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お金を貯めておくのは絶対ダメ…有り金は全部"推し"に使ってしまったほうがいい納得の理由

プレジデントオンライン / 2023年9月22日 18時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Avosb

稼いだお金は、どう使うといいか。イスラーム学者の中田考さんは「お金を持っていると無心されるしいいことは何もないから、すべて使ってしまったほうがいい。お金を与えることに慣れていない日本人は“推し活”から始めるといい。見返りを求めず自分の時間やお金を“推し”につぎ込むと無意味な人生に少しは張り合いが生まれる」という――。

※本稿は、中田考『どうせ死ぬ この世は遊び 人は皆 1日1講義1ヶ月で心が軽くなる考えかた』(実業之日本社)の一部を再編集したものです。

■現金をせびられたら現物で支給する方がいい

イスラームは、お金を稼ぐのは良いことだけど貯めておくのはダメ。稼いだら使え。貸す場合は返ってくると思うな、という文化です。日本でも貸す時はあげるつもりで貸せって言うと思いますけど、イスラームでもそうです。

さらに言うなら、お金がなければ返済期限が過ぎても返さなくていいんです。元々そういう考えだから。返ってこなくてくよくよすることもない。そういった気前の良さはイスラームの美徳の1つです。

たとえ自分にお金がなくても、自分より貧しい人がいれば条件反射的にお金を与える。だから道端で物乞いしている人とかにも反射的にお金を分け与える。それが普通なんです。

エジプトにいた時、住んでいたアパートにバクリーという住み込みの門番がいました。バクリーはしょっちゅう私にお金をくれとか、時計をくれとかモノをせびってきました。

私もその度にお金だったりモノだったりをあげていたんですが、ある時ちょうど持ち合わせがなくなってしまったことがありました。

「今お金がないんだ」と正直に言うと、彼は「大丈夫か」と心配して逆に私にお金をくれようとしました。持っている者が持っていない者に与えるというのは、イスラームではそれくらい当たり前のことなんです。

そもそもお金なんて持っていたところで何も良いことはありません。持っているから無心されるし、持っていなければ誰も「金をくれ」なんて寄って来ませんから。日本ではなかなか現金を人に渡す機会はありません。

私も日本のように衣食住に本当に困っている者がほとんどおらず、金をもらうと酒やたばこのような嗜好(しこう)品やパチンコなどの遊興に浪費してしまう人が多い国では、現金をせびられたら現物で支給する方がいいと思っています。

また慈善で貧しい人にはお金を渡すのは当たり前だという文化がない日本だと、どうしてもそこに「偽善ではないか?」という心理が働いてしまって、赤の他人に自然に自分のものを与えるのは実際にはなかなか難しいです。

ですから“推し”を見つけて、“推し”に貢ぐところから始めてみましょう。

■有り金は全部“推し”に使ってしまおう

“推し”とは、自分が特に愛し時間やお金や労力を使って応援する人間やキャラクターのことを指します。

“推し”なんて言葉初めて聞いた、という方はとりあえず『推しが武道館いってくれたら死ぬ』(平尾アウリ、徳間書店)というアニメを観るか、その原作のマンガを読んでみてください。

主人公の「えりぴよ」は七人組の地下アイドルChamJamのメンバーの一人、市井舞菜の“推し活”の活動費のために私服を売り払っていつも赤いジャージを着ています。“推し”のために、時間もエネルギーもお金もできる限り使うのが“推し活”の心意気です。

「“推し活”? バカなの?」と思うかもしれません。そう思うのも無理もない気もしますが、他人に尽くす博愛、慈善、献身の心を学ぶ修行だと考えると、なんだか有難く感じてきませんか。実は「アイドル」という言葉はもともと「偶像」という意味です。

また“推し”のもともとの意味は推薦で、他人にもすすめることですが、“推し活”では「布教」と呼ばれます。“推し活”とは実は宗教的行為、修行なのです。

“推し活”の宗教性は、似たような別の行為と比べるとよくわかります。“推し活”では地下アイドルのライブに必ず顔を出し、チェキ券を買って握手を求めたりするので、付きまとい、ストーカーに似ている面もありますが、ストーカーが付きまといにお金をいくら使っても相手には何の利益もなくただ気味が悪い思いをさせるだけであるのに対して、“推し活”の場合、相手の収入になって喜ばれます。

