「肩身の狭さから解放されるための結婚をしたいか」39歳・馬渕磨理子が焦りを感じる女性に伝えたい唯一のこと
プレジデントオンライン / 2023年10月24日 11時15分
■今はまだパートナーを持たない
私は今のところ、パートナーは持たないと決めています。まだまだ仕事も勉強もたくさんしていきたいですし、時間はできる限りそのために使いたい。実際、今は24時間自分のことだけをしている状態なので、これではパートナーに失礼ですよね。そこから、今はパートナーは持たない、結婚もしないという考え方に至りました。
といっても非婚主義というわけではありません。漠然とですが、将来的には誰かと一緒に人生を歩むようになるかもしれないな、とは思っています。
私は30歳を過ぎてから、プレジデントオンラインでの連載の仕事を通して、初めて「自分」を主語にして意見を言ってもいいんだと知りました。プライベートでも自分の人生を歩めるようになったのはその頃からです。それまではずっと、両親にとってのいい娘として生きてきたように思います。
ようやく「自分」を生きられるようになってからまだ数年。今はまだ、自我に目覚めたばかりの子どもという感覚です。ですから、これからしばらくはようやく得た自我を満喫したいという思いが強いですね。
■20代後半の頃は結婚を焦っていた
実は、20代後半の頃はものすごく結婚を焦っていました。当時の私がいた環境では結婚に対する圧がかなり強くて、「結婚できない人は何か大きな欠点があるんじゃないか」というような雰囲気もありました。
会う人会う人から毎日のように「早く結婚したら?」、「子どもほしくないの?」などと言われていて、なかには「女として痛々しくなる前に何とかしたほうがいいよ」といった、心に突き刺さるような言葉もありました。
皆さん決して悪気があるわけではなく、むしろ思いやりを込めてアドバイスとして言ってくれていたのですが、私にとってはとてもつらかったですね。30代が近づくにつれて周りもどんどん結婚していき、未婚の自分は崖っぷちなんだ、孤独なんだという思いも募っていきました。
■本当に結婚したいのか
そこで、一度「私は結婚というものを本当にほしいのか」と真剣に考えてみたんです。周囲は結婚をいいものだ、皆がほしがるものだという前提で話しているけれど、私自身はどう思っているのかなと。その結果、「あんまりほしくないな」という本心の声に気づいてしまいました。
![馬渕磨理子さん](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/2/1/1200wm/img_21765f2530e2b14cba9d3b4095f76b72400321.jpg)
結婚すれば、周囲からとやかく言われたり肩身が狭かったりといったことからは解放されるでしょう。でも、そうした理由からの結婚は、自分は「いらない」と思っていることがはっきりわかったんです。そこに気づいてからは完全に吹っ切れました。
最近ではもう社会そのものが変わって、結婚しないと肩身が狭いというような雰囲気はかなり薄まっていますね。あの頃焦っていた自分に教えてあげたいです。
振り返ってみると、結婚に関して吹っ切れた時期は、連載を始めて自分の意見を書くようになった時期とぴったり重なっています。私は30代に入ってからようやく自分の本心に気づき、自分らしくいていいんだと思えるようになったのです。そこからは、仕事への取り組み方も人生への向き合い方も大きく変わりました。
■内容ではなく「女性」が付きまとうものはへこむ
また、今の社会では、結婚と同じように男女平等に関する意識も変わりつつあります。しかし完全に変わったとは言えず、まだまだ過渡期の段階だなと感じています。
たとえば、私は経済や金融関連の解説をするとき、日経平均や尊敬する先生方の考えをベースに王道の視点でお話ししています。
しかし、「女性アナリスト」という肩書が先走って、専門的な内容の方に耳を傾けてもらえない時期がありました。性別や年齢に対して、バイアスがかかるのも分かります。
でも伝えたい内容があって解説させていただいているのに、表面だけをなぞられる時期はとてもショックが大きかったです。
ですから、どうせなら、すべてをバネにしようと考えるようになりました。自分の言葉が足りなかったのかもしれない、もっと勉強しよう、成長の糧にしていこうと思うようにしたのです。
これを続けているうちに、思わぬ収穫がありました。声をかけてくださる、コメントのレベルが変わってきました。
表面的なことではなく、自分を深めるうえで役立つ言葉をたくさんいただけるようになってきたのです。本当にありがたいなと思います。
■女性だから優遇されることもある
今後も、性差別や年齢差別を感じてしまうことはあるでしょうし、そのたびにへこむでしょう。でも、それもバネになるのだからと前向きに捉えていくつもりです。
![馬渕磨理子さん](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/0/e/1200wm/img_0e1f160394863a2dd38a23943ead5e30406375.jpg)
