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給料は上がらない、昇進もない、未来がない…転職コンサルが「いますぐ事務職を辞めなさい」と警告する理由

プレジデントオンライン / 2023年10月19日 13時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/key05

AI時代に生き残る職業とはなにか。キャリアコンサルタントの上田晶美さんは「AIに代替できない能力を身につけなくてはいけない。私は女性には事務職ではなく営業職に就くことを勧めている」という――。(第1回)

※本稿は、上田晶美『女子が一生食べていける仕事選び』(草思社)の一部を再編集したものです。

■昇進も昇級もない事務職

とにかく女子は事務が好きです。なぜなのでしょう。この理由は3つくらい考えられます。

1.伝統的に事務は女性の仕事と思われてきた固定観念があるから
2.人のサポートをするのをいとわず、好きだから
3.体力に自信がないから内勤がいい

事務をやってきたことを悪いとは言いません。それでどんなスキルが身に付きましたか? もちろん働いてきたことは無駄ではありません。ですがスキルと言われると頭をひねる人が多いと思います。

そうです。事務は営業事務でも医療事務でも、転職は難しいし、求人も少なく、給与も安い。

この際、給料は安くてもいいから、という考えは捨ててください。その考えが、男性との賃金格差を生んでいるわけです。

昇進もほぼありませんので、賃金が上がることはありません。せいぜい法定最低賃金が上がるだけです。都会で1人暮らしをするのはままなりません。親か誰かと一緒に住んでいるうちは生活できますが、自立は難しいでしょう。結婚しても、出産して、離婚でもしたら、一気に貧困に陥ります。それなのに事務の正社員の仕事は奪い合いです。

■すべてAIに取って代わられる

現在すでに多くの事務は派遣社員や外部委託になっています。正社員の雇用には社会保険など、会社側には給与以外の負担があります。できるだけコストとして支出を抑えたい人件費。事務の仕事は正社員ではなく、外部への委託になっているのです。

やがてAIがすべてやってしまいます。ではその外部委託を受ける会社はどうか。それもAIに取って代わられるのですから、これからの就職先としては、視野に入れないほうがいいかと思います。

では事務の仕事とは何なのか。中身を詳しく考えると、〈経理〉〈庶務〉〈秘書〉業務が挙げられると思います。

〈経理〉といっても簡単な経費の清算の業務です。少人数の出納管理、その課ごとの現金のとりまとめです。

〈庶務〉というのはその名の通り雑用係。事務用品を用意したり、電球が切れたら取り替えたり。事務所の保守点検の仕事です。

〈秘書〉業務としては、スケジュール管理や接遇と、お世話係のような仕事です。

極端なことを言えば、これらすべて、省ける業務ばかりではないでしょうか? OA化でかなり楽になってきて、本格的なAI化でまったく姿を消しそうです。

■事務に未来はない

以前私は、「医療事務」という資格は有望と伝えていた時期もありました。医療機関の経理は、保険の点数計算などがややこしくて、専門知識が必要だったからです。ところが、これがAI化により、かなり自動でできるようになっています。医療事務といっても、受付業務などのところは残っていくかもしれませんが、それもロボットでかまわないでしょう。

反論を覚悟して言いますが、とにかく、事務というのは未来のない仕事の筆頭です。早く事務から脱するように。そこだけは肝に銘じてください。できるだけ専門業務に就いてほしいものです。

では具体的にどんな仕事に就けば将来にわたって食べていけるのでしょうか?

AIも心を有することができる日が来るかもしれませんが、それは10年、20年ではまだ実現しないと思われます。相手の気持ちを汲むというのは人にしかできない分野です。

■女性こそ営業に向いている

営業というと、女性が一番嫌う分野の仕事ですが、なぜなのでしょうか? それはおそらく、

外回り
ノルマがある

というきつい仕事のように思えるからでしょう。

ドブ板営業という言葉をご存じですか? ドブ板営業とは、ある地域の会社を端から一軒一軒すべてピンポンしてあいさつし、商品を売り込んで回っていくというようなアポなし営業のことです。これを新入社員の度胸試しや訓練のようにやる場合もありました。前時代的で新入社員が辞めてしまうので、そんな非効率なことはやめてほしいものです。

それがコロナ禍になり、営業のスタイルはかなり変わったと言えます。非接触が求められ、オンライン営業が増えました。そうなるとアポなしということはないし、対面の様々なリスクも減り、女性の営業にとってのネックになっていた外回りが少なくなりました。営業もある程度オンラインで内勤化しています。

私は営業というのは、本来は女性に向いている仕事ではないかと思っています。なぜなら女性は話し好きで聴き上手な人が多いですし、親切で、いわゆる「おせっかい」が好きな人が多い気がしますので。

