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これをやるだけで不安が一気に和らぐ…ハーバード流「プレゼンで緊張する人に試してほしいたった一つのこと」

プレジデントオンライン / 2023年10月17日 18時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/fizkes

苦手意識のある物事に取り組むとき、不安や恐怖を解消する方法は何か。ハーバード大学に務める小児精神科医の内田舞さんは「例えばプレゼンの前に緊張しがちな人は、自分を客観視して、考え方の癖である『認知の歪み』と向き合う必要がある。果たしてプレゼンでつっかえることが恥ずかしいことなのか、何か悪いことが起こるのかと再度評価してみるといい」という――。

※本稿は、内田舞『REAPPRAISAL 最先端脳科学が導く不安や恐怖を和らげる方法』(実業之日本社)の一部を再編集したものです。

■一人ひとり異なる認知。失敗して「仕方ない」「もう終わりだ」

私たちがさまざまな感情を抱くことも、それによって起こす行動も、すべては脳の反応によって起きていることです。そのうち認知とは私たちの「考え」や「物事の捉え方」のことです。

そもそも認知はどこからやってくるのでしょうか。

私たちは一人ひとり違う考え(認知)を持っています。この違いには第一にもともとの性格などの生物学的な要素が影響しています。

新しい友達を作ることが楽しいと感じる社交的な人もいれば、人との関わりよりも一人で過ごす時間が好きという人もいて、小さなことに物怖じしない人もいれば、一つ一つの出来事に大きな意味を感じる人もいます。

そのような生まれ持った性質に加えて、これまでの生育環境や、出会った人、経験したことなどから、その人の価値観が形作られていきます。

例えば、失敗をしてもそれを修正してリカバリーした経験のある人であれば、一つのつらい経験が「自分の糧になる」と考えられることもある。また、一つの試験に落ちても他の分野でいい評価を受けたことのある人ならば「仕方がない」と流せるかもしれません。

しかし、失敗をしたことがない人、多様な軸での評価を受けたことがない人、失敗をしたときに罵倒された経験がある人などは、同じ状況でも「もう人生はおしまいだ」とより悲観的に考えるかもしれません。

このように、同じ出来事でも認知は人それぞれなのです。

■余裕がないときは深呼吸と周りへの声かけを

だからこそ、自分の認知はどのように形成されたのか、何が影響しているのかを理解することが大切です。理解することによって、例えば、自分の認知には特定の一つの経験が大きな影響を及ぼしていることに気づくかもしれない。

また、それを認識することによって、今度は一つの経験から生まれた認知が他の出来事に当てはまらないということにも気づくかもしれない。

さらには、その場での認知には、そのときの状況や体調も含めた心身のコンディションも影響します。疲れているとき、睡眠不足、空腹時、そして忙しくて気持ちに余裕がないときには、特にネガティブな感情や考えが浮かびやすいものです。

先ほど私の事例をご紹介しましたが、育児や仕事で忙しい親御さんで、言うことを聞かないお子さんに腹が立ち、わーっと叱ってしまって後悔したといった経験がある方は私だけではないと思います。

人は余裕がないとイライラの沸点がとても低くなってしまいます。そんなときには、その場で自分の沸点の低さを認識して意識的に深呼吸すること。おやつを食べたり、冷たい水を飲むこと。休めるときには休むこと。

あるいは、「今日はママは体調が悪くて、うまく反応できないかもしれないから、なるべく焦らなくてもいいように、早めに準備するとか、自分ができることは自分でするようにして、協力してね」と子どもやパートナーにお願いしてもいいと思います。

そして、つい怒鳴ってしまったときには、自分に優しくなって、「体調悪い中頑張ってるんだよね」と自分に声をかけてあげた後、子どもに謝ることがあってもいいのです。

■メタ認知と客観視

先日、6歳の次男が面白いことを言いました。

朝起きると次男の顔に鼻血の跡があったので、「あれ? 夜、鼻血が出たのかな」と聞くと、自分の顔が見えないので血がついていることに気づかなかった次男が、「僕は僕の顔は見えない。ママもママの顔は見えない。人生は一人称でしか生きられない」と言ったのです。

ソファの上の子に話しかける母
写真=iStock.com/monzenmachi
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/monzenmachi

どんなに自分を客観視しようとしても、自分の視点でしか客観視できないこと、だからこそ「人生を自分にとって意味のあるものにしなければ」と思わされた、寝起きの6歳児のけだし名言でした。

自分を客観視するという意味で、「メタ認知」という言葉が存在します。

メタ認知とは「認知を認知すること」。つまりは自分の感じ方のパターンや考え方の癖、そして今自分はどんな思いでいるのかを分析することで再評価の中心的な役割を果たします。その過程において「自分の考え方を客観視してみること」も含まれます。

例えば、翌日がプレゼンの日。

「失敗したらどうしよう。恥をかきたくないな……」など、不安でいろいろな考えが頭に浮かんできます。そんなときに「プレゼン中につっかえてもう一度言い直しても、自分以外は誰も気にしないだろう」などと考え直したりする。

