「次はどんな写真を投稿しよう」に生活を支配される…SNS中毒になった元アナウンサーが自分を取り戻した方法
プレジデントオンライン / 2023年10月11日 10時15分
※本稿は、白崎あゆみ『「人と比べるくせ」を手放す 自分サイズの幸せを見つける5つの習慣』(KADOKAWA)を再編集したものです。
■私たちは無意識に人と比べてしまう
人は、他人と自分をどうしても比べてしまうものです。そして、悩みます。
背が低い、背が高い。きれいだ、きれいでない。そういう容姿のことから、学生時代なら成績を、習い事をすれば得意不得意を他人と比べてしまいます。就職して社会人になれば、給与や昇進スピードを、プライベートでは独身か結婚しているか。さらに子どもが欲しいと思って妊活を始めると、不妊治療のスピードを他の人と比べ、晴れて妊娠できたとしても、自分の子どもの成長スピードや成績を他の子どもと比べてしまいます。
私たちは、どんなときも、無意識に人と比べてしまいます。
人と比べてしまう理由の1つは、他人と違うと攻撃されたり、立場が弱くなったりするのではないかという恐れです。
小さい頃、みんなと同じ制服を着て同じようなランドセルを持ち、同じ行動をすることで安心できた記憶はありませんか。忘れていても、多くの人の潜在意識に残っています。
その記憶によって逆に「人と違うことをしたら危険な目に遭うのではないか」という一種の防衛本能から、人と違うことをしないために、人と比べてしまうのです。「自分を守りたい」、その気持ちが大きくなりすぎてしまうことで、何でもかんでも、人と比べてしまうのではないでしょうか。
■人と比べることで優越感や安心感を得られる
また、人と比べて自分の方が勝っていると感じると安心したり、優越感を得ることができます。これも傷つくことから「自分を守りたい」という気持ちから来ています。
私自身も、小さな頃からずっと人と比べて生きてきました。人と比べて「もっと人生を良くしたい」と思う悔しさを原動力にしてきたほどです。
悔しさを原動力にしてきたことが完全に間違っていたとは思っていません。悔しさにはとても力があり、そのおかげで人生で成し遂げてきたことはたくさんあります。
でも、前述したように、悔しさから手に入れた成果や立場によって感じられる幸せは一瞬のもの。一瞬、幸せを感じたら、すぐにまた別の何かを手に入れようとしたくなります。なぜなら、比べる対象は無限に現れるからです。
■他人と比較しすぎると「自分」がわからなくなる
こんなふうに人と比べて生きていると、本当に自分が欲しいものが何だったのか、よく分からなくなってしまいます。心から欲しいものなのか、それとも他人に勝ちたいから、ただ優越感を得たいから「欲しい」と勘違いしているだけなのか。
自分のやりたいことと他人のやりたいことの境界線が曖昧になり、よく考えずに、他人のやりたいことを「自分がやりたいこと」と思い込んでしまうケースもあります。このような「人と比べるくせ」は無意識に登場します。様々な局面で知らず知らずのうちに比べてしまっていることが多いのです。だから、なかなかやっかいです。
でも、それを手放せば、自分が本当に欲しいもの、やりたいことがはっきりします。自分が本当に欲しいもの、やりたいことなら、一瞬の幸せで終わりません。人の目も気にならなくなり、「これが自分の幸せだ~」という満たされた気持ちに浸れます。これこそが「自分サイズの幸せ」です。
■業績の高い企業の社員に共通する「自己認識の精度」
「自分が周りからどんな人間だと思われているか?」をよく理解していることは、生きていく上でとても大切なスキルです。
こんなデータがあります。アメリカの経営コンサルティング会社コーン・フェリー・インターナショナルがアメリカの上場企業486社の株式業績を調査したところ、業績の高い企業は業績の低い企業よりも「自己認識の精度が高い従業員が多い」傾向にあったそうです。
「自己認識の精度が高い」とは「自分が周りからどんな人間だと思われているか」を理解しているということです。企業の業績を左右してしまうほど、「自分が周りからどんな人間だと思われているか」を理解することは大切なのですね。
しかし、「他人にどう見られているか」を気にしすぎることで、他人と比べることに重きをおいてしまうこともまた事実です。「他人にどう思われているか」を理解しながら自分の言動を整えるようなポジティブな影響なら良いのですが、過剰に気にしすぎると弊害になります。
■「他人にどう見られているか」ばかり気にしていないか
最近は、自分の私生活や考えなどをSNSに気軽に投稿できる時代です。
私が独立した2016年頃はちょうどSNS起業の走りの時期で、私自身も1日に何度も投稿し、他の人の投稿にもコメントしていました。SNSを営業のツールとして使っていたので、仕事中も、プライベートでも、何をしていても、どこに行っても、「次はどの写真を投稿しようか」ということが頭から離れませんでした。
そんな生活を数年続けていると、1日の24時間全てが「他人に見られている」「他人に評価されている」という錯覚に陥りました。自分で会社を辞めることを決め、自分らしく自由な人生を手に入れるためにSNSを使って起業したのに、SNSという「他人の目」に振り回される毎日になってしまっていたのです。
全て自分の選択だったはずなのに、その自分の行為がいっそう周りの評価を気にする自分を作ってしまい、人の目を基準にしてしか何かを選択できない自分になっていました。私は「自分がどう見られているか」という周りの評価を気にしすぎてバランスを崩してしまいました。
■どんなに華やかな投稿も「一部分」でしかない
こういう状態は仕事でSNSを使う人以外でも思い当たる人がいるのではないでしょうか。これでは、周りに見せている自分とのバランスをとるどころか、24時間、周りに見せている自分で生きるようなものです。苦しくなって当然です。
「自分は投稿しないし見るだけだから」という人も、安心はできません。先日も、子育て中のクライアントさんが「SNSで見るママたちのキラキラした生活と自分を比べてしまう」と相談してくれました。
SNSでは、芸能人や有名人に限らず、いろんな人の私生活を垣間見ることができます。それをフォローしてチェックしている人も多いと思います。
他人のSNSを見ると、目に入るのは「仕事も充実、プライベートも完璧」な人ばかり……。しかし、その人たちにだって周りに見せていない自分があるはず。あなたと同じように人と比べて苦しんでいることもあるでしょう。
他人のある一部分を切り取った情報から「この人はこういう人なんだ」と思い込んでしまう気持ちも分かります。しかし、それは、たった1つの面を見ているのにすぎないのです。たとえば「今日はとても素晴らしい日だった」と投稿している人も、他の面では(たとえば家族の問題など)頭から離れないような問題を抱えているかもしれません。あるいは「営業は大好きで、得意です」と投稿している人も、本当はうまくいっていないのに虚栄心から言っていることもあるかもしれません。
こちら側から見えているのは、たった一部のことなのに、自分と他人のSNSを比べてしまい、自分を責めるのはやめましょう。自分には良いところがたくさんあるにもかかわらず、自分の良いところが見えなくなってしまい、うまく自分のことを自分で評価できなくなってしまいます。
週に一度はスマホを置いて活動する時間を作ることが、自分を取り戻す第一歩です。
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エグゼクティブコーチ
1981年生まれ。上智大学外国語学部卒業後、コンサルティング会社勤務を経て北陸放送でアナウンサーとして10年間勤務。その後コーチングを学び、現在は経営層へのエグゼクティブコーチングセッションや、企業や医療機関でキャリアデザイン研修、リーダー研修、マナー研修などを実施。著書に『子どもの自己肯定感が高まる天使の口ぐせ』(マキノ出版)などがある。
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(エグゼクティブコーチ 白崎 あゆみ)
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