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"宇宙の果て"までドライブすると何年かかるか…NASA出身コミック作家が出したシュールな回答

プレジデントオンライン / 2023年9月17日 10時15分

イラスト=『もっとホワット・イフ? 地球の1日が1秒になったらどうなるか』より

宇宙の果てまでドライブすると何年かかるのか、自分のご先祖様は何人いるのか。NASA出身のコミック作家・ランドール・マンローさんは自身のブログで、読者のさまざまな疑問に科学で答えている。著書『もっとホワット・イフ?』(早川書房)から、ユニークな回答をお届けする――。

※本稿は、ランドール・マンロー(著)、吉田三知世(訳)『もっとホワット・イフ? 地球の1日が1秒になったらどうなるか』(早川書房)の一部を再編集したものです。

■時速105キロのクルマで「宇宙の果て」を目指す

今この瞬間、宇宙の膨張が止まったとすると、人間が自動車を運転して宇宙の果てまで行くのにどれくらいの時間がかかりますか?――サム・H-H

宇宙の果てまでは、約440,000,000,000,000,000,000,000キロメートル(4.4×1023)kmだ(約460億光年)。

時速105キロメートルの一定の速さで進むとすれば、そこまでたどり着くには、480,000,000,000,000,000――つまり4.8×1017――年かかる。別の言い方をすると、今の宇宙の年齢の3500万倍の長さだ。

この長距離ドライブは、危険なものになるだろう。宇宙の何やかやのせいではなく――そういうものは、あまり気にしなくてもいい――運転そのものが相当危険なのだ。

アメリカでは、平均的な中年のドライバーは、1億マイル(約1天文単位)毎(ごと)に約1度、命に関わる衝突事故に遭う。太陽系から出てどんどん遠くへ行く高速道路を誰かが作ったとすると、ほとんどのドライバーは小惑星帯を抜け出すことができないだろう(小惑星帯は、太陽から2~4天文単位の距離にあるため)。

高速道路で長距離を走るのに慣れているトラック・ドライバーは、一般のドライバーよりも衝突事故遭遇率は低いが、それでも木星(太陽からの距離は約5天文単位)に到達する可能性はあまりないだろう。

出典=『もっとホワット・イフ? 地球の1日が1秒になったらどうなるか』
イラスト=『もっとホワット・イフ? 地球の1日が1秒になったらどうなるか』より

■月サイズのガソリン、北極海サイズのオイルが必要になる

アメリカの衝突事故率からすると、1人のドライバーが観測可能な宇宙の果てまでの460億光年を一度も事故を起こさずに走り切る可能性は約101015に1つである。これは、1匹のサルが米国議会図書館の蔵書をすべて、ミスなしにタイプで打つという作業を連続50回やり遂げるのとほぼ同じ確率である。自動運転車か、少なくとも車線からはみ出しそうになったら警告してくれるアラームの付いた車を使ったほうがいいだろう。

宇宙の果てまでの旅には大量の燃料が必要だ。1ガロンあたり33マイル(1リットルあたり約14キロメートル)の燃費の場合、宇宙の果てまで行くには月と同じ大きさの球を満たすガソリンが必要になる(*)。さらに、3000京(30兆の100万倍)回のオイル交換を行うことになるので、北極海と同じ容積のエンジンオイルを入れる容器も必要だ(**)

出典=『もっとホワット・イフ? 地球の1日が1秒になったらどうなるか』
イラスト=『もっとホワット・イフ? 地球の1日が1秒になったらどうなるか』より

* 2021年時点で、NASAのニュー・ホライズンズ探査機は約8億5000万ドルの資金で約50億マイル進んだ。これはつまり、1マイルあたり17セントである――普通の長距離ドライブでガソリンとスナックにかかる費用と同じぐらいだ。
** 昔から、5000キロメートル走るたびにオイル交換が必要だと言われているが、車の専門家のほとんどが、これは俗説だということで意見が一致している――最近のガソリンエンジンは、1度オイル交換すれば、この2、3倍の距離を悠々走ることができる。

また、1017トンのスナックも必要だろう。銀河間パーキングエリアがたくさんあるといいのだが。さもないと、トランクがぎゅうぎゅうになってしまう。

出典=『もっとホワット・イフ? 地球の1日が1秒になったらどうなるか』
イラスト=『もっとホワット・イフ? 地球の1日が1秒になったらどうなるか』より

■おすすめのドライブ・コース

それは途方もなく長い旅で、景色もほとんど変わらないだろう。肉眼で見える恒星は、銀河系を抜ける前にすべて燃え尽きてしまっているだろう。

室温の恒星に接触したいなら宇宙探査機ケプラーが発見した恒星の1つ、ケプラー1606を通過するルートを計画するといい。それは2800光年の距離にあるので、300億年後にあなたが通過するときには、この恒星は快適な室温まで冷えているはずだ。ケプラー1606には現在惑星が1つあるが、あなたがたどり着くころには、その惑星はすでに呑み込まれてしまっているだろう。

