そして中1の娘は自室にこもるようになった…父親が言い放った「中学生女子に絶対NG」のフレーズとは
プレジデントオンライン / 2023年10月12日 13時15分
■LINEの否定が親子の溝を作り出す
家に帰ってきてから、暇があればLINEをしているマユ。夕食の後、みんなでテレビを見るのが家族のルーティンなのですが、そのときも頻繁にLINEをするようになりました。
それを快く思っていないのが父親。マユがスマホを触り始めると、「いつまでLINEなんかやっているんだ!」と必ずやめさせます。
最近、夕食の後にマユは自分の部屋にこもるようになってしまいました。部屋にこもって、友達とLINEをしています。いつしか、家族揃ってテレビを見る時間はなくなってしまいました。
「いつまでLINEなんかやっているんだ!」――この「なんか」は、子どもの価値観を「くだらないもの」として否定する言葉です。
このような親のコミュニケーションは、「お前はダメな人間だ」というメッセージを伝えているのと一緒で、脳育ての観点からはNGです。こうして否定され、不安が高まると、マユのように自分の部屋にこもりがちになり、親子団らんの時間が失われることにもつながる場合があります。
■「誰とLINEしてるの?」と聞いて会話の糸口を作る
これからも新しいデジタルメディアはどんどん登場するでしょう。そして、その評価は目まぐるしく変わります。「新しいものは、よくわからないもの」と受け取られやすく、警戒されがちです。
マユの父親は、自分の慣れ親しんできたものとは異なる「新しいもの」に接したため、頭ごなしに否定から入ってしまったのでしょう。大切なのは、親自身が「自分は新しい文化を評価できるほど確かな目を持っているわけではない」と、しっかり自覚することです。
LINEは、今や多くの人にとって欠かせないメッセージアプリです。使い方さえ誤らなければ、私たちの生活をより便利に、快適にしてくれるものです。
「LINEなんか」と見下して切り捨てるのではなく、「誰とLINEしてるの?」と聞いてみましょう。「学校の友達だよ」などといった答えが返ってくるはずです。こうした何気ない一言が、親子のコミュニケーションの糸口になります。
■10歳くらいまでは親がスマホを管理する
タブレットやスマホなどのデジタルデバイスは、今や子どもたちの生活と切り離せないものになっています。知識や情報を手軽に収集する手段として、子どもたちにとって理想的な学習ツールであることは事実。「与えない」という選択をするのは、今の時代にそぐわないでしょう。
とはいえ、前頭葉が未発達の子どもにとって、「もっと見たい!」という欲求を自制するのは難しいことです。10歳くらいになるまでの間は、親が使用時間やアプリへのアクセスを制限して、管理する必要があります。
前頭葉がしっかり育つと、たとえば、「いつまでもスマホで漫画を読んでいたいけれど、明日も学校があるから、これくらいでやめよう」と判断をし、スマホを消して寝ることができるようになります。中学生くらいを目標に、自律的な脳を育てていきましょう。
最初の段階では、親が使用時間を決めて、時間になったらスマホを預かるようにします。前頭葉が育ってきたら、次は子どもと話し合って、使用時間を決めさせて自身で管理をさせることにしましょう。
たとえば、「20時以降はスマホを見ない」と子どもが決めたとします。スマホは「魔法の玉手箱」のようなものですから、魅力にあらがえず、20時以降も見てしまうことがあるでしょう。このような場合は、「今20時半になったけど、今度はどう作戦を考える?」とだけ声をかけ、子どもが自律的に使えるようになるまで見守っていきましょう。
■「スマホを取り上げる」は親への不信感を増やすだけ
子どもが自分から「目につくところにあると触ってしまって全然勉強が進まないし、お母さん、預かってくれる?」と言ってきたら、自律性が芽生えたサインです。「どうやったらスマホを見なくなるか」について前頭葉を使って考え、親に預けることを選んだということです。
これは同時に、「自己肯定感」の高まりを示すサインともいえます。自己肯定感は、他者との関係性の中で育まれていくものです。それはまさに、子どもが親を信頼する、親が子どもを信頼する、という関係性の中で作られていきます。
つまり、子どもが「お母さんが僕のことを信頼して任せてくれているのだから、スマホの管理は自分でしっかりやらないと!」と思うことも、自律性と自己肯定感の表れといえるわけです。
