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このまま生き延びるのは到底無理…スポンサー離れが急激に進むジャニーズが生き残るための"唯一の方法"

プレジデントオンライン / 2023年9月11日 14時15分

記者会見で質問に答えるジャニーズ事務所の藤島ジュリー景子氏=2023年9月7日、東京都千代田区 - 写真=時事通信フォト

ジャニーズ事務所は今後、生き残れるのか、生き残るにはどうすればいいのか。経営コンサルタントの小宮一慶さんは「被害者の補償を専門に行う会社と従来通りのタレント事務所に分けて、藤島ジュリー景子氏との関係を断つべきだ」という――。

■記者会見での懸念点

ジャニー喜多川氏による性加害問題に関連してジャニーズ事務所が大きく揺れています。9月7日には、事務所側が記者会見を開き、藤島ジュリー景子社長(57)が辞任するとともに、東山紀之新社長(56)が就任を発表。性加害の事実を認めるとともに、今回の事件の被害者への救済を「法を超えて」行うことなどが表明されました。

今回の記者会見を見ていて、ジャニーズ事務所は「台風が去るのを待っている」という印象を持ちました。

ジュリー氏が社長を退任するというのは、一連の事件を調査した調査報告書の提言に基づいたものですが、彼女が100%株主のままで、なおかつ新体制でも取締役として残ると発表しました。

被害者の救済や補償の役割を十分に果たすためとしていますが、新社長の東山氏もジャニーズ事務所の旧体制やジュリー氏との関係が深いことを考えれば、本当に会社が変わるのかという疑念は払拭できません。ジュリー氏が権限を再度拡大する懸念もあります。所属タレントをCMなどで起用する企業や世間、被害者はそれで納得するとは思えません。

ジャニーズという社名に関しても、東山氏は変える可能性も示唆してはいましたが、今のところは変えないという結論です。つまり、反省はしており、今後はコンプライアンスにも注意はするが、枠組みは大きく変わることはないということです。これはガバナンスの観点からは大きな疑問が残ります。

■超高収益企業だったジャニーズ事務所

ジャニーズ事務所は上場をしていないために、正確な数字は分かりませんが、「デイリー新潮」(8月31日配信)によれば、関連会社や個人の名義で赤坂や渋谷などに不動産などを持ち、総資産が1000億円を超えていると言われています。

対比になるかは分かりませんが、吉本興業ホールディングスの決算公告を見ると、2022年3月期で総資産は298億円ですから、ジャニーズ事務所がいかに膨大な資産を保有しているかが分かります。

これは、ジャニーズ事務所が非常に高収益な企業であった結果です。

吉本興業は所属タレントが約6000人で職員数は868人です。一方、ジャニーズ事務所のタレントは個人やグループ、ジュニアを含めて数百人と推計され、職員数は210人です。職員一人当たりのタレント数は、ジャニーズは格段に少なく、それだけ手厚い対応をしているということです(数字は各社HPより)。

その背景にあるのは、非常に多く稼ぐタレントたちの存在です。日本のみならず海外にも熱狂的なファンがおり、例えば、嵐のファンクラブは年会費が4000円で、2020年末でのグループでの活動休止後も約200万~300万人の会員がいるといわれています。

コンサート終盤で放たれた銀テープ
写真=iStock.com/kyonntra
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kyonntra

彼らとしては、もちろん、この高収益の「帝国」を守りたいのです。それもできれば、これまでの状態をある程度維持したままで、事業を続けていきたいということです。そして、先にも述べたように、何とか台風が過ぎるのを待っているというふうに私は感じました。

テレビ局などメディアの多くもジャニーズのタレントなしではやっていけませんから、この問題については長い間、腫れ物に触るような対応を続けていました。今回の会見を受けて各局がコメントを発表しましたが、具体的にどう対応するかはかなり苦慮するでしょう。