コンサート
写真=iStock.com/gilaxia
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/gilaxia

相手にお金が入る、という意味ではホストやキャバ嬢にはまるのにも似ています。しかしホストクラブや、キャバクラの場合、自分だけが愛されているという幻想、見返りを求めますが、“推し活”ではせいぜい握手して写真を一緒にとってもらうぐらいで、原則的に見返りなしに一方的に愛を捧げます。

それにホストクラブやキャバクラと違い、“推し活”は相手を独占しようとせず、むしろその素晴らしさを布教します。“推し”も防弾少年団(BTS)の「アーミー」クラスになると世界を変えるぐらいの力を持ちます。

■無意味な人生に少し張り合いが生まれる

精神分析で、リビドーという動物的、本能的な生=性のエネルギーを制御することで芸術、宗教、哲学などの文化に作り変えることを「昇華(sublimierung)」と呼びます。

“推し活”で見返りを求めない一方的献身と“推し”を絶対的に肯定し人々に夢と理想を広める心を学び、それを普遍的人類愛、創造主への帰依にまで昇華することができれば、それは素晴らしいですが、そこまで求めることはありません。

自分が推している(応援している)アイドルでも俳優でもアニメのキャラクターでもVチューバーでも、なんでもいいですが、見返りを求めず自分の時間やお金を“推し”と呼ばれる対象につぎ込むというのは、それだけでも一番良い時間やお金の使い方ということができます。

“推し”を持つことの楽しみは、その人やキャラクターの成長や活躍を追いかけることができる点にあります。彼らが目標に向かって努力し、時には苦境に立ち向かう姿を見ることで、私たち自身も勇気や希望を得ることができます。

また、“推し”の活躍によって感動や喜びを共有することで、この無意味な人生に少しは張り合いが生まれます。

加えて、“推し”を持つことで、同じ“推し”を持つ仲間との交流が広がります。SNSやファンクラブ、イベントなどを通じて、“推し”が同じである仲間たちと出会い、情報や感想を共有することができます。

こうした交流を通じて、新しい友達や仲間を見つけることも可能ですが、無理に人間関係を広げる必要はありませんので、それで“推し活”がさらに楽しくなる人はそうすればいいのです。

■“推し”の見つけ方

今“推し”がいる人はいいですが、いない人はどのようにして自分の“推し”を見つけるのでしょうか。

まず、自分の趣味や興味に合わせて、様々な分野の人物やキャラクターをチェックしましょう。音楽、映画、アニメ、スポーツなど、幅広いジャンルから自分にとって魅力的な存在を見つけ出すことが大切です。その際、直感や感性を大切にし、自然と心惹かれる人やキャラクターに目を向けてください。

ちなみに今の私の“推し”は「ひらきよ」です。「ひらきよ」とは、ドラマ『美しい彼』の主人公の平良一成と清居奏のペアのことです。私はいつもPC画面の右側でTVerを使ってドラマを観ながら左側でSNSや本や論文の執筆をしているので日本のドラマはほぼすべて観ています(バラエティー番組は一切観ませんし、アニメもあまり観ません)。

『美しい彼』はたまたまTVerで一回観てはまって、原作の小説、コミック版、DVDを全部買い、映画『劇場版 美しい彼〜eternal〜』も観に行きました。私はドラマ版は執筆のBGMにして百回ぐらいは繰り返し観ていますが、お金も時間も体力もないので映画は3回観に行っただけですので、映画20回観た、などという沼女子たちとは比べ物になりません。

でもTwitter(現・X)でも「布教」していますので、この機会に、ここでも布教させてもらいましょう。

2022年2月2日には以下のようにツイートしています。

《「ひどく痛い。切れ味のいい刃物を素手でにぎりしめているみたいだ。なのに清居の口からこぼれた言葉だから手放せない。それが花でも毒でも刃物でも、清居からもらったものは抱きしめるしかない」『美しい彼』(凪良ゆう) これがイスラームなんだよなぁ》

