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評価の良い人も悪い人もモチベーションが高まる…中間管理職なら知っておきたい「人事評価」のコツ

プレジデントオンライン / 2023年10月1日 10時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/LeoWolfert

人事評価はどうするのが正解なのか。ワンキャリア取締役の北野唯我さんは「目標設定の精度を高めたうえで、期末の評価の際に『期待値を伝えること』が重要だ。そうすれば評価が良かった人も悪かった人もモチベーションが高まる」という――。

※本稿は、北野唯我『キャリアを切り開く言葉71』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

■簡単そうで難しい「目標設定」

僕の大学時代の後輩で企業経営をしている人とランチをしながら組織運営の話をしているとき、「評価」に関してアドバイスを求められたことがあります。

人事制度、とくに評価はセンシティブなテーマです。

そこで僕が伝えたのが、「期初は目標、期末は期待値」という言葉でした。

「人事にはもちろん、大切なことがいろいろあるけれど、スタートアップの経営者として成果を出す上で1個だけ挙げるとしたら、目標と期待値設定だと思う」

もう少し具体的に言うと、

・期初には目標設定が重要
・期末には期待値が重要

という話です。

ほとんどの会社では、期初に「目標」を立てますよね。この目標設定というものは、簡単そうに見えてかなり難しい、しかし時間をかけてやる価値のあることの1つだと思います。

経営と現場が「Win-Win」になるのか、「Win-Lose」になるのか、「Lose-Lose」になるのかは、この「目標の精度」でほぼ決まると言っても過言ではないです。

■目標設定をミスするとズルする人が出てくる

よくあるのが、

「プロセス目標(たとえば行動量など)を多めに入れた結果、“プロセス目標を達成したが結果目標は未達な人”が高く評価されてしまう」

ということ。あるいは、

「わかりやすく、結果目標だけをやたらと高く設定してしまった結果、“周りを蹴落としたり、ズルをしたりしてでも目標達成しようとする人”が生まれる」

というような話もあります。どちらも目標設定でミスしている例です。

あるいは、次のようなケースもあります。

「マネージャーが立てた目標設定の視点が経営陣とずれている結果、チームメンバー全員が目標達成したのに、事業部全体が評価されずに終わる」

これはまさに「Lose-Lose」のケースですよね。経営的にも、現場的にも、マネージャーとしても、誰もハッピーになっていません。

こうしたケースを避けるためにも、人事施策において最も重要なことの1つは間違いなく「精度の高い目標設定」だと思います。

■評価が良かった人も悪かった人もモチベーションが高まる

ただ、当然、人間は感情の生き物であり、この「目標設定」だけで人は動かないので、「期末の評価」のほうも重要になります。

そして、僕が個人的に重要だと思っているのは、その期末の評価の際に「期待値を伝えること」です。より具体的にいうと「来期の期待値」です。

経営をしている限り、評価においてはやはり差をつける必要があると僕は思っています(=年功序列はダメ)。ただ、「評価」の対象は当然、前年度のことであり、過去の話です。未来のほうはまたフェアにみる必要がありますし、実際にチャンスはあります。そうしたことを伝えるためにも、「しっかり、来期の期待値」を伝えるということです。

そうすれば、評価が悪かった人も「次何をすればいいか」がわかりますし、評価が高かった人は「さらに成果を出そう」となりやすい。

やる気を持っているビジネスマン
写真=iStock.com/mapo
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/mapo

以上をまとめると、「期初は目標、期末は期待値」ということになるわけです(実際に人事業務や経営をやられている方は使ってみてください!)。

最後に、この話をもう少し個人に寄せて考えてみるとどうなるでしょうか?

月初に目標を立てたなら、月末に来月の期待値を明確にする。目標は定量的に判断できるものですが、期待値は目標よりは少し抽象的な方向性のようなものです。これを繰り返していくことで、「月初は目標、月末は期待値」というサイクルが自然に作りやすくなると思います。

これは、『仕事の教科書』の中でも紹介した「夜は経営者、朝は実行者」の考え方にも似ています(1人の人の中にも「経営者的な面」と「実行者的な面」の両面があり、夜は「明日の経営者」であり、朝は「今日の実行者」であろうとする考え方)。

ぜひ皆さんの仕事で少しでも役に立ててもらえたらうれしいです。

■将来像を摺り合わせるための「期待値シート」

“期待値シート”についてコミュニティ内で話したとき、メンバーの方から次のような質問をもらったことがあります。

「組織ビジョンとその人の役割にマッチした行動に落とし込めるよう、期待値シートを作成したいです。唯我さんの作成する期待値シートの要素について教えていただきたいです」

