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児童ポルノサイトにわが子の写真が…インスタに160万件ある「#運動会」動画が危険な理由

プレジデントオンライン / 2023年10月3日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/y-studio

■SNS関係のトラブルが多い子は、親も問題を起こしがち

「ある保護者が勝手に運動会の動画を投稿していた。一緒にいる子の顔がわかる状態で、その中にうちの子もいたので、思わず学校に苦情の電話を入れてしまった」

小学生の子どもを持つ30代女性は眉をひそめる。

「ほかにも数人から苦情があったようで、先生が削除させてくれてほっとした。よく見たら学校名がわかる動画だったし、どういうつもりなんだろうと思った。こっちまで巻き込まないでほしい」

このようなトラブルが増えたため、最近の学校では、事前に写真・動画についての注意があることが多い。

「SNS関係のトラブルが多い子は、親も問題を起こしがちです。ほかの子の映っている動画は削除してほしいと注意しても、『なんでいけないんですか』と食ってかかられる。理由が理解できず、YouTubeなどに全体公開で投稿してしまうんです。子どもだけじゃなくて親の教育も必要なんですよ」と、ある教員はため息をつきながら教えてくれた。

■「撮影はOKだがネット投稿はNG」お触れを出す学校もある

近年は、保護者世代もスマホでの撮影・投稿が日常となっている。SNSへの投稿をいけないことと思わない保護者もいるため、トラブルが絶えないそうだ。

それゆえ、たとえば筆者の子どもが通う学校では、学校公開では「撮影・録画禁止」、文化祭・体育祭でも「撮影は可能だがSNS等のネットへの投稿はしないこと」という連絡やお便りが配られている。「SNSに投稿される方がいると撮影も禁止しなければならなくなる。禁止は避けたいので、ご理解ご協力をお願いしたい」という連絡がきていたほどだ。

■園名や校名、本名までわかる動画がTikTokにあがっている

Instagramでは「#運動会」(160万件)、「#保育園運動会」(3.2万件)、「#小学校運動会」(3.5万件)、「#幼稚園運動会」(3.1万件)、「#運動会日和」(2.2万件)、「#最後の運動会」(4.1万件)など、運動会絡みの写真や動画が多数投稿されている(いずれも9月20日現在)。青空のもとで体操着でピースしている写真、かけっこやダンスの動画など、ほほえましいものが多い。

一方で、背景に学校や園などの建物が写っていたり、一緒に並ぶ友達の顔もはっきりわかる写真や動画も多く投稿されている。体操服には校章等がついていることが多く、そこから園名や校名などが簡単にわかってしまう。

ある親子でのかけっこ動画では背景にテントが映り込んでおり、テントには小学校名がはっきり読み取れた。別の子どものかけっこ動画は、友達の顔こそモザイクで消されていたが、体操服の胸に名前が書かれており、読める状態となっていた。

TikTokでも「#運動会」は8億8590万再生、「#運動会リレー」は3160万再生などと人気だ。こちらもやはりInstagramと同様に顔がはっきりとわかり、園名・校名などもわかる状態となっているものが多い。冒頭の保護者のように、心配する気持ちもよく理解できる。

■なぜ親たちはSNSに子どもの写真を投稿するのか

保護者はなぜSNSに子どもの写真や動画を投稿するのだろうか。

0歳から小学校高学年までの子どもを持つ保護者を対象としたピクスタの「子ども写真のSNS投稿に関するアンケート」(2023年3月)によると、子どもの写真をSNSに投稿する理由は、「家族や友達に近況を伝えたい」(54.5%)と「子どもの成長の記録として残したい」(52.1%)が約半数を占めた。「同じ年頃の子どもを持つママ友・パパ友と繋がりたい」も28.8%と、約4人に1人いる状態だ。

核家族での子育てはワンオペ育児になりやすく、追い詰められてしまう保護者は少なくない。筆者も経験があるが、「なかなか寝ない」「離乳食を食べない」「夜泣きがひどい」「子どもの預け先がない」など、子育てに悩みは尽きない。そんなときに、先輩パパ・ママからの情報や、同世代の子どもを持つパパ・ママからの励ましが助けになったり、救いになったりすることは多い。

