば引っ張るほど、きつくしまって、指が抜けなくなってしまうのです。

とっさに引っ張ってしまいそうになりますが、反対のことをするとどうなるでしょう? 抵抗するのをやめて、指をリラックスさせ、引っ張る代わりにそっと押す――すると、簡単に罠から抜けることができるのです。

不眠症も指ハブと同じです。

抵抗してもがくと、目覚めている不快感に加えて、怒りや欲求不満やパニックなどの不快な感覚を味わうはめになり、さらに夢の国が遠のいてしまいます。

眠れないことをありのまま受け入れて、じたばたするのはやめましょう。

そうすれば、逆説的ですが、あなたが不眠に勝つ可能性が高くなり、結果的によく眠れるようになります。

近年、患者の睡眠の問題を克服する方法として「不眠症を受け入れること」を奨励する睡眠療法士が、続々と増えています。眠れないことをリラックスして受け入れ、それに抵抗せず、否定的な反応(パニック、心配、怒り、欲求不満)を肯定的な反応に置き換えるのです。

眠れないときは、次のことを思い出しましょう。

眠れないときに思い出すといい5つのこと
①今は目が覚めていたとしても、自分を含めどんな人も眠ることができる。
②誰でもいつか必ず眠くなる。自分も必ずそうなるので、自信を持つ。
③「眠れない」ことを怖がらないで、「どんな人でも眠れる」と自分に言い聞かせる。時間はかかるかもしれないけれど、最終的には必ず眠ることができる。
④たとえ眠れなくても、ベッドで休んでいるだけで、身体が回復して翌日にうまく対処できる。
⑤数時間眠れないだけで大きな害はないと、自分を安心させる。

眠れないことを受け入れると、不眠に伴う不快感の多くが、不眠に抵抗するときの不満と怒りによって引き起こされていることに気がつくでしょう。

言い換えれば、最大の問題は目が覚めていることではありません。目が覚めていることに対する感情的な反応が、不眠を悪化させるのです。

眠らないことに対する否定的な感情が収まるにつれて、ストレス反応のスイッチが切れて、気がつけばいつのまにかすやすや眠っているかもしれません。

----------

キム・ジョーンズ ジャーナリスト
健康と福祉を専門とするフリーランスのジャーナリスト。「デイリー・ミラー」「サンデー・エクスプレス・マガジン」「ウーマンズ・ウィークリー」「テスコ・マガジン」「ウーマン・アンド・ホーム」など、さまざまな女性誌や新聞に寄稿している。パートナーと2人の息子、愛猫と愛犬(コッカースパニエル)と一緒に、ウェールズの首都カーディフに暮らしている。

----------

(ジャーナリスト キム・ジョーンズ)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください