食事は毎日マグロ丼…女子大生がマグロ漁船で100円のお菓子を2000円で取引して分かった"商売の本質"【2023上半期BEST5】
プレジデントオンライン / 2023年9月18日 18時15分
※本稿は、神山理子『女子大生、オナホを売る。』(実業之日本社)の一部を再編集したものです。
■常識がなければ人の心を動かすものは作れない理由
コンセプト考案に必要なのは、「一般的な消費者感覚を踏まえた上で、これまでになかったことを創造する大喜利力」だと思います。
人はよくそれを「クリエイティブ力」と呼びます。
「一般的な消費者感覚を踏まえた上で」というのがミソで、「これまでになかったことを創造する」には「これまでにあったこと」を熟知している必要があります。
意図的にモラルを逸脱するにはモラルを知っている必要があるように、意図的に人を驚かせるにはどこまでが常識かを知らなければできません。
この世界で事業を作る上で、一般的な消費者感覚は無視できません。
毎日「人々が“良い”と感じているもの」や「そのとき流行しているもの」は、常に吸収できるように意識しましょう。
その上で、自分だけの独特な体験を持っていると、そこから学んだことが強みになります。
他者の体験からヒントを得るのもいいですが、やっぱり身を持って体験するのがおすすめです。
体験しないとわからない、自分だけの新たな発見が得られます。
私の例をいくつかご紹介します。
独特すぎて真似できないかもしれませんが(それが「強み」の特徴なので)、あなたが独特な体験をすることへの参考になれば幸いです。
■パン派よりコメ派なら炊飯器を持ち込めばいい
私は学校でお米を炊いたりシャケを焼いたりしていたことがありました。
当時、私は昼食を持参する派でした。
友人はみんな学食を利用していましたが、私は金欠だったので、毎日サンドイッチを作って食べていました。
ある日、一緒に昼食を食べていた友人たちからこんなことを言われました。
「リコピンはお米よりパン派なの?」
「お米派だよ」
「じゃあどうして毎日サンドイッチを食べているの?」
言われてみれば、どうして私は毎日サンドイッチを食べているんだろう?
お米派なら、別に、手作りの弁当でもおにぎりでもいいじゃないか。
改めて考えてみると、私は「冷めた白米が嫌い」だったのです。
冷めた白米を食べるくらいなら、パンを食べたほうがマシなので、無意識にサンドイッチを作っていました。
「それなら学校でお米を炊けばいいのか!」
そう思った私は、翌日から学校に白米と炊飯器を持参し、その場で米を炊くようになりました。
実は友人たちもみんな炊き立ての白米が大好きだったようで、炊いたものをみんなで分けあって食べるようになり、非常に好評でした。
自宅から持参したおかずでも、炊き立ての白米と食べると最高に美味しかったです。
■シャケを焼いたらもっと満足度が高まる
しかし、人間とは強欲なもので、一度欲が満たされるとさらに上を求めるようになります。
ホカホカの白米を食べるようになった私は、今度は自宅から持参したおかずのシャケが冷めていることが気になりました。
「それなら学校でシャケも焼いたらいいのか!」
その翌日、七輪と生シャケを持参して、駐輪場で焼き、火災報知器とスプリンクラーを作動させてしまいました。
![炭火で焼いている魚が付いた、豪華な朝ごはん](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/5/a/1200wm/img_5a1c48298c6f674484496ee6d950a5cd476572.jpg)
「家の外でも、炊き立てのお米が食べられたらいいのに」、「さらに、おかずも出来立てならなお良い」というインサイトがあり、それを再現した結果です。
規則には違反してしまいましたが、周囲の友人からは好評でした。
素直な「こうだったらいいのに」を純粋に再現するのが、「良い解決策(コンセプト)」を生み出すコツだとわかりました。
「常識的にはできない」ではなく、「どうやったらできるようになるのか」を常に考え続けるのが大切です(もちろん、ルールは守りましょう)。
■マグロ漁船は「きつい」のコスパが良すぎる
とあるご縁があり、マグロ漁船員として1カ月労働しました。
なぜやろうと思ったかというと、過去に都市伝説で「借金が返せなくなると、内臓を売るかマグロ漁船に乗るかの二択を選ばされる」という話を聞いたことがあったからです。
「内臓を売る」のは、誰が考えてもきつい体験です。
しかし、「マグロ漁船に乗る」ことは、その並列の選択肢になるくらいきついらしいのです。
「内臓を売らずに、内臓を売るのと同じくらいきつい体験ができる」のは、「きつい」のコスパがあまりに良すぎるのでやるしかないと思いました。
マグロ漁船には、今まで出会ったことがないような、私にとって珍しい人たちが乗っていました。
母国にいる家族のために出稼ぎにきた外国人、「勉強が嫌で、なんかもう漁業で一獲千金を狙いたい」という野心を持った地元の青年など。
その中でも特に印象に残っているのは、「バナナしか食べられない、超偏食なパナマ人男性」です。
![バナナをむいている手元](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/2/0/1200wm/img_20091ae8865b88fea72d4ca1ad4b97ca362378.jpg)
漁船内での食事は、その漁でとれたあまり美味しくないマグロの部位だけで作られたマグロ丼です。
彼が超しんどそうだったので、私が持ち込んだ「ソイジョイ バナナ味」を1本2000円で買わないかと持ちかけたところ、取引が成立してしまいました。
その土地において、需要と供給さえ一致していれば、あり得ない価格での取引も成立するのです。
富士山の上では、ミネラルウォーターが高値で販売されるのと同じです。
人間は、自分の強い欲求のためにはいくらでもお金が出せるということがわかりました。
特に食欲、睡眠欲、性欲の三大欲求はやはりアプローチしやすいようです。
■バナナ好きパナマ人が2000円でも納得感があった理由
また、「ソイジョイ バナナ味」が1本2000円の値段がついた理由として、需要と供給が一致していた以外にも、そのパナマ人男性が「ソイジョイの通常価格を知らなかった」のもあると思います。
![神山理子『女子大生、オナホを売る。』(実業之日本社)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/d/4/1200wm/img_d4fd8b190ea7994ef32bc856fc94605292964.jpg)
本来、コンビニやドラッグストアなどで100円程度で購入できる商品です。
しかし、私が「これはものすごく美味しい! 個人的には、デパ地下で買うお菓子よりも好き」と言ったので、彼の意識の中では「デパ地下のお菓子より美味しいということは、定価が高いものなのかな?
今、どうしてもバナナ味のものが食べたい中、食料が限られている船の上ではこの高い値段なのも仕方ない」という認識や納得感があったそうです(船を降りてから、彼に種明かしをして謝罪と返金をした際に聞いたら、そう言っていました)。
ここから、本書でご紹介した「強い欲求への解決策は高く売りやすい」ことや「相場が知られていないものは高く売りやすい」ことを身をもって学びました。
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起業家
愛称はリコピン。1997年生まれ。明治大学商学部卒。20歳の時にインターン先で音楽メディアの運営責任者となり、業界No.1までグロースして売却。その後シンガポールにて新規事業を立ち上げ、同事業の法人化を経て、オナホD2Cの会社を創業。自ら開発したオナホをAmazonランキング4位にまで育てるも過労のため退任。休暇3日目に新しい事業アイデアが閃き、休みもそこそこに自身2社目となる(株)ひだねを立ち上げる。創業1年で同社を売却し、次の事業に向けて準備中。消費者のインサイトを掘って、コンセプトをつくることが得意。たまにマグロ漁船員。1児の母でもある。
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(起業家 神山 理子)
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