じつは国が公式発表している…ほとんどの人が気づいていない「隠れた優良企業」の見つけ方【2023上半期BEST5】
プレジデントオンライン / 2023年10月5日 7時15分
※本稿は、佐野創太『ゼロストレス転職 99%がやらない「内定の近道」』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。
■経産省は「隠れた優良企業」を公表している
「モンスター企業に入りたくない」と話す相談者さんが、次のような本音を教えてくれました。
穏やかに働きたい。顧客を騙したくない。社員同士で足を引っ張り合いたくない。
悲しい現実ですが、会社の業績が良くないと、職場がギスギスする、嘘をついてでも利益をあげる、同僚を出し抜いてでも顧客を奪う――こんなことが起こりやすくなります。「もう、疲れた」「これ以上、自分を嫌いになりたくない」と切実な声をあげる転職相談者は多いのです。
当たり前のことを当たり前に大切にできる企業に転職したい。でも、どうすれば見つかるのか。
モンスター企業の避け方では厚労省を頼りましたが、今度は経産省の力を借りましょう。「隠れた優良企業」が見つかります。
経産省は平成26年、令和2年に「グローバルニッチトップ企業100選(GNT企業100選)」を公表しています。
「ニッチ」とは、参入している企業が少ない隙間産業という意味です。なかでも、グローバルニッチトップ企業は、このニッチ分野で「高い世界シェアを有し、優れた経営を行っている中堅・中小企業」を指します。
■グローバルニッチトップ企業には余裕がある
この企業100選には、「厳しい環境においてニッチ分野で勝ち抜いている企業」や「国際情勢の変化の中でサプライチェーン上の重要性を増している部素材等の事業を有する優良な企業」が載っています。株式投資の参考資料にしている人もいます。
グローバルニッチトップ企業には、たいてい次のような好循環があります。
自社にしか提供できない商品やサービスを持っている→他社は真似できないので商品やサービスの値段を上げられる→自分たちにしか生み出せない価値があるとわかっている社員は、自信を持って働く→その姿を見た会社は社員を信頼する→頑張る社員に報いるべく、経営陣は社員に還元する→努力を続ける社員の姿に、顧客の支持が集まる→さらに商品やサービスに磨きがかかり、唯一無二の地位が固まる。
つまり、余裕があるため、モンスター企業になりようがないのです。
■グローバルニッチトップ企業は見つけにくい
実際に、グローバルニッチトップ100選の企業に、法人営業として転職した相談者さんは、働き始めて1年経って、こう教えてくれました。
顧客と対等な関係になれるなんて夢にも思いませんでした。お客様から相談してくるんです。これまで土下座する勢いでお客様にお願いする立場だったので、驚きました。弊社にしかできない仕事なので、やりがいがあります。
相談者さんは、スキルアップしたわけではありません。ただ、働く場所を見つけて変えただけ。たったこれだけで、ストレスがなくなるなら、すぐにでもグローバルニッチトップ企業を調べてみたいと思いませんか?
