1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. ライフ総合

余命1年と宣告されて10年…ステージ3から奇跡の寛解を遂げた女性が、がんを克服するために下した決断

プレジデントオンライン / 2023年10月6日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Jose carlos Cerdeno

全米で23万部のベストセラー本を著したがん研究者ケリー・ターナー氏は、がんが劇的に寛解した1500以上の症例を分析。世界中の数百人ものがんサバイバーたちにインタビューした結果、奇跡的な回復を遂げた患者たちには、ある共通点があることがわかった。そのうちの一つが、「生きる強い理由」を持つことだった――。

※本稿は、ケリー・ターナー『がんが自然に治る10の習慣』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

■「生きる強い理由」が幸せホルモンを生む

劇的寛解についての研究で寛解者たちにインタビューをするうちに、私は「生きる強い理由がある」ことと「死にたくないこと」とは大きく違うことがわかってきました。私が調査した人たちの中には、死を恐れている人もいれば、その可能性を受け入れている人もいましたが、彼らに共通していたのは、生きることへの強い決意でした。

劇的寛解者とその治療者たちは、「生きたい」という思いは、心の奥底から湧き出る確固たる信念でなければいけないと強調します。これは、がんと闘っているときや死と闘っているときとは、まったく異なる精神状態をもたらします。闘争心は身体を闘争・逃走モードにし、コルチゾール(ストレスホルモン)を増加させ、免疫システムを抑制します。一方、生きる理由に焦点を当てると、喜びや目的、幸せを感じ、体全体の免疫力を高めるホルモンの変化につながります。

簡単に言うと、身体は心が言っていることに耳を傾けます。生きることに意識が向いていれば、脳はセロトニンやオキシトシン、ドーパミンなどのいわゆる幸せホルモン(免疫力を高めるホルモン)を血流に流し込んでくれます。

多くの代替療法士によると、生きる理由を強く持つことで、生命を育む「気」、つまり生命のエネルギーが体内に注入されます。しかし、その逆もまたしかりです。もし、あなたの心が絶望的で人生をあきらめているのなら、血液検査の結果は、免疫力を高めるホルモンの値が低いことを示し、あなたの脈拍を分析した鍼灸(しんきゅう)師は「気」のレベルが低すぎると言うでしょう。

■人生の真の喜びと目的の源を発見する

劇的寛解者たちはみんな、生きることに集中するためには、人生の真の喜びと目的の源を発見すること、場合によっては再発見することが必要だったと報告しています。多くの場合、がんの診断をきっかけに、仕事上の目標や友人関係、家族、精神性、創造性、コミュニティ、あるいは忘れかけていた趣味といった、それまで喜びを感じていた人生の側面にフォーカスするようになりました。

あなたの生きる理由は、生きている間に変化する可能性があります。

20歳のときの自分と、80歳のときの自分を思い浮かべてみてください。この二つの自分の優先順位はまったく同じだと思いますか?

さらに、がんのような予期せぬ診断が下された場合、それによって状況はどう変わるでしょうか?

多くの人は深刻な病気や状態と診断されると、優先順位を見直し、別のレンズを通して自分の人生を見ることを余儀なくされます。劇的寛解者たちは繰り返し、診断が人生の目的を再定義するよう促す警鐘だったと報告しています。

■自分の多面性を尊重すると多くの道が見つかる

最近では、ジャック・キャンフィールド、ルイーズ・ヘイ、イヤンラ・ヴァンザントなどの著名作家の本はもちろん、自分の目的を見つけるのに役立つさまざまなアプリがあります。

また、ジョー・ディスペンザ、エリザベス・ギルバート、ブレネー・ブラウンといった自己啓発の専門家によるオンライン動画や、オプラやルイス・ハウズといったリーダーによる多くのポッドキャストもあります。エネルギー療法家であり、多くのがん患者をサポートしているスピリチュアルカウンセラーのアーロン・タイチは、目的を見つけることについて、次のようにアドバイスしています。

「私たちは目的を持っていません。私たちはこれまで多くのことを経験してきましたし、これからも多くの経験をするでしょう。私たちは一つのものではありません。肉体的、精神的、感情的、創造的、遊び心、関係性など、多次元的な存在です。

そして、私たちはそれぞれ、友人やパートナー、親、子、兄弟、同僚、学生、指導者など、多くの役割を担っています。その一つひとつにかかわり、表現することが必要です。

私たちが人生の段階を経て成長し、人生のさまざまな局面で変化するにつれて、興味や人間関係も変化し、新たな目的と意味の道が生まれます。私たちは職業など、たった一つのことに意味を求めると、道に迷ってしまいます。しかし、自分の多面性を認識し、尊重することで、多くの道が見つかるのです」

■うつ病はがん患者の生存期間を短くする

生きるための強い理由を持つといった目に見えない治癒要因は、科学的な思考を持つ人々にとっては、あまりにも「ありえない」ものに思えるかもしれません。しかし、多くの研究が、目的を持って生きることが、心身の健康や長寿につながることを示しています。

うつ病に関する60年以上にわたって積み上げられた科学的根拠によると、うつ病(その定義には、生きるための強い理由がないことが含まれます)が免疫システムを抑制し、がん患者の生存期間を著しく短くすることが実証されています。

ポジティブな面では、革新的な研究者や医師が、目的を持って生きることが長寿や心身の健康の改善につながることを実証しています。その一人がアブドゥル・カディール・スローカム医学博士です。

彼は、もともとアメリカ出身ですが、トルコのイスタンブールで育ち、現在は従来の治療法(低用量化学療法など)と統合的治療の両方を用いてがんの治療をしています。彼は、同僚のビュレント・ベルカルダ医学博士やメフメト・サリフ・ジケシ医学博士とともに、自身の統合的がんクリニック「Chemothermia」を設立しました。

スローカム博士は次のように述べています。

「長年、おもにステージ4のがん患者を治療してきた経験から、人ががんを克服するための第一の要因は、その人の生きる意志であることがわかりました。そして、その次に重要なのは、医療提供者と信頼関係を築くことです。

この二つの条件が揃ったときに、心の鍛錬としてポジティブな思考を維持しながら医療提供者の治療計画に従って規律正しく行動すること、食は薬であるという認識に基づいた食習慣を実践することが重要だとわかりました。つまり、「生きよう」という意志が治癒の第一条件であることを改めて強調したいのです」

■「強い生きがい」は死亡リスクを低減する

スローカム博士の主張を裏付けるように、最近の研究では、人生の目的意識を強く持つことが、死亡率の低下や病気、障害、認知障害のリスクの低減につながることが示されています。

ある研究では、百寿者(100歳以上の人)の子どもは、その配偶者や同年代の人と比べて、著しく高い人生の目的(purpose in life=PIL)を持っていることが示されました。研究者たちは、「人生の目的」(PIL)が高いと「加齢にともなう病気を遅らせる役割を果たし、がんにつながる炎症や免疫の状態を遅らせる可能性があると結論付けています。

ミシガン大学の最近の研究では、人生の目的を強く意識することで、身体的・精神的な健康の改善につながり、生活の質を全体的に向上させることが明らかにされました。研究者たちは50歳以上の約7000人を調査し、PILスコアが最も高い人は、最も低い人に比べて死亡する確率が2.5倍低いことを発見しました。

日本でのほかの研究では、主観的な幸福感である「強い生きがい」を持つことは心血管疾患のリスク低減と関連し、「強い生きがい」を持たないことは死亡率の上昇と関連することが示されています。

強い生きがいを持つことは、寿命の大幅な延長にも関連しています。人生の目的に関する10の専門的研究を調査し、合計13万6000人以上を分析した研究では、人生の目的意識を強く持つことは、全死亡リスクの低減と関連すると結論付けています。

また、成人を10年間にわたって追跡した研究では、人生の目的が大きいほど、アロスタティック負荷(慢性的なストレスによる身体の消耗)のレベルが低いことが予測されました。アロスタティック負荷は、神経内分泌系や循環器系、免疫系、代謝系に関連するバイオマーカー(生理学的指標)を分析する尿検査と血液検査によって測定されます。

この研究は、心の中に生きるための強い理由を持つことが、身体にポジティブな生物学的利益を長期的にもたらすことを決定的に示した、最初の研究の一つであるという点でユニークなものです。

■長期的な願望や日常の喜びが原動力に

劇的寛解を経験した人たちは、生きる強い理由を見つけるための万能なアプローチはないことを教えてくれます。ある人は目標志向タイプで、未来を重視し続けることを好みます。ある人は目標をストレスに感じ、その代わりに毎日の新たな喜びを大事にします。