しかし、BBCはじめ海外のメディアの注目度も高く、国連の人権委員会も動いています。ジャニーズ事務所所属のタレントをCMで起用している企業は、難しい対応を迫られています。好感度の高いタレントを使いたいが、ジャニーズ事務所という器に入っていることが問題なのです。

■会社を分離するべし

ここまでのことを総合すると、ひとつの企業体としてのジャニーズ事務所がこのままの状態で生き延びていくのは、かなり無理があると考えます。

ひとつは性加害の被害者が、ジャニーズという名前に嫌悪感を抱く人が少なくないこと、一般市民の中にも同様の人がいることが挙げられます。海外でも一部に同様の反応があります。

このままジャニーズ事務所が存続した場合に、最も大きな影響を受けるのは所属タレントたちを使っている企業です。彼らの中にはすでにCMなどでの起用を中止する動きも出ています。

今、企業では、「コンプライアンス(法令順守)」がとても厳しく求められています。とくに、上場している会社では以前とは比較にならないほどその点について厳格で、それを守ることが取引先の条件であることも少なくありません。

そうした中、今回の事件、そしてそれを長らく隠蔽(いんぺい)してきたジャニーズ事務所の企業体質に対して大きな疑問を持っているCMのスポンサー企業も少なくありません。海外メディアや国連が注目するという状況下では、グローバル展開する企業は、なおさら敏感にならざるをえません。

先にも述べたように、ジャニーズ事務所所属タレントの知名度や好感度はとても高いので、タレントたちを使いたい、使い続けたいという要望は今もあります。しかし、ジャニーズという器の中にそのタレントたちが入っている限りは、使いづらいというのが企業の本音でしょう。

また、こういう不祥事に対する対応では、とくに横並び意識の強い日本企業においては、主力企業の一部がジャニーズ排除という選択をした場合には、多くが右に倣えとなることが容易に予想されます。

一方、今回の事件の被害者の中には、責任を果たしてもらう意味からも、会社の存続を願っている人たちももちろんいます。

以上のような状況において、問題を解決するには、私は、経営コンサルタントとして次のように考えます。

会社を2つに分けることです。ひとつはジュリー氏が100%の株式を保有し、取締役として残る会社です。こちらは、被害者の救済、補償を専門にやる会社です。ジュリー氏も、被害者の救済、補償に専念すると言っています。

もうひとつの会社は、従来通りのタレントのマネジメント活動を行う会社です。ただし、こちらは、ジュリー氏の影響を排除するために、株主として外部の人、例えばテレビ各局などが出資する会社を設立します。もちろん、社長はじめ取締役の過半数を外部の株主などから選任し、コンプライアンスやガバナンスの観点から、公正な立場の社外取締役を複数人入れることも必要でしょう。

記者会見では法令順守を徹底するためにチーフコンプライアンスオフィサーを置くと言っていましたが、外から雇ってきたとしてもしょせん内部の人なので、十分に機能するかどうかは不透明です。内部だけでなく、徹底した外部からのチェックが必須になります。

会社を2つに分けること以外にもすべきことがあります。それはやはり、タレントマネジメントのための新会社では「ジャニーズ」という名前を使わないこと。ファンや所属タレントの中には愛着がある人もいるでしょうが、CMスポンサーの側から見ると、求めているのはタレントさんであって、不祥事を起こしたジャニーズという名前ではありません。悪いイメージを想起させるような名前がついてまわるのは好ましくありません。

逆に言えば、旧来のジャニーズと関係が薄いということであれば、知名度・好感度の高いタレントを従来通りに使いたいという企業は出てくる可能性があると考えられます。いずれにしても、今後の展開に注目です。

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小宮 一慶(こみや・かずよし)
小宮コンサルタンツ会長CEO
京都大学法学部卒業。米国ダートマス大学タック経営大学院留学、東京銀行などを経て独立。『小宮一慶の「日経新聞」深読み講座2020年版』など著書多数。

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(小宮コンサルタンツ会長CEO 小宮 一慶)

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