■AIにはできない「おせっかい」

実は営業で身を立てていった女性は多く、その草分けとも言える女性をここでご紹介します。その名も「おせっかい協会」会長です。

PR会社の創業者高橋恵さんは、ゼロから出発して営業で自分の会社を大きくしていかれました。営業は徹底的に相手のことを考える、ちょっとした「おせっかい」ということを信条とされています。

その逸話の一つに、ある会社を訪問したところ、けんもほろろに追い返されそうになったとき、たまたまその社長が指先をナイフで切られたところが目に入ったそうです。高橋さんは慌てて、薬局に行き、消毒薬や止血剤、包帯などをあっという間に買って届けたところ、気に入られて、広告を発注してもらえるようになったとお聞きしました。

仕事がほしくて気に入られようと思ってした行動ではなかったそうですが、相手を思いやる行動で相手の心をつかむことができたということです。

そのけがをした社長さんが高橋さんの会社に広告を発注したのは、包帯のお礼というよりも、そんな思いやりのある人ならば、こちらの要望をしっかり聞き取ってくれるだろう。そんな心の温かな人の会社ならば、わが社に合った心の通った広告を提案してくれるに違いない、とも思われたのではないでしょうか。

AIにはそんなこまやかで臨機応変な対応はできそうにもないですね。

■営業という仕事の本質

また、InstagramなどのSNSのインフルエンサーとして、身の回りの商品などの「映える」写真を撮って宣伝しているのは主に女性です。おいしいものやかわいいお店を見つけたら、ついつい人におすすめしたくなってしまう。小さなおせっかいですね。営業も似ているところがあります。

営業は相手に合った良い商品をおすすめするのが基本です。あなたの要望にはこれが合う! この商品がおすすめです。営業というのは小さなおせっかいの集積と言えるかもしれません。

女性のビジネスパーソン
写真=iStock.com/maruco
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/maruco

商品の性能が良くなり、価格も似たり寄ったりとなれば、「誰から買うか」ということが購買の決定要因になります。つまり、信頼できる人から買えば、嘘のない良品を仕入れられる。その後のメンテナンスも親切にしてもらえそうだし、新しい情報をまた持ってきてくれそうだと思える。

そんな「人」の部分を大切にできるのが営業という仕事なのです。

■ワンチームで頑張る日本人

多くの女性が営業を嫌がる2つ目の理由のノルマ。これも競争の嫌いな人が営業を敬遠する理由の一つです。

あるネット事業の大手企業は営業担当の成績が毎日朝と夕方に集計されて、それを全員が見られるそうです。少し前なら、壁に営業成績のグラフが貼り出してある会社もありました。今では、それらは社内イントラにグラフとなって掲載され、出先でもどこでも見られるようになっているのです。その会社の営業担当者はそれを見てモチベーションにしています。営業はノルマというか予算が明確でないと、達成率がわからず、意欲につながらないのです。

ノルマと聞くと1ミリも良いイメージはわいてきません。ですが、ノルマとは要は予算のことです。目標額の読みがないと企業活動は成り立ちません。その期の売上予測は一人ひとりの予算の集積です。

その予算も一人ひとりに設定される会社もあれば、グループで設定されている会社もあります。個人のモチベーションは下がりそうな気もしますが、チームのみんなで頑張るというほうが力が出る場合もあります。

個人プレーでは自分の技を人に伝えるのがもったいないというような発想になる場合もあり、売り方のノウハウの共有が進みません。チームで頑張るほうが日本人には合っているように思われます。

■座っているだけでお金はもらえない

どうですか? チームで予算を達成していく営業であれば、怖くはないと思いませんか?

上田晶美『女子が一生食べていける仕事選び』(草思社)
上田晶美『女子が一生食べていける仕事選び』(草思社)

いわば、営業というのは主体的、自主的な活動です。事務のように人から与えられたものをコツコツとこなしていく受動的な活動とは違います。

学生時代には座って先生の話を聴いていれば良かった。ですが、それはこちらからお金を払って習っていたのです。知識、学びというサービスを買っていました。

働くというのはサービスを売るほうの活動です。あなたが動くことで会社から報酬をもらいます。座っているだけでお金をもらえる仕事なんてあり得ません。

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上田 晶美(うえだ・あけみ)
ハナマルキャリア総合研究所代表取締役
日本初のキャリアコンサルタント。企業研修の実施、女性のキャリア、学生の就活を応援し、これまで約2万人にアドバイス。メディア出演多数。著書に『ちょっと待ったその就活!〜就活前に考えておきたい「大学生のキャリアデザイン」』ほか。

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(ハナマルキャリア総合研究所代表取締役 上田 晶美)

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