自己愛やセルフケア、そして幸福感を高めることの重要性の高まりから、私たちはこの治癒要因を探求する新しい方法が爆発的に増えているのを目の当たりにしています。

1981年~90年代半ば頃までに生まれたミレニアル世代は、日常生活に幸福感を、仕事に意味を見出したいと考えていると言われています。しかし、このトレンドはもっと広範囲におよんでいるのかもしれません。おそらく社会全体が、働きすぎ、予定を詰め込みすぎ、スマホなどの画面を見すぎることは、じつは充実した人生にはつながらないということに、ようやく気づいたのかもしれません。

目標を重視する劇的寛解者たちは、治癒への旅を続けるために(そして血液や酸素、気の流れを強くするために)長期的な願望を持つことを好みます。たとえばあなたも死ぬ前に、娘の結婚式でバージンロードを歩きたい、ずっと書きたかった小説を書き上げたい、初孫の誕生に立ち会いたい、あと50カ国を旅したいと思っているかもしれません。

治癒への旅で長期的な目標を重要視した劇的寛解者の一人が、シンディ・ハンドラーです。彼女は2015年に、44歳でグレードIIIの未分化軟部肉腫という悪性の髄膜腫瘍と診断されました。シンディはこう振り返ります。

「命にかかわるような診断や、その後のショックと恐怖に備える方法なんて、実際にはありません。私の脳腫瘍が発見されたのは、新学期がはじまって3週間目のことで、娘たちが14歳、10歳、7歳のときでした。

また、私たちははじめての家を購入したばかりで、海のそばに住むという夢を実現するために、忙しく暮らしていました。私たち家族に起こるすべての大きな転機を想像したときに、娘たちが私の扶養とアドバイスをどれほど深く必要としているか。

家族は、私が毎日目覚め、人生を積極的に変えていく原動力となりました。ここで子どもたちが成長していくのを見守るために必要なことは何でもするつもりでした」

脳の外科手術や10の劇的寛解要因を含む、従来の医療と統合医療の最良の部分を組み合わせることで、シンディは途方もない困難を克服し、5年経っても病気の痕跡はありません。治癒の旅は彼女に新たな生きる理由を与え、現在では、生命を脅かす病気を患っている人々が、心と身体のつながりやライフスタイルの変化を通じて、本来持っている幸福感を再発見できるように指導しています。

シンディはまた、ラディカル・リミッション・ワークショップの公認インストラクターでもあります。彼女と彼女の夫は最近、長女を大学1年生に送り出すという大きな節目を迎えました。

シンディのような劇的寛解者の中には、長期的な目標に向かう人もいれば、未来志向の希望から遠ざかり日常生活の喜びを再発見しようとする人もいます。こうした劇的寛解者の生きる理由は、日々の生活を改善することにあり、たとえば朝日や夕日を見たり、自然の中を散歩したり、友人や家族と充実した時間を過ごすなどです。

がんの女性とその子供たち
写真=iStock.com/Roberto Jimenez
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Roberto Jimenez

■余命1年と宣告されてから寛解したワケ

劇的寛解者の一人で、日常に喜びを見出すことに集中したのがケイトです。

コロラド州の田舎町で夫と暮らしていたケイトは、2009年にステージ3Cの進行性の卵巣がんと診断されました。人里離れた場所に住み、子どもを産まないという決断をしていたため、ケイトは治療中に孤立し、孤独であることに気づきました。そんな中、愛犬のジャスパーが思いがけない支えとなり、気づきの源となってくれました。

「ジャスパーは闘病中、片時も私のそばを離れませんでした。ある日、ソファの上に座りながら、それまでの人生がなんだか大変だったことに気づいたんです。私は自分自身に問いかけました。これって価値があること?

本当にこれをやりたいのだろうか、と。『生きたくない』と決めれば、身体はそれに従うだろうと気がついたんです。それから私は、ジャスパーを見ました。彼女は、私の頭の中で起こっているこの会話が聞こえているかのように私を見ていました。そして私は思いました。『心配しないで、私はあなたを置き去りにしないわ』。

それから、元気になったら何をしたいか、ということに目を向けはじめました。――犬や馬と一緒に山に登ったり、森でキャンプをすることを夢見るようになったんです。今がどんなに悲惨な状況であるかは考えませんでした。この状況を乗り越えたら、何を楽しみにしようかと考えたのです」

