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「最新高層マンションだから災害に強い」とは限らない…防災のプロが指摘するタワマンの意外な弱点

プレジデントオンライン / 2023年9月23日 12時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/recep-bg

地震や洪水などの災害にはどう備えればいいのか。災害危機管理アドバイザーの和田隆昌さんは「備蓄品の用意だけでなく、自宅の構造や周辺環境を確認しておくことが大事だ。特にタワマンに住んでいる人は管理体制や電気設備を調べたほうがいい」という――。(第2回)

※本稿は、和田隆昌『今日から始める生活防災』(ワニブックス【PLUS】新書)の一部を再編集したものです。

■自宅避難に備えてやっておくべきこと

自宅が居住可能であれば、避難所に行かずに慣れ親しんだ自宅で生活を続ける「自宅避難」が原則です。避難所というのは基本的に家が倒壊してしまったり、住めなくなった方のための施設です。大勢が1カ所に集結すると避難所がパンクしてしまいます。なるべく家族と自宅にとどまることを検討するのがいいと思います。

自宅避難を前提とした備蓄は、災害時や緊急事態に備えて自宅で安全に過ごすために重要です。以下に、自宅避難を前提とした備蓄の基本的なアイテムをいくつか紹介します。第2章の「生活防災」の心構えでも備蓄について少し触れましたが、もう少し詳しくご説明します。

まずは、長期保存が可能な非常食を備えておきましょう。これには乾燥した穀類(米、パスタ)、缶詰、乾燥フルーツ、ナッツ類、栄養バーなどが含まれます。ごはんは水を加えるだけで食べられるアルファ化米が便利です。必要なエネルギーや栄養を補給できるものを選び、家族の人数や好みに合わせて量を確保し、最低でも3日分、可能であれば1週間分を用意しておきましょう。

また、普段食べる食材を多めに購入し、消費したら買い足す「ローリングストック」で備蓄しておきましょう。

■水を飲むことを我慢してはいけない

被災した日は停電になる可能性が高いため、冷蔵庫の中の肉や魚など、傷みやすい食材をまず使いましょう。クーラーボックスがあれば、一時的に食料を保存することが可能です。

飲み水は生命維持に欠かせません。災害時には水道が止まる可能性があるため、飲料水を備蓄しましょう。個別の容器に保存できるボトルウォーターや、水の保存袋(ウォーターバッグ)が便利です。

市販のペットボトルのほかに、空のペットボトルに水道水を入れて定期的に入れ替える方法をお勧めします。飲用以外に生活用水も一定量用意しましょう。1人あたり飲用と調理で1日3リットルの水を確保することが目安です。

水は大切なので少しずつ飲もうと思いがちですが、その節約が脱水症状を引き起こす可能性もあります。熊本地震では脱水症状などでの災害関連死が直接死よりも多く報告されています。水は我慢せずに十分に補給しましょう。

■アドレス帳は紙でバックアップしておく

また、慢性的な病気を抱えている場合や急病に備えて、必要な薬品や医療品も備蓄しておきましょう。病院や薬局が利用できない状況でも、最低限の医療ケアができるように準備することが重要です。処方薬の控えや消毒液、絆創膏などの応急処置用品を備えておくと便利です。

また、トイレットペーパーやティッシュペーパー、ウェットティッシュなどの衛生用品も備蓄しましょう。さらに携帯トイレも忘れずに用意しておきましょう。災害時には暖房が利用できない場合がありますので、暖かい衣類や毛布、シュラフなどの防寒具もストックしておきましょう。

自宅を出て寝具のない環境で過ごす可能性を考えて、寝具も備えておくと快適に過ごせます。寝袋などを用意しておきましょう。電気やガスの供給が止まった場合でも調理ができるように、非常用のキャンプストーブやカセットコンロを用意しておくと安心です。ただし、使用の際には安全に十分注意してください。