「うちの子は10歳を過ぎているのに、スマホを自分で全くコントロールできない」と心配になる親御さんがいるかもしれません。ここで、わが子がいつまでも自己管理できないからと焦って、「スマホを取り上げる」のは、親に対する不信感を増長させるだけなので禁物です。
子どもから自律性を引き出せるように「対話」を試みてください。少しでも成長が見られたらすかさず、「認める」言葉をかけましょう。スマホとの適切な距離感は、大人でも保つのが難しいほどのものです。失敗を重ねながら、子どもが自分で管理できるようになることを信じて見守っていきましょう。
■ボーッとしているのは「創造的思考」の最中
塾と英会話教室に通い始めたリク。課題がいっぱいあるはずなのに、家に帰ってきても、何もしないでボーッとしていることがよくあります。母親はそんなリクが心配で、「ボーッとしてる暇があったら、勉強しなさい!」といつも叱ってしまいます。
半年後――。今も塾と英会話教室に通ってはいるのですが、一向に成績がよくなる気配がありません。「お金をかけて、せっかく評判のいいところに行かせているのに。もっと頑張りなさい!」とリクはいつも叱られてばかりいます。
子どもが何もしないで「ボーッ」としていると、なぜか不安を感じる親御さんが多いようです。「そんな暇があったら、勉強しなさい!」は、そんなときにかけてしまう言葉です。
子どもがボーッとしている間にも、前頭葉は非常に活発に働いていることが、脳科学的に証明されています。これは「デフォルト・モード・ネットワーク」と呼ばれるもので、今まで蓄積した情報や記憶を前頭葉で交錯させつつ創造的なことを考え出そうとしているのです。
子どもがボーッとしていたら、前頭葉を一生懸命働かせているサイン。特に目安はありませんが、少なくとも30分くらいはそのままにさせてあげましょう。
■習い事ばかりで成績が伸び悩むケースも
ボーッとした後に、子どもが「お母さん、あのさ、めっちゃいいこと思いついたんだけど!」などと言葉を発することがあります。まさに「デフォルト・モード・ネットワーク」が機能して、創造的なことを思いついた瞬間です。そういうときは、「なになに?」と話を聞いてあげましょう。
ボーッとさせてもらえないリクは、毎日、一生懸命に頑張っているのに、塾の成績は上がりませんし、英会話も上達する気配がありません。これは、「デフォルト・モード・ネットワーク」を働かせることができないため、前頭葉が育ちにくいからです。
また、塾と英会話教室の課題をこなさなければならないために、慢性的な睡眠不足に陥っている可能性もあります。
「からだの脳」(間脳・脳幹)が十分に育つためには、最低9時間の睡眠が必要です。リクのように、お稽古ばかりをしている子であればあるほど、案外、勉強もスポーツも成績が伸びないというのはよくあるケースです。
■脳には勉強以外の刺激が必要
脳を育てるというと、勉強のことだけに目が向きがちですが、前頭葉は、毎日同じ刺激を受けるより、多種多様な刺激を受けた方がよりよく育ちます。
「ボーッとしている暇があったら、勉強しなさい!」と言うよりは、30分くらいその様子を見守ってから、「どう? 一緒にゲームでもする?」と声をかけてみるのはいかがでしょう。
ゲームのいいところは、遊びを通じて子どもの得意、不得意が見えてくるということです。たとえば、トランプの神経衰弱をやらせたら、空間認知能力が高い子どもは親が太刀打ちできないほどの速さでカードを取ることができます。
ゲームで子どもの脳育てをするには、まずは、子どもに「やる気」になってもらわなければなりません。しかしときどき、「調子に乗せると面倒くさい」と言って、子どもを真剣に叩きのめす親御さんがいます。それでは「もうやりたくない」と、子どもにソッポを向かれてしまうでしょう。
大人である親は、子どもの分が悪過ぎるときには、場合によっては、手加減してあげるくらいの心の余裕を持ってゲームの相手をするのがいいでしょう。
■「語彙想起ゲーム」「しりとり」遊びで才能を伸ばす
言語を使った「語彙(ごい)想起ゲーム」や「しりとり」もおすすめです。
「語彙想起ゲーム」とは、たとえば「『ま』のつく言葉」と最初の文字を決めて、1分間にいくつの言葉を思いつけるかを競うものです。決まった文字で始まる言葉を思い出すには、側頭葉にある言語中枢にストックされている語彙から必要な言葉を選んで、前頭葉に運んでくる必要があります。
この能力は、適切な言葉を使って文章を構成する「論理思考」をするためにも必要です。このゲームは、医療現場でも認知症の検査のために使われています。
