これをやらないと作業がズルズルと遅れる…仕事のデキる戦略コンサルが実践する「作業時間の見積もり方」
プレジデントオンライン / 2023年9月13日 6時15分
※本稿は、田中耕比古『仕事の「質」と「スピード」が上がる 仕事の順番』(フォレスト出版)の一部を再編集したものです。
■「粗い見積もり」は作業をズルズル遅らせる
スケジュールを決めるときに、意識すべきことはなんでしょう。
「何を、いつまでにやるのか」
一言でいえば、これだけです。
極めてシンプルなことですが、これが、なかなか難しい。なぜ、人は締め切りに間に合わないのでしょう。スキルが足りない、作業が遅い、行動が遅い、集中力がない……など、原因はいろいろ考えられます。
しかし一番の問題は、「作業時間を見積もる」を怠ることにあります。
作業時間を見積もらない、もしくは見積もりが甘いと、作業がズルズルと遅れていきます。焦って遅れを取り戻そうとしても、遅れを取り戻すための作業に対する見積もりも甘い状態で取り組んでしまうため、結局間に合いません。
■作業時間は1~2時間、5~10分単位で見積もる
多くの人は「締め切り」については意識しますが、なぜか「作業時間」については考えません。
「作業時間の見積もりくらいやっているよ」と思う方もいるでしょう。
しかし、実際のところ、「この作業はだいたい1日かかる」「企画書は1週間くらいあればできるだろう」のような見積もりになっている方が多いように思います。
この感覚的で、おおまかな時間見積もりをもとにスケジュールを立ててはいけません。仕事の質とスピードを上げるためには、「粗い作業見積もり」は禁じ手です。
人の集中力は、90分と言われます。長く見積もってもせいぜい数時間でしょう。長時間集中し続けて、高い質の思考と作業をやり続けるのは、かなり難しいことです。
一方、「この仕事は3日かかる」というふうにざっくり見積もると、そこには、実際の作業時間のほかにも、さまざまなものが含まれてしまいます。
休憩時間、食事の時間、睡眠時間、ちょっと気分転換をする時間、スマホを見る時間、など、仕事と関係のないものがたくさん入ってきます。
もちろん、「締め切り」は3日後、5日後などに設定されていてもかまいません。しかし、作業時間は細かい作業単位で、長くても1~2時間程度、短ければ5~10分単位で見積もるべきです。
■作業時間の見積もりは繰り返すと精度も上がる
ひとつ例を挙げましょう。たとえば、先ほどの課題ヒアリングにおける、最初の「先方の業界・業種について調べ、その特徴や昨今の動向を理解する」について考えてみます。
具体的な作業内容と、その所要時間の見積もりは、
――業界・業種について、インターネット検索をして、手書きのメモを取る:30分
――手書きのメモをもとに「特徴」「概況」をまとめる:20分
――そこまでに調べた内容で、昨今の動向や、将来の動きなどがわかるか考える:5分
――足りない情報があれば、それについて、インターネットで調べる:30分
――十分な情報があれば、動向をまとめる:15分
〈1時間10分(追加調査なし)~1時間40分〉
追加オプション:インターネットだけでは情報が足りない場合
――書籍を探してオンラインで購入する:20分
――届いた書籍を読み込む:2時間
――書籍の内容をもとに、特徴、概況、動向に情報を追加する:30分
〈2時間50分〉
こんな具合に考えてみることができます。
「ここまで細かく設定しなきゃいけないの?」と感じる方もいるかもしれません。しかし、ぜひトライしていただきたいと思います。
最初は面倒かもしれませんが、何度か繰り返すうちに、コツも掴め、作業時間の見積もりの精度も上がります。
ここに書いた作業は、最短1時間10分。インターネットを使った追加調査をするなら1時間40分です。
一般的に、一日の労働時間は8時間ですから、この日は、残り6~7時間は別のことに時間を使えることになります(書籍を買う場合も、当日の業務時間に受け取ることはできないため、この日は「書籍探し+オンライン注文」の20分だけです。もちろん、電子書籍であれば、その日のうちに読むこともできます)。
■見積もりを行うことで個別に作業を振り返れる
この考え方のよいところは、予定通りの時間で作業が終わらなかったときに、どこに原因があるのかがわかるところです。
どの作業が想定よりも長くかかったのか。それはなぜなのか。見積もりが甘かったのか、不測の事態が起こったのか、など細かな単位で原因を振り返ることができます。
細かな見積もりをしないまま作業を進めてみて、3日後に、なぜか半日分作業が残ってしまっていた、となっても、その原因を明らかにするのは困難です。
また、見積もりがあれば、仕事を進めている最中に、自分が予定通り進んでいるのか、遅れているのか、あるいは、順調に進んで予定よりも早いのか、について把握することができます。
もし、遅れていると判明した場合には、どうやって遅れをリカバリーするのかを早々に考え始めたり、上司や先輩に「このままでは間に合いそうにない」というアラートを上げたりすることができます。
未来の自分が困らないよう、仕事を始める前にしっかりと「どの作業に、どれくらいかかるのか」を考えておきましょう。そうすれば、締め切りに追われることが少なくなります。
