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「右」と「左」の一画目はどれか…じつは「正しい書き順はこの世に存在しない」という衝撃的事実

プレジデントオンライン / 2023年10月7日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kumikomini

「左」と「右」とでは一画めは違う。左は横画が先で、右は左払いが先だ。他にも間違いやすい書き順の字は多いが、中学受験塾代表の矢野耕平さんは「実は絶対的に“正しい書き順(筆順)”など存在しない。1958年に文部省が出した筆順の手引きには『ここに取りあげなかった筆順についても、これを誤りとするものでもない』と書かれている」という――。

※本稿は、矢野耕平『わが子に「ヤバい」と言わせない 親の語彙力』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

■「書き順」の強制は時代遅れ?

「ウチの子、書き順がおかしいのが気になります」

これまで保護者から何度かこの手の相談を受けたことがあります。でも、子どもたちだけではなく、大人でも書き順を不得手にしている方が多いのではないでしょうか。

それでは、皆さんがどれだけ「正しい書き順(筆順)」を身につけているかを試してみましょう。次に挙げる漢字を書き順通りに一画ずつ増やしていきながら空欄を埋めていってください。すべて小学生が学ぶ基本的な漢字です。

【図表】問
出典=『わが子に「ヤバい」と言わせない 親の語彙力』(KADOKAWA)

いかがでしたか。「こんなの簡単だよ」という方がいる一方で、頭を悩ませてしまった方もいるだろうと思います。

それでは、「『正しい』とされている書き順(筆順)」を示します。

■「右」「希」「必」「飛」が間違いやすいが…

〈「正しい」とされている書き順(筆順)〉
【図表】「正しい」とされている書き順(筆順)
出典=『わが子に「ヤバい」と言わせない 親の語彙力』(KADOKAWA)

どれくらい合っていましたか。「え? この漢字ってこんな順序で書かなければならないんだ」と驚かれた方がいるかもしれませんね。なお、小学生の子どもたちを指導していると、⑤⑧⑨⑩で間違えてしまうケースが目立ちます。

ところで、中学入試の国語では「書き順(筆順)」がどれほど出題されるのでしょうか。

結論から申し上げると、「ほぼ出題されない」のです。正確に言えば、かつてはよく出題されていた書き順(筆順)が近年ほとんど見られなくなっています。

わたしはこの傾向を大変喜ばしいことと考えています。

お気づきの方がすでにいらっしゃるでしょうが、先ほどの問題の答えにあたる部分をわたしは「正解」と明記せず、「『正しい』とされている書き順(筆順)」と記載しています。どうしてでしょうか?

「『正しい』書き順(筆順)」などというのは実はこの世に存在していないからなのです。

現在「『正しい』とされている書き順(筆順)」は、1958年(昭和33)年に当時の文部省から出された「筆順指導の手びき」に盛り込まれています。これが書き順(筆順)の基準になっているのですね。書家の意見を参考にしたと言われています。

しかし、この手引きの中には「本書に示される筆順は、学習指導上に混乱を来(きた)さないようにとの配慮から定められたものであって、そのことは、ここに取りあげなかった筆順についても、これを誤りとするものでもなく、また否定しようとするものでもない」と書かれているのです。びっくりですね。

さらに、いまの子どもたちが使用している教科書には「漢字の筆順は、原則として一般に通用している常識的なものを記載している」といった旨のことが書かれています。先ほど、「筆順指導の手びき」に書家の意見が反映されていると申し上げましたが、楷書、行書、草書では、字形も筆順も変化するものですし、書道の流派によって筆順が異なる場合があるのです。

■絶対的に「『正しい』書き順(筆順)」など存在しない

繰り返しますが、絶対的に「『正しい』書き順(筆順)」など存在しないのです。

では、わが子の書き順(筆順)を親がチェックする必要がないかというと、それは違います。例外はいくつもあるでしょうが、「『正しい』とされている書き順(筆順)」を守って字を書いたほうが形として綺麗(きれい)な仕上がりになることが多いとわたしは考えます。

矢野耕平『わが子に「ヤバい」と言わせない 親の語彙力』(KADOKAWA)
矢野耕平『わが子に「ヤバい」と言わせない 親の語彙力』(KADOKAWA)

一方、わが子の書く漢字の形が整っているのであれば、多少の「オリジナル」の書き順(筆順)は認めてやってもよい気がします。

付言しますと、日本の小学校は近年国際化が進んでいます。わが子の同級生に中国籍の子がいませんか。ひょっとしたら、本書を手に取ってくださっている保護者が中国のご出身であることも十分考えられます。

日本・中国・台湾などは漢字文化圏ですが、実は国によって書き順(筆順)が異なるケースもあるのです。たとえば、先ほどの問題に登場した「必」という漢字ですが、日本では「ソ」から書き始めるのに対して、中国では「心」から書き始めるのが一般的です。わたしが中学入試で書き順(筆順)が出題されないのは喜ばしいと申し上げたのは、こういう理由もあるのです。

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矢野 耕平(やの・こうへい)
中学受験専門塾スタジオキャンパス代表
1973年生まれ。大手進学塾で十数年勤めた後にスタジオキャンパスを設立。東京・自由が丘と三田に校舎を展開。学童保育施設ABI-STAの特別顧問も務める。主な著書に『中学受験で子どもを伸ばす親ダメにする親』(ダイヤモンド社)、『13歳からのことば事典』(メイツ出版)、『女子御三家 桜蔭・女子学院・雙葉の秘密』(文春新書)、『LINEで子どもがバカになる「日本語」大崩壊』(講談社+α新書)、『旧名門校vs.新名門校』』(SB新書)など。

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(中学受験専門塾スタジオキャンパス代表 矢野 耕平)

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