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女性がひとりで外食できるのは世界で日本だけ…外国人の旅行者が日本のレストランを見て驚くこと

プレジデントオンライン / 2023年9月20日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Malkovstock

日本と欧米のレストランには決定的な違いがある。飲食店プロデューサーの稲田俊輔さんは「欧米のレストランは、男女のカップルを想定客としている。ひとり客を歓迎する日本のレストランとはまったく異なる」という――。(第2回)

※本稿は、稲田俊輔『お客さん物語 飲食店の舞台裏と料理人の本音』(新潮社)の一部を再編集したものです。

■お店の人は「ひとり客」を歓迎しているのか

ひとり飲みや食事など、一人で飲食店を利用してみたいけどなかなか踏ん切りが付かない、なんて話をよく耳にします。世の中には居酒屋はもちろん、寿司や焼き肉でも平気で一人でふらっと入る人たちはいくらでもいますし、フレンチやイタリアンなどのちょっといい店でも普段から一人で楽しんでいる人たちだって少なくない。

そういう人たちに言わせれば、

「踏ん切りが付かないも何も、普通に行って普通に楽しめばいいんですよ」

ということになるのでしょうが、最初は躊躇してしまう気持ちも、もちろんわかります。

お店の人は本当に「ひとり客」を歓迎してくれるのだろうか?

周りのお客さんに変な目で見られないだろうか?

手持ち無沙汰になってしまわないようにするにはどう過ごせばいいんだろう?

これまでいろんなタイプのお店をやってきた僕が「お店の人」の立場から言うと、「ひとり客が嫌」という感覚は全くありません。そもそも持ちようがありません。特に僕の場合「店の一番の売りは雰囲気でも接客でもなく料理そのもの」という感覚でずっとやってきた部分が大きいこともあり、あくまでおいしい料理が目当てできてくれることの多いひとり客はむしろ嬉しい存在です。

■ビジネス的にはありがたい存在

一人だと支払い金額が少なくて嫌がられるのではないか、という心配もあると思います。確かに、テーブル席オンリーで、それが常に満席に近い状態で埋まっているような店においては、ひとり客は売上を落としてしまいかねません。しかしそういう店は極めて限られています。多くの店にはカウンター席がありますし、そうではない店は最初から席数に余裕のあるところが多い。

そしてあえて生臭い話をするならば、ひとり客は(料理をたくさん楽しんでくれるので)客単価が高く、なのに在店時間も短めです。飲み食いよりもむしろお喋りに夢中で長々と逗留するグループ客よりも、ビジネス的にはありがたい存在だったりもします。

真剣に料理を楽しんでくれて、売上にも効率的に寄与してくれるひとり客。むしろ最高のお客さんです! ……と言い切ってこの話を終わりたいところなのですが、残念ながら世の中はもう少し複雑だったりもします。

■日本は女性1人でもレストランを利用できる

これは僕にとっては不可解以外の何物でもないのですが、ひとり客を歓迎しない店(もしくは店主)というのは世の中に確実に存在します。もちろん席の配置やメニュー内容によっては、そもそもひとり客への対応が難しい店はあります。しかしそういった明確な理由がなくてもなんとなく敬遠する店主は、残念ながら存在します。

こんなことを言うと、せっかくおひとり様デビューを果たそうとしている人たちの出鼻を挫いてしまいそうで気が引けるのですが、現実問題としてそれは有る。ただし、そういう店は「アップデートしていない店」とも言えるのではないか、とも思っています。

先にイタリアンやフレンチのレストランに限定した話をすると、元々欧米のレストランはひとり客を全く想定していません。お客さんは基本二人、しかもそれは「男女のカップル」であることが暗黙の了解です。ずいぶん窮屈な話ですよね。

レストランでディナーを楽しむカップル
写真=iStock.com/Prostock-Studio
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Prostock-Studio

でも、それは昔からそういう文化なんです。だから欧米人の旅行者が「日本は女性一人でもレストランを利用できる点が素晴らしい」と言っているのも、聞いたことがあります。

しかし、日本においてもあくまで本場志向のシェフは、そういう文化ごと「現地そのまま」を自分のお店で再現したいと考える場合もあるようです。

和食や中華でも似たようなことはあります。ごく庶民的な店は別として、昭和以前のそれはあくまで「宴席」の場でした。大人数で集うことが普通で、最小単位も二人。この感覚が今でも持ち越されている店がまだあります。

