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「おだちん」を与えると子供はバカになる…子育ての専門家が断言する「子供のお小遣い」の最適解

プレジデントオンライン / 2023年10月25日 13時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/mapo

子供の成長を助けるにはどうすればいいのか。文教大学教育学部の成田奈緒子教授と公認心理師の上岡勇二さんの共著『その「一言」が子どもの脳をダメにする』(SB新書)から、子供に「おだちん」を与えてはいけない理由を紹介する――。

■子供に報酬を与えるのは絶対にNG

買ってくれるって言ったじゃん! ナオト(中2)
勉強嫌いのナオト。そこで、親がモチベーションが上がるようにと考えたのが「テストで80点以上取ったら、ほしい物を買ってあげる」ということ。ナオトは80点以上を取るために勉強をするようになりました。
しかし、80点以上を取る度に買わなければならないので、「ほしい物」はどんどん高額に。今度は、ハイスペックのスマホがほしいと言い始めました。
「値段が高過ぎて無理」と言う母親に、「買ってくれるって言ったじゃん!」と暴れ始めたナオト。母親は突き飛ばされてしまいました。

子ども 「新しく出たゲームほしいんだよね~」
親 「じゃあ、次のテストでいい点を取ったら買ってあげるよ」
子ども 「やった! よーし、勉強頑張るぞ!」
親 「頑張ってね。期待してるわよ!」

一見、ほのぼのとした家庭での1コマのように見えます。実際、このような言葉のやりとりをしているご家庭は結構多いのではないでしょうか。

確かに、子どもは勉強を頑張るようにはなるかもしれませんが、このように「テストでいい点数を取る」などの交換条件を示して、報酬を与えることは絶対にNGです。子どもの脳の発達を大きく妨げてしまいます。

勉強はあくまで個人の活動であり、「家庭生活」ではありません。ましてや「ほしい物を親に買ってもらう」ためにするものではなく、自分のために「したいのなら」勝手にするものです。

テストの点数が悪くて、「勉強をしなくては」と思うか、「別にいいや」と思うかは、すべて子ども自身が判断すべき。何度も言うように、親は学校や塾などの社会の評価を家庭生活の「軸」として持ち込んではなりません。

■「モノで釣る」より、「ありがとう」がいい

親が注力して整えるべきなのは、規則正しい家庭生活の環境です。

子どもに早寝早起きの習慣づけをさせて、まずは「からだの脳」(間脳・脳幹)をしっかり育てていく。次に、言葉を中心にしたさまざまなコミュニケーションを通じて、「おりこうさんの脳」(大脳新皮質)と「こころの脳」(前頭葉と間脳・脳幹をつなげる神経回路)を育てていく。それが子どもの脳を育てるということです。

テストでいい点数を取って「もらう」ために、親が子どもを「モノで釣る」ことは、勉強というものに対する考え方のミスリードにつながりかねません。その結果、子どもの脳育ての阻害要因にもなりうる「ブレブレ」の行為です。このような交換条件を成立させてはいけません。

「テストで80点以上を取る=ほしい物を買ってもらえる」というルールを決めてしまうと、子どもは「ほしい物を買ってもらう」だけのために、勉強をするようになってしまいます。前頭葉の最も大切な機能である「見えないもの」を報酬と考えて「頑張る」(たとえば、自分の将来のキャリアアップのために努力して資格試験を受ける)という機能の発達を阻害するだけです。

ところで、「本当に」家庭生活の中で子どもに対して感謝の念が生まれたなら、そのときは、ごほうびはありです。たとえば、母親が疲れて仕事から帰ってきたとき、すっかり洗濯物が片づいていて、お風呂も沸いていてごはんも炊けていたら、「うれしい! ありがとう。じゃあ、あんまりうれしいからごほうびに……今度の日曜日、パフェおごっちゃおうかな!」などと言うのは、ぜひたくさん行ってください。

黄色い花を手渡す母
写真=iStock.com/Hakase_
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Hakase_

■「ほしい理由のプレゼン」で脳を育てる

テストの点数を交換条件としてほしい物を買うのはNGですが、子どもが何かをほしがったときは、実は、脳を育てるチャンスです。そのまま買ってあげるのではなく、なぜほしいのか「プレゼン(プレゼンテーション)」をしてもらいましょう。

ほしい「物」がある場合には、「どのような機能があるのか」「なぜそれが必要なのか」「予算はいくらなのか」などについて説明してもらいます。ほしい物が、ゲームや洋服などの「物品」ではなく、「釣りに行きたい」「ディズニーランドに行きたい」などの「(お金のかかる)やりたいこと」の場合にもプレゼンのチャンスです。その場合には、「目的」「交通費などの経費」「必要な持ち物」「タイムスケジュール」などを説明してもらいましょう。