このように、自分を自分以外の視点から見たときにどうなのかと想像して客観視する能力も、感情をコントロールする際に重要な役割を果たします。

自分以外の視点を考えること、認知のパターンについて顧みる働きを支えているのも、実は脳の前頭前野です。前頭前野は思春期頃から急速に育ち始め、一般的には20代後半まで成長を続けると言われています。

前頭前野が発達途中の時期には、感情の持つ力が計り知れず、コントロールが不能に思えるかもしれません。しかし、だんだんと大人になるにつれ、感情に大きく左右されることは少なくなっていくものです。

大人になっても前頭前野の力を使い切れていない人はたくさんいますが、その一方で私たち人間に備わった考える力は、何歳になっても成長可能なのです。

■「認知の歪み」は誰にでもある

「認知」「メタ認知」と言葉を紹介してきましたが、次に紹介する言葉は「認知の歪み」です。もともとの性格や経験によって築かれた考え方のパターンが「間違っている」あるいは「自分に要らぬ悪影響を与えている」こともあります。

プレゼンの例を引くと、「つっかえてしまったらどうしよう」と緊張する人はたくさんいますが、その中で「つっかえても聞いている人はたぶん誰も気にしないだろう」「一つのプレゼンでつっかえても、それで自分の価値が決まるわけじゃないし」と緊張が解ける人もいれば、「つっかえてしまうことは凄まじく恥ずかしいことだ」と考えてしまう人もいます。

心配しやすい、完璧主義といったもともとある性格に加えて、もしかしたら家族やパートナーからあまり肯定されず、「恥」を感じさせられる経験があったのかもしれません。

その結果、何があっても自分を責めてしまったり、些細なことで落ち込んだり、すぐに悪い方向に考えてしまったり、失敗を恐れて周りをコントロールしたいと思う気持ちが強くなったりといった考え方の癖ができてしまった人もいるでしょう。それは「認知の歪み」です。

ここで、認知を次のように再評価してみたらどうでしょうか。「プレゼンでつっかえてしまうことは凄まじく恥ずかしいことだ」という考えが妥当か、再度、評価してみるのです。

私の息子がボストンの学校で習ってきたことに「その問題は大きな問題か、小さな問題か? 問題の大きさによって対応も変わり、またすべての問題に対応しなければならないわけではない」というものがあり、とてもいい考え方だと思いました。

■自分が抱いた感情を見逃さない

同じように、プレゼンもどれだけ大きな(重要な)プレゼンかによっても対応が変わると思います。

どれだけの聴衆がいるのか?

聞いている人の中に自分の将来に関わる重要な人がいるのか?

今までプレゼンでつっかえたことで、何か悪いことが起こったか? 恥をかいたとしたら、それで具体的に何か悪いことが起こるのか?

……といった質問を自分にしてみると、多くの場合は「プレゼンでつっかえても、自分の生活に特に大きな影響はない」という事実にたどり着くかもしれません。

もちろんそれですべての緊張が解けるわけではなくても、少しは安心感が増すのではないでしょうか。

認知の歪みは人に指摘されてもなかなかしっくりこないことも多いので、自分自身でそれに気づかなくてはならない場合もあります。放っておくと、ネガティブな考えに頭の中が覆いつくされてしまいます。

内田舞『REAPPRAISAL 最先端脳科学が導く不安や恐怖を和らげる方法』(実業之日本社)
内田舞『REAPPRAISAL 最先端脳科学が導く不安や恐怖を和らげる方法』(実業之日本社)

その結果、不安の感情に先導された行動によって例えば、プレゼンを完璧にできないならばやらない方がいいと諦めてしまったり、誰にも影響はないような一つの失敗を何年間も悔いたりと、かなりのエネルギーを浪費してしまうこともあるのです。

自分にとって悪影響を及ぼす認知があると気づくには、何よりも自分が抱いた感情を見逃さないことです。そして強い感情が湧いたときに立ち止まって、その感情の背景にある考えや経験、その感情から出てくる行動について思い巡らしてみること。

認知の歪みは長く持ちつづけるほど強くなってしまうところもありますが、何歳になっても遅くはないので、再評価を意識してみてください。

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内田 舞(うちだ・まい)
ハーバード大学准教授・小児精神科医・脳科学者
小児精神科医、ハーバード大学医学部助教授、マサチューセッツ総合病院小児うつ病センター長、3児の母。2007年北海道大学医学部卒、2011年Yale大学精神科研修修了、2013年ハーバード大学・マサチューセッツ総合病院小児精神科研修修了。日本の医学部在学中に、米国医師国家試験に合格・研修医として採用され、日本の医学部卒業者として史上最年少の米国臨床医となった。趣味は絵画、裁縫、料理、フィギュアスケート。子供の心や脳の科学、また一般の科学リテラシー向上に向けて、三男を妊娠中に新型コロナワクチンを接種した体験などを発信している。

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(ハーバード大学准教授・小児精神科医・脳科学者 内田 舞)

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