災害時には「明かり」も非常に大事になります。常時点灯できる懐中電灯やLEDランタンなど、照明器具を確保しておきましょう。予備の電池も忘れずに。

災害時に情報を受け取る手段として、手回し式やソーラーパネル付きのラジオも持っておくといいでしょう。

パスポート、身分証明書、保険証、銀行口座情報などの重要な文書や、アドレス帳などの情報はスマホで写真に撮っておくか、コピーなどの紙でバックアップしておきましょう。

備蓄品は定期的に点検し、賞味期限が切れる前に交換・補充することが必須です。災害時に備えて、家族や地域の安全を確保するために万全の備蓄を行なってください。

マンション
写真=iStock.com/CHUNYIP WONG
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/CHUNYIP WONG

■「最新タワマンだから安心」とは限らない

いわゆるタワマンや高層マンションは、通常、地震や風害などの自然災害に対する基準を満たすように設計されています。建築基準法などの規制に基づき、地震に強い設計や耐震補強が施されている物件が大半です。

一般的には、高層階に上がるほど、短周期の揺れには強いのですが、長周期地震動が発生すると揺れを増幅してしまう可能性が高まります。また、長周期地震動がその建物の持つ固有の振動周期に合ってしまうと、揺れが長時間続くこともあります。

地震は予測できない自然現象であり、地震の規模や震源地との距離などによって揺れ方も異なります。高層マンションであっても、非常に大規模な地震や近くの震源で発生した地震などの場合には、建物自体にも大きな負荷のかかる可能性があります。

また、高層階に位置しているからといって、揺れが完全にないわけではありません。揺れを吸収するための制振装置や制震ダンパーが導入されているケースもありますが、すべての高層マンションが同じような対策をしているわけではありません。

■電力供給という盲点

また、高層マンションの安全性は周囲の環境や地域の特性にも左右されます。一般的に高層マンションには、地震発生時や停電時に備えて非常用発電機が設置されています。また、非常用電源装置(UPS)という、短時間の停電や電力の一時的な喪失に対応するための装置もあります。UPSは無瞬断(一瞬も停電することなく)で電源を供給できますが、長時間の電源供給ができません。

非常用発電機は電源供給までに時間を要しますが、長時間の電源供給が可能で、停電時にもエレベーターの運転や非常用照明などの必要な設備に電力を供給します。ただし、大規模な地震や災害の場合には、電力供給が途絶える可能性もあります。

地震が直接の原因ではありませんでしたが、2019年の台風19号により、神奈川県の武蔵小杉駅周辺のタワマンが水害に見舞われ、地下3階にあった電気設備などが浸水したため、長期間にわたって停電、断水し、マンション住民の生活が機能不全に陥ってしまいました。

和田隆昌『今日から始める生活防災』(ワニブックスPLUS新書)
和田隆昌『今日から始める生活防災』(ワニブックス【PLUS】新書)

高層マンションの場合、電力が供給されないと、エレベーターが止まり外に出ることも困難になってしまうというリスクがあるのです。免震構造のタワマンは地震には強くても水害には弱いことが判明し、現在では従来地下にあった電気系統の供給設備を2階以上に設置するなど対策が取られているようです。

高層マンション、タワマンなら災害時でも安全という「安全神話」を信じるのは危険です。「最新高層マンションだから安心」という宣伝文句は一般的な傾向や期待値を示しているものであり、個別の物件や状況に関しては慎重な判断が必要です。

購入や入居を検討する場合は、建物の設計や構造、管理体制、周辺環境などを詳しく調査し、専門家の意見や情報を参考にするようお勧めします。

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和田 隆昌(わだ・たかまさ)
災害危機管理アドバイザー
感染症で生死をさまよった経験から「防災士」資格を取り、災害や危機管理問題に積極的に取り組んでいる。専門誌編集長を歴任。長年のアウトドア活動から、サバイバル術も得意。主な著書に『大地震 死ぬ場所・生きる場所』(ゴマブックス)、『まさか我が家が⁉ 命と財産を守るサバイバル・マニュアル21』(潮出版社)、『最新版 中高年のための「読む防災」』(ワニブックス【PLUS】新書)など。

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(災害危機管理アドバイザー 和田 隆昌)

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