「高次脳機能」である前頭葉は、計画を立てるなどの論理的な思考と判断を働かせる場所です。プレゼンをさせることは、前頭葉の働きを活発化させます。

プレゼンが習慣になれば、子どもは「ほしい」と思ったときに、「本当に必要なのか」を自問するようになります。場合によっては、「みんなが持っているからほしいと思ったけれど、よく考えたら使わないな」などと結論を出すこともあるでしょう。それは脳が育っている何よりの証拠です。

プレゼン能力は、どんな仕事、職業にも求められるスキルです。プレゼンが上手になっていくことは、子どもが成長していることの証しでもあります。生まれたときに「心配100/信頼0」だった子どもを、18歳で「心配0/信頼100」で手放すために、その能力をどんどん伸ばしてあげましょう。

■家事のお手伝いに「おだちん」を払ってはいけない

おだちんちょうだい! シュンイチ(小3)
今日の晩ごはんはグラタン。牛乳を切らしていたので、「シュンイチ! おだちんあげるから、買い物に行ってきて」と1000円札を渡す母親。シュンイチはお釣りをすべてくれるというので大喜びです。母親はお使いを頼むときはいつも、お礼にお金を渡しています。
そんなある日――。晩ごはんの準備をしている母親に、「何か買ってくるものない?」とシュンイチが話しかけてきました。「今日は大丈夫」と答える母親に、「何か買ってくるからさ、おだちんちょうだいよ~。漫画ほしいんだよ~!」とシュンイチは暴れ始めました。

私たちは、子どもが家の仕事をした際、「おだちん」を渡すべきではないと思っています。そもそも、家の仕事を子どもがすることを、「お手伝い」だと考えるべきではないとも思っています。これは、親御さんが毎日ごはんを作ることに報酬が生じないのと同じことです。

「おだちん」を与えると、家の中での仕事を報酬目的でやるようになってしまいます。シュンイチのケースのように、「おだちんがほしいから、手伝いをさせてほしいと頼む」という本末転倒の結果を生むこともあるでしょう。

成長するにつれて、家庭の構成員の1人として家の中で役割を持つことは子どもであっても当然のことです。お使いも、洗濯も、掃除も、子どもに任せるときには「お手伝い」としてではなく、家の「役割分担」として任せるように心がけてください。

窓を掃除する二人の小さな女の子
写真=iStock.com/visualspace
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/visualspace

たとえば、「晩ごはんはグラタンを作りたいと思ってたんだけど、牛乳がないんだよね。明日にしてもいいんだけど、あなたがもし今晩グラタンを食べたいなら、牛乳買ってきてくれない?」などと、子どもの意思で、その「仕事」をやるかどうかについて選ばせることが大切です。

■親に認められた子供はすくすく育つ

子どもが牛乳を買ってきてくれたら、「ありがとう! これで今夜はグラタンにできるね」と感謝の気持ちを伝えましょう。親が子どもを認めることによって、子どもは家庭の中での役割を自覚し、「自分はこの家になくてはならない存在」だと自己肯定感を高めます。

お使いを頼んだときは、レシートとお釣りは必ず持ち帰らせます。シュンイチの母親のように、1000円札を渡してお釣りを返させずにいると、いつまでたっても経済観念が育ちません。基本的には、「おだちん」は安易に与えるべきものではありません。

私たちのところに来た親御さんで、風呂掃除をする度にわが子に「おだちん」を与えていたら、シャワーでササッと流すだけで「100円ちょうだい!」と要求されるようになったという方もいました。

風呂掃除も、みんなが気持ちよくお風呂に入るための「役割分担」です。お金を渡すのではなく、「ありがとう。きれいなお風呂に入れてうれしい」と感謝の気持ちを伝えるだけにしましょう。

■お小遣いは「学年×100円+α」が基本

子どもが、経済観念をどこよりも早く学ぶ場所が家庭です。「ペアレンティング・トレーニング」では、子どもの脳育てには、子どもが社会に出るための経済教育として、各家庭での「お小遣い制」が必須であると考えます。

家庭の経済状況などによって額は異なるでしょうが、小学生なら「学年×100円+300円(家庭の経済状況で変えてかまいません)」が基本的な考え方です。「ノートや鉛筆など勉強に必要な文房具はお小遣いで買うものには含まれない」など、どこからどこまでがお小遣いで買う物なのかを親子で話し合い、ルールを決めましょう。

