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東京駅からは三鷹、登戸、川崎、船橋までが限界…首都直下地震での徒歩帰宅で覚悟するべきこと

プレジデントオンライン / 2023年10月11日 14時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/AzmanL

外出中に災害が起きたとき、無事に帰宅する方法はあるのか。元陸上自衛官のぱやぱやくんは「家まで20km以内であれば歩いて帰るという選択肢がある。体力に自信のある人でも、20km以上の距離は難しいと考えておいたほうがいい」という――。

※本稿は、ぱやぱやくん『「もう歩けない」からが始まり』(育鵬社)の一部を再編集したものです。

■懐中電灯よりヘッドライトのほうが楽

日常ではあまり使わないアイテムですが、災害時の備えとして、ヘッドライトとメッシュベストを持っておくことをおすすめします。

ヘッドライトは、夜間の避難や物品捜索に役立ちます。一般的な懐中電灯を使用すると、手がふさがってしまい、作業効率が下がります。ですが、ヘッドライトを使用すれば、両手が使えるようになり、手元が照らされ、ストレスなく作業することができます。夜間に避難するときも、自分の進む方向が常に照らされるので、懐中電灯のように手で進行方向を照らす必要がなくなり、気が楽になります。

メッシュベストは、ポケットがたくさんあるため、財布、スマホ、充電器、予備ライト、非常食、ホイッスルなどのアイテムを収納でき、すぐに取り出すこともできます。利便性を求めるのであれば、メッシュベストは機能的に優れているので1着は持っておくといいでしょう。

■東京駅から中野駅まで歩いて帰れるか

大震災が発生したときには、交通機関がストップし、徒歩で帰宅せざるをえない状況が発生することがあります。そのような状況下で、「よし、今日は歩いて帰ろう!」と何も計画せずに軽い気持ちで徒歩で帰宅することは危険です。無計画の軽い気持ちで帰るくらいなら、その場にとどまっていた方がマシだからです。

徒歩で無事に帰宅するには、事前の計画、準備、工夫が必要です。なぜかというと、帰宅時に2次災害を起こしてしまうことがあるからです。帰宅の途中に体力の限界で歩けなくなる、熱中症や低体温症で搬送される、などの2次災害を起こさないことが大切です。

そのためには、日ごろから、「自分が歩ける距離」を知っておくようにしましょう。内閣府防災情報によると、10km以内は全員完歩、10km以上からは帰宅困難者が発生し、20km以上は全員帰宅困難としています。

東京駅を起点にすると10km、20kmは次の駅が該当します。

◎10km=綾瀬駅、中野駅、下北沢駅、大井町、葛西駅
◎20km=新松戸駅、三鷹駅、登戸駅、川崎駅、船橋駅

ただし、これは直線距離での計測になるので、実際のルートではさらに距離が伸びます。

■「広くて大きい帰り道」を調べておく

マラソンや登山などが趣味で、日ごろから長距離を移動することに慣れている人は、「20km以上でも余裕だよ!」と思うかもしれません。ですが、震災後は路面状況の悪化、橋の崩壊、崖崩れなどが想定され、迂回(うかい)路で迷子になる可能性もあります。体力に自信がある人でも、20kmという距離を一つの目安にした方がいいでしょう。

いずれにしても、グーグルマップなどで一度、自宅と職場、自宅と学校など、日ごろの通勤・通学経路の距離を検索してみることおすすめします。

その際の注意ですが、GPSの出す最短経路には細い道が含まれていることがあります。細い道は、塀や家屋が崩れ落ちていたりして、通れなくなる可能性があります。また、都市部では、人が殺到して群衆事故を起こすことも想定されます。そうした事態を防ぐためにも、できるかぎり、広くて大きい道を通るようなルートを選定してください。

■歩き続けるためには靴擦れを回避する

徒歩帰宅に必要な事前準備の物品についてお伝えしましょう。

オフィスにスニーカーと替えの靴下を準備しよう

「なんとか徒歩で帰宅できそうだな……」と考えている人は、オフィスにスニーカーと替えの靴下を準備しておきましょう。理由は、靴擦れを防ぐためです。歩行中に靴擦れができるとマメができ、マメが破けてしまうと激痛で歩行困難になります。

スニーカーを履く人の足元
写真=iStock.com/Edy waluyo Nugroho
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Edy waluyo Nugroho

私も自衛隊時代にマメが潰れた経験がありますが、一歩一歩踏みしめるたびに、この世の終わりのような痛みで心が折れそうになりました。ですので、革靴やパンプスで歩いて帰ることはおすすめしません。

靴下は、登山用の厚手のものを2足準備しておくといいでしょう。1足目は出発時に履き替え、2足目は休憩時に履き替えてください。足の裏はよく発汗するので、汗で湿った靴下を履いていると、靴擦れの原因になるからです。

また、靴擦れになってしまったときのことも想定して、絆創膏なども準備しておくといいでしょう。

■スポドリとミネラルウォーターを1本ずつ

携行食を準備しよう

歩くとお腹が空きますし、疲れてくると気持ちが暗くなるので、携行食を準備しておくといいでしょう。

まず準備すべきは、塩分補給の携行食です。発汗すると身体からミネラルが抜け、神経や筋肉の機能低下につながります。塩タブレットや梅系のお菓子を常備しておきましょう。また、ゼリー、チョコレート、キャンディー、長期保存できるようかんなどを準備し、心が折れそうなときに食べると元気が出ます。甘味は心の栄養にもなるので、好きなものを選んでおきましょう。

