「お尻の穴」をゆるめてはいけない…疲れない「最高の姿勢」をつくるたったひとつのポイント
プレジデントオンライン / 2023年9月26日 15時15分
※本稿は、松乃わなり『「休め!」のポーズで死ぬまで歩ける骨盤のつくり方』(かんき出版)の一部を再編集したものです。
■悪い姿勢が身体の不調を引き起こす
誰もが、猫背などの悪い姿勢が体のゆがみを生み、肩こりや腰痛など身体の不調を引き起こす原因になるということは知っていると思います。
ですが、いざ正しい姿勢=“気をつけ”の姿勢を続けようと思っても、気がつくと猫背になっていたり、姿勢が崩れていたりと、なかなかその姿勢をキープできないのではないでしょうか。
実は、“気をつけ”の姿勢は、意外と疲れます。だから無意識により楽な姿勢を取ってしまうのです。
なぜ、“気をつけ”の姿勢は疲れるのでしょうか。
まず、人間の体は、一番上に大きな頭が乗っています。その重さの比率はだいたい体重の10%くらい、成人男性で約5~6キロだと言われていますので、ボウリングのボールがひとつ体の上に乗っているような状態です。
しかし、建造物の観点で言うと、もっとも重いものが上に乗っている構造というのはあり得ません。スカイツリーでも民家でも、下を大きく、上を軽く作るのが常識です。そのほうが安定するからです。
人類は、頭が大きくなり二足歩行に進化したおかげで、脳が大きく発達し両手が使えるようになるなどのメリットを享受できました。しかし、その代償として、立っているときに不安定な状態を生み出してしまったのです。
■気をつけの姿勢が疲れる理由
つまり、人間の体は上を重く作ってしまったビルのようなものですから、まっすぐに立った時に揺れに弱いわけです。じっとしようとしても、呼吸などによって体は常に前後左右に不規則に揺れています。
その細かな揺れを制御しているのが、体の中の各筋肉です。
たとえば、左方向に揺れれば、体の右側の下腿(かたい)や大腿(だいたい)、腹部、胸部、首などの筋肉が姿勢を保つように縮んで引っ張ります。前側に揺れれば後ろ側の筋肉が、後ろに揺れれば前側の筋肉が縮むというように、反対側にある筋肉同士が互いに伸び縮みしながらバランスを取っているのです。
このように重力に対抗して姿勢を保つために筋肉が働くことを、「抗重力筋作用(こうじゅうりょくきんさよう)」といいます。
筋肉が縮むということは、緊張するということです。つまり、まっすぐ立ったままの状態でいると常にどこかの筋肉が緊張し続けるため、疲労を生むのです。
たとえば、壁に寄りかかれば体重が支えられると共に揺れる方向が制限されるので楽ですよね。椅子に座れば立っているときよりも楽ですし、背もたれがあればもっと楽です。
■体をゆがめず、リラックスできる「最高の姿勢」のつくりかた
では、体を疲れさせることなく正しい姿勢を保つにはどうすればいいのか。
整体スクールを25年経営してきた私が、長い間、模索した末にたどり着いたのが、“休めのポーズ”です。そう、学校の朝礼などでやっていた、あの「休め!」のポーズ。このポーズが、正しくもリラックスした、究極の姿勢なのです。
正しい「休めのポーズ」は次の通りです。
![【図表1】もっと詳しく! 基本の「休め」のポーズ](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/8/b/1200wm/img_8b3d4177a35677fd83e3907e57735e40366665.jpg)
まずは、正しい「気をつけ」の姿勢で立ちます。このとき、かかとは軽くつけて、つま先は11時5分くらいの角度に少し開きます。
それからどちらの足でもいいので、片足を半歩ほど斜め前に出し、後ろ足に6~7割の体重を乗せます。
足を広げることによって土台の部分が大きくなり、安定しますよね。また、ほんの少し後ろに寄りかかった姿勢なので、体の揺れる方向は前後だけに限られます。
こうして抗重力筋の緊張が少なくなり、疲れが軽減されるのです。
ポイントは、後ろに寄りかかりすぎないようにすること、特に後ろ足のひざをしっかりと伸ばすこと、肩を後ろ回ししてから腕を下ろして親指が正面を向いた状態にすること。この3点を意識してください。
■身体の揺れを抑え、安定した状態を保てる
「休め」のポーズが疲れにくいもうひとつの理由は、体の揺れを抑えるために「筋肉以外の力」が手伝ってくれるからです。
「休め」のポーズでは、筋肉以外にも腹筋と背骨の椎間板が体の揺れを抑えてくれます。たとえば、体を後ろに反らすと腹筋が縦に伸びますね。同時に背骨も動いて背骨のクッション役である椎間板が圧縮されます。この伸びた腹筋や縮んだ椎間板の自然な反発によって、体のバランスが保たれるのです。
さらに、胸が張ることで肩甲骨と腕の動く範囲が3割ほども増え、呼吸が広がります。深く呼吸できるので、さらに疲れにくくなるのです。