最近は、交通機関に乗るときに電子マネーを使うので、お小遣いを電子マネーとしてチャージしてしまう家庭が増えています。しかし、小学校低学年のうちは、現金で管理させるようにしましょう。現金は、実体があるので、目で見て増減がわかります。箱や缶などの中に入れて、その増減を確認させるようにしましょう。

コインを持っている
写真=iStock.com/rai
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/rai

お小遣い制を始めたら、文房具などのルールで決めた特例以外は、すべて子ども自身の持っている金額の範疇(はんちゅう)でやりくりさせるのが基本です。

しかし、ここを徹底できない親御さんをよく見かけます。「ほかのお友達が持っているのに、うちの子だけ持っていないのはかわいそう」などと思い、ゲームや最新のスマホを買い与えてしまうのです。ルールをなし崩しにして物を買い与えていては、基本的な経済観念が身につきません。「収入の範囲内で支出する」と考えて計画的にお金を使う、前頭葉の発達を妨げてしまいます。

■小遣いの範囲内で「やりくり」させることが重要

エコノミストの勝間和代さんはご自身の著作『一生自由に豊かに生きる! 100歳時代の勝間式人生戦略ハック100』(KADOKAWA)の中で、資産運用は短期的な視点だけでなく、中長期的な視点でも運用しなくてはいけないとおっしゃっています。これは、子どもの小遣いでも子育て全般でも共通する考え方だと思います。

たとえば、子どものお小遣いが1000円だったとします。大好きなアイドルの本が1000円で売られていたら、子どもは1000円全額を使って買ってしまうでしょう。

しかし勝間さんは、資産運用の観点からすると、自分の持っているお金の20%以上を、一気に使ってしまうのは危険なことであり、予定外の出費に備えるために、自分の持っているお金の20%以上は一度に使うべきではない。このように、子どもの頃から中長期的な金銭感覚を持つべきだともおっしゃっています。

成田奈緒子、上岡勇二『その「一言」が子どもの脳をダメにする』(SB新書)
成田奈緒子、上岡勇二『その「一言」が子どもの脳をダメにする』(SB新書)

さらに勝間さんは、所持金の5%の金額の物は20回買えるけれど、所持金の20%の金額の物なら5回しか買えないことも理解して、買い物をするべきとも主張しています。中長期的に見れば、1000円の物がほしいときは、「月に20%(200円)ずつ貯金をして、5カ月後に1000円がたまってから買う」方が、予定外の出費などで「子ども銀行」の財政が破綻しないためにも、賢い選択だと思います。買いたい物とその値段によっては、中長期的な視点を持つことも必要でしょう。

子どもがお小遣いで自分の買いたい物をやりくりしていくのは、人生の中で初めての経済活動です。小学生でも、億万長者でも、自分のお金を使って物やサービスを買うという行為の基本原理は一緒です。親はしっかりと子どもにお金の知識を授けましょう。

さらに言うなら、子どもの脳育ても短期的な視点で見てはいけません。今ではなく成人後の姿を見据えて、大人は子どもに語るための言葉を考えていきましょう。

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成田 奈緒子(なりた・なおこ)
文教大学教育学部 教授、「子育て科学アクシス」代表
小児科医・医学博士。公認心理師。子育て科学アクシス代表・文教大学教育学部教授。1987年神戸大学卒業後、米国セントルイスワシントン大学医学部や筑波大学基礎医学系で分子生物学・発生学・解剖学・脳科学の研究を行う。2005年より現職。臨床医、研究者としての活動も続けながら、医療、心理、教育、福祉を融合した新しい子育て理論を展開している。著書に『「発達障害」と間違われる子どもたち』(青春出版社)、『高学歴親という病』(講談社)、『山中教授、同級生の小児脳科学者と子育てを語る』(共著、講談社)、『子どもにいいこと大全』(主婦の友社)など多数。

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上岡 勇二(かみおか・ゆうじ)
公認心理師・臨床心理士・子育て科学アクシススタッフ
公認心理師・臨床心理士・子育て科学アクシススタッフ。1999年、茨城大学大学院教育学研究科を修了した後、適応指導教室・児童相談所・病弱特別支援学校院内学級に勤務し、子ども達の社会性をはぐくむ実践的な支援に力を注ぐ。また、茨城県発達障害者支援センターにおいて成人の発達障害当事者や保護者を含めた家族支援に携わる。2014年より現職。

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(文教大学教育学部 教授、「子育て科学アクシス」代表 成田 奈緒子、公認心理師・臨床心理士・子育て科学アクシススタッフ 上岡 勇二)

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