知人友人などへの成長報告に使える上に、あとで見返すと成長記録として楽しめる部分もある。SNSへの子どもの写真投稿には、たしかにメリットもあるのだ。

■児童ポルノサイトに子どもの写真が転載されていた

一方で、同アンケートでは「あなたやあなたの周りで、お子さんの写真をSNSに投稿してトラブルになったことはありますか?」という質問に対しては、約4割が「ある」と回答した。内容は「知人のお子さんも写っており、苦情を受けた」(36%)、「個人情報を特定された」(30%)、「写真を無断使用された」(16%)などとなっている。

子どもの写真をSNSに投稿することはさまざまなリスクをはらんでいる。具体的には、上記のアンケートにもある通り個人情報が流出すること、それによって子どもの身に危険が及ぶこと、投稿された写真が悪用されてデジタルタトゥーとなってしまうこと、さらには子ども自身の同意を得ていないために将来親子の関係にヒビが入ることなどが考えられるだろう。

実際に、わが子の裸やおむつ交換の様子など露出の多い写真をSNSにあげていたら、それが児童ポルノサイトに転載されていたという例を耳にしたことがある。偶然見つけた人から教えてもらい、通報して削除したものの、「どこかに残っているかもしれない」と怖い気持ちが消えないそうだ。

深夜にスマートフォンを操作する人
写真=iStock.com/Chainarong Prasertthai
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Chainarong Prasertthai

また、あるブロガーが子どもの写真をネット上に投稿していたところ、保育園の入り口で読者に待ち伏せされ、「○○くんだよね」と声をかけられたという。このときは犯罪にはつながっていないが、見る側の意志ひとつでいくらでも悪用できてしまうことがわかるだろう。

海外では、オーストリアの10代の少女が写真の投稿をめぐって両親を訴えた事例もある。おむつ交換やトイレトレーニング写真などが500枚以上Facebookに上げられており、両親に削除を求めても応じないため、訴える羽目になってしまったのだ。幼い頃の恥ずかしい写真が誰でも見られる状態で投稿されていたら不快に思うのは当然だろう。

■「今日運動会がありました」は特定につながりやすい

保護者がSNSに子どもの写真を投稿すること自体は否定しない。しかし、自己承認欲求を満たすためや収入につなげるために利用することは許されるべきではないし、そうでなくとも子どもにリスクが及ばないように注意して投稿する必要がある。

投稿する場合には、公開範囲を制限して投稿したり、顔が写らない後ろ姿などの写真にするのがおすすめだ。子どもの名前は公開せず、「息子/娘」「Aくん/Bちゃん」などのようにネットネームにすると安全性は高まる。

そして自宅や学校、園などが特定されるような投稿はしないこと。「今日運動会がありました」などと投稿すると、日にちがわかって園や学校が特定されやすくなる。建物や体操着、校名や園名がわかるテントや校門、看板なども写さないようにしよう。

■親であっても子どもの肖像権を無視してはならない

また、友達の顔がわかる状態で投稿すると問題になりやすい。自分の子ども以外の子の顔は、事前にその子の保護者に掲載の許可を得るか、モザイクやスタンプなどで隠すのがいいだろう。

そして子どもが恥ずかしく感じるような写真や動画は投稿しないこと。肖像権は子ども自身にあることも覚えておく必要がある。子どもが拒否するなら投稿しないこと、過去の投稿を削除することも重要だ。

SNSはうまく使うと便利で楽しいが、使い方を間違えるとリスクにつながってしまう。大切な子どもを危険にさらすことがないよう、気をつけて使っていってほしい。

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高橋 暁子(たかはし・あきこ)
成蹊大学客員教授
ITジャーナリスト。書籍、雑誌、webメディアなどの記事の執筆、講演などを手掛ける。SNSや情報リテラシー、ICT教育などに詳しい。著書に『ソーシャルメディア中毒』『できるゼロからはじめるLINE超入門』ほか多数。「あさイチ」「クローズアップ現代+」などテレビ出演多数。元小学校教員。

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(成蹊大学客員教授 高橋 暁子)

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