また、正しい気をつけの姿勢をしたときに、足全体に「スクリューホーム運動」という動きが起こります。
これは、人間の大腿骨の関節の形状がカーブした構造であることにより、膝をまっすぐに伸ばして立つ際に大腿骨に対して下腿が外旋する動きのことです。
こうして膝をまっすぐに伸ばして立つと、膝関節や骨盤まで足全体がカチッとロックされたような状態になり、一本の棒のように安定した状態が保たれます。
「休め」のポーズでも、ピンと伸びた後ろ足が「スクリューホーム運動」でロックされた状態になり、安定します。かつ、前足はフリーでリラックスしています。
もしも後ろ足が疲れてきたら、前後の足を入れ替えればいいので、長くこの姿勢を保つことができるのです。
■ゆがみが改善されて不調も解消される
リラックスしつつも体をゆがませない「休め」のポーズを日常的に採り入れれば、無理なくインナーマッスルも鍛えられ、なめらかに体を動かせるようになります。また、肩甲骨や骨盤が動きやすくなり、安定してさっそうと歩けるようになります。
体のゆがみも改善されていくので、ゆがみからくる不調がなくなり、O脚といった悩みごとの解消にもつながるのです。
実際に、私の整体やセミナーに通い、正しい「休め」のポーズを続けたことで、不調が改善した方はたくさんいらっしゃいます。
生理不順や重い生理痛が改善した女性もいますし、外出時は車いすが必須だったのにたった3カ月で自らの足で海外旅行に出かけられるまでになった82歳の女性もいます。
そして、私自身も腹が引き締まって腰の痛みもなくなったばかりか、還暦目前にして、世界一過酷といわれるサハラ砂漠250キロメートルマラソンを完走し、南米アマゾンのジャングルを合計700キロも走れるようになるほど、バランスのいい強靭(きょうじん)な体を手に入れました。
![日本人男性ビジネスマンがオフィス街をきびきびと歩く](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/e/e/1200wm/img_eeefefc3ba5ce3a9fe9ff443775f591d400900.jpg)
■ポイントは「お尻の穴」を締めること
もちろん、「気をつけ」の姿勢が悪くて「休め」のポーズだけが優れているというわけではありません。私は「気をつけ」の姿勢のことを“ゼロポジション”と呼んでいます。すべてのはじまりのポーズです。
このはじまりのポーズから「休め」のポーズへと移行していきますので、この基本のポーズが崩れていれば、「休め」のポーズも崩れてしまいます。
正しい気をつけの姿勢、正しい休めの姿勢のポイントはたったひとつ。
お尻の穴が締まっているかどうか、です。
![松乃わなり『「休め!」のポーズで死ぬまで歩ける骨盤のつくり方』(かんき出版)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/e/5/1200wm/img_e51a2ef60398dc8862876ee8da75efde337310.jpg)
お尻の穴が締まっていれば、骨盤が締まり、おへその下にある「下丹田」にキュッと力が入った状態になっています。この姿勢が安定した正しい姿勢です。
中身が漏れない程度に緩んでいるときや排泄のときは、人は前傾姿勢になります。胸が張っていることと、お尻の穴の締まり具合は、連動しているのです。
お尻の穴がキュッと締まっているときは、胸を張ったほうが楽です。ためしに胸を張るのをやめてみましょう。とても不自然です。
一方、便秘でがんばっているときは、前傾姿勢になって眉間や肩、ひじに力が入ります。このときに胸を張ることはできません。出るものも出なくなります。これもお尻の穴と胸の連動です。
■「休め」のポーズを甘く見てはいけない
このように、立ち姿ひとつで、体の状態は劇的に変わります。
重力や筋肉や骨のしくみを利用することで体の疲れを軽減し、体のゆがみをも整えていく「休め」のポーズは、誰でもどんなときでも簡単にできますので、ぜひ実践されてください。
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整体師 健康美スクール最高責任者
整体スクールを25年経営。学校の朝礼でやっていた「気をつけ、休め」にヒントを得て不安定な骨盤を10秒~数分で回復させるセルフケア「骨盤力」を開発。著書に『「休め!」のポーズで死ぬまで歩ける骨盤のつくり方』(かんき出版)などがある。
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(整体師 健康美スクール最高責任者 松乃 わなり)
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