■ひとり客を歓迎しない店の探し方

あくまで個人的な感覚としては、現代、つまり個人個人が思い思いに美食を楽しむ時代においては、そういう旧弊な価値観はアップデートした方がお店にとってもお客さんにとっても幸せなのではないか? とも思います。

とは言え価値観なんてそう恣意(しい)的にすぐさま変えられるものではないし、クラシックなスタイルを律儀に守り抜くということ自体にも価値はあります。だからそういう店は、おひとり様側が察して近付かない、というのが現実的でしょう。

幸いそういう店を見抜く、割と確実な方法があります。レビューサイトです。普段「レビューサイトの評価は役に立たん」と憤慨している人も、こういう時こそは活用してみてください。そこにはひとり客として存分に楽しんだ人もいれば、冷遇されてちょっと悲しい思いをした人もいます。それらの投稿がなくても、なんとなく「察する」ことは概ね可能です。

何にせよ、ひとり客デビューにあたってはレビューサイトが有効です。総合点数などはこの際無視しましょう。レビューの中に一人でウキウキ楽しんでいる様子を報告したものがあれば、(料理の味などには多少ケチをつけていたとしても)その店は狙い目です。そしてそういうレビューを書く人は、他の店でもきっとおひとり様を楽しんでいます。そこを辿っていけば候補店がわんさか見つかる可能性が高い。

■普通に行って普通に楽しめばいい

もうひとつ有効な方法があります。それはチェーン店を利用すること。チェーン店を一人で利用することに抵抗のある人はそういないでしょうし、チェーン店は良くも悪くも店の人との関係性が薄い。もちろんお客さん同士の関係性も薄い。ここでは全員がモブキャラです。

それでいて、そこを巷の個人店と同様のレストランコンテンツとして利用できる店が決して少なくない。サイゼリヤがイタリアンレストランとして過不足なく利用できるのは多くの方がご存じのこと(?)でしょうが、他にも例えばロイヤルホストは西洋料理レストランとして、大戸屋は小料理屋として、案外申し分ないコンテンツを持っています。ある種の「ごっこ遊び」的に、そういった店で場数を踏むのは、なかなか良い方法だと思います。

「普通に行って普通に楽しめばいいんですよ」

という感覚が、場数をこなすことですんなり腑に落ちたら、後はこっちのものです。

最後に大事なことをひとつ。

そうは言ってもお店の人やお客さんの目はやっぱり気になる、というのは最大のハードルかもしれません。でもね、そもそも、自分が人にどう見られているか気にするほどには、人は他人のことを気にしていないものです。

■誰もあなたのことを気にしていない

もしもお店での振る舞い方に慣れていなくて、ちょっとおかしなことをしてしまったとしても、実は誰も気にしません。

稲田 俊輔『お客さん物語 飲食店の舞台裏と料理人の本音』(新潮社)
稲田 俊輔『お客さん物語 飲食店の舞台裏と料理人の本音』(新潮社)

よしんば極端に変なことをしてしまったとしても、「あー、世の中には変わった人もいるなー」と、一瞬思われておしまいです。

世の中ではなぜか、

「一人で飲食店を利用してたら近くにいたカップルの女性に『あの人一人で来てる』とクスクス笑われた」

というようなエピソードがたまに語られたりしますが、あれは実話なのでしょうか? 正直そんな状況、ちょっと想像しにくいです。

百歩譲って本当にクスクスされたとしても、それが映画の一場面ならば、あなたは個性的な主人公で、プークスクスした人々はモブキャラです。

おひとり様は、人生の主役を生きるワンシーン。

存分に楽しんでやっていきましょう!

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稲田 俊輔(いなだ・しゅんすけ)
料理人、南インド料理専門店「エリックサウス」総料理長
鹿児島県生まれ。京都大学卒業後、酒類メーカーを経て飲食業界へ。南インド料理ブームの火付け役であり、近年はレシピ本をはじめ、旺盛な執筆活動で知られている。近著に『食いしん坊のお悩み相談』(リトル・モア)、『ミニマル料理』(柴田書店)など。

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(料理人、南インド料理専門店「エリックサウス」総料理長 稲田 俊輔)

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