出典=『もっとホワット・イフ? 地球の1日が1秒になったらどうなるか』
イラスト=『もっとホワット・イフ? 地球の1日が1秒になったらどうなるか』より

恒星がすべて燃え尽きてしまったら、新しい気晴らしを見つけなければ。たとえあなたが、これまでに作成されたオーディオブックのすべてと、あらゆるポッドキャストの全エピソードを持っていくとしても、太陽系の端(はし)までもたないだろう。

出典=『もっとホワット・イフ? 地球の1日が1秒になったらどうなるか』
イラスト=『もっとホワット・イフ? 地球の1日が1秒になったらどうなるか』より

■1017年の長距離ドライブ

よく知られているように、ロビン・ダンバー(イギリスの人類学者兼進化生物学者)は、平均的な人間は約150の社会的関係を維持していると述べた。これまでにどこかで生きていたことのある人間の数は1000億人を超える。

1017年の長距離ドライブは、これらの人間一人ひとりの人生をリアルタイムで――一種の無編集ドキュメンタリーの形で――再生し、そして、そのドキュメンタリーのそれぞれを、主人公を最もよく知る150人の一人ひとりに違った解説をしてもらいながら、150回再生して見直すのに十分な長さだろう。

出典=『もっとホワット・イフ? 地球の1日が1秒になったらどうなるか』
イラスト=『もっとホワット・イフ? 地球の1日が1秒になったらどうなるか』より

この、人間の生涯とそれに対するさまざまな視点を網羅したドキュメンタリーを見終えるころ、あなたはまだ宇宙の果てへの旅路の1パーセントも進んでいないはずなので、ついに宇宙の果てに着くまでに、この長大なドキュメンタリー――150通りの音声解説が付いた一人ひとりの人間の人生――を100回繰返し見るのに十分な時間があるだろう。

■スナックは余分に持っていこう

観測可能な宇宙の端に着いたなら、また4.8×1017年かけて家に戻ることもできるが、帰るべき地球はもはや存在しないので──残っているのは、ブラックホールと恒星の凍った殻だけだろう──さらに先へと進んだほうがいいだろう。

私たちが知る限り、観測可能な宇宙の端は実際の宇宙の端ではない。それより遠方の宇宙からは、光が私たちに届くだけの時間がこれまでに経過していないので、そこが私たちが見ることのできる最も遠いところだというだけだ。宇宙そのものがその特定の距離で終わっていると考える理由はない。とはいえ、その先どれだけ遠くまで宇宙があるのかはわからない。どこまでも続いているのかもしれない。観測可能な宇宙の端は、宇宙そのものの端ではないけれど、地図の端ではある。それを越えたときに何が見つかるかを知る方法は存在しない。

スナックを余分に持っていくのを絶対に忘れないように。

出典=『もっとホワット・イフ? 地球の1日が1秒になったらどうなるか』
イラスト=『もっとホワット・イフ? 地球の1日が1秒になったらどうなるか』より

■自分の「ご先祖様」は何人いるのか

つい先日気づいたのですが、家系図の人間の数は、世代を遡るごとに指数関数的に増えますよね。つまり、私には親が2人、祖父母が4人、曾祖父母が8人、といった具合にいます。このことから私は思ったのですが、たいていの人は、これまでに生きていたことがあるホモサピエンスの大半の血を引いているのでしょうか? そうでないなら、私はこれまでに生きていたことのあるすべての人々の何パーセント、何分の1の子孫なのでしょうか?――シェイマス
出典=『もっとホワット・イフ? 地球の1日が1秒になったらどうなるか』
イラスト=『もっとホワット・イフ? 地球の1日が1秒になったらどうなるか』より

あなたと、これまでに生きていたことのある大半の人間とのあいだに血縁関係はありません。おそらくそのうちの10パーセント程度の人々の子孫なのでしょうが、正確な数値を突きとめるのは困難でしょう。

ランドール・マンロー(著)、吉田三知世(訳)『もっとホワット・イフ? 地球の1日が1秒になったらどうなるか』(早川書房)
ランドール・マンロー『もっとホワット・イフ? 地球の1日が1秒になったらどうなるか』(早川書房)

