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倒産直前の社長は、なぜかよく笑うようになる…行政書士が見た「本当に追い込まれた経営者」の特徴

プレジデントオンライン / 2023年10月12日 8時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/THEPALMER

経営がうまくいっていない会社には共通点がある。特定行政書士の横須賀輝尚さんは「社長の外見やメンタルに特徴が出る。例えば、本当に倒産間際の社長は落ち込むどころか笑っていることが多い」という――。

※本稿は、横須賀輝尚『プロが教える 潰れる会社のシグナル』(さくら舎)の一部を再編集したものです。

■末期の社長はあらゆる見た目と言動が変わる

さあ、ここからはもう危険度MAXです。危険度星2つのところでも「社長の表情が変わる」とお伝えしましたが、表情だけではなく、あらゆることに変化が出てきます。

例えば服装。

末期になれば、服装なんて気にしていられません。これまで糊の利いたシャツを着ていた社長の服装は、ヨレっとしてきます。髪型やその他の身だしなみも同じ。見た目って、本当に出るんです。これは服装のだらしなさというよりは、以前との変化です。これまでオシャレだった社長が、同じ服を着続けたりとかね。もともと同じ服を着るタイプの社長もいますけど、要は変化がポイントです。

ほかにも、飲みつぶれて二日酔いになることなんてなかった社長が、お酒に呑まれて会社にこない。家族を大事にしていた社長が家庭を顧みない言動をする。

あるいは毎日のように書いていたブログを更新しなくなる。SNSの投稿もしなくなる。仮に情報発信したとしても、いまの自分でも少しでも「いいね」がもらえるような過去の栄華に関する投稿だったり……こういう兆候も出てきます。

■SNSの投稿内容は深層心理を映し出す

SNSに関しては、TwitterなどのオープンなSNSよりはFacebookのような比較的クローズなSNSのほうに、深層心理が表れた投稿が出る傾向が強いと言えます。

普段Facebookに近況を投稿していた社長の投稿がだんだん減少し、以前のような投稿が少なくなった、というのは、危険なことを表すサインなのかもしれません。

加えて、この段階にくると温厚な社長でも「キレる」ことが出てきます。当然そうなれば社員やお客にも応援されなくなる。応援されなくなれば……まあ、そうなればここで解説しなくてももう末期だってわかりますよね。

ちなみに、性格が「良すぎる」社長も会社を潰してしまいがちです。自己犠牲、献身性といえば美しいのですが、経営はなんといってもお金。ある程度がめついくらいがちょうどよいのかもしれません。

■よくわからない迷信に頼りだす

パニック時や混乱期は、様々なことに手を出そうとする傾向があります。

私は占いなどの類を100%否定するわけではありません。中には一見占いのように見えても、数百年、数千年計測し続けた統計学をもとにしたものもありますし、実際にそういった学問によって業績を伸ばしている社長は存在しますし、そういう社長に会ったこともあります。

しかし、この末期間近の混乱期に新しくそういったものに手を出すのはやはり危険な証拠。税理士、コンサルタント依存の行く末が、この「よくわからないもの」頼りなのかもしれません。

同じく、否定するわけではなく適切に使えば価値のあるものだとは思いますが、そういった類のことを言わなかった社長が、「宇宙法則」「引き寄せ」「シンクロニシティ」などのワードを口にし始めたり、あるいは同じく突然「靴を磨くと運気が上がる」「感謝の気持ちを1日1000回唱えると成功する」とか言い出したら、やっぱりちょっともう終わりが見えてきている感じがしちゃいますよね。

■「近々大金が手に入る」は死亡フラグ

まあ、実際にこのドラマや映画のような「近々、大金が手に入るんだ……ニヤリ」みたいなセリフを言うような社長はいないと思いますが、近い趣旨のことを言う人もいます。

一万円札
写真=iStock.com/gyro
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/gyro

ひとつは個人の金策。

経営者仲間にお金を無心するようになったら末期です。

同じ社長ですから、当然負けてられないというプライドがあります。そういった「ライバル」でもある経営者仲間にお金を借りだしたらほぼアウトと言えるでしょう。

そのほか、大金系でいえば、まずは「借りる」ということになります。

これも借り先がヤバくなれば、当然危険度も上がります。あとは投資系の話。「○○が値上がりする」とか特に海外のよくわからん投資話で「お金が入る」は危険なシグナルだといっていいでしょう。

よく考えれば、大金を手に入れられる術を持っているのであれば、最初からそれをやればいいわけです。窮地になって、いままでとは別の方法で「お金が入る」ってやっぱりちょっとおかしいですよね。

