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激しい運動は逆効果…脳科学者が「思い立って運動を始めるより日々の早歩きが健康にいい」と断言する理由

プレジデントオンライン / 2023年9月26日 20時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/yevtony

健康にいい運動とはどのようなものか。脳科学者の瀧靖之さんは「激しい運動は、体内に活性酸素を発生させ、組織を傷つける。また、ふだんまったく運動していない人にとっては逆効果だ。晴天の日だけ、少し息が弾むぐらいの早歩きで散歩するだけでも十分で、継続的に行うことが大切だ」という――。

※本稿は、瀧靖之『70代でも老けない人がしている 脳にいい習慣 「ほんの少し」でこんなに変わる!』(三笠書房)の一部を再編集したものです。

■激しく運動している人が意外と若々しく見えない理由

「健康のためには運動が一番」、とは誰もが思っていることでしょう。

これは間違いありません。とはいえ、単に身体を動かせばいいというものではありません。

例えば、ふだんまったく運動しないのに、急に長距離を全力で走ったり、フットサルで激しくプレーしたりすることは、脳の健康にとってもあまりプラスにはなりません。むしろマイナスのほうが大きいのです。

そもそも激しい運動は、体内に活性酸素を発生させ、組織を傷つけます。ふだんから過酷なトレーニングを課している人が、意外と若々しく見えないことがあります。

その原因は、長く日光の紫外線を浴びることで皮膚を損傷するとともに、活性酸素が発生しているためです。

まして、ふだん運動しない人が急に思い立って激しく動くと、身体への負担はより大きくなります。中には「一度激しく動いておけば、当面動かなくていい」と考えている方もいますが、それは正しくありません。

“寝だめ”が効かないのと同様、“運動だめ”の効果も決して大きくないと考えられています。

■日常の中に小さな運動を取り入れる

健康にいい運動をするコツは、比較的軽めに、その代わり継続的に行うことです。心肺機能や関節などに問題がないことが前提ですが、例えば晴天の日だけ、少し息が弾むぐらいの早歩きで散歩するだけでも十分です。

これなら、無理をしなくても続けられるのではないでしょうか?

あるいは仕事等で忙しいなら、週末だけ軽くジョギングしてみるとか、通勤電車のひと駅分を歩いてみるとか、なるべく早歩きをするとか、エレベーターやエスカレーターを使わずに階段を上るといった感じでもいいと思います。

階段を上る女性
写真=iStock.com/KEN226
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/KEN226

日常の中でも、機会を見つけて小さな運動を取り入れることはできるはずです。

ちなみに私も、朝の出勤時は研究棟の4階にある研究室まで、エレベーターを使わずに階段を一段飛ばしで駆け上がることを習慣にしています。

血流を上げて身体とともに脳を目覚めさせるためです。ほんのわずかな運動ですが、一日のウォーミングアップとしてはこれで十分でしょう。

■クルマ依存を避け、歩ける距離は歩く

一般に、「一日30分は運動したほうがいい」とよく言われています。

この「30分」に医学的根拠がないこともありません(血中の脳由来神経栄養因子が出るにはこの程度の運動でもよいのです)。

また、「この程度なら続けやすい」という意味でも、これは理にかなっていると思います。それも、連続で動く必要はなく、トータルで30分運動すればいい、というのが通説です。

ただし、5分ずつ小刻みに動くよりは、それなりに長い時間を集中的に動いたほうが効果的です。

この点について、いささか心配なのは都会よりも地方で暮らしている方々です。

例えば東京で生活すると、電車や地下鉄網が発達している分、自宅から駅まで、駅から会社まで、よく歩くことになります。あるいは近くのコンビニにも、歩いて行くのがふつうでしょう。

ところが地方の場合、圧倒的にクルマ社会なので、その分だけ歩く機会は少なくなります。クルマを使うことにあまりにも慣れてしまっているため、自宅からほんの100メートル先のコンビニにさえクルマで行こうとする、そういう生活をしている方も珍しくないようです。

たしかに便利ではありますが、これが「健康にいい」とは言えません。できるだけクルマ依存を避け、歩ける距離は歩くという心がけも重要だと思います。

■早歩き、球技…健康にいい運動3つのポイント

ひと口に運動と言っても、いろいろな種類があります。どうせなら、より効率的な運動をして成果を出したいところでしょう。

瀧靖之『70代でも老けない人がしている 脳にいい習慣 「ほんの少し」でこんなに変わる!』(三笠書房)
瀧靖之『70代でも老けない人がしている 脳にいい習慣 「ほんの少し」でこんなに変わる!』(三笠書房)

そんなニーズに応えるように、世の中には例えば「指先を鍛えると頭がよくなる」とか「下半身のトレーニングがダイエットに効く」とか、諸説が流布しているようです。

ただ正直なところ、医学的にはまだわからない部分が多く、統一的な見解はありません。少なくとも、どの部位を鍛えればどうなるというほど、身体は単純にできていないと思います。

それよりも決定的な差異を生むのは、やはり「運動するか、しないか」ということです。どんな運動であろうと、しないよりはよほどいい。その一歩を踏み出すかどうかが、何よりも重要なのです。

そのうえで、強いて「いい運動」を挙げるなら、大きく3つあります。

1つ目は、早歩き、軽いジョギングや水泳のような全身運動。これは脳の血流も上げるし、海馬の神経細胞の新生を助けるとも言われています。もっとも、たいていの運動は全身を使うので、身も蓋もない言い方をすれば「何でもいい」のです。

2つ目は、球技や団体スポーツ。単に身体を動かすだけではなく、戦略等で頭を使うため、脳に悪いはずがありません。それに仲間内でのコミュニケーションも必要になるので、刺激にもモチベーションにもなるでしょう。

3つ目は、2つ目とも関連しますが、楽しみながらやること。「健康のため」という強迫観念に駆られて無理やり運動しても、ケガのもとになるし、だいたい長続きしません。言い換えるなら、軽い気持ちや遊び感覚で続けられる運動を見つけてみるといいと思います。

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瀧 靖之(たき・やすゆき)
東北大学教授
1970年生まれ。医師。医学博士。東北大学大学院医学系研究科博士課程卒業。東北大学加齢医学研究所機能画像医学研究分野教授。東北大学東北メディカル・メガバンク機構教授。脳のMRI画像を用いたデータベースを作成し、脳の発達、加齢のメカニズムを明らかにする研究に従事。読影や解析をした脳MRIは、これまで16万人分にのぼる。

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(東北大学教授 瀧 靖之)

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