普通、人には2人の親がいて、そして――地球規模の人口減少が起こった時期を除いて――平均的には少なくとも2人の子どもがいる。このことからすると、私たちの祖先と子孫の両方が指数関数的に増加する傾向にある。時間を遡って数えても、早送りして数えても、あなたと血縁がある人の数は増加する。どの子どもも、2つの家系図につながっており、数世代以上にわたって続く家系はどれも、指数関数的に大きくなって、やがてすべてを包含してしまう。

私たちの祖先という集合も、これと同じように大きくなる。あなたの祖先の一人ひとりが、2つの家系樹の合流を表しているので、世代を遡っていくほど多くの人々が含まれていく。過去に遡っていくあいだに、あなたの家系樹はときどき縮小する――たとえば、祖先のなかに、何世代にもわたって隔離されていた人々がいたなどが原因で――が、完全に途絶えてしまうことはない。

■紀元前5000年までさかのぼれば共通祖先にたどり着く

遡るたびに家系は絶えず2倍になり続けるので、どんどん過去に遡っていけばいつかは、存続するすべての系統があなたの家系樹に吸収される時点に達するだろう。その時点において、子孫を残したすべての人はあなたの祖先であり、あなたとほかのすべての人は、同じ1つのグループの祖先の子孫だということになる。これが共通祖先時点だ。

出典=『もっとホワット・イフ? 地球の1日が1秒になったらどうなるか』
イラスト=『もっとホワット・イフ? 地球の1日が1秒になったらどうなるか』より

ダグラス・L・T・ローデと同僚らによる2004年のシミュレーションによって、紀元前5000年から2000年の間のどこかに共通祖先時点があったと推定された。その時点で、1人でも子孫を残した人はすべて、今生きているみんなの祖先だ。その時点からのすべての血筋は、途絶えたか、拡張して生存しているすべての人間を含むようになったかのいずれかである。したがって、現在生存しているすべての人間はその時点以前のすべての祖先の集合を共有していることになる。

子どもを持つ人々の大多数は、この家系図に加わることになる。ローデらは、ヒト個体群において、1人でも子どもを持った人間の60パーセントが永遠に系統樹のなかに入ることになり、また、成人するまで生きた人の73パーセントが子どもを持ったと推定する。小児死亡率の歴史的研究に基づき、55パーセントの人が成人するまで生きると仮定すると、ローデらの推定は、これまでに生まれたすべての人間の約25パーセントがいつかは子どもを持ち、永続する子孫たちの血統を残したと示唆していることになる。

■「ご先祖様」は100億人~150億人いる

出典=『もっとホワット・イフ? 地球の1日が1秒になったらどうなるか』
イラスト=『もっとホワット・イフ? 地球の1日が1秒になったらどうなるか』より

この数値に、人口と出生率の歴史的変遷を結びつけると、共通祖先時点以前に約200億人の人間が生きていたと推測され、また、50億人があなたの祖先であること推測できる。

出典=『もっとホワット・イフ? 地球の1日が1秒になったらどうなるか』
イラスト=『もっとホワット・イフ? 地球の1日が1秒になったらどうなるか』より

共通祖先時点以降は、あなたの祖先の集合は、ほかの人たちの祖先と完全に重なることはなくなるが、それでもなお多くの人々を含む。共通祖先時点以前、あなたの家系図は河川の網状流路のような形をしている。直近の1000年ほどになって初めて、家系図は収束して木のような形になる。このあいだにさらに50から100億人の祖先が加わっているだろう。

結局、あなたの家系図には、これまでに生きていたことのある1200億人の人々のうち、100億から150億の人間が含まれるということになりそうだ。したがって、そのうち3300万人が、今使われているグレゴリオ暦で今日が誕生日だということになる。

今日が2月29日でない限り。

出典=『もっとホワット・イフ? 地球の1日が1秒になったらどうなるか』
イラスト=『もっとホワット・イフ? 地球の1日が1秒になったらどうなるか』より

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ランドール・マンロー(らんどーる・まんろー)
インターネットマンガ家
書籍『ホワット・イフ?』(What If?)、『ハウ・トゥー』(How To)、『ホワット・イズ・ディス?』(Thing Explainer、ともに早川書房刊)、科学Q&Aブログ「 What If?」、人気ウェブコミック「xkcd」の著者。かつてNASAのロボット技術者だったが、2006年にその職を辞し、フルタイムのインターネットマンガ家となる。最新刊である本書『もっとホワット・イフ?』(What If? 2、早川書房刊)はニューヨークタイムズ・ベストセラーで、国際的ベストセラーにもなっている。マサチューセッツ在住。ホームページはxkcd.com

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(インターネットマンガ家 ランドール・マンロー)

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