6時間半眠れば脳内のゴミがとれる…脳科学者がお勧めする「仕事がデキる人」に共通する生活スタイル
プレジデントオンライン / 2023年9月28日 20時15分
※本稿は、瀧靖之『70代でも老けない人がしている 脳にいい習慣 「ほんの少し」でこんなに変わる!』(三笠書房)の一部を再編集したものです。
■十分な睡眠により脳内から“ゴミ”を洗い流す
睡眠が重要であることは、誰もが認識しているでしょう。
ただ、夜中までの残業や、深夜のスマホ、テレビ観賞などで、寝る時間が削られてしまいがちなのも事実です。
脳の状態を良好に保つためには、やはり睡眠は不可欠です。
例えば徹夜で何かをしたり、慢性的に睡眠時間が少なかったりという状態は当然ながらよくありません。疲れが取れないし、昼間に眠くなることもある。しかしそれだけではなく、睡眠は認知症予防にも欠かせないのです。
人間の身体にたんぱく質が重要な役割を果たしていることは、周知のとおりです。ところが、しばしば「アミロイドβたんぱく」というたんぱく質に変容して役割を果たさなくなり、逆に脳に“ゴミ”として溜まることがあります。
それが脳の中で炎症を起こし、神経細胞が脱落してしまう状態が認知症です。なぜアミロイドβたんぱくが溜まるのかは、まだよくわかっていません。今のところは、遺伝的な要因や、生活習慣や、動脈硬化性の疾患などが影響するとも言われています。
しかしいずれにせよ、睡眠を十分にとることで、このゴミを脳内から洗い流せることがわかっています。例えば糖尿病にかかってアミロイドβたんぱくが溜まりやすくなったとしても、しっかり睡眠をとることで、ある程度進行を食い止めることは可能なのです。
■大人なら6時間半も眠れば十分
ところが睡眠不足では、その機能が不十分になります。脳の健康を維持するためにも、睡眠は欠かせないわけです。
もっとも、最近の研究によれば、大人ならだいたい6時間半も眠れば十分だそうです。どれほど忙しい人でも、これくらいなら確保できるでしょう。
むしろ、問題は、「寝なければ」と自分を追い込むことです。眠くないのに布団に入り、眠ろうと思うほどに緊張して目が冴えてくる、という経験は誰にでもあると思います。これでは、かえってストレスを溜めるだけです。
眠れないなら眠れないままでけっこう。仕方ないと開き直ることが重要です。
横になるだけでもかなり休息になるからです。それに、ずっと目が覚めているように感じていても、実は眠ったり起きたりを繰り返していて、トータルではけっこう眠っていることがあるのです。
ただし、よく眠るためには多少の努力も必要でしょう。その方法はいくつかあります。まずは昼間の覚醒度を上げること。また生活リズムを整えること。
不規則な生活では睡眠も安定しません。それから日中に軽い運動をすること。運動は前述のとおり脳を活性化するので、一石二鳥です。
■「深く眠れれば、睡眠時間は短くてもいい」の真実
睡眠と言えば、昼食後の睡魔はなかなか辛いものです。
「我慢して起きているくらいなら、いっそ寝てしまったほうがいい」という意見もよく聞きます。たしかに夜まで仕事が続くなら、そのほうが合理的でしょう。
少しでも寝れば、集中力がまるで違ってきます。このあたりのことは、学生時代の授業中に経験された方も多いと思います。
ただし、そこで寝すぎると夜の睡眠の質が下がります。昼寝はごく軽く、せいぜい十五分くらいに留めたほうがいいです。
それには、横になるより椅子に座ったままうとうとするとか、部屋をあまり暗くしないといった工夫をしたほうがいいと思います。また、夕方4時以降の“昼寝”は避けるべきでしょう。
また一部には、「深く眠れれば、睡眠時間は短くてもいい」という意見もあるようです。しかし立証されているわけではないし、自分で深さをコントロールできるわけでもありません。やはり一般には、時間を目安にしたほうがいいでしょう。
■朝型生活にすると、仕事が格段にはかどる
生活のリズムは人それぞれで、朝が得意という方もいれば、夜のほうが能率が上がるという方もいます。脳にとってどちらがいいとは、いちがいには言えません。客観的なデータも、今のところは存在しないと思います。
しかし私個人の主観としては、圧倒的に朝型をおすすめしたいのです。
最近は4時半に起床し、6時半には研究室に来ています。もともと朝型ではなく、准教授のころまではふつうに8時半ごろに出勤していたのですが、教授になった4年ほど前から今のスタイルに変えたのです。その結果、仕事の効率は格段に上がりました。
それまで昼や夕方にやって2~3時間かかっていた作業が、早朝なら30分でできてしまう。疲れていないから集中力が保たれるし、まだ誰も出勤していないので他の用事も入らないからです。
そのため、最近は重要な仕事ほど、この6時半から8時半の2時間のうちに終わらせるようにしています。今後の研究の方向性を決めたり、その段取りを考えたりといったクリエイティブなことは、すべてこの時間で処理する。
あるいはメールにしても、一日で200通前後はふつうに来ますが、返信が必要なものは一通につき1分程度で処理するのが朝の日課となっています。
そして8時半以降、皆が出勤してくるころには、すでに一日の4分の3ぐらいの仕事が終わっている感覚になります。仕事量は膨大ですが、この濃密な2時間のおかげで効率的に処理できているわけです。
■企業のトップは朝の価値に気づいている
ついでに言えば、早朝は出勤も楽です。私はクルマで通勤していますが、仙台市内も朝のラッシュアワーはかなり渋滞します。空いていれば十分で着く距離に40分以上かかったりすることもあるほどです。
しかし、早朝なら空いています。前後に一台も走っていないこともザラです。ほんの2時間ほど前にズラすだけで、運転のストレスには雲泥の差があるわけです。
おそらくこれは、電車通勤でも同じでしょう。首都圏などのJRや私鉄各線は、ラッシュアワーの混雑緩和のために、かねてより「時差通勤」を呼びかけています。
出勤を遅らせるのも一つの手ですが、いっそ早めると比較的楽に出勤できるうえ、仕事への姿勢も変わってくるかもしれません。
こういう早朝の価値に気づいているのは、私だけではないでしょう。
私はいろいろな企業のトップの方にときどきお会いする機会にめぐまれますが、やはり朝型の生活をされている方が少なくありません。忙しい方ほど、朝の時間帯の価値に気づいているのではないでしょうか。
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東北大学教授
1970年生まれ。医師。医学博士。東北大学大学院医学系研究科博士課程卒業。東北大学加齢医学研究所機能画像医学研究分野教授。東北大学東北メディカル・メガバンク機構教授。脳のMRI画像を用いたデータベースを作成し、脳の発達、加齢のメカニズムを明らかにする研究に従事。読影や解析をした脳MRIは、これまで16万人分にのぼる。
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(東北大学教授 瀧 靖之)
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