飲み物を準備しよう

水分はあればあるほどいいですが、その分荷物が重くなり、体力が奪われます。被災時には、「災害時帰宅支援ステーション」などで補給を受けることができますので、準備する水分量は、最低限500mlのペットボトル2本ほどでも問題ないでしょう。

1本はスポーツドリンク、もう1本はミネラルウォーターが良いでしょう。ミネラルウォーターは傷口などを洗うことができ、スポーツドリンクよりも汎用性が高いからです。

手提げカバンではなく、リュックにしよう

普段、手提げカバンで通勤している人は、徒歩帰宅で長時間歩くとなると、腕への負担が大きくなり、体力を消耗します。

オフィスから徒歩で帰宅することを想定している人は、オフィスに災害用のリュックを準備することをおすすめします。腰ベルトがあるものだと、より負担が軽減されます。災害用のリュックに替えの靴下や携行食、飲み物はもちろん、ポンチョ、携帯ラジオ、コンパス、水筒、懐中電灯、いつもメガネをかけている人は予備のメガネ、スマホバッテリーなどの物品も準備して入れておくといいでしょう。

災害用のリュックと防災グッズ
写真=iStock.com/doble-d
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/doble-d

■自衛官でさえ猛暑日や雨天は心が折れる

次に体力を温存し、無事に帰宅できる方法についてお伝えします。

気候・天候を見極めよう

徒歩で長距離を移動するときには、気候・天候をよく見極めた方がいいでしょう。同じ10kmであっても、「15度前後の小春日和」と「30度を超える猛暑日」では強度がまったく異なります。気温が5度以下になると、帰宅中の休憩時に熱が奪われ、低体温症になる恐れがあります。

天気の変化にも注意する必要があります。雨天になると体温が奪われ、心も折れてきます。身体を鍛えている陸上自衛官でさえ、猛暑日や雨天に行軍をすると、脱落者が発生する確率が高まります。空模様が怪しければ帰宅しない方がいいでしょう。

■途中で眠ってしまうとデメリットだらけ

同じ道を歩く人を探そう

もし、職場に自宅と同じ方向に帰る人がいたら、一緒に帰りましょう。

アフリカのことわざに、「早く行きたければ、一人で進め。遠くまで行きたければ、みんなで進め」とあります。

仲間と話しながら帰ることで疲労が和らぎますし、「休憩中に荷物を見てもらえる」「いざと言うときに助けを呼んでもらえる」などの精神的な安心感につながります。

もし、同じ方向に帰る人がいない場合は、人通りが多い広い道を選んで歩いてください。連帯感を感じることができますし、近くに、「この人は信頼できそうだな」という人がいれば話しかけて一緒に帰るのもいいでしょう。

また、災害後は治安の悪化が予想されるため、人気のない裏道などを一人で歩くのは絶対に避けてください。

50分歩いたら10分休憩しよう

可能なかぎり、50分歩いて10分休憩するペースを維持してください。これは自衛隊の行軍の休憩ペースです。休憩時には靴を脱いで足を乾かす、服をゆるめて熱を発散させる、座ったときにリュックなどに足を上げて、むくみを解消したりしてください。

ただし、ここで眠くなっても、眠るのはできるかぎり避けてください。眠ると身体が冷え、筋肉が硬くなり、休憩明けに「だるい」と感じるようになるので注意してください。

■喉が渇いても水を飲み過ぎてはいけない

水分補給は大切ですが、1回に飲む量はコップ1杯程度、500mlの3分の1のライン、150~250mlを意識してください。

歩くと喉が渇き、500mlのペットボトルを一気飲みしたくなりますが、多量の水分を摂取しても身体が吸収できずに汗や尿として流れ出てしまいます。その際に体内のミネラルも失われるので、低ナトリウム血症になる可能性があります。失ったミネラルを補給するためには、塩タブレットや梅系のお菓子を食べるといいでしょう。

ぱやぱやくん『「もう歩けない」からが始まり』(育鵬社)
ぱやぱやくん『「もう歩けない」からが始まり』(育鵬社)

多量の水分を飲み、多量の汗をかくと想像以上に体力も奪われますので、水分については自制心を持って飲むように心がけてください。

また、空のペットボトルは捨てずに持っておきましょう。水道が生きていれば水分補充ができますし、水害が発生したときには、「浮き」としても役に立ちます。

被災時に徒歩帰宅をすることは、それなりにリスクがともなう行為です。自信がなければ、無理に帰らずに、オフィスや避難所にとどまることも賢い決断だと考えてください。

災害のときこそ、パニックにならず落ち着いて適時適切に判断することが、身を守るポイントです。

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ぱやぱやくん 元陸上自衛官
防衛大学校卒の元陸上自衛官。退職後は会社員を経て、現在はエッセイストとして活躍中。名前の由来は、自衛隊時代に教官からよく言われた「お前らはいつもぱやぱやして!」という叱咤激励に由来する。Twitter:@paya_paya_kun

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(元陸上自衛官 ぱやぱやくん)

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