持ち家と賃貸、結局どちらが得なのか…マネー本100冊を読んでわかった「賃貸がおトクになる人」の条件
プレジデントオンライン / 2023年9月22日 9時15分
■40~60%が「理解しているか不安」「まったく理解していない」
「住宅金融支援機構」が2023年3月に発表した「住宅ローン利用者の実態調査」によると、住宅ローンの商品特性や金利リスクに関する理解度について、「変動型」「固定期間選択型」(後述)利用者の40~60%が、「理解しているか少し不安」「よく(まったく)理解していない」と回答しています。
さらに、金利が上昇して返済額が増えた場合の対応については、約20%が、「見当がつかない、わからない」と回答しています。
1級ファイナンシャルプランニング技能士の黒田尚子さんは、著書の中で、住宅ローンのしくみを理解することの必要性を次のように述べています。
(『お金が貯まる人は、なぜ部屋がきれいなのか』/日本経済新聞出版)
■ライフスタイルによってメリット・デメリットも変わる
「持ち家と賃貸は、どちらが得なのか」は、「自分がどのようなライフスタイル(ライフプラン)を持っているのか」によって変わります。
物件の購入価格、賃料、家族の人数、住宅ローンの借入額、住み替えの頻度、引っ越し費用など、前提条件が変われば結果も変わるため、どちらが得かは断言できません。
持ち家か賃貸か、マネー本の著者の意見を整理すると、次のようになります。
■賃貸のほうが無難なことも多い
★持ち家か賃貸か、著者の意見
・「買うか、借りるか」を悩む前に、「家に何を求めるか」をはっきりさせる。
・物件の価値と価格を正しく判断してから購入するか決める。
・「家賃を払わずに済む」という理由だけで購入を決めない。
・転勤になったとき、持ち家はすぐに売ったり貸したりできないデメリットがある。
・若い世代は、賃貸のほうが無難なことが多い。
・「買ったときより値下がりしてもいい」のなら購入もあり。
・経済的な損得よりも、「自分の家を持ちたい!」という所有欲を満たしたいのなら、購入もあり。
・損するか得するかはあとにならないとわからない。「欲しい」と強く思うのなら、購入する。
・余裕資金がないのなら、住宅ローンを借りて家を買うのは慎重になるべき。
・転勤が多い人、大きな借金を背負いたくない人、いろいろな場所に住んでみたい人、収入が不安定な人は賃貸向き。
■判断基準になる「200倍の法則」
「買ったほうが得か、借りたほうが得か」の判断基準のひとつに「200倍の法則」があります。
![新しい家の鍵を男に渡す不動産業者](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/4/f/1200wm/img_4f7ac6d8a433fd185e34f9abe673c4ff175169.jpg)
「物件の購入価格」と、「その物件に賃貸で住んだ場合の賃料」を比較して、「購入価格が、家賃の200倍以下なら買ったほうが得」と考える法則です。
ファイナンシャルアカデミー代表の泉正人さんも、監修を務める『誰も教えてくれないお金の話』(うだひろえ/サンクチュアリ出版)で、次の公式を紹介しています。
■想定価格よりも高ければ再検討すべき
購入したいマンションが3500万円だったとします。その周辺エリアで「同じ間取り、同じ築年数の賃貸物件」の家賃相場が15万円の場合、前述の公式に当てはめると、
となり、購入価格(3500万円)は「想定家賃×200倍(=3000万円)」よりも500万円高いので、「本当に購入すべきか」を冷静に見極める必要があります。
■多くの著者が口をそろえる「リセールバリュー」
物件選びの注意点として、著者の指摘が多かったのは、「購入後も資産価値が下がらない(もしくは上がる)物件を購入する」ことでした。
(菅井敏之『一生お金に困らない! 新・お金が貯まるのは、どっち!?』/アスコム)
「家や自動車を買うときは、それを売るときのこと、つまり、『リセールバリューで見て資産になるか? 負債になるか?』をじっくり考えてから購入するかどうかを決めましょう」
(山口貴大【ライオン兄さん】『年収300万円FIRE』/KADOKAWA)
「リセールバリュー」とは「資産を売却するときの価値、中古物件の資産価値の高さ」のことです。
![成功した取引について、握手する不動産業者と顧客。](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/6/4/1200wm/img_640bfe2c995c47c662fada9403d96ed0261131.jpg)
YouTubeチャンネル「リベラルアーツ大学」の両@リベ大学長さんは、
と断った上で、
・リセールバリューの高い家を買えるならマイホームの方が得する
・リセールバリューの高い家を選ぶ自信がない人は賃貸の方が得する
(『本当の自由を手に入れる お金の大学』/朝日新聞出版)
と述べています。
■リセールバリューが高いのはこんな物件