■M&Aの情報を探し始める

社長ですから、それなりに会社の見通しは付きます。もしかしたら、割と早い段階で自分の会社に見切りをつけることもあるでしょう。

そのひとつの方法に、M&A。自社を売却するという選択があります。つまり、最後に自社を売却してその売却益で資産をつくり、再起に賭けようという考えです。

ですから、社長からM&Aとか会社を売るような話題が聞こえてくると、会社がマズい状況である可能性があるわけです。

ただ、実際問題としてはM&Aで会社が簡単に売れるかといえば、そうでもありません。傾きつつある会社なんて、基本的に誰も欲しがらないわけです。

末期になればなるほど、当然売れません。ですから、事業再生コンサルティングの世界などでも、実際は「身売り」っていう選択肢はあんまり選べないのが実情なんですね。

ほかにも、会社全体ではなくひとつの事業を切り取って売るという方法も考えられなくはありませんが、お金になる事業といえば、その会社の主要事業になるわけで、主要事業を失って上手く立て直すことができるのかといえば、やっぱりそんな簡単なことではないわけです。

■「城=自宅」を売ったらいよいよヤバい

社長が個人資産の売却を始めたら、いよいよ本当にお金がない証拠です。前述の司法書士や行政書士、弁護士の出入りも増えます。

不動産会社やよくわからない人たちが会社に出入りするようになります。絵画や彫刻のような美術品、個人の資産となるものはすべてお金に変えようとします。

ここまで来ると、必死なのはわかります。ポイントとしては、そのお金を何に使うのかということです。会社の立て直しのために使うのか? それとも、逃走資金に使うのか?

社長が個人資産にまで手を付けるということは、本当に最後です。

倒産の実態を見るとわかることなのですが、実際は「自宅」って売りたくない社長が多いんです。成功して手に入れた「城」ですからね。だから、最後までしがみつく。自宅だけはなんとか確保したい。でも、破産となれば取られちゃうんですが……。

不動産なので、事業規模によってはその売却益で会社を立て直す可能性も出てきます。でも、これがなかなか手放せないんです。

不動産を手放さないとなると、あとは車。そして美術品はなかなか売れない。そうなると、個人資産を売ったところで、会社を立て直す資金にはちょっと程遠いというわけです。

■倒産直前の社長は「笑っている」

基本的に、会社が潰れそうになれば社長の顔色は黒く、そして表情も暗い。だから、社長を見るだけで「この会社、ヤバそうだな……」って感じることができます。一方で、ある一線を超えると潰れそうな会社の社長は明るくなるのです。それも弾けたように。

2つの顔を持つ男
写真=iStock.com/Edwin Tan
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Edwin Tan

理由は簡単。もう諦めてどうでもよくなってしまったから。あるいは、夜逃げの準備ができて、あとは逃げるだけになったから。

前者は現実逃避。後者は昔の言い方で言うと「高飛び」ですね。目の前の負債、借金、給与の支払いから逃げられるとわかって、反動でハイになってしまうわけです。

例えば、ある税理士の話によれば、クライアントである顧問企業の社長が業績不振で倒産間近の憂き目にあっていた。どんな優秀な税理士でも、会社そのものが売上をつくれないのであれば、なかなか効果的なアドバイスもできません。

社長の顔色は優れず、借金の支払いに怯えていた。しかし、あるとき突然朗らかな表情に変わって、明らかにハイになっている。もちろん、業績は変わらずよくない。むしろ倒産のカウントダウンが始まっている。

そして、社長は突然いなくなったそうです。あとで関係者から話を聞くと、どうもそのハイになっていた時期は、会社に残っていた資金を個人的に入手し、どこか遠くの田舎に住居を確保し、あとは逃げるだけになっていたそうな……。

だから、暗くなっていた社長が、何の妙案も対策もないのに突然明るくなったら、最後の最後。しかし、突然ハイになるなんて、怖いシグナルですよね。

■最後は連絡が取れなくなる

これは説明するまでもないと思いますが、最後は社長と連絡が取れなくなります。突然取れなくなることもあれば、徐々に取れなくなることも。

後者の場合は、最初は銀行などからの連絡に対応するも、徐々に策がなくなり、電話に出ることが怖くなる。そして、だんだんと折り返しの電話もなくなり、会社に行っても社長がいない。そんな感じです。

社長がいなくなってしまえば、もうできることはほとんどありません。銀行は貸したお金は「不良債権」として諦めるしかありませんし、社員は自主退職するしかありません。

正直、お手上げです。社長のスマホや車にGPSでもついていれば、追跡できるかもしれませんが、事前にそんな対策をしている会社もないでしょうし、社長がいなくなり、まったく連絡が取れなくなったら、ジ・エンド。残念ながら、バッドエンディングです。