「しりとり」も、前頭葉の刺激になるゲームです。私たちの調査で、8歳の子どもの前頭葉の脳血流量を測定しながらしりとりを行ったところ、自分が答える番になると前頭葉への血流量が上がり、相手の番では下がることがわかりました。
脳を効率的に使うには、必要なときは前頭葉を活性化させ、必要ないときは休ませることが大切です。しりとりは、まさにその機能を鍛えることができるゲームだということがわかります。
さまざまな遊びを通じて、学校のモノサシでは測ることのできない才能を見つけてあげましょう。
■ゲーム、テレビでも子供の脳を育てることができる
ゲームだけではなく、家族で一緒に見るテレビも、使い方によっては子どもの脳を育てることができます。テレビを見ているだけのときには、前頭葉は働いていません。しかし、見た後に「どう思ったか」などを語り合うと、前頭葉は急激に活性化されます。
読書も一緒です。本を読んでいるときには前頭葉は使われていませんが、内容について親子で語り合うことで前頭葉が働き始めます。
子どもと共通の話題を持つために、子どもが好きな本を読んでみることをおすすめします。子ども向けの本は字が大きくて漢字も少ないので、大人ならあっという間に読めてしまいます。しかも、『かいけつゾロリ』『怪談レストラン』など、子どもの世界ではやっている本は大人が読んでも面白いものばかりです。「ちょっと、この本のダジャレ面白くない?」などと、子どもと共通の話題で盛り上がること請け合いです。
親子で一緒に映画や演劇に行ったり、アスレチックへ行ったりして体験を共有するのも脳育てにはいいことです。たとえば、子どもがタブレットでよく魚の映像を見ているなら、水族館へ連れて行って、実際に泳いでいる姿を見せてあげましょう。実際に水の中で泳いでいる三次元の魚を見ると、記憶が立体化されて定着するので、脳が大いに刺激されます。
■たくさんの「好き」が子供の可能性を広げる
親は「子どもの可能性を広げたい」という強い思いを持っているからこそ、熱心に勉強をさせたり習い事をさせたりしてしまいます。しかし、子どもの「将来」よりも、子どもが「今」興味を持っていることにもっと目を向けてほしいと思います。
将来の可能性に期待をするあまり、親は子どもの「好き」をすぐ将来の職業に結びつけてしまいがちです。親が自分の勝手な思いで期待を寄せることは、子どもにストレスを与えることにもつながります。
子どもの「好き」は、脳の刺激にもなりますが、純粋に、社会に出てからの癒しになるものです。ダンスをしたり、釣りをしたり、アイドルに夢中になったり……。「好きなもの」をたくさん持つことは、子どものこれからの人生を豊かにしてくれるでしょう。
将来を選ぶことは、子ども自身にしかできません。親にできることは、これからどれほど厳しいことに直面したとしても、自分を支えてくれるような「好き」の数を増やしてあげることなのではないでしょうか。
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文教大学教育学部 教授、「子育て科学アクシス」代表
小児科医・医学博士。公認心理師。子育て科学アクシス代表・文教大学教育学部教授。1987年神戸大学卒業後、米国セントルイスワシントン大学医学部や筑波大学基礎医学系で分子生物学・発生学・解剖学・脳科学の研究を行う。2005年より現職。臨床医、研究者としての活動も続けながら、医療、心理、教育、福祉を融合した新しい子育て理論を展開している。著書に『「発達障害」と間違われる子どもたち』(青春出版社)、『高学歴親という病』(講談社)、『山中教授、同級生の小児脳科学者と子育てを語る』(共著、講談社)、『子どもにいいこと大全』(主婦の友社)など多数。
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公認心理師・臨床心理士・子育て科学アクシススタッフ
公認心理師・臨床心理士・子育て科学アクシススタッフ。1999年、茨城大学大学院教育学研究科を修了した後、適応指導教室・児童相談所・病弱特別支援学校院内学級に勤務し、子ども達の社会性をはぐくむ実践的な支援に力を注ぐ。また、茨城県発達障害者支援センターにおいて成人の発達障害当事者や保護者を含めた家族支援に携わる。2014年より現職。
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(文教大学教育学部 教授、「子育て科学アクシス」代表 成田 奈緒子、公認心理師・臨床心理士・子育て科学アクシススタッフ 上岡 勇二)
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