リセールバリューが高ければ、
・売ったときの売却益が期待できる
・人に貸すことで賃貸収入が得られる(賃貸収入で住宅ローンの返済もできる)
・自分で住んでも価値が下がらない
・買い手がつきやすいので、住み替えがスムーズにできる
といったメリットが得られやすくなります。
・人気エリアである(「住みたい街ランキング」の上位エリアなど)。
・交通の便がいい。
・都心へのアクセスがいい。
・駅から近い。
・治安がいい。
・災害リスクが低い(安全性が高い)。
・生活環境、周辺環境が整っている(日当たりがいい、騒音がない、生活圏内に金融機関・商業施設・学校・病院がある)。
・物件の管理が行き届いている。
・タワーマンションや大規模マンションである など。
![東京地下鉄駅の様々な路線を指す標識](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/6/4/1200wm/img_64874071b48149aa20f3f7d59983f442270415.jpg)
■住宅ローン金利の「3つのタイプ」
住宅ローンの金利には、次の3タイプがあります。
・借入期間中の金利は変わらず、固定される。
・完済(すべて返済すること)するまで同一の返済額が続く。
・変動型と比べると、通常、金利は高めに設定されている。
★固定金利型が向いている人
計画的に返済したい人、将来的な支出の増加が想定されるため返済額が変わると困る人 など。
■「変動金利型」には上限がある
・借入期間中の金利は定期的に見直しされる(通常、半年ごとに年2回)。
・毎月の返済額は、5年ごとに見直しされる(金利は半年ごとに見直されるが、毎月の返済額は5年間変わらない)。
・市場金利が上がると住宅ローン金利も上昇する(市場金利が下がると住宅ローン金利も下がる)。
・返済総額が最後まで確定しない。
・月々の返済額が大きくなる可能性も、小さくなる可能性もある。
・多くの金融機関で返済額の上限が「現在の返済額の125%まで」と定められているため、変更前の返済額の125%の範囲内までしか上がらない。
・国土交通省住宅局「令和3年度 住宅市場動向調査 報告書」によると、「変動金利型」がもっとも多く選ばれている(民間金融機関からの借入れがある世帯の77.3%)。
★変動金利型が向いている人
返済期間が短い人、借入金額が少ない人、繰り上げ返済をしたい人、金利が上昇しても影響が少ない人 など。
■ライフスタイルによって選ぶべき
・最初の数年間(3年、5年、7年、10年など)は金利の変動がなく、固定期間の終了後は次の金利タイプをあらためて選択する。
・固定金利の期間が短いほど金利は低い。
★固定金利選択型が向いている人
固定期間中にある程度返済できる人、固定期間終了後に金利変動リスクに対応できる余裕のある人 など。
住宅ローンを借りるときは、物件の購入価格、金利タイプ、返済期間、年収、ライフスタイルなどを考慮しながら、無理のない返済プランを立てることが大切です。
![手をつないで歩く3人の家族](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/2/b/1200wm/img_2b8437bbec5adf7bcbcb92b6132795ec436026.jpg)
■頭金は、住宅購入価格の「10~20%程度」が一般的
◆無理のない返済プランを立てるポイント
(1)頭金は、住宅購入価格の「10~20%程度」が一般的
住宅の購入価格は、「頭金+住宅ローン借入額」で決まります。
頭金が多いほど借入額が減るので、返済の負担が減ります。
ただし、病気やケガ、失業などで収入が減る可能性もあるため、ある程度の現預金(会社員は生活費の3~6カ月程度、派遣社員や個人事業主は1年程度が目安)は残しておくのが得策です。
急な出費が必要になったときに現金が足りなくなることがないように、「緊急予備資金」を確保しておきます。
![天秤に載せられる「ローン」と「資産」](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/5/c/1200wm/img_5cb2a3fe6fc310b65131ab62dacc7541221507.jpg)
■ローン返済額を「これまでの家賃」と同じにしてはならない
(2)購入諸費用や維持費を考慮しておく
住宅を購入する際に、税金や手数料などの諸経費がかかるため、物件の購入価格よりも支払い総額が増えます。
購入後も、固定資産税や維持費(駐車場代、管理費、修繕積立費など)が発生します。毎月の返済額を「これまで住んでいた賃貸物件の家賃と同額」に設定すると、維持費などがかかる分、返済が苦しくなる可能性があります。
(3)毎月の支払額の目安は「手取りの25%以下」にする
一般的に住宅ローンの年間返済額は、「年収の25%以内」が目安といわれています(20%以内と考える著者もいました)。