■法令遵守意識がない社長は超危険

ところで、これは説明するまでもなく当たり前のことなのですが、やはり法令遵守意識のない経営者は危険です。それも超危険。

危険度でいえば星3つでも4つでもいいのですが、法律違反をしたら一発アウトというのはよくあること。

脱税や助成金の不正受給に始まり、許認可の虚偽申請、残業代未払いの揉み消し、著作権や特許・商標などの知的財産権の侵害など、法律違反の例を挙げるとキリがありませんが、どんなに小さなことであっても違法は違法。

このあたりの意識がない社長は超危険です。言い訳もできないし、言い逃れもできないですからね。

■「倒産」は違法ではないが社長の人間性が出る

会社が倒産するときに、社長の人間性がハッキリ表れます。民事再生法などで再建できればいいですが、中小企業ともなれば、そのほとんどが清算、破産に向かいます。

社長としては、人生を賭けて興した会社が潰れてしまうわけですから、忸怩たる思い以上のものでしょう。

「人間性がハッキリ表れる」と言いましたが、これは二つの行動結果に分かれます。それは、「最後まで社長としての責任を取って、きちんと会社を終わらせる」というものと、「逃走」です。

「破産」のイメージは正直言って、あまりよくありません。「失敗した」「ダメ社長」「人様に迷惑をかけた」などなど、こういう負のイメージがまとわりつきます。

しかし、破産は違法なことではなく、法律で認められた制度です。

社員や取引先、顧客からは恨まれることもあるかもしれません。しかし、こうした厳しい声に耐えながらも、最後まで責任を果たし、破産手続きをきちんと進め、債務に関しても決着をつける。このように最後まで責任を取るタイプの社長もいます。

一方で、逃げてしまう社長もいます。

クレームや批判に耐えられない。破産者になりたくない。世の中が悪い。俺だけの責任じゃない。色々な考え方はありますが、最後は社長としての責任を果たすことなく、逃げてしまう。こういう社長もいます。

自ら命を……というよりはいいのかもしれませんが、結果として関係者は迷惑を被ります。

そして、この二つの結果は、普段の社長からはわからないものです。

よく、「人は追い詰められたときに本性が出る」とは言いますが、普段から人として尊敬され、ボランティアや寄付活動に熱心だった社長が、最後は失踪してしまったという例もありますし、その逆もあります。

普段は仕事振りもいい加減で、社長としてはどうなの? という社長でも、最後は根性見せて、借金までして社員になけなしの退職金を支払うということもあります。

横須賀輝尚『プロが教える 潰れる会社のシグナル』(さくら舎)
横須賀輝尚『プロが教える 潰れる会社のシグナル』(さくら舎)

だから、最後の最後までわからないのです。

そして、会社の最後はお伝えしているように、キレイな終わり方ばかりじゃありません。自死を選んでしまう社長もいるように、やはり社長という仕事は重責で、社員から見たらわからないような重圧と戦っているのかもしれませんね……。

ちなみに最後。星1つとも2つとも3つともいえるシグナル。それは、社長自身の「健康問題」です。

健康問題に関しては、未然に防げるものもそうでないものもありますが、少なくとも健康診断に何年も行っていない経営者なんかは、見えないシグナルを発信しているのかもしれません。このあたりにもご注意です。

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横須賀 輝尚(よこすか・てるひさ)
特定行政書士
1979年、埼玉県行田市生まれ。パワーコンテンツジャパン株式会社代表取締役。特定行政書士。専修大学法学部在学中に行政書士資格に合格。2003年、23歳で行政書士事務所を開設し、独立。2007年に士業向けの経営スクール「経営天才塾」(現:LEGALBACKS)をスタートさせ、創設以来、全国のべ1700人以上が参加。士業向けスクールとして事実上日本一の規模となる。著書に『小さな会社の逆転戦略 最強ブログ営業術』(技術評論社)、『資格起業家になる! 成功する「超高収益ビジネスモデル」のつくり方』(日本実業出版社)、『お母さん、明日からぼくの会社はなくなります』(角川フォレスタ)、『士業を極める技術』(日本能率協会マネジメントセンター)、『会社を救うプロ士業 会社を潰すダメ士業』(さくら舎)共著で『合同会社(LLC)設立&運営 完全ガイド はじめてでも最短距離で登記・変更ができる!』(技術評論社)などがある。

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(特定行政書士 横須賀 輝尚)

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