ただし、グローバルニッチトップ企業は、よく調べなければ「何をしているかわからない」会社も多いでしょう。
隠れた優良中小企業は求人サイトで大手企業のように写真が多数、派手な言葉で掲載されていないことも多いので、見つけにくいという特徴もあります。
■「採用はしていません」を真に受けてはいけない
ご安心ください。転職サイトの多くには「キーワード検索」や「フリーワード検索」があります。サイトの窓に「ニッチトップ」「独自技術」「シェアNO.1」「リーディングカンパニー」と打ち込んでください。
あなたにピッタリの企業が、宝探しのように楽しく見つかります。
転職サイトに掲載されていない企業も多々あります。もっと言えば、お問合わせや採用ページから直接応募する必要がある企業も割とあります。「ただいま、採用活動は行っておりません」とページに表示される企業すらあります。
だからこそ、いいのです。この時点で、大勢の転職者が脱落していきます。
「採用はしていません」という言葉を、真に受けないでください。HPにはそう記載しておきながら「いい人がいたら採用したい」と考えている企業は、案外多いのです(もちろん、本当に募集していない場合もあります)。
その調べるハードル、応募するハードルの高さが参入障壁となり、転職活動のライバルを減らしてくれます。
■グローバルニッチトップ企業は採用に苦戦している
隠れ優良企業である「グローバルニッチトップ企業」の探し方を知ったあなたは、同じく転職活動を始めようとしている人よりも、一歩も二歩もリードしていることでしょう。
「隠れ優良企業リスト」の人事担当者は口をそろえて「うちは地味だからな」と言います。ほとんどが、採用に苦戦しているのです。
そうした中、人事に直接アプローチすれば、たとえ表立って採用活動をしていなかったとしてもたいていの人事は会ってくれます。人事も興味があるからです。「どうやってウチを見つけたの?」と質問してくることでしょう。
そこに志望意欲が高く、強みと経験があるあなたが現れたら、間違いなく一目置かれる人物として大歓迎されるでしょう。入社初日に「救世主が現れました」なんて紹介された相談者さんもいます。
みんながやらないことで、差をつける好例です。
■子育て支援の「くるみんマーク」
子育てや介護と両立したくて転職活動をする人はたくさんいらっしゃいます。相談者さんの中には、「仕事は家族を守る手段です」「面接では仕事が一番と言っていますが、本当は違います」と打ち明けてくださる方もいらっしゃいます。
![育児や家事を分担する若い家族](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/3/6/1200wm/img_36b2b68a0b3bb9a789f50f79bc53fc97662005.jpg)
私も子育てや介護がきっかけで、退職した経験を持つ一人です。
利益を追い求める会社の多くは、子育てや介護をサポートする余裕がありません。私自身、面と向かって「子育て中の人は採用しにくい」と言われたことがあります。こちらから願い下げですが、「それが会社の性質の一つ」と知る勉強になりました。
ですから、子育てや介護を両立させたい人は、応募の前段階から「両立を支援している会社」を選ぶことが必須となります。
「両立を応援している会社」を見分ける方法はシンプルです。「くるみん認定企業」を探しましょう。
「くるみんマーク」取得企業とは、「子育てサポート企業」として厚生労働大臣の認定を受けた企業です。「次世代育成支援対策推進法に基づき、一般事業主行動計画を策定した企業のうち、計画に定めた目標を達成し、一定の基準を満たした企業」を指します。厚生労働省は、くるみん認定(くるみんマーク)を受けている企業を、各都道府県ごとに2022年10月末時点で3987企業を公表しています。
■介護支援の「トモニンマーク」
さらにレベルアップした「プラチナくるみんマーク企業」も同じようにHPで無料公開されています。厚労省もページの中で「学生・求職者の方は、企業研究の指標の一つとしてもご活用ください」と呼びかけています。
なお、厚労省運営の「一般事業主行動計画」では、企業名を打ち込めば両立支援のための取り組み内容や計画を見ることができます。
厚労省は、仕事と介護の両立を目指す企業も応援しています。
「両立支援のひろば」では「企業が介護離職を未然に防止するため、仕事と介護を両立できる職場環境の整備促進に取り組むことを示すシンボルマーク」を「トモニン」マークとしています。
残念ながら、2022年10月末時点では取得企業の一覧が公表されていません。それでも、一つの目安としてあなたを助けてくれるでしょう。
![公園で車椅子を持つ若いアジアの女性と老人の男性](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/b/b/1200wm/img_bbb4b17ec4d9dc83e3a8d874f4dc553b931051.jpg)
■子育てや介護を志望理由として話してはいけない
ただし、こうした企業に転職を希望する際は、子育てや介護を志望理由として話さないでください。この制度を利用するために入社するのかと勘繰られるからです。
すでに述べたように、「子育てや介護をしている人、大歓迎です!」と両手を広げられる企業は、そう多くはないのが実態です。
本音は胸の中にしまい、「この企業なら打ち明けてもいい」とあなたが認めた時にだけ話してください。もしくは内定後にお話することをお勧めします。