実はこの『美しい彼』自体、“推し”をテーマにしているのです。平良は高校の同級生だった時に清居から「きもい」「うざい」「ストーカー」と言われながらも「自分は、敬虔(けいけん)な神父や尼僧のように清居に一生を捧げたい」と言い、ひたすら清居を崇めています。

そして高校を卒業して清居が役者になると平良は清居“推し”の女子のファンの界隈では「不審くん」と呼ばれながらも“推し活”を続け、清居と恋人になってからもずっと何の見返りも求めずキングである清居に仕え続けます。『美しい彼』は究極の“推し活”ドラマなのです。

ハートと女性
写真=iStock.com/Deagreez
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Deagreez

■“推し活”で特別扱いしてほしいというバカ

“推し”を見つけたら、応援の仕方も工夫しましょう。公式グッズやCD、DVDの購入、コンサートやイベントへの参加、SNSでの応援メッセージなど、様々な方法で“推し”をサポートすることができます。

ただしメッセージは相手の負担にならないようにしましょう。たまに“推し”にこれだけつぎ込んだんだから特別扱いしてほしいという人がいますが、これは救えないバカです。見返りを求めた時点でそれは“推し活”とは呼べません。

2022年4月13日のツイートでは、『美しい彼』の「ひらきよ」推しを熱く語った私のYouTubeのチャンネルを紹介し、《まぁ、いろいろ理屈はつけましたが、観て、もう暫く生きて人類をリヴァイアサンとマモンの支配から解放するために世界征服に励もう、との気力が湧くなら良い作品だということです》とツイートしています。

“推し活”は苦しい現実に耐える慰めになり、目標に向かって生きる力を与えられることもないわけではありません。

■余計なことを考えて楽しみを減らすバカ

“推し”を持つことで、自分自身の成長にも繋がります。“推し”の努力や成功を見て学ぶことで、自分の人生にも前向きな影響を与えることができます。

また、“推し”の失敗や苦悩に共感し、彼らが立ち直る姿を見ることで、自分自身も困難に立ち向かう勇気や根気を身につけることができ、さらに“推し”の作品や活動を通じて、新しいアイデアや考え方、価値観に触れることができ、その結果、自分の視野が広がり、人生が豊かになるというもっともらしい意見もあります。

中田考『どうせ死ぬ この世は遊び 人は皆 1日1講義1ヶ月で心が軽くなる考えかた』(実業之日本社)
中田考『どうせ死ぬ この世は遊び 人は皆 1日1講義1ヶ月で心が軽くなる考えかた』(実業之日本社)

しかしこれは使ったお金に価値を感じたい、大金を使うのにそれなりの理由がほしいという、卑しい性根からきている不純な主張です。

“推し”の成功に喜びを感じることはもちろんあるでしょうが、だからといって自分の人生がそれで良くなるなんてことはありません。

カリフ制再興のようなこの世を超えた大望でも抱いていない限り、不純な意図は、一途さが命の“推し活”をダメにします。二を追う者は一をも得ず、です。あなたはただ楽しむために時間とお金を“推し”につぎ込んでいる。

それだけですし、それでいいのです。余計なことを考えて楽しみを減らすことほどバカなことはありません。

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中田 考(なかた・こう)
イスラーム学者、イブン・ハルドゥーン大学客員教授
1960年生まれ。イブン・ハルドゥーン大学客員教授。83年イスラーム入信。ムスリム名ハサン。東京大学文学部宗教学宗教史学科(イスラーム学専攻)卒業。カイロ大学博士(哲学)。クルアーン釈義免状取得、ハナフィー派法学修学免状取得。在サウジアラビア日本国大使館専門調査員、同志社大学神学部教授などを歴任。著書に『みんなちがって、みんなダメ 身の程を知る劇薬人生論』(ベストセラーズ)、『宗教地政学から読み解くロシア原論』(イースト・プレス)、『13歳からの世界征服』『70歳からの世界征服』(共に百万年書房)などがある。

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(イスラーム学者、イブン・ハルドゥーン大学客員教授 中田 考)

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