そこでここでは期待値シートについてさらに具体的に解説してみます。

まず“期待値シート”というのは僕が昔から作っている資料で、新入社員(中途メイン)に共有するものです。目的は「将来像の摺り合わせ」です。

入社前の人に対して、「こうなってほしい。こういうことを期待しています」ということを伝えています。

僕はこれまで自分の部下になる社員に対しては全員分作ってきましたが、割と喜んでもらえることが多いです。

この期待値シートを作る際のコツを3つお話しします。

■入社して数カ月はボーナスタイム

1つ目は「長・短・超短」で目標を分けて作ること。

まず“長”はわかりやすく、長い目で見たキャリアのコンセプトです。たとえば、「営業のプロとして、どこでも食べていける人になる」といったものです。この際、重要なのは「業務」の話ではなく、その人の“キャリア像”をゴールにすることです。

重要なのは本人が「それいいね!」と共感し、モチベートされること。なので「キャリア像」であることが重要です。

次に“短”ですが、これは直近半年~1年の「業務上の目標」の話です。たとえば、「新規営業で目標を達成し、新人MVPを取る」のような話です。KPIでももちろんOKです。これはイメージしやすいですよね。

最後に“超短”ですが、これは1~3カ月の話です。これはわかりやすく「何において“速攻”で成果を出すのか? アウトプットは何を出すのか?」を決めます。

入社して1~3カ月というのはある意味、ボーナスタイムです。社内やチームからも注目が集まるからです。なので、1~3カ月の間でわかりやすく「アウトプット」「成果」を出させることで、「あぁ、Aさんは、Xが得意なんだな」と理解してもらうことを目標にしています。中途社員の場合は、“過去の仕事で一番得意なもの”をアウトプットするイメージでしょうか。

以上のように「時間軸を分けて目標を設定する」のが1つ目のコツです。

■キャリアプランは自分で作るもの

次に2つ目のコツは「ベンチマークを設定する」です。これはそのままですが、できる限りその人にとってのベンチマークとなる人を設定してあげます。

ベンチマークは社内の人でも、社外の人でもOKです。

ただし必須条件は「情報を取得できること」です。たとえば、社外であれば、本を出している人やメディアで発信している人。社内であれば、直接話を聞けたり、一緒に業務をしたりする人です。

ベンチマークを設定するのは、「やるべきこと」をより具体化するためです。普段どんなふうに時間を使っているのか? どのように業務を遂行しているのか? ベンチマークを設定することでそうした「行動」を具体化しやすくします。

3つ目のコツは「本人に納得、宣言してもらうこと」です。

当たり前の話ですが、キャリアプランは上司や周りが作るものではなく、本質的には自分で作っていくものです。

期待値シートにあるプランも、それはけして完成形ではなく、あくまで「仮説」です。

そのため、僕も「仮説としてプランを持ってきた」というくらいのスタンスで臨み、「これを参考にして、本人が自分で設定すること」を重視しています。

■期待値シートを作られて嫌な人はいない

僕は、キャリアプランをぶつける際も「こう考えていますが、あなたはどうしたいですか?」と必ず聞いたうえで、自分で宣言してもらいます。

北野唯我『キャリアを切り開く言葉71』(KADOKAWA)
北野唯我『キャリアを切り開く言葉71』(KADOKAWA)

本人が腹落ちするまで修正していき、最後は「本人のプラン」として宣言してもらう。これが3つ目のコツです。

まとめると、

①「長・短・超短」で目標を分けて作る
②「ベンチマーク」を設定する
③「本人に納得、宣言してもらうこと」

です。

キャリアの期待値シート自体は作られて嫌な気持ちになる人はおそらくゼロですし、上長にとってもメンバーのキャリアや業務を考えるいいきっかけになります。ぜひチャレンジしてみてください。

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北野 唯我(きたの・ゆいが)
ワンキャリア取締役
兵庫県出身、神戸大学経営学部卒。就職氷河期に博報堂へ入社。ボストンコンサルティンググループを経て、2016年、ワンキャリアに参画。現在取締役として人事領域・戦略領域・広報クリエイティブ領域を統括。またテレビ番組や新聞、ビジネス誌などで「職業人生の設計」「組織戦略」の専門家としてコメントを寄せる。著書に『転職の思考法』『オープネス』(ダイヤモンド社)、『天才を殺す凡人』(日本経済新聞出版社)、『分断を生むエジソン』(講談社)、『これから市場価値が上がる人』(ポプラ新書)などがある。がある。

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(ワンキャリア取締役 北野 唯我)

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