基本スタンスは、「制度を利用する側ではなく、私も子育てや介護を両立する会社を作る側でいたい」という、貢献する意識を見せることです。「制度に乗っかろう」という消費者の意識は、必ず見抜かれます。
ともあれ、国は子育てや介護を応援していますし、そうした企業が着実に増えていることも事実です。
「仕事に専念できなくてすいません」と後ろめたく思う必要はまったくないのです。
■不利な環境で我慢する時間はない
「どれだけ頑張っても女性というだけで、評価されない会社なんです」
キャリア相談の中では「一体いつの時代の会社なんでしょうか?」と怒りで声を震わせる相談者さんもいらっしゃいます。
こんな不利な環境で我慢する時間は、あなたには1分もありません。「正当に評価される環境で努力をする」ことが長期的に安心して働くためには必要です。
転職とは、「私を正当に評価できる環境に移動する一連の行動」です。
アメリカの企業コンサルタントだったマリリン・ローデン氏が「ガラスの天井」という言葉を使ったのは1978年頃だと言われています。女性やマイノリティーという属性だけで昇進できない、評価されない「目には見えない障壁に阻まれている」状況があることを発信しました。
あれから40年以上経っていますが、状況はどうでしょうか? 改善はされているものの、「女なんだから仕事よりも家事をしろ」「男は子育てなんかせずに黙って働け」と苦しめられている人がいます。無意識のうちに「私は女性だから」「私は男性だから」と追いつめられている人もいます。
■女性が働きやすい環境は男性も働きやすい
性別が不利にならない職場は、実は誰にでも簡単に見極めることができます。
それが「えるぼし認定」です。厚労省は「女性の活躍推進に関する状況などが優良な企業を認定する制度」として、えるぼし認定を推進しています。より高い水準の要件を満たした企業は「プラチナえるぼし認定」を受けることができます。
「女性の活躍推進」とあると、「男性の私には関係ない」と思うかもしれませんが、実際に、えるぼし認定企業に転職した男性の相談者さんはこう話してくれました。
女性が働きやすい環境の本当の意味は、「女性だけが働きやすい環境」ではないと気づきました。男性も働きやすいんです。企業の成長のための手段として使い捨てられる道具ではなく、自分だけの人生を持った人間として働ける会社だとわかりました。有休を取る時に理由を上司に伝える必要がなかったり、大事な私用で中抜けしてOKなど、人として尊重されていることがわかります。
■「えるぼし認定企業」はフェアな職場を目指している
えるぼし認定企業・プラチナえるぼし認定企業は、言い換えれば、性別や属性が不利にならないフェアな職場を目指している企業なのです。
![佐野創太『ゼロストレス転職 99%がやらない「内定の近道」』(PHP研究所)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/2/a/1200wm/img_2acd17083200d49c2d83145567aaef6a137138.jpg)
なお、えるぼし認定には五つの評価項目とレベルがあり、どのレベルであっても、実績を「女性の活躍推進企業データベース」に毎年公表しなければなりません。「一度認定されたら終わり」ではないので、信ぴょう性があります。
えるぼし認定を受けている企業を探すには、厚労省が公開している「女性活躍推進法への取組状況」ページのエクセルデータをご覧ください(令和4年11月末日現在)。このデータによると、えるぼし認定企業は1990社、プラチナえるぼし認定企業が33社あります。
従業員数の多い大企業のイメージがあるかもしれませんが、従業員数300名以下のえるぼし認定企業は842社です。従業員数300名以下のプラチナえるぼし認定企業は15社あります。どちらも約40%です。さらに細かく検索条件を設定したい場合は、しょくばらぼの検索サイトをご覧ください。
十分とは言えないまでも、社会全体として女性の働きやすさを重視している企業は確かに増えていると言えるでしょう。
あなたが不当な我慢を強いられてもいい理由は一つもありません。思いっきり仕事と生活に打ち込める職場が、あなたを待っています。
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企業顧問、「退職学」の研究家
1988年生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業後、2012年パソナグループに入社し、転職エージェントとして従事する。法人向けの研修会社に転職するも1カ月で早期退職し、無職となる。パソナグループに出戻り後、新規事業の責任者として求人サイトを立ち上げる。介護離職を機に2017年に独立。新規事業のマーケティング、コンテンツ、成長企業の人材育成の顧問として活動しつつ、退職学の研究家として20代から50代まで1200人以上のキャリアアップを実現させる。著書に『「会社辞めたい」ループから抜け出そう!転職後も武器になる思考法』(サンマーク出版)、『ゼロストレス転職 99%がやらない「内定の近道」』(PHP研究所)がある。
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(企業顧問、「退職学」の研究家 佐野 創太)
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