■スケジュールは「いつから手をつけるか」を意識する
もうひとつ、スケジュールへの落とし込みのコツをお伝えします。
先ほどの悪い例のように「ざっくり3日かかる」という作業見積もりをしていたときは、見積もり結果がそのままスケジュールになっていたはずです。しかしながら、今回、私たちは「もっと細かい作業単位で、作業時間を見積もった」状態にあります。
今度は、それを自らの勤務時間にあてはめていきましょう。
ここで大事なのは、「何に、いつから手をつけるか」を意識することです。
仕事が毎回締め切りギリギリまでかかったり、遅れたりしてしまう最大の要因は、「締め切りが近づくまで手をつけないから」です。
仕事の緊急度が上がってから、さぁ手をつけよう、と思い立っても、もはや十分な作業時間が残されていないということになります。
「いつから手をつけるか」を意識し、明確な作業の進め方をイメージしておくことで、締め切りに間に合うように、段取りをつけて仕事を進められます。
■「ほかの仕事」の作業時間も考慮してスケジュールを組み立てる
会社に勤めている場合、通常、多くの事務作業が存在します。「営業は、営業活動だけをしていればいい」とはなりません。
朝会に出席したり、上司との面談があったり、部下の相談に乗ったり、経費精算や勤怠管理のための作業があったりします。もちろん、昼食の時間や休憩時間もあります。
また、多くの場合、ひとつだけの仕事を担当しているわけではありません。
営業ならば複数のお客様を担当して、それぞれのお客様の状況に応じた対応を行っているでしょう。
経営企画職であれば短期計画・中期計画を立てながら、複数事業の戦略を確認したり、予算との乖離を見定めて対策を検討したりします。何かひとつだけに集中し続けられる環境は、それほど多くはありません。
そのため、細かい単位に分解して作業時間を見積もった上で、ほかの仕事と組み合わせて、一日一日のなかに組み込んでいくことが必要になります。
ある日は、この仕事のために3時間使えるが、次の日はほかの仕事が忙しいので1時間しか使えないといったことは、当たり前にあるはずです。
そうしたなかでは、ある仕事の合計作業見積もりが10時間だったときに、2日あればできる、とは言い切れなくなります。「ほかの仕事も勘案すると、遅くても4日前には取り掛からないといけない」ということも十分起こり得ます。
ぜひ、「締め切りに間に合わせるためには、この日から手をつけておく必要がある」ということを、自分のなかで明確にした上で、作業スケジュールに落とし込みましょう。
これを上司や先輩に共有すれば、彼らは安心してあなたに仕事を任せてくれます。また、あなたが部下やチームメンバーを指導する立場であれば、彼らにも同じレベルで作業スケジュールを考えてもらうようにしましょう。
そうすることで、依頼した作業のアウトプットが、いつ頃、どういう状態で上がってくるのかをあらかじめ予測できますし、途中経過についても確認しやすくなります。
■マイルストーンは「他者を巻き込んだ予定」で設定する
こうして、何をやるかを考えた上で、締め切りまでの間に、マイルストーンを置きましょう。マイルストーンは日本語で「一里塚(いちりづか)」と言いますが、旅の途中の目安となる「道しるべ」です。自分が旅程のどこまで来たのかがわかります。
マイルストーンを設定しておくと、自分がいつまでにどこまで進みたいのか、またその予定通りにしっかり進んでいるかをチェックできます。
マイルストーンを置くときのポイントは「自分だけの予定にせず、他者を巻き込んだ予定」にすることです。上司や先輩、あるいは、部下やチームメンバーとの「打ち合わせ」の形でセットしておきましょう。
・3日後の金曜日に、業界調査の結果を「上司」に共有する
・月曜日の夕方に、お客様の課題についての自分なりの考えを「先輩」と話す
・水曜日の朝に、提案イメージを「メンバー」に伝えて資料作りを依頼する
・金曜日の夕方に、依頼していた提案イメージを「メンバー」から共有してもらう
このようにセットしておくことで、その期日までに、誰が何をしないといけないかが明確になり、遅滞なく仕事が進むようになります。
しっかりと計画を立て、先々を見通すことができれば、仕事の質は必ず高まります。そしてそれは、周囲からの「仕事ができる」という評価につながっていくことでしょう。
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ギックス取締役、共同創業者
1977年生まれ。2000年、関西学院大学総合政策学部卒業。商社系SI企業に入社。2004年、アクセンチュア株式会社戦略グループ入社。幅広い領域での戦略コンサルティングプロジェクトに参画。2011年、日本IBM株式会社入社。ビッグデータのビジネス活用を推進。2012年、株式会社ギックス設立。取締役に就任。2022年3月、東証マザーズ(現グロース)に新規上場。著書に『一番伝わる説明の順番』、『仕事の「質」と「スピード」が上がる仕事の順番』など。
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(ギックス取締役、共同創業者 田中 耕比古)
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