逆に、今は女性だからという理由で優遇されるケースもあります。同じ分野に同じように優秀な男女がいたら、数のうえでの平等を果たすために女性を選ぶといったことですね。経営層に女性を増やそうということで、社外取締役に女性を据える企業も少なくありません。
私自身も、ある企業の社外取締役を務めています。女性優遇だ、不公平だと思っている人もいるでしょう。でも、だからこそちゃんと責務を果たしたい。「優遇されたんだろうけどあの人だったら仕方ない」と納得してもらえるだけの仕事をしたいと思っています。
今は自分が培ってきたものを出し尽くして、企業価値を高めるための提案をしているところです。どんな仕事もいただいた以上は精一杯やりたいからです。向かい風が吹くこともありますが、そんな状況も自分を高めるための糧になっています。
いつか経営層に女性がいることが普通の時代が来るように、自分にできることは何でもしていきたいですね。今の自分の行動が10年後の日本の男女平等のありかたを決めると言ったら大げさかもしれませんが、そんな思いを持って仕事に取り組んでいます。
■本当は何を大事にしたいのか
もし、かつての私と同じように結婚やキャリアに悩んでいる人がいたら、いったん立ち止まって「自分は本当は何を大事にしたいのか」を考えてみてほしいと思います。自分が所属するコミュニティー、たとえば家族や職場などが結婚や昇進を幸せとしているからといって、それが自分の本心と一致するとは限りません。
ですから、悩んだときは所属するコミュニティーといったん距離を置いて、「自分」を主語にして考えてみてほしいのです。自分は何に価値を置いているのか、どんな人生を歩みたいのか。そうした本心をわかったうえで進めば確信を持って歩んでいけますし、後で後悔もしないのではないかと思います。
■真の自立は自分で選択することから
これは、のちのち人のせいにしないためでもあります。
![馬渕磨理子『収入10倍アップ超速仕事術』(PHP研究所)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/e/8/1200wm/img_e8a9956ff5f9f74e6c582a5b3b0c3cdb261220.jpg)
自分の本心を置き去りにしたまま、親や上司、パートナーに言われたからという理由で歩み続けると、後で失敗したり後悔したりしたときに不満を抱えることになりがちです。でも、「自分で決めたことだから」と思えれば、誰を恨むこともなく自ら軌道修正していけるのではないでしょうか。
たとえば服を選ぶのでも、パートナーに喜んでもらうために選んだら、相手が喜ばなかったとき不満に思うことでしょう。それは、自分の幸せを人に委ねてしまっているからです。自分の幸せのために自分で選択した道を進んでいく。こうした姿勢は、女性の真の自立にもつながると思います。
■昇進を断った理由
キャリアに関しても同じです。近年は女性を昇進させようとする動きが活発ですが、なかにはマネジメントが苦手な人もいるでしょう。私自身がそうで、かつて昇進の打診を勇気を出してお断りしたことがあります。
せっかくのお話ですし、先々のキャリアを考えると受けたほうがいいのかな、マネジメントが苦手だなんて言っていいのかな、などと散々悩みました。でも、私にはマネジメントよりも専門性を高めていく道のほうが向いている、そのほうが幸せを感じられると思ったのです。
思い切って本心を伝えた結果、すばらしい上司と出会い、自分の専門性を高めることに集中できるようになりました。この選択は、のちのキャリアの礎のひとつになったと思っています。苦手なものは苦手だと伝えること、弱みを隠さないこと。これは今も、私がビジネスや人生においてとても大切にしていることです。
女性にはもっと「自分」を生きてほしい。自分の本心と向き合って、最後は自分が納得するように、自らの人生を築いていっていただけたらと思います。
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経済アナリスト、日本金融経済研究所代表理事
京都大学公共政策大学院修士課程修了。トレーダーとして法人の資産運用を担う。その後、金融メディアのシニアアナリスト、クラウドファンディングサービス企業の日本初の未上場マーケットアナリストなどを務め、金融・経済分野の政策提言にも携わる。現在、テレビ出演や執筆、企業価値向上に関する研究など幅広い活動を続けており、「日本一忙しい経済アナリスト」と呼ばれる。著書に『日本一忙しい経済アナリストが開発! 収入10倍アップ超速仕事術』(PHP研究所)など。
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(経済アナリスト、日本金融経済研究所代表理事 馬渕 磨理子 構成=辻村洋子)
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