多くの劇的寛解者と同様に、ケイトも治療の不安や死の可能性についてくよくよ考えるのではなく、自分自身の生きる理由に目を向ける決断を下しました。この戦略によって、彼女は従来の医療(手術と化学療法)と劇的寛解の10の治癒要因の両方を用いた治療を乗り切ることができたのです。医師から余命1年と宣告されたにもかかわらず、10年以上経った今も元気で、夫や犬たちと自然に囲まれた、幸せな日々の生活を楽しんでいます。

■遊びで自分の内なる子ども心を取り戻す

劇的寛解者が、将来の目標であれ日々の楽しみであれ、生きる理由を見つける方法の一つが、遊びをすることです。遊びは子どもだけのものではなく、大人にとってもリラックスや刺激、健康の源として認められています。

大人の遊びは、仕事や責任、病気のことさえも忘れて、忙しい現代社会に欠けている、かたちにとらわれない創造的な時間を脳に与えてくれるものです。遊びの時間はストレスを軽減し、人とのつながりを感じ、創造性を高めることで、より健康な免疫システムをつくり出します。

子どもの頃のように思い切り遊ぶことでポジティブな感情が高まり、日々の喜びが強い生きがいになるかもしれません。そして、あなたの身体は、遊びから多くの生理的・心理的なメリットを得るでしょう。

大人の遊びのトレンドは世界的に広がっており、がん患者が治療の一環として遊びを取り入れやすくなりました。たとえば、大人の塗り絵はつねにベストセラーの上位にあり、多くのがんセンターでは、化学療法室の中に塗り絵を置いています。塗り絵は想像的な表現の場を提供し、ストレスを軽減し、不確かな未来を心配するのではなく、今を生きる能力を高めてくれるのです。

さらに、大人向けのボードゲームやゲームナイトの人気も高まっています。昔ながらのボードゲームやポーカーのようなカードゲーム、脱出ゲームなどの新しい趣向を凝らしたゲームナイトは、笑いの筋肉を鍛えるだけでなく、社会的なつながりを増やすのにも役立ちます。

大人のアートやクラフトは、一人でもグループでも楽しめます。

たとえば、欧米で人気のペイント&シップというグループレッスンでは、ワイン(またはコンブチャ)を持参して友人たちと一緒に地元のアートスタジオに行き、プロのアーティストの指導のもと、キャンバスに同じ絵を描いていきます。絵を描くだけではありません。木製の看板やステンドグラス、フラワーアレンジメント、手づくりのお寿司など、テーマを求めてつくる夜もあります。

さらに、地域のコミュニティセンターでは、ドッジボールやジップライン、自然ハイキング、タレントショーなど、大人向けの遊びのアクティビティが開催されています。一部のリゾート地やサマーキャンプでは、このような大人の遊びのトレンドに注目し、大人や家族向けのサマーキャンプを開催しているところもあります。

ケリー・ターナー『がんが自然に治る10の習慣』(プレジデント社)
ケリー・ターナー『がんが自然に治る10の習慣』(プレジデント社)

遊び心を育てたり思い出したりするのに、遅すぎるということはありません。子どもの頃は本来、遊び好きで、他人の反応や「もっと大事なこと」を気にすることはなかったでしょう。

笑いは文字どおり身体にとって薬になります。遊び心を持つことで、ポジティブなエンドルフィンが分泌され、日常の喜びを再発見し、自分の生きがいさえもわかるようになるかもしれません。かたちにとらわれない遊びをする時間を定期的に確保することで、自分の内なる子ども心を取り戻すことができます。

多くの劇的寛解者にとって、遊びや穏やかな感謝の気持ちを通して、一瞬一瞬を最大限に楽しむことを学ぶことが生きる強い理由になったのです。

----------

ケリー・ターナー(けりー・たーなー)
がん研究者
腫瘍内科学領域の研究者。ハーバード大学で学士号、カリフォルニア大学バークレー校で博士号を取得。過去15 年にわたり10 カ国で研究をおこない、1500以上の劇的寛解の症例を分析してきた。著書『Radical Remission』はニューヨーク・タイムズ紙でベストセラーとなり、現在22 カ国語に翻訳されている。RadicalRemission.com のRadical Remission Project の創設者であり、患者やその愛する人のために、コースやワークショップ、治癒の物語の無料データベースを提供している。また、劇的寛解に関する科学的研究を促進することを使命とする非営利団体、ラディカル・リミッション財団の創設者でもある。

----------

(がん研究者 ケリー・ターナー)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください