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小5の息子が「うっせえなあ、クソババア!」と逆ギレ…わが子を「キレやすい子」にした母親の"3つの口癖"

プレジデントオンライン / 2023年10月11日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Thai Liang Lim

わが子はどんな声をかけて育てるべきなのか。文教大学教育学部の成田奈緒子教授と公認心理師の上岡勇二さんの共著『その「一言」が子どもの脳をダメにする』(SB新書)から、声かけのポイントを紹介する――。

■子どもに「ちゃんとしなさい」と言ってはいけない

どう片づければいいの? コウタ(小5)
いつも部屋を散らかし放題のコウタ。机の上は何が置かれているのかわからない状態、漫画を読んだら床に出しっぱなし……。「ちゃんと片づけなさい!」と叱るのが母親の日課になっています。叱られると少しは片づけるのですが、母親の考える整理整頓には程遠い状態です。
そんなある日、いつものように、片づけをしないコウタを叱ると――。
「うっせえなあ、クソババア!」
コウタは、勢いよく本を壁に投げつけ、壁に穴を開けてしまいました。
母親は驚きのあまりその場に立ち尽くしています。

「ちゃんと宿題をやりなさい!」
「ちゃんとした格好をしなさい!」
「ちゃんと挨拶をしなさい!」

子どもに注意をするとき、「ちゃんと」という言葉を使っている親御さんがとても多いように感じます。「ちゃんと」「きちんと」「しっかり」などは、そのときの状況によって定義の変わる「あいまい言葉」です。この言葉を使うことによって、子どもの脳は不安になり、混乱し、脳の成長が阻害されてしまいます。

「ちゃんと」などの「あいまい言葉」が判断できるようになるのは、大人になってからです。前頭葉は、論理的な思考をする、行動のために計画を作る、自己を客観化するなどの「高次脳機能」と呼ばれるさまざまな機能をつかさどります。

大人は前頭葉がすでに十分に発達しているために、「あいまい言葉」にあたる内容を、前頭葉を使いながら状況に合わせて理解することができます。しかし、小学生の前頭葉はまだ発展途上です。大人のように、「あいまい言葉」を状況に合わせて判断し、行動するのはとても難しいことです。

■「あいまい言葉」は脳の成長を阻害する

コウタは、発展途上にある前頭葉を使って、自分なりに「ちゃんと」片づけているつもりだったのでしょう。しかし、母親に毎回ダメ出しをされて、すっかり自信をなくしてしまいました。そのような状態が長く続くと、親に反抗するようになってしまうケースは決して珍しくありません。

ほかにも、私たちのもとを訪れる親御さんの中には、こんなケースがありました。子どもが玄関先にランドセルを置きっぱなしにしていたので、「ちゃんと片づけなさい」と注意したら、今度はリビングにポンと置いたというのです。

ランドセルを背負った小学生
写真=iStock.com/Milatas
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Milatas

これもコウタのケースと同じで、親は「子ども部屋」に片づけるのが「ちゃんと」だと思っていますが、子どもは「リビング」が「ちゃんと」した場所だと思ったのでしょう。しかし、親御さんはそのことがわからず、さらに、「何でちゃんと片づけないの!」と子どもを追い詰めてしまいました。

「ちゃんと」という言葉でどれだけ注意しても、子どもは何をしていいかわからず、混乱していくばかりです。このようなディスコミュニケーションを続けると、親子の関係性はどんどん悪化してしまうでしょう。

■言葉がけは「ロジカルに」「フルセンテンスで」が基本

親は、わが子が幼いうちは「あいまい言葉」を使うべきではありません。そのことをする必要性などがしっかりと理解できるように、「ロジカルに」「フルセンテンスで」教えてあげましょう。

たとえば、部屋の床に漫画が散乱していたなら、「漫画を読み終わったら本棚の元の場所に戻そうね。そうすると次に読むときに見つけやすいよ」などと説明してあげましょう。どのように片づけるのか、なぜ片づけるのかがわかれば、言われた子どもは混乱せずに済みます。

「ロジカルに」「フルセンテンスで」言葉をかけることは、前頭葉の発達にも役立ちます。前頭葉は、物事を筋道立てて考えていく、思考するための脳です。「おりこうさんの脳」(大脳新皮質)に論理的な言葉をたくさん入れてあげることで、前頭葉への神経回路が構築されやすくなります。脳がどれだけ豊かに育つかは、親からよい言葉をどれだけ多く与えられるかにかかっています。

■自分の力で乗り越えていくための知恵を授けよう

「ロジカルに」「フルセンテンスで」の言葉がけは、幼児の頃から始めても早過ぎることはありません。

たとえば、子どもが擦り傷を作ったときには、「痛いの痛いの飛んでけ~」と言うのではなく、「これぐらいの傷なら消毒液を塗って、絆創膏を貼っておけば3日で治るよ」などと具体的な対処方法を教えてあげましょう。

そして3日後、「きれいに治ったね」と傷の治りを確認してあげます。そうすることで、また同じようなけがをしたときに、「これくらいなら大丈夫。消毒液を塗って絆創膏を貼っておこう」と自分で判断ができるようになります。

また、出かけるときには、「もうすぐ出かけるよ」とあいまいに伝えるのではなく、「10時5分のバスに乗るから、9時50分に家を出るよ」と伝えましょう。自分で考えて準備をする力を養うことができます。

このように、親が子どもに対して「ロジカルに」「フルセンテンスで」言葉を伝えることは、自分の力で困難な状況を乗り越えていくための知恵を子どもの脳に蓄積させていくことなのです。

■子どもは親に「うぜえ」と言いたいわけではない

「うぜえ」「別に」「関係ないし」など、ロジカルやフルセンテンスにはほど遠い言葉を発する子どもたちをよく見かけます。彼らあるいは彼女らは、相手と話したくないからそのような言葉を使っているのではありません。ボキャブラリーが乏しいためにフルセンテンスで話せないという場合がほとんどです。

「おりこうさんの脳」にボキャブラリーの蓄積がないと、相手に物事をうまく伝えることができません。さらに、前頭葉と間脳・脳幹をつなげる神経回路「こころの脳」も構築されていないので、ロジカルにフルセンテンスで伝えられないのです。

伝える言葉を持てないことは、子どもから自信を奪うことです。ひいては、社会で自立する力をも奪ってしまうことになりかねません。

親から発せられる「言葉」は、子どもの脳の発育に大きな影響を与えます。子どもは、脳が完成する18歳までの時間の大半を、家庭で親とともに過ごすからです。毎日の家庭生活の中で、何度も繰り返される「言葉」のやりとりは、子どもの脳育てにとても重要です。

無自覚に言葉を発するのではなく、常に意識的に言葉を選び、「ロジカルに」「フルセンテンスで」を心がけましょう。

家族
写真=iStock.com/kohei_hara
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kohei_hara

■干渉は×、不干渉は○…部屋を片付けない子どもへの対処法

ところで、コウタのお母さんのように、子どもが「部屋を片づけない」ことを悩んでいる親御さんを多くお見受けします。

私たちが提唱する「ペアレンティング・トレーニング」では、「親子がお互いを尊重して協力し合う体制を作る」こと、あくまで家族が共同生活をすることに重きを置いています。つまり、家族の共同生活が円滑ならばそれでいいので、子どもだけが使う子ども部屋が散らかっていることに大きな問題はない、ということになります。

私たちは、部屋の片づけをしていないことで無駄に子どもを叱り飛ばすよりも、いっそのこと、子ども部屋を「治外法権」にすることをおすすめします。「治外法権」というのは、文字通り、親は部屋がどんなに散らかっていようと一切干渉しない、子どもにその采配を任せるということです。

また、「子ども部屋の掃除」という名目で、スマホや個人的な手紙などを勝手に見る親がいますが、これもNGです。治外法権エリアを作るということは、子どもに対する「心配/信頼」の、信頼の割合を増やすことでもあります。

■「子ども部屋廃止」のすすめ

「子育て科学アクシス」で学ばれている親御さんの中には、子ども部屋を廃止されたという方もいらっしゃいます。私たちの「家族で共同生活をすることに重きを置く」という考え方からすると、むしろ子ども部屋そのものがない方が好ましいだろうと判断したからです。

その親御さんは、子ども部屋を廃止して、その場所に、父親・母親・子どもそれぞれの机と本棚を置くことにしました。その上で、それぞれの机と本棚は「治外法権エリア」なので、どれだけ散らかっていても文句は言わない。

しかし、それ以外の床やごみ箱、小さなテーブルは共有スペースなのでしっかりと片づけるというルールを作りました。さらに、母親や父親の机や本棚に子どもの物が散らかっていた場合は、それが生活を妨害するなら容赦なく捨てるということにもしました。

成田奈緒子、上岡勇二『その「一言」が子どもの脳をダメにする』(SB新書)
成田奈緒子、上岡勇二『その「一言」が子どもの脳をダメにする』(SB新書)

これは逆に言えば、子どもの机の上の物は、ほかの家族は一切触らないということでもあります。この方法なら、何でもかんでも片づけなければならないわけではないので、子どもにストレスがたまりません。「共同生活のための最低限の片づけ」が、子どもに無理なく身についていったそうです。

ちなみに、その親御さんのお子さんは、自分の机の上に、平気でスマホなど何でも置きっぱなしにしているそう。治外法権エリアを、親が絶対に見ない、触らないとわかっているからです。

あけっぴろげなようでいて、快適な生活と各自のプライバシーはお互いに尊重できる。それが私たちの提唱する「正しい家庭生活」なのです。

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成田 奈緒子(なりた・なおこ)
文教大学教育学部 教授、「子育て科学アクシス」代表
小児科医・医学博士。公認心理師。子育て科学アクシス代表・文教大学教育学部教授。1987年神戸大学卒業後、米国セントルイスワシントン大学医学部や筑波大学基礎医学系で分子生物学・発生学・解剖学・脳科学の研究を行う。2005年より現職。臨床医、研究者としての活動も続けながら、医療、心理、教育、福祉を融合した新しい子育て理論を展開している。著書に『「発達障害」と間違われる子どもたち』(青春出版社)、『高学歴親という病』(講談社)、『山中教授、同級生の小児脳科学者と子育てを語る』(共著、講談社)、『子どもにいいこと大全』(主婦の友社)など多数。

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上岡 勇二(かみおか・ゆうじ)
公認心理師・臨床心理士・子育て科学アクシススタッフ
公認心理師・臨床心理士・子育て科学アクシススタッフ。1999年、茨城大学大学院教育学研究科を修了した後、適応指導教室・児童相談所・病弱特別支援学校院内学級に勤務し、子ども達の社会性をはぐくむ実践的な支援に力を注ぐ。また、茨城県発達障害者支援センターにおいて成人の発達障害当事者や保護者を含めた家族支援に携わる。2014年より現職。

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(文教大学教育学部 教授、「子育て科学アクシス」代表 成田 奈緒子、公認心理師・臨床心理士・子育て科学アクシススタッフ 上岡 勇二)

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