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その「好き」は消費者としてか、生産者としてか…美大教授がキャリア相談で学生に必ず投げかける問い

プレジデントオンライン / 2023年9月29日 10時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/hachiware

就職先、転職先はどのように選べばいいのか。ワンキャリア取締役の北野唯我さんは「自分が好きなことだけで決めるのはいささか尚早だ。その『好き』が『作るほど好き』であればそのまま進めばいいが、そうでなければ一度立ち止まるべきだ」という――。

※本稿は、北野唯我『キャリアを切り開く言葉71』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

■芸大教授がキャリア相談で学生に必ず投げかける問い

雑誌の連載記事のためにデザイナーの高橋理子(ひろこ)さんを取材したことがあります。高橋さんは東京藝術大学の博士課程まで修了されているアーティストで、「正円と直線」だけを使った着物のデザインなどでも有名な方です。アディダスなど世界的なブランドともコラボしています。

今は武蔵野美術大学で教授としても教えられているのですが、そこでよく問う質問が「作るほど好きか?」という言葉だとのことでした。

美大には、アートや工芸、ファッションが好きだという人が多くいますが、そういう方々でも「自分が本当に何がやりたいか」がわからなくなることが少なくないそう。そういう学生さんのキャリア相談に乗るときに、高橋さんがまず言うのが「好きなことをやりなさい」ということです。

でも、そうすると大体の学生さんは、「なんとなく気になることはたくさんあります。たとえば、ファッションも好きだし、工芸も好きだしグラフィックも好き。どれも好きで、選べないです」と答えたりするらしいです。

そこで、高橋さんが言うのが、

「作るほど好きか?」

という言葉です。

■その「好き」は消費者としてか、生産者としてか

たとえば、ファッション。

「ファッションが好き」と一括りに言ったとしても、そこには相当なグラデーションがあります。着るのが好き、見るのが好き、集めるのが好き。いろいろな「好き」があります。

ただ、そのなかでも大きな違いがあるのは、

「消費者としての好き」なのか?
「生産者としての好き」なのか?

ということです。この2つは、決定的に違います。このどちらなのかを考えるときに役に立つのが、「作るほど好きか?」という質問だということです。

高橋さんがそう聞くと、大体の学生さんは、「いえ……まだ作っていないです」となる。ということは、どういうことか?

高橋さんは、本人にとっては厳しいけれど真実を伝える、と言います。つまり、「ってことは、好きなものがまだ見つかってないってことじゃない?」。

言い換えれば、まだ「消費者としての好き」のレベルで止まっているということ。そして、作るほど好き、というレベルでないと、仕事としてはなかなか続かないということでもあります。

■資本主義の歯車から抜け出すためには

これは僕にも納得感がありました。

たとえば、本。本好きな人は多いですが、「読むのが好き」と、「作るのが好き」は全然違います。料理もそうですよね。「食べるのが好き」と、「作るほど好き」では、差があると思います。

読書をしながら横たわる学生
写真=iStock.com/ArtistGNDphotography
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/ArtistGNDphotography

僕は普段から資本主義社会の歯車から抜け出すには2つの方法しかない、と言っています。それは1つが「資産家・投資家側」になること。もう1つが「生産する娯楽を見つける」ことです。そして高橋さんの話は、このうち2つ目の「生産する娯楽」に似ている話だと思います。

生産する娯楽とは、「自分にとっては娯楽だけど、社会にとっては生産」という状態になっているもの。娯楽は、自分にとってはHP(ヒットポイント、体力)の消費がとても少ない。だから、これを育てていけば、いつかは損益分岐点を超える。

これが高橋さんの「作るほど好きか?」という話に近いと思ったのです。

それは、「消費する娯楽なのか?」。それとも、「生産する娯楽なのか?」。これを考えなさい、ということなのかなと思います。

「作るほど好きか?」という視点で、自分の「好き」という気持ちや思いを見直してみましょう。

そして、もしまだ「Yes」ではなかったとしたら、もっと好きなものが見つかるチャンスがあるのかもしれませんね。

■30代は「ブランドを作る側に回れ」

あるコンサルティングファームで「ブランドを借りるより 自分がブランドを作る意義」というタイトルで講演をしたことがあります。

そこで話したのは、「特に30代からは、ブランドを借りるのではなく、自分がブランドを作る側に回ろう」ということでした。

どういうことか、説明していきます。

まず、前提として「ブランド」とは何かといえば、「特定の売手の製品およびサービスを識別するのに用いられる名称、記号、デザインなどを総称したもの」(平凡社『世界大百科事典 第2版』より)。

簡単にいうと「あるサービスに対しての頭の中にあるイメージの総和」みたいなものでしょうか。

では、なぜブランドを持つべきなのか? ブランドを作る理由は何か? というと、結論は、

「選択肢を選ぶ側であり続けるため」

だと思います。

■ブランドがある人とない人の決定的な違い

僕が思うに、「ブランドがあるサービスや人」と「ブランドがないサービスや人」の2つの差は、「選択肢」にあります。ブランドがあると、「選択肢を選ぶ側」に回れるということ。反対にブランドがないと、常に「選ばれる側」にしかなれない、ということです。

たとえば、大学のブランドで考えるとわかりやすいかもしれません。ブランドのある大学は常に「学生を選ぶ側」ですよね。一方でブランドのない大学は常に「選ばれる側」です。

あるいは、ファッションブランドもそう。Nikeというブランドは、たとえばどことコラボするかを選べますよね。一方で、ブランドのない企業は選ばれる側にしかなれない。大きな違いがあります。

これは実はキャリアの文脈でも同じで、「自分のブランド」を作った人は選択肢を選べる。たとえば、どこかの会社や事業で実績を出した人がいれば、その人は転職先も選びやすいですよね。反対にブランドがない人は、「選ばれる側」にしかなれない。

■学歴がブランドになるのは20代まで

そして特にこの傾向が出やすいのが30代以降だと思っています。ある意味での「人生選択肢曲線」があるのです。

ブランドのある人は歳を重ねるにつれて選択肢が増えていく。一方でブランドのない人は選択肢が減っていく。そういうことです。

ただここで、「ブランドなんて誰もが最初はないよね?」という疑問がわいてくるかもしれません。その通りです。だからこそ冒頭の言葉になるわけです。

「30代からはブランドを借りるのではなく、自分がブランドを作る側に回ろう」

ということです。

20代まではブランドを借りていてもOKです。たとえば「○○大学卒」とかもブランドを借りている状態ですし、あるいは企業名のブランドもそうです。

実際、僕も昔はそうでした。出身企業のブランドを借りて、チャンスをもらった部分もあると思います。でも大事なのは、それは20代までだということです。

■ブランド作りで重要なのは実力ではなく実績

30代以降は、「自分で、ブランドを作る、育てる」ということが大事です。

ちなみに、これはよく言われる“ブランド人になれ”という意味ではありません。個人でブランドを持っている人もいれば、会社での実績が何よりもブランドになる人もいます。むしろ重要なのはスタンスです。

北野唯我『キャリアを切り開く言葉71』(KADOKAWA)
北野唯我『キャリアを切り開く言葉71』(KADOKAWA)

「会社や事業のブランドを借りるのではなく、自分はそのブランドを背負っている存在だと考えて、動く。実績を出す」。これが一番大事です。

ここで注意したいのは、重要なのは「実力ではなく実績」であることです。実力は他人には見えないものですが、実績のほうは他人からも見えやすいものだからです。

「自分でブランドを作る意識を持っていますか?」
「そのための実績作りをしませんか?」

この話が少しでも皆さんのインスピレーションになれば幸いです。

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北野 唯我(きたの・ゆいが)
ワンキャリア取締役
兵庫県出身、神戸大学経営学部卒。就職氷河期に博報堂へ入社。ボストンコンサルティンググループを経て、2016年、ワンキャリアに参画。現在取締役として人事領域・戦略領域・広報クリエイティブ領域を統括。またテレビ番組や新聞、ビジネス誌などで「職業人生の設計」「組織戦略」の専門家としてコメントを寄せる。著書に『転職の思考法』『オープネス』(ダイヤモンド社)、『天才を殺す凡人』(日本経済新聞出版社)、『分断を生むエジソン』(講談社)、『これから市場価値が上がる人』(ポプラ新書)などがある。がある。

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(ワンキャリア取締役 北野 唯我)

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