前掲の「令和3年度 住宅市場動向調査 報告書」によると、住宅ローンの返済負担率(年収に占める年間返済額の割合)は「分譲戸建住宅でもっとも高く19.8%、もっとも低いのはリフォーム住宅で10.1%」になっています(住宅ローンがある世帯の年間返済額は、分譲マンションの取得世帯でもっとも高く150.4万円でした)。
年収を「額面(税込みの年収)」で考えると予算を多く見積もってしまうため、「手取り(税や社会保険料を引いた後の、実際に受け取る金額)」で計算したほうが安心です(ただし、こうした目安だけで判断せず、家計と照らし合わせた判断が必要です)。
■借入額は3000万円までに抑える
(深田晶恵『住宅ローンはこうして借りなさい』/ダイヤモンド社)
(4)繰り上げ返済をして、1年でも早く完済する
マネー本の著者の多くが、
![藤吉豊、小川真理子『「お金の増やし方のベストセラー100冊」のポイントを1冊にまとめてみた。』(日経BP)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/5/c/1200wm/img_5ce51a690d6af1ad68ca45d36112eef8163420.jpg)
「繰り上げ返済(全額または一部)をして、1年でも早く完済したほうがいい」
「返済期間は60歳まで(長くても65歳)がメド」
と述べています。
「繰り上げ返済」とは、毎月の返済とは別に、まとまった額を任意のタイミングで返済すること。月々の返済は「元本返済額+利息額」ですが、繰り上げ返済した分は元本返済の前倒しに充てられるため、その分の支払い利息が減ります。
また、繰り上げ返済には「期間短縮型」と「返済額軽減型」があります。
・期間短縮型
毎月の返済額は変わらず、返済期間が短くなる。支払う利息を減らしたい人、完済を早めたい人向け。
・返済額軽減型
返済期間は変わらず、毎月の返済額が減額される。毎月の支払いを軽くしたい人、教育費の負担増などが予想される人向け。
◆繰り上げ返済の考え方
・定年後に住宅ローンが残っていると、老後の負担が大きくなる(「65歳完済」で計画を立てたとき、毎月の返済額が手取り年収の25%を超えるようなら資金プランを再考する)。
・返済期間が長いと、転職や退職にともなう収入減の影響を受けやすくなる。
・元金が減るため、将来支払う予定の金利を支払わずに済む。
・仮に住宅ローンの金利が2%だとすれば、早く返済するだけで「2%で資産運用している」とも解釈できる。
・退職金を使って残金の一括返済をする人も多いが、住宅ローンの金利が低い場合は一括返済をせず、その資金で資産運用したほうが得することもある。
・一括返済をすると「団体信用生命保険(返済者に万が一のことがあったときに、住宅ローン残高がゼロになる保険)」の保障がなくなる。他の生命保険に加入していない場合は、注意が必要。
・住宅ローン控除を受けている場合、条件次第では繰り上げ返済をしないほうが得をする場合もある。
・繰り上げ返済をすると手持ち資金が減るため、急な出費に対応できない可能性がある。
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ライター、文道 代表
有志4名による編集ユニット「クロロス」のメンバー。日本映画ペンクラブ会員。編集プロダクションにて、企業PR誌や一般誌、書籍の編集・ライティングに従事。編集プロダクション退社後、出版社にて自動車専門誌2誌の編集長を歴任。2001年からフリーランスとなり、雑誌、PR誌の制作や、ビジネス書籍の企画・執筆・編集に携わる。著書に『「文章術のベストセラー100冊」のポイントを1冊にまとめてみた。』、『「話し方のベストセラー100冊」のポイントを1冊にまとめてみた。』、『「勉強法のベストセラー100冊」のポイントを1冊にまとめてみた。』(いずれも日経BP)、『文章力が、最強の武器である。』(SBクリエイティブ)がある。
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ライター、文道 取締役
有志4名による編集ユニット「クロロス」のメンバー。日本映画ペンクラブ会員。日本女子大学文学部(現人間社会学部)教育学科卒業。編集プロダクションにて、雑誌や企業PR誌、書籍の編集・ライティングに従事。その後、フリーランスとして、企業のウェブサイトのコンテンツ制作にも関わる。著書に『「文章術のベストセラー100冊」のポイントを1冊にまとめてみた。』、『「話し方のベストセラー100冊」のポイントを1冊にまとめてみた。』、『「勉強法のベストセラー100冊」のポイントを1冊にまとめてみた。』(いずれも日経BP)がある。
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(ライター、文道 代表 藤吉 豊、ライター、文道 取締役 小川 真理子)
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